IHIが豪Inovor社と提携 日豪の海洋監視能力に貢献する小型衛星の実証に向け(10月7日)
- 日本の防衛
2025-10-10 13:55
株式会社IHIは令和7(2025)年10月7日(火)、小型衛星の実証に向けて豪州の衛星メーカーInovor社と連携することについて以下のように公表した。
小型衛星の実証に向けて豪州の衛星メーカーInovor社と連携 ~日豪の海洋監視能力向上に向けた共同研究を開始~
IHIは、オーストラリアのスタートアップ企業で小型衛星の開発・製造を手がけるInovor Technologies Pty Ltd(本社:オーストラリア、CEO:Matthew Tetlow、以下「Inovor」)、およびIHIグループの明星電気株式会社(本社:群馬県、代表取締役社長:夏明 正伸、以下「明星電気」)とともに、日豪両国の海域監視能力向上に貢献する小型衛星の技術実証に関する共同研究契約を締結しました。
本契約は、10月1日、豪州シドニーで開催された国際宇宙会議「IAC」(※1)にて3社による署名式を実施し、今後、日豪の海洋監視強化に貢献する小型衛星の技術実証に関する共同研究を進めていくことに合意したものです。
本プロジェクトにおいて、IHIはオーストラリア側との調整を担い、IHIグループの技術力を結集してプロジェクトの推進に取り組みます。Inovorはオーストラリア側のプロジェクト管理および衛星バス(※2)の開発・製造、ミッション機器(センサ)の搭載、衛星の試験を担当し、明星電気はミッション機器(センサ)の開発、製造を担います。また、株式会社IHIエアロスペース(本社:群馬県、代表取締役社長:並木 文春)の打上サービス提供についても検討を進めています。なお、本プロジェクトにおけるInovorの作業は、南オーストラリア州政府の基金(Economic Recovery Fund)を活用して実施されます。
本共同研究は、日豪両国政府間で近年強化が進む防衛・宇宙分野の協力関係を背景に、両国の海域監視分野における技術力強化を目指すとともに、日豪間の連携の強化にも貢献することを目指しています。
IHIは、「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、ものづくり技術を核としたエンジニアリング力を活かし、小型衛星コンステレーションの構築を推進しています。その一環として、2025年5月には合成開口レーダー(SAR)衛星の開発・運用を手掛けるフィンランドのICEYE Oyと、2025年9月には地球観測および情報収集・監視・偵察(ISR)衛星を開発・製造する英国のSurrey Satellite Technology Limited、また、熱赤外線(IR)センサを搭載した小型衛星の開発・運用を行う英国のGlobal Satellite Vu Ltdと、それぞれ衛星コンステの構築に向けた協力体制の構築に関する覚書を締結しました。
IHIが構想する小型衛星コンステレーションは、光学センサ、SAR、VHFデータ交換システム(VDES、次世代AIS)、電波収集(RF)、赤外線(IR)、ハイパースペクトル(高波長分解能)など、複数種類の衛星で構成される予定です。これにより、陸上や海上における状況の把握に役立つデータを取得し提供することが可能となります。
IHIは、これらの取り組みを通じて、日本国内のみならず、オーストラリアをはじめとする同盟国・同志国との協力関係の深化にも貢献していくことを目指していきます。
【共同研究契約(Joint Research Agreement)締結に関する各社コメント】
IHI 執行役員 航空・宇宙・防衛事業領域 副事業領域長 仲俣千由紀氏
この重要なプロジェクトにおいて、Inovorと提携できることを大変嬉しく思います。この提携により宇宙からの地球観測技術を向上させ、日本とオーストラリア双方における海域監視能力の強化に寄与することを目指します。また、この提携が防衛および宇宙分野での二国間関係をさらに深め、安全保障の強靭化に貢献できるものと確信しています。
Inovor CEO Matthew Tetlow 氏
この合意は、Inovorおよび南オーストラリアの成長する宇宙産業にとって画期的な出来事です。IHIおよび明星電気と密接に協力することで、私たちは単に海域監視用の新しい衛星を開発するだけでなく、技術革新を加速するとともに、Inovorおよび南オーストラリア州にとって新たな機会を創出する持続可能な国際的なパートナーシップを確立しています。この協力を可能にしてくれた南オーストラリア政府の経済回復基金の支援に心から感謝しています。
明星電気 代表取締役社長 夏明 正伸氏
今回のInovorとの合意は、これまでの研究開発の成果を実用的で高性能な衛星センサに応用する重要な機会となります。日本とオーストラリアの専門知識を組み合わせて、海域監視への貢献というグローバルな成果を達成するため、この衛星向けの新しいセンサの開発に取り組んでいきます。
【明星電気について】
明星電気は、1938年に設立し、気象・防災・宇宙など様々な観測分野において、多彩な製品やシステムを提供する企業です。明星電気はこれまでに、国内外の宇宙開発プロジェクトに参画し、3,000を超えるコンポーネントを開発、製造実績があります。宇宙開発の歴史とともに培ってきたノウハウと厳格な品質管理を通じ、信頼性の高い製品をこの先も提供し続けていきます。
https://www.meisei.co.jp/
【Inovorについて】
Inovorは、2012年に南豪州アデレードにて創業し、衛星ソリューション、ミッションサービス、先進宇宙技術等を提供する企業です。過去3年間、Inovorは豪州宇宙庁、南豪州政府、豪州国防省向けに衛星の設計、開発、製造、運用を行ってきました。IHIとの共同プロジェクトによる衛星の開発に加え、InovorはOPTUSコンソーシアムおよびDefence Trailblazerグループにも参加しており、さらに2つの衛星プロジェクトが進行中です。
https://www.inovor.com.au/
※1:IAC(International Astronautical Congress)(https://www.iac2025.org/)
1950年に始まった世界最大の宇宙関連会議。毎年秋季に開催し、世界の宇宙関係機関や企業、大学等の関係者が参加する。今年のIACは2025年9月29日から10月3日にシドニー国際コンベンションセンター(ICC Sydney)で開催された。
※2:衛星バス:通信、電源、姿勢制御など衛星の基本機能を担う共通プラットフォーム部分を指し、ミッション機器(観測装置など)を搭載するための基盤となる部分。
(以上)
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