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《連載》今知りたい機雷のいろは 〜第3回 古くて新しい武器

2026-10-1 12:00

ホルムズ海峡のニュースなどで注目を集める「機雷」。ウニのような姿を想像することは容易だが、その実態は秘密のベールに包まれている。この連載では機雷に関する基礎から、歴史、処理の仕方まで、多角的にお伝えしていく。福本 出/石川製作所 Izuru Fukumoto - Ishikawa Seisakusho, LTD.

硫黄島で行われた実機雷処分訓練で、沈底機雷の処理を行うアメリカ海軍および海兵隊の水中処分員(EOD) 写真:U.S. Navy

 シリーズ3回目となる今回は、機雷そのものについてもう少し詳しく解説してみたいと思います。というのも、一般的に理解されている“機雷”のイメージは新旧まぜこぜになっていて、間違いとは言い切れないものの、実に曖昧な報道が飛び交っているのが現状です。魚雷やミサイルと同じく、機雷の性能や形状も大きく変化しているにもかかわらず、機密の厚い壁に閉ざされていて、ネットで検索してもよくわからないのが機雷の実態です。近年急速に発達・普及してきた各種無人機との組み合わせは、その脅威をさらに高めています。

1942年5月に機雷敷設するフィンランドの機雷敷設艦ルオツィンサルミ。触発機雷がずらりと並ぶ 写真:SA-kuva

機雷の分類

 「機雷」と聞いてまず思い浮かべるトゲトゲの触角がついたウニのような球体が水中にワイヤーなどで繋ぎとめられているものでしょう。かつて日本が掃海艇を派遣した湾岸戦争後の「湾岸の夜明け作戦」で対処したイラクの機雷は、そのような形状でした。その機雷を何と呼ぶでしょうか。次のうちどれだと思いますか?
 「係維機雷」「長繋止機雷」「触発機雷」「触角機雷」「艦艇敷設機雷」「浅深度機雷」。
 答えは「全部正解」です。したがって、たとえば単に「係維機雷が敷設された」という情報だけでは、敷設形態が係維方式だということはわかっても、その機雷が船のどの特徴をとらえて、どのようにして発火する仕組みなのか、は説明されていないのです。
 このように、不明瞭・不十分な情報が拡散し、必要以上に恐れて通航を拒否するか、あるいは逆にあなどって通航することで触雷事故につながる危険性もあります。機雷を除去する「対機雷戦」においても、目の前の機雷原に敷設された機雷がどんなものなのかによって処分方法が異なるので、情報収集と分析は極めて重要になります。
 とはいえ、いわゆる“ならず者国家”のたぐいが使用する機雷は、往々にして安価でメンテナンスも簡単な旧式のものが多いと言えます。しかし一部には、ロシアや中国、北朝鮮などの機雷輸出国やブラックマーケットから入手した新型の可能性を警戒する必要があります。
 対機雷戦は、敷設されている機雷がどのようなものかを知ることが最も重要であり、その意味で事前の情報戦から始まると言っても過言ではありません。

機雷の種類 図:海上自衛隊

主な機雷の種類

 主な機雷を概観してみましょう。前項と矛盾するようですが、様々な形状や機能があるものは専門家に任せておいて、ざっくり理解するならば「沈底機雷」と「係維機雷」になります。

沈底機雷

 ナマコのように海底に横たわる機雷を沈底機雷と称します。艦艇から敷設される沈底機雷は炸薬量が多い大型で探知されにくい特殊な形状をしたものがよくみられます。一方航空機から敷設される機雷は爆弾形状で、着水時の衝撃を緩和するためのパラシュート付きが一般的です。このタイプの機雷は船が発する磁気や音響、水圧等を感知して発火する仕組みになっています。船の信号を捉えること、爆発の威力範囲から、比較的浅い海面で使用されます。

「MANTA」の名前で知られるMN103機雷。磁気や音響を感知する。イタリア製で各国に輸出されており、湾岸戦争ではイラク軍が使用した 写真:Jシップス編集部
ソ連製のUDM機雷。こちらも湾岸戦争で使用され、海上自衛隊のペルシャ湾派遣で処分されている。海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)の展示 写真:Jシップス編集部

係維機雷

 係維機雷は海底のアンカー(重り)に、浮力をもって海中に漂う機雷缶(火薬と発火機構がある缶体)が係維索(ワイヤーまたはチェーン)で繋ぎ止められた形状で、船底に接触するか、または船の発する磁気や音響に反応して爆発します。船底近くで爆発するので破壊力は甚大ですが、攻撃範囲が狭いので「点の機雷」とも言われ、海面に近いので発見されやすい短所があります。索長を調整すれば浅〜深々度まで、ほぼすべての海面をカバーして敷設することが可能です。
 また、係維機雷の仲間として、係維索を無くしたり短くして、船を感知すると飛び上がって船体を攻撃したり、追いかけたりする機雷もあります。これらの攻撃範囲は飛躍的に拡大され、かつ海底近くに潜むため存在が探知されにくい特徴があります。

海上自衛隊呉史料館(てつのくじら館)に展示されている55式2型機雷。海上自衛隊が使用していた触発式の係維機雷だ。 写真:Jシップス編集部
55式2型機雷のアンカー部分の断面。重りであり、ワイヤーの収納部となっている。ワイヤー長の調節のためか、数字が刻まれた歯車のような部品も見える 写真:Jシップス編集部

機雷の敷設手段

 先の大戦までの機雷は、艦艇または航空機から敷設されました。機雷原の構築には大量に敷設する必要があるため、機雷戦を重視する海軍は、専用の機雷敷設艦を保有し効率的に敷設します。米軍のように自国防御ではなく遠征目的で使用する軍は、爆撃機からの航空敷設を重視した装備を採用しています。
 無人機の発達により、近年は航空、水上、水中ドローンと機雷との組み合わせによる敷設が研究・実用化されつつあります。単体の場合はかつての自走機雷、複数の場合は機雷を搭載したミッションパッケージを水上・水中ドローンで目的地まで進出させて敷設するようなイメージです。
 UAV型の場合は、クワッドコプターで低高度敷設するものや、翼を装着した機雷を高高度の爆撃機から目的地まで高速で滑空させるスタンドオフタイプのものも研究されているようです。
 従来型の機雷敷設艦や爆撃機による敷設は、敷設の時期や位置が敵に暴露されやすいですが、UUVなど水中で隠密裡に敷設される場合は、その脅威度が数段増すことが考えられます。

日本海軍時代の三式二号航空機雷一型。航空機から投下して敷設するタイプの機雷 写真:Jシップス編集部
海上自衛隊の70式機雷。感応式の沈底機雷で航空機からの敷設も可能 写真:Jシップス編集部

機雷技術の応用

 例えば我が国の防衛法制で、機雷敷設は「武力の行使」と位置付けられるため、防衛出動が発令されて初めて敷設が可能となるので、所要の時期に敷設が間に合わず、あるいは妨害に阻まれるため、使用が極端に制限され、相手に対する心理的効果や海域のコントロールという機雷の特性を活かしきれていないと言えます。
 近年開発が進む遠隔管制技術で、機雷の活性化/非活性化を切り替えることにより、目艦艦艇が通峡する海峡などの隘路に有事以前から敷設することが可能となります。機雷のセンサーを活用し、平時には水中監視・情報収集を行い、有事にはその情報を目標識別などに活用し、機雷その他の手段で目標を阻止するような構想です。
 このような研究は各国で進められており、機雷を含めた水中防衛の技術でしのぎを削っています。

水中無線通信システムを扱うSUBNERO社による海中防衛ネットワークシステムのイメージ。機雷、音響センサー、水上艦艇、無人機などが一つのネットワークで繋がっている 図:SUBNERO

《連載》今知りたい機雷のいろは_〜 タイトル一覧 〜

第1回 機雷の基礎知識
第2回 機雷の発展と石川製作所
第3回 古くて新しい武器
第4回は12月初旬の公開予定です。おたのしみに!

福本 出/石川製作所Izuru Fukumoto - Ishikawa Seisakusho, LTD.

ふくもと・いづる 元掃海隊群司令、退役海将。株式会社石川製作所 東京研究所所長。防衛大学校 卒(応用化学)。機雷敷設艦航海長、掃海艇艇長、掃海隊司令、掃海隊群司令部掃海幕僚・幕僚長、呉地方総監部幕僚長、海上自衛隊幹部学校副校長、掃海隊群司令、海上自衛隊幹部学校長などを歴任。2014年8月に退官。

https://www.ishiss.co.jp/defense/

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