空自の次期初等練習機が米テキストロン社T-6に決定
- 日本の防衛
2024-11-29 21:50
防衛省は令和6(2024)年11月29日(金)14時30分、かねてから選定を進めていた航空自衛隊の次期初等練習機および地上教育器材について、兼松株式会社が提案した米国テキストロン・アビエーション・ディフェンス社のT-6および地上教育器材に決定したことを発表した。
空自T-7練習機の後継機に4社が提案
新たに選定されたT-6は、航空自衛隊の現用初等練習機であるT-7を後継するものだ。
現用のT-7は2030年度から用途廃止が始まる見込みであり、2022年に策定した防衛力整備計画で、後継機等の整備に着手する方針が示されていた。
防衛省は2024年8月21日、T-7後継機の提案希望者に対して提案要求書を手交し、10月15日までに4社から以下の案が提出された。
【兼松 株式会社】
テキストロン・アビエーション・ディフェンス製T-6および関連する地上教育器材
【株式会社 SUBARU】
ピラタス・エアクラフト製PC-7MKX(マークエックス)および関連する地上教育器材
【第百商事 株式会社】
ターキッシュ・エアロスペース・インダストリーズ製HURKUS(ヒュルクス)および関連する地上教育器材
【新東亜交易 株式会社】
地上教育器材(機体の提案なし)
このうち、第百商事が提案したHURKUSと機体の提案がなかった新東亜交易案は、必須要求事項を満たさなかったとして第1段階評価で落選した。
第2段階では機体、地上教育器材、後方支援その他と、評価対象経費による評価が行われた。評価には基礎点(一律100点)および不加点(70点満点)の合計を評価対象経費(コスト)で割り算する計算式が用いられ、以下の評価値が算出された。
T-6および関連する地上教育器材 0.10512321
PC-7MKXおよび関連する地上教育器材 0.05919024
結果としてT-6が選ばれたわけだが、この評価方法は機体や教育器材の性能だけでなく、コストにも重点が置かれたものであった。実際に機体、地上教育器材、後方支援その他の3項目においては、PC-7MKXのほうが高い評価を得ていた。
同じルーツを持つ練習機の対決
テキストロン社のT-6テキサンIIは、アメリカ空・海軍をはじめ世界十数か国で採用されている練習機で、航空自衛隊の戦闘機要員の養成においても米国留学して行う委託教育で使用している。
もとはスイスのピラタス社が1980年代に開発した練習機PC-9のアメリカ空・海軍仕様であり、1995年にアメリカ軍での採用が決まった際に、国産化とともにT-6としての発展型の開発や海外販売の権利が認められたものだ。
一方で、今回落選したPC-7MKXは、PC-9の技術を祖型となったPC-7にフィードバックし、さらに発展を重ねた最新型である。つまり今回の初等練習機選定には、同じルーツを持つ見た目がそっくりの航空機とそれぞれの最新システムによる対決という側面もあった。
T-6は全機輸入となり、来年度予算に盛り込む方針で調整を進めている。最終的な調達機数と、防衛省が使用する型式名はまだ示されていない。
選定結果の発表に際して、防衛省・自衛隊の公式サイトで公表された文書はこちらの通り。
次期初等練習機及び地上教育器材の選定結果について
航空自衛隊の次期初等練習機及び地上教育器材として、本日、以下のとおり機種及び地上教育器材を決定したので、お知らせします。
1 提案者及び提案内容
提案者:兼松株式会社
提案内容:テキストロン・アビエーション・ディフェンス社製T-6及び関連する地上教育器材
2 選定理由
第1段階評価においては、次期初等練習機、地上教育器材及び後方支援その他に関し、必須要求事項を満たすか否かを評価し、兼松株式会社提案のT-6及び関連する地上教育器材並びに株式会社SUBARU提案のPC-7MKX及び関連する地上教育器材はこれを満たした一方、第百商事株式会社提案のHURKUS及び関連する地上教育器材はこれを満たさなかった。また、新東亜交易株式会社の提案内容には機体が含まれておらず、必須要求事項を満たさなかった。
第2段階評価においては、第1段階評価を通過した提案について、一律の基礎点(100点)に付加点(70点満点)を加えた合計を評価対象経費で除して算出する評価値が最も高かったT-6及び関連する地上教育器材を次期初等練習機及び地上教育器材として決定した。
(参考)
○選定作業の経緯
令和6年8月21日 提案希望者に対して提案要求書手交
10月15日 提案者から提案書を受領、以後、提案内容を精査
11月29日 防衛省において機種及び地上教育器材決定
○ 提案者等(五十音順)
(以上)
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