齋藤海上幕僚長が記者会見 イタリア・ルーマニア出張、原子力潜水艦などに言及(10月13日)
- 日本の防衛
2026-10-15 17:40
令和8(2026)年10月13日(火)11時30分~11時44分、齋藤聡(さいとう・あきら)海上幕僚長は、防衛省A棟10階会見室において、定例記者会見を行った。
海幕長からの発表事項と記者との質疑応答は以下の通り。
海幕長からの発表事項
私から1件、発表します。イタリア・ルーマニアへの海外出張についてです。10月4日(日)から10月11日(日)までの間、イタリア及びルーマニアに出張してまいりました。イタリアのベネチアでは、イタリア海軍が主催する第15回地域シーパワーシンポジウムに参加し、イタリア海軍を始めとする参加各国海軍参謀長との二国間及び多国間の交流を通じて、海軍種間の関係強化を図ってまいりました。
また、同シンポジウムへの参加に引き続き、ルーマニア海軍からの公式招待を受け、ルーマニアのコンスタンツァを訪問しました。現地では、ルーマニア海軍の艦艇や海軍士官学校等を視察するとともに、海軍参謀総長のミハイ・パナイト中将と懇談し、海洋安全保障や海軍種間協力に関する意見交換を行い、相互理解の促進及び信頼関係の深化を図ってまいりました。以上です。
記者との質疑応答
イタリア・ルーマニア出張の成果
記者 :
冒頭発言でございましたイタリア、ルーマニア出張における具体的な成果があれば教えてください。
幕僚長 :
まず、イタリアについてですけども、ご存じのとおり、イタリアと日本は地理的には離れておりますが、両国とも海上交通路に依存する海洋国家であり、自由で開かれた海洋秩序の維持という共通の利益を有しております。今日の安全保障環境におきましては、インド太平洋と欧州をそれぞれ独立した地域として捉えるのは難しくなってきております。エネルギー、物資、データの流れは海を通じて行われております。一つの海域における不安定要因は、他の地域にも影響を及ぼし得るというふうに認識しております。
また、本年7月のイタリアと日本の防衛相会談においても、欧州とインド太平洋の安全保障は一体不可分であるとの認識が再確認されました。その意味でも、地中海とインド太平洋は地理的に離れていても、安全保障上は密接に関連していると認識しております。
また、イタリア海軍は、地中海の安全保障において重要な役割を担うとともに、空母運用、統合運用及び海上交通路の防護等の分野において、豊富な経験と知見を有しております。私ども海上自衛隊としましても、このようなイタリア海軍との連携を深めてまいりたいと思っております。
また、ルーマニアの訪問では、海上幕僚長としては初の訪問となりました。先ほど申しましたとおり、懇談や艦艇等の視察を通じて、相互理解の増進、あるいは信頼関係を深めることができたものと考えております。以上です。
ジブチ周辺の安全保障環境と自衛隊拠点の防護
記者 :
自衛隊が拠点を置く東アフリカのジブチ周辺の安全保障環境について伺います。現在、サウジアラビアが支援するイエメン暫定政権軍と親イラン武装組織フーシ派との戦闘が激化して、フーシ派によるサウジの国際空港などへの攻撃も相次いでいます。こうした中、米アフリカ軍(Africom)は、フーシ派の関係者がソマリア北部に進出し、アルカイダ系武装勢力アル・シャバーブと連携を強める可能性を警告しています。そのジブチはイエメンとバブ・エル・マンデブ海峡を挟んで向かい合う位置にあります。こうした情勢を踏まえて、海上自衛隊はジブチの自衛隊拠点や派遣隊員への脅威をどのように評価していますか。
また、フーシ派はイランの戦術をまねて近隣諸国の米軍基地を狙う傾向があると指摘されていて、そうするとジブチの米軍基地の近隣にある自衛隊の拠点も、巻き添え被害を受ける可能性があるのではないかと心配しているんですけども、そうしたミサイルやドローンによる攻撃に備えて、自衛隊拠点の防護態勢を強化する必要があるとお考えでしょうか。
幕僚長 :
中東の情勢については日々変化しておりますので、日々報告を受け、その都度、私として必要な情勢判断を行っているところです。ホルムズ海峡や紅海を含む中東地域というのは、我が国にとって非常に重要な地域であります。現時点で、海賊対処行動、あるいは情報収集活動に従事している護衛艦、そして哨戒機、この任務遂行に影響を与える状況は発生していないと認識しております。現在、護衛艦たかなみ、P-1哨戒機ともにジブチを拠点として活動を行っております。今後も派遣隊の安全を確保しつつ、任務に万全を期していきたいと思っております。
また、隣接する米軍とは状況認識を共有しております。そして、米軍でアラートが出た場合には、自衛隊の拠点にも共有されております。しっかりと連携を図りながら、そして隊員の安全を確保しつつ、任務に万全を期していきたいと思っております。以上です。
記者 :
追加で、海幕長にお尋ねしますが、ラングレー前米アフリカ軍司令官は、昨年、フーシ派にはジブチの米軍基地を攻撃する能力があるとアメリカ議会で証言しています。そうすると、やっぱりそのフーシ派がジブチの米軍基地を狙ったときに、自衛隊の巻き添え被害をすごい心配しているんですけど、日本で全然議論されていなくて、危機感あるのかなっていう気がしているんですね。国民の関心というか、注視を高める意味で、何かお言葉いただければと思います。
幕僚長 :
今言われた情報については、別系統で私も触れたことがあります。我々としては、隊員の安全を確保しつつ任務を遂行するために、いろんな情報を基に適切に情勢判断を日々行っております。ご心配いただきありがたく思っておりますが、しっかりと情勢を判断し、隊員の安全を確保しつつ、任務を遂行してまいりたいと思っております。
原子力潜水艦とVLS、水中・水上ドローンとの費用対効果
記者 :
原子力潜水艦の可能性について、それを持つことのメリット、デメリットなどもう散々言い尽くされていますが、もう一つ新たな話として、VLS、垂直発射システムについて伺います。現在、川崎重工と三菱重工で、防衛装備庁の下で、研究開発事業が正式に採択されて、一応、理屈上は2030年の春には模型ベースではできると聞いています。それは時期的に考えると「たいげい」型の次のポスト「たいげい」型に搭載される、ないしは搭載が検討されるのではないかと思います。VLS搭載になると、大雑把なイメージですが、いろいろ聞いたところでは、排水量が大体5,000トンぐらいになって、大型化して重くなり、現在のリチウムイオン電池では、その意味で限界があって、原子力のパワーじゃないと難しいのではないかという話もあります。もちろんリチウムイオンをたくさん搭載する方法もあるのかもしれませんが、そうした観点からも、ポスト「たいげい」型、またその先も含めて、いずれ潜水艦はVLS搭載型になっていくだろうし、大型潜水艦になっていくのではないかと思います。2040年ぐらいの話かもしれませんが。そういう意味も含めて、政治的な問題などは一切度外視して、軍事的な見地から、原子力潜水艦についてどのように考えておられるのでしょうか。
もう一つ、その関連で、原子力潜水艦を仮に造れば1兆円以上が必要だと言われていますが、今のウクライナ戦争などを見ていれば、その金があれば、現在、防衛装備庁などでも研究している水中ドローン、水上ドローンを安価なものでそれこそ数万機配備して、某国の潜水艦、特に原子力潜水艦が太平洋に出てくるのを逐一監視するという考え方もあると思います。それで対応できるのではないかという考え方もあると思いますが、費用対効果という意味で、それについてどう見ていますか。
幕僚長 :
もう既にこういった場で何回かメリット、デメリットについては、私の頭の中の整理としてお話ししたことがありますので、それについては、お話しすることは省略させていただきますけども、防衛大臣も何度も会見で言われているとおり、様々な選択肢を排除することなく検討しておりますということで、我々にしても、海上防衛の専門家として求められれば、我々の考え方をしっかりとお伝えしたいと考えております。
その上で、軍事的に見ますと、(通常型潜水艦と比較して)原子力潜水艦の能力というのは格段に向上しますので、そういったメリットがあると思っております。
そのようなお金があれば、もっと別に使うところがあるんじゃないかというご指摘につきましては、海上自衛隊も無人機だけ、あるいは有人機だけの世界というのは適当ではないと思っております。よく我々はブリーフィングで使っておりますのは、無人機と有人機の「ベストミックス」という言葉を使って、そういった海上自衛隊を目指していきたいと思っております。
イギリス海軍とも、この前のベニスでも懇談しましたけども、ジェンキンス大将等が口にされるのは「ハイブリッド・ネイビー」ということ、すなわち我々と同じように有人機と無人機をミックスしたハイブリッドなネイビーを追求しているということで、今、それに尽きると思っております。よって、どちらかに偏るわけにはいかないと思っております。そのベストミックスも情勢によってはどんどん変わってくると思います。技術の進化によってどんどん変わってくると思いますので、それを先取りした形で我々もスタディして、そして予算を獲得して、そしてその装備化に進めていきたいと思っております。以上です。
原子力潜水艦導入と「ヒト・モノ・カネ」、時間
記者 :
先日、海幕長は、原子力潜水艦の導入を検討するに当たっては、「ヒト・モノ・カネ」という面が重要とおっしゃっていました。私、それを踏まえて記事を書かせてもらったら、専門家からコメントでヒト・モノ・カネのほかに時間が重要であると言われました。僕にコメントをくれたその専門家の人は、原潜導入してもかなり時間が遅くなってしまうから、間に合わないじゃないかというトーンだったんですけど、逆に、時間を考えれば、今着手しなければ時間的に遅くなるという面もあると思うが、ヒト・モノ・カネ・時間という面ではどのようにお考えですか。
幕僚長 :
おそらく村野※さんのご指摘だったと思っております。私もその記事を見させていただきました。いろんな見方がありますので、ヒト・モノ・カネ、プラス時間という分析もあるだろうし、私が言いましたように、ヒト・モノ・カネという側面で分析するということもあり得ると思います。村野さんは専門家でありますけども、彼のコメントに一つ一つお答えすることは、この場では控えさせていただきたいと思っています。
※「村野 将」氏:米ハドソン研究所所員
(以上)
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