三菱電機、衛星搭載「民生GPU実証機」の軌道上初期機能確認を完了(3月5日)
- 日本の防衛
2026-3-9 10:45
三菱電機株式会社は令和8(2026)年3月5日(木)、軌道上における「民生GPU実証機」の初期機能確認を完了したことを以下のように発表した。
軌道上における「民生GPU実証機」の初期機能確認を完了
宇宙空間における民生品の活用を通じて、衛星の高性能化・高機能化に貢献
三菱電機株式会社は、当社が開発を担当し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の「小型実証衛星4号機(RAISE-4)」※1に搭載され、2025年12月14日に打ち上げられた民生GPU実証機GEMINI(cots GPU based Edge-computing for MIssion systems utilizing model based systems engiNeerIng、以下、GEMINI)の軌道上での運用において、初期機能確認を完了しました。
近年、地球観測衛星による観測データは、搭載されたセンサーの高分解能化や感度の向上、コンステレーション※2化などより、データの取得量が増加傾向にあります。それに伴い、衛星から地上局へのデータの伝送時間や、地上局における増大した観測データの処理時間が増加し、特に災害時などの迅速な意思決定が必要な場面において、データの取得から利用開始までにかかる時間の短縮が求められます。このような背景のもと、衛星自身でデータを処理し地上へ伝送する「オンボード処理」が、地上局への伝送時間を短縮し地上局でのデータ処理を不要とする技術として注目されています。一方、高度なオンボード処理には、衛星に高性能な処理装置が必要ですが、宇宙空間では、放射線、ロケット打ち上げ時の振動、極端な低温・高温などの過酷な環境条件により機器が故障するリスクが高く、GPU(画像に特化した高性能な処理装置)をはじめとした高性能な民生品の処理装置を使用する上での課題となっています。
GEMINIは、民生品のGPUを用いて軌道上で観測データのオンボード処理を実証する機器です。当社は、従来の宇宙用プロセッサーと比較して約1,000倍※3の演算速度を持つ、高性能かつ低消費電力な民生品のGPUを使用して、宇宙環境への耐性を強化したシステムを構築し、GEMINIを開発しました。GEMINIの内蔵モジュールには、メモリーや電源部品などの周辺部品が複雑かつ高度に組み合わされており、性能と衛星への搭載性を確保したまま宇宙環境に耐性のある部品への置き換えることが困難です。そのため、当社が宇宙開発で培った知見を活用し、宇宙環境に適した筐体設計を採用することで、モジュールの部品を変更せずに過酷な宇宙環境への耐性を強化し、軌道上における民生品GPUの利用を実現しました。
今回の初期機能確認では、GEMINIの所定のオンボード処理がすべて正常に動作したことを確認し、また、オンボード処理により、軌道上でSAR衛星※4の画像再生※5や、光学画像から地表面の変化や物体の自動検出を行う機能の実証に成功しました。
※1JAXA の「革新的衛星技術実証4 号機」で打ち上げられる衛星の1 つ。RAISE-4 は「RApid Innovative payload demonstration SatellitE-4」の略
※2 地球の低軌道(高度約200~2,000 キロメートル)に多数の小型衛星を配置し、連携して機能するシステム
※3 従来の当社製衛星に使用されるプロセッサーとの比較において
※4 合成開口レーダーを搭載し、レーダーで地表面を観測する衛星。SAR はSynthetic Aperture Radar の略
※5 衛星が観測したRAW データを、利用可能な画像データに処理すること
GEMINIを用いた実証について
1. 宇宙環境に適した筐体設計により、民生品GPUの軌道上での実証を実現
・当社が衛星搭載機器などの開発・製造で培った知見を活用し、ロケットによる振動や放射線、極度な高温・低温などの宇宙環境への耐性を強化した筐体設計を適用することで、民生品GPUの軌道上での利用を実現
2. オンボード処理機能により、観測データの取得から利用にかかる時間を短縮
・軌道上でデータを処理してから地上へ伝送するオンボード処理機能を搭載。衛星の非可視時間帯※6に、データ処理を実施することで、地上局へのデータ伝送時間を短縮、地上局でのデータ処理を不要とし、観測データの取得から利用までに要する時間の短縮を実現・初期性能確認においては、GEMINIのGPUにあらかじめSAR衛星の観測模擬データと、比較用に用意した同じ場所の画像データを格納しておき、軌道上での画像再生処理を行った後、比較用の画像データとの差異を抽出する処理の実証に成功。また、同様の手法で、軌道上で光学衛星の観測模擬画像から、物体を検出する画像処理の実証にも成功

※2つのデータの変化点として、車両のわだち(右図青線)の抽出に成功
3. ファイルシステム方式の採用により、軌道上での安全なソフトウエア更新を実現
・地上局からの指示に基づき、軌道上で従来よりも安全かつ容易なソフトウエア更新を可能とするファイルシステム方式※7を採用したシステムを構築
・軌道上にて本方式を用いたソフトウエア更新を行うことで、近年、ニーズが高まっている衛星システムの柔軟化に対応したSDS※8基盤技術の実用化に向けた実証と、その有効性の検証を実施
GEMINIの概要
寸法:143 mm × 143 mm × 45 mm
質量:0.7 kg
消費電力:約10W
実証内容:
・レーダー観測データの処理(SAR画像化処理、変状抽出処理、暗号化処理)
・光学観測データの処理(物体検出処理)
・処理した観測データの地上への伝送
今後の予定・将来展望
今後1年間の定常運用において、GEMINI で取得されたデータをもとに、放射線などの宇宙環境が民生品 GPU のハードウエア、ソフトウエアに与える影響を評価し、動作実績を積み上げます。また、動作実績をもとにエラーの検知方法や回復策を検証し、宇宙環境により発生する民生品 GPU の処理動作エラーに関するデータを蓄積することで、宇宙環境における民生品の利用時にエラーを予測し、ある程度のエラーを許容しリカバリー可能な新しいシステムの開発に活用します。これらの取り組みにより、民生品の活用による衛星の高機能化・高性能化を図ることで、各衛星・宇宙機プログラムへの採用を提案していきます。
(以上)
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