広島と長崎の平和祈念式典に内閣総理大臣が出席(8月6日、9日)
- 日本の防衛
2025-8-12 13:40
令和7年(2025)8月6日(水)、石破 茂(いしば・しげる)内閣総理大臣は、広島市で行われた平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)に出席した。3日後の8月9日(土)には、長崎市で行われた平和記念式典(被爆80周年長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典)に出席した。
内閣総理大臣挨拶は以下の通り。
広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式 挨拶
今から80年前の今日、1発の原子爆弾が炸裂(さくれつ)し、十数万ともいわれる貴い命が失われました。一命をとりとめた方々にも、筆舌に尽くし難い苦難の日々をもたらしました。
内閣総理大臣として、原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊(みたま)に対し、ここに謹んで、哀悼の誠を捧(ささ)げます。そして、今なお被爆の後遺症に苦しんでおられる方々に、心からのお見舞いを申し上げます。
2年前の9月、広島平和記念資料館を、改装後初めて訪問をいたしました。80年前のあの日、立ち上るきのこ雲の下で何があったのか。焦土となり灰燼(かいじん)に帰した街。黒焦げになった無辜(むこ)の人々。直前まで元気に暮らしておられた方が4,000度の熱線により一瞬にして影となった石。犠牲者の多くは一般市民でした。人々の夢や明るい未来が瞬時に容赦なく奪われたことに言葉を失いました。
広島、長崎にもたらされた惨禍を決して繰り返してはなりません。非核三原則を堅持しながら、「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取組を主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命であります。
核軍縮を巡(めぐ)る国際社会の分断は深まり、現下の安全保障環境は一層厳しさを増しています。しかし、だからこそ、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎である核兵器不拡散条約(NPT)体制の下、「核戦争のない世界」、そして「核兵器のない世界」の実現に向け、全力で取り組んでまいります。
来年のNPT運用検討会議に向けて、対話と協調の精神を最大限発揮するよう、各国に引き続き強く呼びかけてまいります。また、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づき、核兵器保有国と非保有国とが共に取り組むべき具体的措置を見出すべく努力を続けてまいります。
「核兵器のない世界」の実現に向け歩みを進める上で土台となるのは、被爆の実相に対する正確な理解です。
長年にわたり核兵器の廃絶や被爆の実相に対する理解の促進に取り組んでこられた日本原水爆被害者団体協議会が、昨年ノーベル平和賞を受賞されたことは、極めて意義深く、改めて敬意を表します。
今、被爆者の方々の平均年齢は86歳を超え、国民の多くは戦争を知らない世代となりました。私は、広島平和記念資料館を訪問した際、この耐え難い経験と記憶を、決して風化させることなく、世代を超えて継承しなければならないと、決意を新たにいたしました。
政府として、世界各国の指導者や若者に対し、広島・長崎への訪問を呼びかけ、実現に繋(つな)げています。資料館の年間入館者は、昨年度初めて200万人を超え、そのうち3割以上は外国からの入館者となりました。日本だけでなく、世界の人々に被爆の実相を伝えていくことも、私たちの責務です。
「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」は、施行から30年を迎えました。原爆症の認定について、できる限り迅速な審査を行うなど、引き続き、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策を進めてまいります。
結びに、ここ広島において、「核戦争のない世界」、そして「核兵器のない世界」の実現と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊の安らかならんこと、併せて、ご遺族、被爆者の皆様並びに参列者、広島市民の皆様のご平安を心より祈念いたします。
「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」。「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」。公園前の緑地帯にある「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に刻まれた、歌人・正田篠枝(しょうだ しのえ)さんの歌を、万感の思いを持ってかみしめ、追悼の辞といたします。
令和7年(2025年)8月6日 内閣総理大臣 石破茂
長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典 挨拶
本日ここに、被爆80年目の長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に当たり、内閣総理大臣として、犠牲となられた方々の御霊(みたま)に対し、謹んで哀悼の誠を捧(ささ)げますとともに、今なお後遺症に苦しんでおられる方々に、心からのお見舞いを申し上げます。
今から80年前の今日、この街は、1発の原子爆弾により、一瞬にして一木一草もない焦土と化しました。広島に投下されたものを上回る威力のプルトニウム型爆弾によって、7万人ともいわれる人々の命と未来が一瞬にして奪われ、その多くは一般市民の方々でした。惨状の中でなんとか一命をとりとめた方々も、長く健康被害に苦しまれてきました。
80年を経た現在、核軍縮を巡る国際社会の分断が深まり、極めて厳しい安全保障環境に直面しています。
しかし、いかに険しい状況にあろうとも、唯一の戦争被爆国として、非核三原則を堅持しつつ、「核戦争のない世界」、そして「核兵器のない世界」の実現に向けた国際社会の取組を主導していくことこそが我が国の使命であり、一歩一歩、着実に努力を積み重ねます。
この上で基礎となるのは、国際的な核軍縮・不拡散体制の中心となる核兵器不拡散条約(NPT)です。来年のNPT運用検討会議に向けて、我が国は、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づき、核兵器保有国と非保有国の双方に対し、対話と協調の精神を最大限に発揮をし、一致団結して取り組むよう粘り強く呼びかけるとともに、現実的かつ実践的な取組を進めます。
被爆の実相を伝えることは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として極めて重要です。世界中の指導者や未来のリーダーに長崎・広島への訪問を呼びかけ、多くの方々が来訪されました。
昨年、長年にわたり核兵器の廃絶や被爆の実相に対する理解の促進に取り組んでこられた日本原水爆被害者団体協議会がノーベル平和賞という栄誉ある賞を受賞されたことは、誠に意義深く、心より敬意を表します。
私は内閣総理大臣着任後、先の大戦において多くの命が失われた硫黄島、沖縄のひめゆり平和祈念資料館、被爆地となった広島を訪れ、本日、ここ長崎に参りました。80年前、この国でこの地で何が起きたのか。戦争の実態と悲惨さ、原子爆弾の被害の過酷さを、決して風化させることなく、記憶として継承していかなければなりません。被爆の実相の正確な理解を、世代と国をこえて、一層促進していく決意であります。
高齢化の進む被爆者の方々に対し、今後とも、保健、医療、福祉にわたる総合的な援護施策を進めてまいります。原爆症の認定について、一日も早く結果をお知らせできるよう、できる限り迅速な審査を行うよう努めてまいります。
被爆体験者の方々についても、昨年12月から、幅広い一般的な疾病について被爆者と同等の医療費助成を開始をしており、引き続き着実に実施してまいります。
先ほど、80年の時空を超え二口揃(そろ)ったアンジェラスの鐘が、ここ平和公園の長崎の鐘とともに、かつてと同じ音色を奏でました。
ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ。
長崎医科大学で被爆された故・永井隆博士が残された言葉であります。長崎と広島で起きた惨禍を2度と繰り返してはなりません。
天を指す右手は原爆を示し、水平に伸ばした左手で平和を祈り、静かに閉じた瞼(まぶた)に犠牲者への追悼の想いが込められた、この平和祈念像の前で、今改めてお誓いを申し上げます。私たちはこれからも、「核戦争のない世界」、そして「核兵器のない世界」の実現と恒久平和の実現に向けて力を尽くします。原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊安らかならんこと、併せてご遺族、被爆者の皆様並びに参列者、長崎市民の皆様方のご平安を祈念して、私の挨拶といたします。
令和7年(2025年)8月9日 内閣総理大臣 石破茂
(以上)
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