《連載》今知りたい機雷のいろは 〜第1回 機雷の基礎知識
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2026-6-1 12:00
ホルムズ海峡のニュースなどで注目を集める「機雷」。ウニのような姿を想像することは容易だが、その実態は秘密のベールに包まれている。この連載では機雷に関する基礎から、歴史、処理の仕方まで、多角的にお伝えしていく。

ホルムズ海峡で話題の機雷とは
現在、「機雷」に関心が集まっています。
日本ほか世界各国に中東の石油資源を運ぶタンカー等がホルムズ海峡を自由に通れなくなり、ガソリンのみならず「これも石油由来製品だったのか」と驚くような日用品にまで影響が出ています。ペルシャ湾を出入りする船舶の安全を脅かすのは、主として爆発物を抱いたUAV(無人航空機)と機雷だと報道されています。中東産の石油に大きく依存する我が国としては、かつて自衛隊として初の海外実任務となった掃海艇のペルシャ湾派遣の例もあるので、戦後処理段階になっても「我関せず」では国際社会から孤立する可能性もあるでしょう。
「機雷」というワードをよく耳にする昨今ですが、あらためて「機雷ってなぁに?」と問われたら、みなさんはどんなイメージを思い浮かべられるでしょうか。この連載では「機雷」に関連するトピックスを5回にわたり取りあげる予定です。
今回はまず「機雷」の基礎知識について解説します。
【機雷とは】史上初の自律兵器
水上艦艇や潜水艦を水中から攻撃する武器は“水雷”と呼ばれ、「爆雷」「魚雷」「機雷」の3種類があります。魚雷やアスロック(対潜ミサイル)を担当する艦艇幹部が「水雷長」と呼ばれるゆえんです。「機雷」はもとは“機械水雷”の略称ですが、いまでは「機雷」が正式名称とされています。
機雷とは、海底や水中に設置され、水上艦船や潜水艦が接触、または接近を感知したとき、自動または遠隔操作により爆発し、ターゲットを航行不能にするか、または撃沈する兵器を言います。機雷に関して取り決めた国際法1907年のハーグ条約では「自動触発海底水雷(Automatic Submarine Contact Mines)」と記されています。ロシア・ウクライナ戦争以来、人工知能を活用したUAVなどの無人機が注目されていますが、人間が直接操作をしないでも独立で攻撃を行う兵器という意味では、機雷は人類が初めて使用した“自律兵器(Autonomous Weapon)”と言えます。

【機雷の種類】貧者の戦略兵器
機雷にもいくつかの種類があり、その分類は敷設状態によるものと作動方式によるものがあります。
敷設状態で分類すれば、直接海底におく「沈底機雷」、海底に重り(アンカー)からワイヤーロープ等で繋止した作動部を船体付近に浮かべる「係維機雷(長繋止/短繋止)」、水面を漂流させる「浮遊機雷」があります。
作動方式では、船体に直接または電気的に触れて作動する「触発機雷」、船体が発する磁気・音・振動・水圧・微弱電流などのシグニチャー(情報)をセンサーで捉えて作動する「感応機雷」、さらにはシグニチャーで目覚めたら海底から目標の未来位置を予測追尾する「上昇追尾機雷」があります。
いずれの機雷にも、容易に発見・処分されないためのさまざまな妨害装置が施されているので、機雷を発見・処分するのは極めて困難であり、機雷がある海域を安全に通航するのはほぼ不可能と言って過言ではありません。船が通れなくなるイメージから「海を陸地化する兵器」と呼ばれることもあります。一撃で船を撃沈する恐ろしさと対処の難しさゆえに相手国に与える心理的効果は核兵器並みに絶大です。このため、核兵器ほど高価ではなく、弱小国でも保有可能なので「貧者/弱者の戦略兵器」とも言われることもあります。

【危険海域】安全な航路のための尊い犠牲
海上保安庁が発行する日本周辺の海図には、かつて薄緑色に塗りつぶされた海域がありました。機雷掃海海域(危険海域)です。ホルムズ海峡どころか、戦後長いあいだ東京湾や伊勢湾、瀬戸内海や若狭湾など、いたるところの主要港湾航路に機雷危険海域があったのです。先の大戦で日本周辺には日米あわせて6万個あまりの機雷が敷設され、戦後も危険な状態で残っていました。それらの機雷が完全に除去され、港湾航路の安全宣言が出されたのは1972(昭和47年)5月のことでした。日本の海図から機雷掃海海域(危険海域)の表示が消えるまで、戦争が終わってからさらに27年の年月を要したのです。
この間、機雷除去に従事した78名の隊員が殉職しました。彼らの功績を後世につたえる顕彰碑建立に東奔西走したのは、航路啓開隊(掃海部隊)指揮官であった田村久三・元海軍大佐・海将(石川製作所初代東京研究所長)でした。吉田茂首相揮毫による顕彰碑は、海の守護神である金刀比羅宮(香川県琴平町)の神苑に建立されました。この碑の前で、例年旧海軍記念日に近い5月下旬に海上自衛隊主催の追悼式が挙行されています。追悼式には、ご遺族ほか、高松港に寄港した掃海艦艇隊員、海上保安庁関係者に加え、石川製作所東京研究所長ほか所員が参列しています。

次回予告
第2回 機雷の歴史 8月初旬の公開予定です。おたのしみに!
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