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“進化した「自由で開かれたインド太平洋」” 高市総理が発表 装備品供与など具体案盛り込む(2026/5/2)

  • 日本の防衛

2026-5-7 11:32

 外務省は令和8(2026)年5月2日(土)、高市早苗(たかいち・さなえ)総理大臣がベトナム・ハノイのベトナム国家大学で行った外交政策スピーチにあわせ、“進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」”に関する文書を公表した。

 同ビジョンは、2016年に安倍政権が打ち出したFOIPの中核的理念を堅持しつつ、AI・データ時代の到来、グローバルサウスの台頭、地政学的競争の激化といった国際情勢の変化を踏まえて内容を刷新したもの。エネルギー・重要物資のサプライチェーン強靱化、海底ケーブルや5Gネットワークなどのインフラ整備、OSA(政府安全保障能力強化支援:フィリピン、ジブチへの沿岸監視レーダーシステム供与、バングラデシュ、フィジー、インドネシアへの警備艇供与、マレーシア、スリランカ、トンガへのUAV供与)や防衛装備移転を通じた域内諸国の安全保障能力向上など、経済・外交・安全保障を一体的に推進する具体的な取り組みを盛り込んだ内容となっている。

 以下に公表された全篇(概要)を転載する。また、FOIPの進化などについて語った高市総理の外交政策スピーチを転載する。

進化した「自由で開かれたインド太平洋」Free and Open Indo-Pacific ~共に、強く豊かに~(概要)

出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)
出典:進化した「自由で開かれたインド太平洋」– 共に、強く豊かに –(概要)

高市総理による外交政策スピーチ(2026年5月2日、於:ベトナム国家大学ハノイ校)

1 冒頭

 ベトナム国家大学の学生の皆様、教職員の皆様、チュン外務大臣、ズイ・ベトナム国家大学ハノイ校総長を始め、ご来賓の皆様、こんにちは。

 日本国内閣総理大臣の高市早苗です。

 ハノイを再び訪れることができました。6年前、総務大臣として訪問した時も大歓迎頂きました。故郷に戻ってきたような気持ちです。

 次にまたベトナムを訪れる機会があれば、遙か太平洋を臨む「世界遺産ホイアン」もぜひ訪れたい。かつての日本人町の面影を巡りたいんです。旧市街にある「日本橋」は、我が国が協力し、2年前にその修復が完了しました。400年を越える時を刻んできたその橋は、日本とベトナムの長年にわたる交流を物語るものです。

 400年以上前、南シナ海から台湾海峡、そして東シナ海へと、日本人とベトナム人はダイナミックに交易をしていました。「自由な海」、「開かれた海」の恩恵を、共に享受してきました。

 私たちほど、その価値を理解しているパートナーはいない。その想いが、2013年、政権発足最初の外遊先として、安倍晋三総理をベトナムへといざなった。そう考える時、私もまた、早くベトナムを訪問したい。就任以来、そう考えてました。

 そして本日、長きにわたる両国の交流の歴史を、次の時代へと繋ぎ、一層発展させていく。その大きな役割を担う学生の皆様、ベトナムそしてアジアの未来を担う皆様の前で、こうしてお話できることを、誠に光栄に感じます。

 本題に入る前に簡単なクイズから始めたいと思います。皆様、これが何だか分かりますか?(スクリーン上で AirPods とニンテンドースイッチ2の写真を見せながら)

 学生の皆様はわかりますね。そう、若者に大人気の「Apple の AirPods(エアポッズ)」、そして日本が誇る「ニンテンドースイッチ2(ツー)」です。

 10年前、「ベトナム製」といえば衣料品でしたが、今や、様々なグローバル企業がベトナムに進出し、若者文化を支えるガジェットの多くがベトナムで製造されています。

 そして、こうした電子製品の多くに、日本の先端技術がコアパーツとして、組み込まれています。

 ベトナムの製造業は今や、グローバル市場全体へのサプライヤーとして、日本経済とも切っても切れない関係となっています。

 ここハノイからほど近い、3つの「タンロン工業団地」においても、日本企業全205社が入居し、約10万人が働き、日本の製造企業の国際的なサプライチェーンの重要な拠点となっています。

 例えば、キヤノンは、ベトナムや日本をはじめとしたアジアから調達した部品を使って、世界のプリンターの4台に1台をベトナムで製造し、世界中に出荷しています。

 本日は、このような勢いと希望に溢れた国、ベトナムと日本との「包括的戦略的パートナーシップ」の未来、そして、その先にある、進化した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」やASEANでの実践について、お話ししたいと思います。

2 日越協力の未来

 まず、「日本とベトナムの協力の未来」について。

 せっかくですから、視点をはるか高く持って、地上100kmから拡がる「宇宙」から話を始めたいと思います。

 先月、米国の「アルテミス2」が月を周回し、人類最遠の飛行記録を約半世紀ぶりに更新したことはご存じかと思います。

 この「アルテミス計画」の下、日本は米国とも協力しつつ、人類を乗せて月面を自由に走る与圧ローバーの開発を進めています。

 中国やロシアも月面探査の計画を有しており、世界は新たな宇宙開発時代に入りつつあります。

 こうした中、この3月、ハノイのホアラック・ハイテクパークに、日本のODAによって整備された「ベトナム宇宙センター」がオープンしました。このセンターは、ベトナムの宇宙科学開発を支える拠点であり、そのオープンは、2006年以来、20年に亘って地道に積み上げられてきた「日越宇宙協力」の一つの到達点でもあります。

 宇宙から得られる衛星データの活用によって、海洋を含むベトナム全土における災害予測、気候変動対策を通じ、ベトナムの一人一人の皆様の安全な生活に大きく貢献することが期待されます。

 ベトナムにとって初の自国所有の人工衛星となる、地球観測衛星「LOTUSat-1」は、日本企業が製造を受注しています。これも、日本からのODAで支援しています。

 更に夢は広がります。宇宙を活用した課題解決、そして宇宙そのものの開発。どちらも、無限の可能性が広がっています。両国が手を取り合って、宇宙開発をリードしていく、そんなワクワクするような未来が見えませんか。

 日本の「漫画・アニメ」は、ベトナムでも人気だと聞いています。宇宙飛行士として月面探査を目指す兄弟を描いた作品、「宇宙兄弟」で、主人公・南波ムッタの恩師、シャロン博士は、こう言ってムッタの背中を押します。「迷ったときはね、『どっちが楽しいか』で決めなさい」。日本とベトナムの若者達が、ワクワクするような楽しい未来を共に目指す姿を願ってやみません。

 さて、このような「最先端技術の分野での協力」は、「宇宙」にとどまりません。

 日本とベトナムは、どちらもコメを主食とする文化ですが、「産業のコメ」と呼ばれる「半導体」においても、産業高度人材の協力が進んでいます。

 ここ「ベトナム国家大学」の傘下にある「日越大学」では、昨年新たに「半導体チップ技術学部」が開設されました。ベトナムの産業高度化に貢献するとともに、日本の半導体サプライチェーンの強靱化の布石としての役割も大きく期待されています。

 日越協力の象徴である「日越大学」が、半導体分野を始めとして、両国、さらにはインド太平洋地域に貢献する人材供給の拠点へと発展することを期待しています。

 「産業のコメ」だけでなく、「産業のビタミン」と言われる「レアアース」もベトナムには豊富に存在し、その戦略的重要性に注目が集まっています。

 日本は、サプライチェーン強靱化のために連携を進めていますが、中でもASEANは重要なパートナーです。日ベトナムの官民でも具体的な協力をしていきたいと考えています。

3 「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」

 視点が、「宇宙」から、地下に眠る「レアアース」まで下りてきたところで、今度は、地平線の向こうに視野を広げてみましょう。

 日本が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」、いわゆる「FOIP」についてです。

 今からちょうど10年前の2016年、ケニアを訪問した安倍総理は、日本外交のビジョンについて語りました。そこで安倍総理が述べたのは、太平洋とインド洋、そしてアジアとアフリカ、この2つの海と大陸を結ぶ広大な「インド太平洋地域」こそが、これからの国際社会の平和と繁栄の鍵であること、そして、この地域において「威圧からの自由」、「法の支配」、「市場経済」を守るために、日本は自らの役割を積極的に果たしていく、ということでした。

 この考え方は、安倍総理の演説以降、はっきりとした日本外交のビジョンとして関係者に広く共有されるようになりました。そして、日本のみならず、米国を始め、多くの国々の外交政策にもインパクトを与え、共鳴の輪が広がりました。

 ASEANも、2019年に「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」を採択し、インド太平洋地域に対するビジョンを打ち出しました。英語の略称をとってAOIPと呼ばれるこの構想は、日本の掲げるFOIPと、大切な「こころ」を共有しています。

 昨年10月、私はASEAN首脳とともに、FOIPとAOIPの相乗効果と更なる協力の促進を確認する共同声明を採択しました。これは、日ASEAN協力の重要な道しるべとなっています。

 FOIP提唱から10年。私たちを取り巻く環境は大きく変わりましたが、世界にインパクトを与えたFOIPの妥当性は揺らぎません。

 未来の国際社会の平和と安定の鍵を握るこの地域において、「自由」、「開放性」、「多様性」、「包摂性」、「法の支配」に基づく国際秩序を築くため、日本として果たすべき役割を変わりなく、いえ、今まで以上に主体的に果たしていく。そのような覚悟を新たにしています。

 その上で、「地政学的な競争の激化」、「加速度的な技術革新」、「グローバルサウスの台頭」といった「国際秩序の構造的な変化」、こうした新しい現実に適応していく必要があります。

 より具体的に言うと、この厳しい国際情勢の中で、域内の各国が、複雑に絡み合った「相互依存関係」の中で、自らの運命を自らの手で決めるために必要な「自律性」と「強靱性」を、「経済」、「社会」、「安全保障」、その全ての面で身につけていくことこそが、FOIPの実現のために欠かせない。そのように考えています。

 日本はそのために、FOIPを進化させ、3つの重点分野に取り組みます。

 第一に、エネルギー・重要物資のサプライチェーン強靱化を含む「AI・データ時代の経済エコシステムの構築」です。

 第二に、「官民一体での経済フロンティアの共創」と「ルールの共有」です。

 第三に、地域の平和と安定のための「安全保障分野での連携」の拡充です。

 日本は、まず、そのための自らの取組を加速させます。

 そして同時に、同志国と手を携えながら、域内の友人が必要とする協力を行っていく。そのことによって、日本、そして、ASEANを含むインド太平洋地域全体が、「共に、強く豊かになる」ことができると確信しています。

 いくつか例を挙げさせてください。

 例えば、現在も継続中のホルムズ海峡における危機は、まさに「FOIPの実現に向けた日本の覚悟」を試す出来事です。

 日本やベトナムを含むアジアの国々の多くは、ホルムズ海峡を通過する湾岸諸国の原油に大きく依存しています。東南アジアへの油の輸入が止まると、これを原料とする、ナフサを含む化学製品のアジア各国への輸出も止まってしまいます。

 経済活動の継続や医療分野で不可欠な石油製品の安定供給のために、日本とASEANを含む地域のサプライチェーンを共に強化しなければならない。

 そのような強い問題意識から、先般、アジアの首脳と緊急オンライン会談を行い、「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ」、通称、「パワー・アジア」を発表いたしました。ベトナムからも、フン首相に御出席いただきました。改めて御礼申し上げます。

 この新たなパートナーシップの下、日本は緊急対応として、「燃料などの調達に対するJBICやNEXI(ネクシー)による現地企業への金融支援」や、「JICAによるアジア各国政府に対する緊急円借款」を実施します。

 「パワー・アジア」の下の初の案件として、ニソン製油所の原油調達について、NEXI(ネクシー)を通じて支援する方向で一致しました。

 また、より中長期を見据えた構造的な対応として、日本の経験を活かし、「アジア地域全体での原油備蓄・放出システムの構築」や「省エネ化」に取り組むとともに、日本の技術を活用しながら、「バイオ燃料」、「次世代太陽光」、「原子力」、「LNG火力」などの新しいエネルギー源の開発・普及に取り組んでいきます。

 目の前の課題から未来への備えを共に進めていく、パートナーならではの取組です。しかし、日本とASEANが共に取り組まなければならない課題は、「エネルギー」だけに限りません。

 例えば、私たちの生活に欠かせない存在となりつつある、「AI」。激しさを増すAI・データ時代の競争を勝ち抜くことは、どの国にとっても至上命題でしょう。しかし、そのために必要となる膨大な「ケイサンシゲン」、「データ基盤」、「人材」、その全てを自国のみで確保することはもはや容易ではありません。日本は、この分野においても、ベトナムを始めとする同志国とともに歩んでいきたいのです。

 昨年10月に発表した「日ASEAN・AI共創イニシアティブ」。これを具体化し、アジアの多様な言語・文化を反映したAIモデルを目指しましょう。特に、「母国語AIや産業別基盤モデルの開発」、「高度AI人材の育成」、さらには、それらを支える「デジタル・インフラ整備」を、共に進めましょう。

 それには、大量のデータのやり取りに必要となる、「信頼できる通信インフラの建設」も急務です。

 日本は、その高い技術力と信用力を生かし、インド太平洋地域において、「海底ケーブル」、「オープンRAN」、「衛星通信」、「オール光ネットワーク」などのインフラ整備支援を推進します。これを、「FOIPデジタル回廊構想」と名付けたいと思います。

 地域を跨ぐサプライチェーンが複雑に絡み合ったインド太平洋において、持続的な経済成長の確保のためには、ルールに基づく経済秩序の維持・拡大が不可欠です。

 日本は、本年の議長国であるベトナムとともに、「CPTPPの拡充」を推進していきます。日本は具体的には、フィリピンやインドネシア、UAEといった、戦略的に重要な加入要請エコノミーのCPTPP加入プロセスの早期開始を目指します。

 「ルールのアップデート」も必要です。

 重要物資について特定国に過度に依存してしまうのは、不当に安価な供給が行われているからです。サプライチェーンを強靭化するためには、「価格」以外の要素を踏まえた「公平な競争条件の確保」が不可欠です。

 さらには、「電子商取引、サプライチェーン強靱化などの規律強化」や、「市場歪曲的慣行や経済的威圧への対応」を行っていきます。

 ここまで、ビジネスや経済開発の話ばかりしてきましたが、FOIPの実現のためには、「安全保障面での協力」も欠かせません。

 地域の平和と安定は経済的繁栄の大前提であり、地域のサプライチェーンは「シーレーンの安全で自由な航行」によって支えられています。

 FOIPの重要な要素である「海洋安全保障」。

 日本は、一貫して、東南アジア諸国の「海上法執行能力の強化」を支援してきました。ベトナムとの間でも、海上保安・漁業監視のために、2014年以降、「船舶を供与」してきており、今後、追加で建造予定です。海上保安庁による「能力向上支援」も着実に実施してきました。協力の種が育っています。

 南シナ海をはさんだフィリピンでも、我が国が供与した巡視船やレーダーが、シーレーンの安全を守る「目」となり「足」となっています。

 自由な海、開かれた海を守るために、日本はASEANの国々との協力を惜しみません。

 こうした支援は、2023年に創設した、各国の軍に対する直接的な支援を行う枠組み「政府安全保障能力強化支援(OSA)」によっても行われています。

 最初に選ばれたのは東南アジアのフィリピン、マレーシア。その後インドネシア、スリランカ、ジブチなどアジアからアフリカに至るまで、11か国16件の実績を積み重ねています。これからも、対象国や事業規模を拡大していきます。

 また、「安全保障分野におけるODA」の活用も強化し、港湾、空港など、同志国のインフラ整備や海上保安能力強化などに対する支援を拡充していきたいと考えています。

4 結語

 いかがでしょうか。宇宙から地上まで、そして地下深くまで、そして海に向かって、日本とベトナムとの間に、日本とASEANとの間に、あらゆるところに協力が広がっていること、そして、日本がFOIPのビジョンの下に、地域の友人の持つ潜在力をどのように解き放ち、育てようとしているか、お伝えできていれば、幸いです。

 ただ、何より重要なことは、この未来を実現するのは、他でもない皆様なのです。

 FOIPは、誰かに何かを押しつけるものではありません。様々な声を受入れ、時代の変化に対応しつつ、柔軟な形で発展してきました。皆様の声によって育てられ、進化する、これこそがFOIPの特徴です。

 日本には日本のFOIPがあり、ベトナムにはベトナムのFOIPがある。

 それでも、みんなでこの地域の平和と繁栄を目指し、共に手を携え、進んでいく。こうして、自律した、強靱な国々同士が協力をし、それぞれの平和と繁栄の基盤となる、「自由で開かれた」インド太平洋を創っていく。

 それが、10年目を迎えるFOIPが目指す姿です。

 今日の出会いが、若い世代の友人である皆様にとって、日本とベトナム、そしてインド太平洋地域の未来を考え、そこに御自身の将来のビジョンを重ねていく、そんなきっかけになることを心から祈念しています。

 御静聴ありがとうございました。【シン カム オン(ベトナム語で「ありがとう」)】

(了)

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