《レポート》第1回ランドパワー・フォーラム・イン・ジャパン 東京・水道橋で開催
- 日本の防衛
2025-12-20 22:03
12月17日・18日、東京ドームシティで第1回「ランドパワー・フォーラム・イン・ジャパン」(LFJ)が開催されました。昨年までの「陸上自衛隊フォーラム」を大幅に拡充した国際イベントです。企業展示ブースには88社が出展しました。
産学官と同盟・同志国が知見を共有し、連携強化に資する
2025年12月17日(水)と18日(木)の2日間にわたり、東京都文京区にある東京ドームシティ プリズムホールにおいて「ランドパワー・フォーラム・イン・ジャパン」(LFJ)が開催された。これは、陸上自衛隊が主催する国際的なイベントで、「産・学・官及び同盟国・同志国との相互の知見を共有して、産・学・官の連携及び同盟国・同志国との連携強化に資する」ことを目的としている。


会場では、大きく分けて二つのイベントが開催された。一つは、メインステージで行われている基調講演やプレゼンテーションで、こちらは陸上幕僚監部、陸上自衛隊 教育訓練研究本部、陸上自衛隊OB、有識者、同盟国や同志国の現役軍人などが登壇した。もう一つが企業展示で、無人装備や人工知能(AI)をテーマに、国内外から88社(76ブース)もの企業が製品の展示を行った。本稿ではLFJの企業展示ブースで筆者が感じたことを書き連ねていこうと思う。
各種無人機を国内外メーカーがアピール
今回のイベントのテーマを考えれば当然であるが、会場では国内外の企業が各種無人装備をアピールしていた。陸上自衛隊では、従来の情報収集や偵察を目的とした小型無人機だけではなく、自爆型無人機や徘徊型弾薬、さらにラックから小型爆弾や補給物資などを投下することが出来る少し大型のマルチコプタータイプの無人機など、攻撃や補給任務に投入できる機体に関しても実証試験を含めた導入準備を進めている。
そうした状況の中で、日本国内からは福島県のイームズロボティクスや愛知県のプロドローンなどが、そうした幅広い任務に投入可能な自社製のマルチコプター型小型無人機を展示した。また、離島防衛の必要性などを踏まえ、長距離を飛行して遠方での情報収集を行う垂直離着陸可能な固定翼型無人機についても需要が増大しているなか、愛知県のテララボや東京都のエアロセンスなどは、ブースでの実機展示を通じてその性能をアピールしていた。

一方で、国外企業からはシールドAIが垂直離着陸型無人機のV-BATに関する展示を行っていたほか、アメリカの新興防衛企業であるアンドゥリル(Anduril)が、無人機対処(C-UAS)用のロードランナー(Roadrunner)や情報収集・攻撃用のアルティウス(Altius)などについて、それぞれパネル展示を行っていた。
なかでも興味深かったのは、エアバス・ヘリコプターズのブースで紹介されていたVSR700だ。VSR700はヘリコプタータイプの無人航空機で、情報収集や物資輸送任務、さらにソノブイ投下能力を付与して対潜作戦などへの投入など、これまでも幅広い運用方法が展示会等の機会を通じて示されてきた。しかし、今回は陸上自衛隊への提案を意識してか、機関砲やミサイルを搭載することによる地上目標への攻撃能力をアピールしていた。

担当者によると、これはあくまでも社内での将来構想のひとつということだが、同機はフランス海軍および陸軍での運用が見込まれており、もともとはフランス陸軍を意識した話だったのかもしれない。
陸上自衛隊では、現在運用している対戦車ヘリコプターのAH-1Sおよび戦闘ヘリコプターのAH-64Dを退役させ、これを無人航空機と武装型の多用途ヘリコプターで置き換えることとしており、この点に関してエアバス・ヘリコプターズの今後の動向が注目される。
SHIELD構想を意識した指揮統制システムも
一方で、こうした無人機そのものだけではなく、それを運用するための指揮統制システムに関しても、自社システムの売り込みをかけている企業が見られた。
たとえば、先述したアンドゥリルでは、各種無人アセットやセンサーが捉えた情報をリアルタイムで統合し、有人・無人アセットの協調的な運用を可能にするシステム「ラティス」(Latice)を自社製無人アセット運用の中核に据えている。オープンアーキテクチャを採用しているため、他社製の無人アセットであってもこれに組み込むことが可能で、すでに海上自衛隊ではこのラティスを用いた指揮統制システムのあり方に関する実証を進めている。
一方で、アメリカの大手防衛関連企業であるアメンタム(Amentum)は、同社が開発を進めている指揮統制システム「メッシュランナー」(MeshRunner)をブースで紹介していた。
メッシュランナーは、各種の無人航空機、無人車両、有人アセット、現場の兵士、そして後方にある司令部をすべてネットワークで連接するというもので、これにより戦場の可視化が加速することになるという。

たとえば、現場の兵士が電波操作式の無人地上車両で敵情を偵察中に丘の向こう側を見ようとしたとする。しかし、当然そこは電波の見通し線外、つまり死角になってしまうため、操縦が利かなくなってしまう。そこで、上空を飛んでいる無人航空機に通信を中継してもらうことで、UGVを継続して操縦することが出来る。
さらに、通信状況や利用可能な帯域に制約が生じてしまった場合、すべての無人アセットからの情報をリアルタイムに受け取ることが出来なくなる。そうした場合には、AIによりその状況下で最も重要と思われるアセットとの通信にリソースを集中することで、戦場の様子を継続して共有することが可能となる。現在、アメンタムではイギリス陸軍と協力してメッシュランナーの運用試験を実施しており、今後はこれを多国間の枠組みに広げていくことを計画しているようだ。
これらの指揮統制システムは、いずれも防衛省が令和8年度防衛予算の概算要求に盛り込んだ新しい沿岸域防衛構想である「SHIELD」に関連するものである。SHIELDは、陸海空にまたがって運用される各種無人アセットを一体的に運用し、侵攻してくる敵を撃破しようというもので、安価な無人アセットにより敵の高価な有人アセットを撃破することによるコスト面での非対称性を敵に対して強要するものだ。
この構想のカギとなるのは、いかにして各種無人アセットを一体的に運用するかということで、そのためには高度な指揮統制システムが必要となる。そこで、各社はこのSHIELD構想に照準を定め、日本に対して売り込みをかけてきているわけだ。
陸上自衛隊の新型装甲車を意識した話もチラホラと
ところで、今回開催されたLFJのテーマは「各種無人装備とAI」であったが、じつは企業展示ブースではそれにとらわれない製品紹介も多々見られた。たとえば、オーストラリアのムーグ(MOOG)は、各種機関砲やミサイル、センサーなどを自在に搭載可能な無人砲塔の「RIwP」(Reconfigurable Integrated-weapons Platform:再構成可能な統合武器プラットフォーム)や「フレキシブルミッションプラットフォーム」などを展示していた。
また、国内代理店を通してではあるが、ラインメタル社製の対空機関砲であるスカイレンジャー30/35もパネル展示されており、このうち35ミリ機関砲を装備するスカイレンジャー35は、小型無人機はもちろん巡航ミサイルやヘリコプター、戦闘機まで対応可能な高性能な防空システムとなっている。ウクライナ戦争を通して、陸上自衛隊では対空機関砲の再評価が進んでおり、とくに高射特科部隊が装備する87式自走高射機関砲の後継についても、その重要性が認識されてきているという。
じつはこれら二つの展示を紹介したのは、筆者が無作為に選んだためではない。それぞれのブースで、陸上自衛隊の新型装輪装甲車であるパトリアAMVの名前が聞かれたためである。パトリアAMVは、フィンランドの防衛関連企業であるパトリアが開発・製造する装輪装甲車で、陸上自衛隊では96式装輪装甲車の後継として、2025年から順次部隊配備が開始されている。
そして、このパトリアAMVに搭載する武器システムとして、上記各社は自衛隊や日本製鋼所(パトリアAMVの日本におけるライセンス生産担当企業)などとの協議を行っているという。もしかすると、陸上自衛隊においてパトリアAMVのさらなる派生型を目にする機会が訪れるかもしれない。
(以上)
展示企業一覧
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| 連番 | 企業名 | 主要展示内容 |
|---|---|---|
| 1 | 株式会社IHI/株式会社IHIジェットサービス | 無人機、AI、CBRN |
| 2 | 株式会社IHIエアロスペース | 固体ロケットモーター事業と技術 |
| 3 | アルテアエンジニアリング株式会社 | AI関連ツール |
| 4 | イームズロボティクス株式会社 | 支援型ドローン及び多用途ドローン |
| 5 | 池上通信機株式会社 | 無人機、AI関連 |
| 6 | 株式会社石川エナジーリサーチ | 無人航空機、無人機用エンジン、CBRN |
| 7 | 株式会社石森製作所 | 防衛装備用プレス品 |
| 8 | 株式会社岩谷技研 | 気球 |
| 9 | 株式会社イングスシナノ | 実装加工技術、貼り合せ加工技術 |
| 10 | 株式会社インターマーケット | VR戦闘、警備、射撃 訓練シミュレーター |
| 11 | Vantiq株式会社 | 複数の無人機制御とAI連携 |
| 12 | 株式会社AirKamuy | 固定翼無人機(安価・大量生産・消耗許容) |
| 13 | エアバス・ヘリコプターズ・ジャパン株式会社 | 無人機、有人機の連携 |
| 14 | 株式会社エアロジーラボ | 無人機、ロボティクス、AI関連 |
| 15 | エアロセンス株式会社 | 無人機、eVTOL、巡視・監視・物資輸送 |
| 16 | 英国等企業グループ | ラムジェット弾、高速艇、無人水中探査機 |
| 17 | ST Engineering | AI関連、デジタル化、次世代迫撃砲 |
| 18 | ESRIジャパン株式会社 | 地理空間デジタルツインプラットフォーム |
| 19 | 株式会社FLE | 無人機、無人機探知機、コンポーネント等 |
| 20 | エプソン販売株式会社 | 機密文書自社内抹消「ペーパーラボ」 |
| 21 | 株式会社mmガード | 無人機、目標発見AI、SAR画像解析AI |
| 22 | 株式会社オフィールジャパン | 無人機および監視カメラ用赤外線レンズ |
| 23 | 株式会社海外物産 | 無人アセットおよびカウンターUAS |
| 24 | 兼松株式会社 | 無人標的機、無人機 |
| 25 | 川崎重工業株式会社(航空宇宙システムカンパニー) | 無人機、AI関連 |
| 26 | キーサイト・テクノロジー株式会社 | 無人機監視、AI関連 |
| 27 | 株式会社グローバルインテリジェンストレーディング(GIT) | 無人機、AIの紹介 |
| タウルス | 自律型ミッションシステム搭載巡航ミサイル | |
| アメンタム | モバイル統合ネットワークシステム | |
| 株式会社エヴァアビエーション | 無人機を含む装備品の後方支援システム | |
| ユーリカ | AI駆動型無人艇を含む戦闘支援艇シリーズ | |
| フライバイ | 多目的VTOL無人機 | |
| 28 | 株式会社ゲネシスコンマース | 高々度飛行可能UAV及び隊員携行型UAV |
| 29 | KELA株式会社 | AIをサイバー防御の一部として活用 |
| 30 | 株式会社構造計画研究所 | 無人機、AI等の防衛技術を支える解析技術 |
| 31 | 株式会社国際電気 | AI関連、無軌道走行標的 |
| 32 | コーンズテクノロジー | 無人機、AI関連、爆発物処理器材 |
| 33 | Sakana Al株式会社 | 無人機、インテリジェンス、サイバー |
| 34 | 三信電気株式会社 | 無線モバイル映像伝送装置 |
| 35 | JUIDA一般社団法人日本UAS産業振興協議会 | 有人機操縦シミュレータ及び各種無人機 |
| 36 | 新明和工業株式会社 | UAV、UGV用装置、無人機指揮所 |
| 37 | Swarmコンソーシアム | Swarm、AI関連、無人機、ロボット |
| クラスターダイナミクス株式会社 | ||
| 株式会社EfficiNetX | ||
| 株式会社キビテク | ||
| 株式会社HoneyBeeTech | ||
| 38 | 株式会社スギノマシン | ロボット+センシング、自動加工システム |
| 39 | 株式会社SUBARU | 無人機 |
| 40 | 住商エアロシステム株式会社 | AI及び無人機 |
| 41 | セントラル警備保障株式会社 | ドローン及びカウンタードローンシステム |
| 42 | 双日株式会社 | 偵察用無人機 |
| 43 | 株式会社ソリッド・ソリューションズ | 無人機、FCS/RWS、浄水器等 |
| 44 | 多摩川精機株式会社 | 無人機全般、eV-TOL、監視 |
| 45 | 帝国繊維株式会社 | フィジカルAI、無人機、歩行ロボット |
| 株式会社Highlanders | ||
| 46 | Terra Drone株式会社 | 無人機、AI関連 |
| 47 | 株式会社テラ・ラボ | ISR向け多目的長距離UAV-VTOL |
| 48 | 東京計器株式会社 | AI関連(スタンドアローンAIカメラ) |
| 49 | 東京計器アビエーション株式会社 | 不正ドローン検知システム |
| 株式会社アイランドシックス | ||
| 50 | 株式会社 東芝 | AI関連、装備移転候補アイテム |
| 51 | ニデック株式会社 | 無人機、補給・補修関連 |
| ニデックマシンツール株式会社 | ||
| 52 | 日本エヤークラフトサプライ株式会社 | 無人機、統制システム |
| 53 | 日本海洋株式会社 | 無人機(無線機含む)、米国採用C-UAS |
| 54 | 日本航空電子工業株式会社 | 無人機向け国産フライトコントローラーなど |
| 55 | 日本コントロールシステム株式会社 | ELINT向け電波収集・解析、AI関連 |
| 56 | 日本電気株式会社 | UGV、AI |
| 57 | 日本無線株式会社 | ドローンシミュレータ |
| 58 | ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社 | 可搬型4G/5G基地局 |
| 59 | ハイテクインター株式会社 | 指揮統制、戦術用ビデオエンコーダデコーダ |
| 60 | パナソニック コネクト株式会社 | 画像解析、ミリ波レーダー、低遅延映像伝送 |
| 61 | 株式会社パワート・ジャパン | 小型無人機用長寿命ガスタービン発電機 |
| 62 | 株式会社ビジョンセンシング | 国産赤外線カメラ |
| 63 | 株式会社日立製作所 | 生成AI、認知戦、車両・無人機、衛星画像 |
| 64 | 株式会社フォトロン | 撮影映像のAI認識・追跡、高速度カメラ |
| 65 | 富士通株式会社 | 指揮統制システム、無人機統制、AI関連 |
| 66 | 双葉電子工業株式会社 | 産業用ドローン、送信機 |
| 67 | 古河産業株式会社 | 重量物運搬ドローン |
| 68 | 株式会社Prodrone | 輸送用・耐スプーフィング・小型ドローン |
| 69 | 三菱重工業株式会社 航空機・飛昇体事業部 | 無人機など |
| 70 | 三菱重工業株式会社 特殊車両事業部 | 無人アセット関連 |
| 71 | 三菱商事株式会社 | 4足歩行型UGV |
| 72 | MOOG AUSTRALIA | 砲塔式兵器システム ミサイルシステム |
| 73 | BRAVE1 powered by 楽天 | ウクライナの無人機、AI関連の装備品 |
| 74 | 株式会社リアルビズ | 統合訓練シミュレーション、電子教育教材 |
| 75 | 一般財団法人リモート・センシング技術センター | AIによる衛星画像物体検出 |
| 76 | ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社 | 電波監視機材、ドローン対策ソリューション |
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