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《レポート》令和7年度 防衛産業参入促進展(スタートアップ促進展)が東京・市ヶ谷で開催(12月1・2日)

  • 日本の防衛

2025-12-15 12:00

防衛産業に資する技術を持つ企業と防衛省や防衛関連企業とのマッチングを図る「防衛産業参入促進展」が、今年も防衛装備庁の主催で開催された。スタートアップ企業40社が東京・市ヶ谷に集まった。

 令和7(2025)年12月1日(月)と2日(火)、東京・市ヶ谷のグランドヒル市ヶ谷において「令和7年度 防衛産業参入促進展(スタートアップ促進展)」が開催された。

「防衛産業参入促進展」は防衛装備庁が主催するビジネス・マッチング・イベントで、毎年度多くて3回ほど開催される。優れた技術・製品・競争力を有する企業と、防衛省および防衛関連企業とが出会う機会を提供し、防衛装備のサプライチェーンの強靭化、民生先端技術の取り込み、防衛生産・技術基盤の強化などを狙うもの。今年度は12月の「スタートアップ促進展」と2月の「中小企業促進展」の2回が計画された。

展示会場風景 写真:編集部

 出展企業数は40社で、防衛以外の分野ですでに名の通った企業も散見された取材できた。
 いくつかのブース展示について、こちらにご紹介させていただく。また、記事の最後に、全出展社を一覧にしたので御覧いただきたい。

ブースと展示内容

株式会社 Synspective(東京都江東区)

 シンスペクティブは、合成開口レーダー(SAR)衛星の開発と運用、衛星データに基づく情報提供事業を手掛けるスタートアップ企業である。日本では、三菱電機の戦略的パートナーとして、安全保障用途での衛星画像販売に関する事業に携わっている。会場では小型SAR衛星StriX(ストリクス)の6分の1模型を展示し、その運用についてポスターで紹介した。

小型SAR衛星StriXの模型。7機の打上げに成功しており、2020年代後半までに30機体制での運用を目指す 写真:編集部
SAR衛星とAIを活用して、広大な海洋エリアにおける船舶や空港での航空機の動向をモニタリングする 写真:編集部

セレンディクス株式会社(兵庫県西宮市)

 建設用3Dプリンターと専用高流動モルタル(セメント)を用いて、短工程・低コストでの建築を実現したのがセレンディクス株式会社である。能登半島の地震の後、最初に復興住宅を完成させたことで知られ、ウクライナでの戦後復興施設の建設を計画している。同社が防衛分野に提案するのは、やはり同工法を用いた建築。かなり頑丈に作ることができ、前線拠点、野外防護施設、耐弾耐爆構造を迅速に成形が可能。シェルター(掩体壕)の提案も視野に入れている。

セレンディクス社の建設用3Dプリンターを用いてつくった、複雑な形状のモルタルの壺 写真:編集部
モルタルの柔らかさと固まりやすさを絶妙にコントロールし、紐づくりの土器のように家屋をつくる 写真:編集部

エスシイーシー・シープレックス株式会社(北海道函館市)

 エスイーシー・シープレックスは、耐圧防水樹脂「ジェラフィン」の製造とその応用製品を販売する会社。「ジェラフィン」は、水深1万mの水圧下でも海水を通さず、光や電波を透過し、電子部品を動作可能な状態に保つ、透明で高弾性のゲル状絶縁体。硬化時に容積収縮がほぼ生じない。船舶や洋上施設、航空機、道路、各種インフラの補修や密閉加工などに用いられており、防衛分野では、例えばUUV(無人潜水機)に用いれば運用水深と機能の拡大が見込める。

無色透明で、グミのような質感を持つジェラフィン。耐塩性・ガス密性・水密性にすぐれ、艦艇装備品の水密保護などにも用いられる 写真:編集部
ジェラフィンは、主剤と硬化剤を重量比1対1で混ぜてつくる 写真:編集部

エーアイシルク株式会社(宮城県仙台市)

 エーアイシルクは、導電性繊維製品「LEAD SKIN」を手掛けるスタートアップ企業。LEAD SKINは、導電性高分子をナイロンやシルクの繊維表面にコーティングした柔軟・軽量な素材で、民生分野では、心電計測用のウェアラブルデバイス、電気的筋肉刺激を利用したEMSトレーニングウェアなどに採用されている。防衛分野では隊員の生体情報モニタリングのほか、電波吸収特性を活かし、装備品や機体へのステルス性能向上を提案している。

展示されたLEAD SKIN(中央)と、LEAD SKINが採用された腹巻き型の電気的筋肉刺激ツール(右) 写真:編集部
ドローンなどの機体表面に貼れば、簡易なレーダー反射低減コーティングの役割を果たすという 写真:編集部

エアロセンス株式会社(東京都北区)

 エアロセンスは、自律型無人機によるセンシングやクラウドによるデータ処理・管理を組み合わせた、産業用ソリューションの開発・製造を行っている企業だ。同社の国産VTOL型ドローンであるエアロボウイングは、垂直離着陸が可能なため運用に際して滑走路を必要とせず、巡航速度は72km/hをほこる。また、LTE通信により長距離飛行にも対応可能なほか、優れた防塵防水性能により雨天時での運用も可能だ。同機は、もともとはインフラ点検や災害発生時の情報収集などにおいて活用されてきたが、防衛分野においても情報収集などで活躍が期待される。また、2025年度にはマレーシア向けにOSA(政府安全保障能力強化支援:日本の同志国の軍等に対して資機材供与、インフラ整備等を行うための無償資金協力)の枠組みで提供されており、海外への輸出等も実現するかもしれない。(稲葉義泰)

エアロセンスのVTOL型ドローンであるエアロボウイング。雨天時でも運用可能だ 写真:稲葉義泰
エアロセンスの展示ブース外観 写真:稲葉義泰

株式会社SolaNika(東京都渋谷区)

 SolaNikaは、2025年5月に設立されたばかりのまさにスタートアップ企業であり、ドローンに対するレーザー無線給電システムの研究開発・製造を行っている。これは、地上設置型のレーザー送電装置から、飛行中のドローンに装着した30cm角の受電パネル(薄膜軽量ソーラーパネル)にレーザーを照射して、ワイヤレスで機体に電力を供給するというもの。これまでは、長くとも数十分の飛行でバッテリー交換が必要とされてきたバッテリー駆動型のドローンだが、この技術が確立すれば、部品類の機械的故障などの要因を除けば理論上は無制限の連続飛行が可能となる。現在の給電出力は44Wだが、2026年度には500W級の出力を目指す計画で、伝送距離も現在は100mだが理論上は数kmまで対応することが可能だという。(稲葉義泰)

SolaNikaのブースで展示されていたドローン。機体下面に受電パネルがついている 写真:稲葉義泰
SolaNikaブースの外観 写真:稲葉義泰

Sakana AI 株式会社(東京都港区)

 Sakana AI(サカナエーアイ)は、生成AI領域における基盤モデルの開発で知られる日本のスタートアップ企業。会場では、独自技術で創り出すスマホの中で動作する小型AIがどんな可能性を持つかを展示した。
 例えばドローンに小型AIを搭載すれば、一般的な日本語による命令をドローンが解釈し、インターネットに繋がらない/繋ぎたくない環境下においても、その場その場で判断して任務を遂行できるようになるという。

展示パネルその1 AIをSNS等などのデータ分析に活用した場合 写真:編集部
展示パネルその2 AIをドローン制御に活用した場合 写真:編集部

※上記以外の出展ブースの紹介も、追加してまいります。

令和7年度 防衛産業参入促進展(スタートアップ促進展) 出展企業一覧(50音順)

※は、別の区分にも出展がある企業を示す。

無人機・自動化技術・制御システム

 AICE株式会社
 イームズロボティクス株式会社
 エアモビリティ株式会社
 エアロセンス株式会社
 株式会社NTT e-Drone Technology
 株式会社キビテク
 クラスターダイナミクス株式会社
 Sakana AI株式会社
 Terra Drone株式会社
 株式会社テラ・ラボ
 株式会社HoneyBee Tech
 ブルーイノベーション株式会社
 株式会社Prodrone

プラットフォーム・エネルギー

 AZAPA株式会社
 イーセップ株式会社
 株式会社インフォステラ
 大熊ダイヤモンドデバイス株式会社
 株式会社Sola Nika
 Letara株式会社

情報技術

 AICE株式会社
 株式会社Acompany
 Arrowheads株式会社
 コネクテックジャパン株式会社
 Sakana AI株式会社
 株式会社Scalar
 株式会社データグリッド
 株式会社HACARUS
 Vlightup株式会社
 株式会社Preferred Networks
 株式会社ベクトロジー
 株式会社LOZI

センシング・モニタリング

 株式会社AdvanSentinel
 株式会社Synspective
 株式会社SPLYZA
 株式会社スペースシフト
 株式会社Helios
 株式会社MizLinx

部素材・デバイス・製造技術

 エーアイシルク株式会社
 エスイーシーシープレックス株式会社
 コネクテックジャパン株式会社
 セレンディクス株式会社
 株式会社Magic Shields
 株式会社ラグレス

(以上)

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