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【講演録】ノースロップ・グラマン 池田有紀美さん「安全保障を志す学生の皆さんへ」

  • 日本の防衛

2025-12-31 18:02

2025年9月6日、東京都江東区の大正記念館で「全国学生安全保障カンファレンス in 東京」が開かれました。同カンファレンスのスポンサーとして登壇した、米国ノースロップ・グラマン社の日本オフィス副代表 池田有紀美さんの講演をお届けします。

その③ 池田さんから学生の皆さんへのメッセージ

「Nothing is impossible with perseverance and right questions」集まった学生に語りかける池田さん 撮影:編集部

「失敗を恐れないでください」

稲葉義泰(以下、稲葉)
 最後にですね、本日、90人の学生さんがいらしているんですけれども、皆さん、広く言えば安全保障面での活躍を志望されていると思うんです。池田さんの経歴を踏まえて、何か一言メッセージを頂ければ幸いです。

池田有紀美(以下、池田)
 はい、ありがとうございます。そうですね、色々とお伝えしたいことはあるんですけれども、いくつかかいつまんで急いで喋りますね。

 まず、「失敗を恐れないでください」ということです。
 すっごく色々怖いと思うんですよね。なんか本当にこの道に絞って大丈夫なのかなとか、私に、僕にこれできるのかなとか、絶対思うと思うんですよね。多分それずっと思います。一生思います。どこに行っても思うと思います。

 でも、その失敗というのは、失敗しちゃった後に、失敗じゃなくすることができるんですよね。失敗しても。

 失敗を失敗のままにするか、それを糧にして次の成功につなげるかは自分次第なんです。なので、失敗を恐れないでほしい。どんどんチャレンジして成功に繋げていくんです。そこをまず伝えたいですね。

「自分のいる世界から出ていくこと」

池田
 あとは「out of box」。
 私は自分にいつも言い聞かせています。

 なにか、チャレンジしたことないことにチャレンジしてみてください。自分のいる世界だけじゃなくて、どんどん、どんどん、自分のいる世界から出ていくこと。
「out of box thinking」を私は心がけています。

 今だったらなんでもできます。本当に。
 自分のいる世界で自分だけが変なことを言っていて、「なんか、私、僕、間違ってるかな」じゃなくて、「たぶん僕が合ってるんじゃないかな」「周りの環境が違うのかな」とか思った時は、違う環境に行ってみればいいんです。
 そしたらもっと多角的に物事が高いところから見えて、自分が持ってる自分の立ち位置、ロケーションをもっと俯瞰的に見ることができると思います。

「自分を大事にしてください」

池田
 あとはですね「自分を大事にしてください」。
「Believe yourself」「Take care of yourself」ってことですね。

 国連を経験したから感じたことなんですが、日本にいると、やっぱり自分の意見より先に、周りの組織の、チームの外見を大事にする、空気を大事にする、和を大事にすると感じます。確かに、チームワークのために大事です。日本の持っている良い点だと思います。

 一方で、でも、それによって自分が考えていること、自分の意見を押し潰してほしくない。
 自分が考えること、というのがまず大事で、その次に他の人のこと、チームのことを考えるというぐらいで、日本人がグローバルに活躍していくにはちょうどいいと思います。

 そうじゃないと、実はグローバルな世界に行くと、周りに合わせてばっかりいると逆に自分が周りの波に押し流されてしまって、自分というものの価値がかき消されてなくなってしまう、そこは、本当に自分を大事にしていいんですよということをね、お伝えしたいですね。

「諦めたらそこで終わり」

池田
 あと3つだけいいですか。急いで。

「If you give up, it's over then.」
「諦めるとそこで終了ですよ」ということですね。ほんとにそうだと思っています。私にとってバイブル的な存在の作品の一つ、『SLAM DUNK』の安西先生の言葉です。

 私はいつもそれをずっと思ってきました。実際に諦めたくなるような場面に直面し、考えたり悩んだりしたことは何度もありました。でも、それでオッケーなんですよね。それが普通の人間の心理で。

 でも、じゃあ、それを本当にどう考えて整理していくか。諦めないために、どうしたらいいかという風に考えることができると思うので、なんか、ね、諦めかけたとしても、そこは踏ん張っていっていただきたいなと思いますね。

「その決断が良かったと思えるように行動する」

 これに関連して「決断する」というのは怖いと思うんです。私もじつは防衛省を辞めた時、官僚を辞めた時というのは将来が見えなくて怖かったですし、いろんな人に反対されました。確固とした肩書きが消えるわけですから、もったいないって言われましたし。

 でも、ある外務省の先輩に言われたんですね。「その時した決断が良かったかどうかは、その時はわからない」と。この方だけが、通り一辺倒でないお別れの挨拶をくださったので、よく覚えています。
「その決断が良かったと思えるように、その後の行動に意を用いることが大事で、それによって、した決断はいい決断になるかどうかが決まるって」。このはなむけの言葉は今でも、本当にずっと心に残っています。

「ものすごい忍耐強さと正しい質問があれば、どんなことも実現不可能じゃない」

 最後にどうしてもお伝えしたいことがあります。
 これは、うちの会社のバリューのひとつでもあって、私が入社した時に、私の上司の上司で国際ビジネスを統括しているバイスプレジデント、うちの会社のナンバーツーの人が電話をくれて、言ってくださった言葉です。

 彼が言ってくださったのは「Nothing is impossible with perseverance and right questions」ってことなんですけど、日本語で言うと「どんなことも実現不可能じゃない。あなたがものすごい忍耐強さと正しい質問を常に自分に問いかけられることができるなら」という言葉なんですね。

 それを聞いた時に、私はすっごく鳥肌が立って感動しちゃったんですね。なぜなら、やっぱ不可能なことってあるって、やっぱ思っちゃうんですね。人間だから怖いし、弱いし。

 でも、「何もかも不可能なんてことはないんだよ」と「自分がものすごい環境下でも我慢できて、正しい質問を問いかけて努力し続けることができるなら」という言葉を持っているって、すごくポジティブで。私はなんかその言葉に励まされて、この会社に入ってよかったなって1日目に思いました。
 なので、それを最後に皆さんに紹介したかったですね。

 いろんなことがあると思います。でも、ひとつひとつ大事に自分を大事にして、夢を諦めずに頑張っていっていただければなと思います。応援しています。

稲葉
 ありがとうございました。

東京都江東区、清澄庭園の大正記念館 撮影:編集部

(収録:令和7年9月6日 大正記念館)

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