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《解説》陸自ヘリの代替候補か? エアバスの新型ドローン「SIRTAP」

  • 特集

2026-6-22 20:03

新しい戦い方として各種の軍用ドローンに注目が集まる中、エアバスは開発中の新型ドローン「SIRTAP」(サータップ)の記者説明会を開催しました。今年2月にスペインで実機を取材した、竹内修が解説します。竹内 修 TAKEUCHI Osamu

2026年2月に筆者がスペインで撮影したSIRTAP試作機。現在は最終組み立てが完了し、地上試験に駒を進めている 写真:竹内修

 2026年6月18日(木)にエアバスは、同社の防衛部門が開発している新型の無人航空機システム「SIRTAP」(サータップ)について、プログラム・ディレクターを務めるモデスト・レブエルタ氏によるメディア・ブリーフィングを行った。

 防衛省は、陸上自衛隊が運用しているOH-1観測ヘリ、AH-1S対戦車ヘリ、AH-64D戦闘ヘリの機能を無人航空機で代替する計画を進めている。レブエルタ氏は明言していないが、氏の来日はその計画にSIRTAPをアピールする目的があったものと見てよいだろう。

 2023年にスペイン国防省との契約に基づいて開発がスタートしたこのUAS(無人航空機システム)について、これまで日本のメディアではほとんど紹介されてこなかったように筆者は思う。そこでここからは簡単に概要を紹介しよう。

エアバス・SIRTAPプログラム・ディレクターを務めるモデスト・レブエルタ氏 写真:編集部

小柄な戦術UAS、SIRTAP

 SIRTAPは、全幅11.3メートル、全長7.3メートル、全高2.5メートルの無人航空機である。筆者は2026年2月にシンガポールでモックアップを、その後スペインで製造途中の実機を目にする機会を得たが、海上保安庁が運用し、海上自衛隊も導入を決めた「シーガーディアン」(全幅24メートル)などの「MALE」(中高度長時間滞空)に分類されるUASよりもずいぶん小柄だと感じた。レブエルタ氏もブリーフィングで、SIRATPがMALEではないと述べていることから、おそらく「戦術UAS」に分類されるものと思われる。

 戦術UAVは、MALEに比べれば、機体のサイズ故に航続距離は短く、ペイロード重量も小さい。しかしMALEに比べれば安価なので、各種ヘリコプターを更新するためにまとまった数を必要とする陸上自衛隊にとっては、MALEよりも適しているのかもしれない。

 動力にはガソリンエンジンを使用しており、シーガーディアンなどと同様、機体後部にプロペラを置く推進式を採用している。最大飛行時間は20時間以上、最大運用高度は2万フィート(約6100メートル)以上、最大速度は100ノット(時速185キロメートル)以上と発表されている。見通し線内の最大運用可能距離は200キロメートルだが、通信衛星を介した見通し線外での運用可能距離は2000キロメートルにまで拡大可能で、飛行性能、制御可能距離とも戦術UAVとしては高いレベルにあると言えよう。

2025年6月に撮影された、組み立て中のSIRTAP試作機 写真:Airbus Defence and Space SAS 2025

情報収集や偵察が主任務だが 爆弾搭載も可能

 最大ペイロード重量は180キログラムで、機首に装備されている光学/赤外線センサーや燃料を除けば、両翼下に合計130キログラムの搭載物を装着できる。想定主任務はISTAR(情報収集・監視・目標捕捉・偵察)だが、兵装搭載能力も備えている。

 筆者がスペインで目にした組み立てライン上のSIRTAP試作機には兵装搭載用のパイロンが設けられていなかったが、シンガポールエアショーで展示された実大モックアップには、両主翼下に4基の兵装搭載用パイロンが設けられていた。また、2025年にスペインで開催された展示会では、SIRTAPへの搭載を想定したAERTEC社製の滑空爆弾のモックアップが公開されており、レブエルタ氏はこのほかに対戦車ミサイルなどの搭載も検討していると述べている。

 小柄なSIRTAPに搭載可能な兵装は、AH-64Dの主兵装である「ヘルファイア」対戦車ミサイルに比べれば内蔵炸薬量は少ないと思われるが、味方の地上部隊や民間人に対する付帯的損害を抑えられる可能性も高く、AH-1SやAH-64Dを更新する近接航空支援機の兵装としてはむしろ適しているのかもしれない。

 エアバスではフェイズド・アレイ・レーダーの搭載や電子戦への活用も視野に入れており、今回のブリーフィングでは電子戦機としての可能性も示されていた。

SIRTAPへの搭載が想定されている、AERTEC社による滑空爆弾のモックアップ(写真:竹内修)

展開能力と即応性はMALEよりも高い?

 スペイン国防省が2023年に契約したSIRTAPは9式で、機体27機とGCS(地上管制ステーション)およびデータ端末9セットを受領することになる。つまり機体3機とGCS、地上データ端末各1基がSIRTAPの基本構成である。ちなみにエアバスでは、この基本構成は導入国の希望に応じて柔軟に変更する意向を示している。

 SIRTAPのGCSは、ISO規格の20フィートコンテナに収容されている。室内には3基のオペレーター・コンソールが設けられ、このうち2基が操縦を担当するオペレーター用だ。1基のGCSで最大2機のSIRTAPを制御できるので、帰還する機体と任務を引き継ぐ機体の交替はスムーズである。SIRTAPは、ISTAR任務で求められるシームレスな運用に適していると言えるだろう。

 SIRTAPは垂直離着陸能力を持たないが、離陸に要する滑走距離は350メートル以下で、陸上自衛隊が求めるであろうSTOL(短距離離着陸)性能は十分充たしているものと思われる。

 また、機体は分解が可能だ。これらをGCSコンテナとともに輸送機に搭載し、前線の飛行場まで運んで運用することを想定している。機体の組み立て時間については、スペインの工場内に「30分以内で運用可能」というスローガンが書かれた、おそらくスペイン国防省が作成したであろうパネルが展示されていた。

 SIRTAPは、MALEに分類されるUASに比べれば、航続距離・時間は短いが、機動展開能力や即応性は高いのではないかと感じた。そして、陸上自衛隊が運用しているヘリコプターの後継機としては、MALEよりも適しているのではないかとも感じた。

スペイン国防省と契約した2023年に制作されたSIRTAPのインフォグラフ 画像:2023 Airbus Defence SAU 2023

艦上型SIRTAPも計画中

 現在スペイン国防省との契約に基づいて開発されているSIRTAPは、同国陸軍と空軍での使用が予定されている。一方、スペイン海軍も強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」での運用可能性を探るための契約を、エアバスおよび同艦を建造した造船企業ナバンティアとの間で締結している。

「ファン・カルロス1世」はカタパルトこそ持たないものの、艦首にはスキージャンプ、艦内には航空機の格納庫や整備場が設けられており、艦上機の運用を想定して設計されている。2026年6月現在、垂直離着陸機ハリアーⅡのスペイン仕様であるEAV-8を搭載・運用しているが、EAV-8は老朽化が進んでいる。スペイン海軍にはSTOVL(短距離離陸垂直着陸)戦闘機であるF-35Bを導入する計画もないことから、近い将来に搭載する固定翼機が無くなってしまうため、SIRTAPに白羽の矢が立ったというわけだ。

 今回のブリーフィングでレブエルタ氏は、SIRTAP試作機の地上走行試験の動画を公開し、2026年中に初飛行が行われる見通しを明らかにした。艦上型はシミュレーションを含めた検討は順調に進んでいるものの、降着装置の強化や海軍の戦闘システムとの連接などが必要になるため、「ファン・カルロス1世」での艦上試験や洋上飛行試験は、もう少し先になりそうだ。

強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」甲板上に配置されたSIRTAPモックアップ 写真:Airbus Defence and Space SAU 2025

日本におけるSIRTAPの展望

 実のところ日本でも、全通甲板を持つ護衛艦いずも型とひゅうが型に固定翼UASを搭載すべきとの声が根強く存在している。それが実現するのなら、SIRTAPは有力な選択肢の一つになり得る。

 海上自衛隊は容易に引火するガソリンの艦上使用を忌避しており、前述したようにSIRTAPはガソリンエンジンを使用している。しかし、シンガポールとセビリアでSIRTAPの説明をしてくれたエアバスのフェルディナンド・シリア氏は、ディーゼルエンジンへの換装も検討していると述べており、実現すれば海上自衛隊への採用の可能性も、より高いものになってくると考えられる。

 SIRTAPが自衛隊に採用されるのかどうかは未知数だが、レブエルタ氏は、採用された暁には日本国内でのMRO(Maintenance, Repair & Overhaul、保守・整備、修理、オーバーホール)実施はもちろんのこと、日本製ペイロードの搭載を示唆している。どのような企業でMROを行い、どのようなペイロードの搭載を考えているのかは明かされなかったが、ペイロードを開発する日本企業との話し合いも、レブエルタ氏の来日の目的の一つであると明かしてくれた。

2026年6月10日、ブレーキとステアリングの試験を実施するSIRTAP試験機 写真:Airbus Defence and Space SAU 2026
竹内 修TAKEUCHI Osamu

軍事ジャーナリスト。海外の防衛装備展示会やメーカーなどへの取材に基づいた記事を、軍事専門誌のほか一般誌でも執筆。著書に『最先端未来兵器完全ファイル』、『軍用ドローン年鑑』、『全161か国 これが世界の陸軍力だ!』など。

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