岩屋外務大臣、国連本部で第1回FMCTフレンズ外相会合を開催 「核兵器のない世界」実現に向け(9月24日)
- 日本の防衛
2025-9-29 10:00
外務省は令和7(2025)年9月24日(水)、国連総会に出席するため米国・ニューヨークを訪問中の岩屋 毅(いわや・たけし)外務大臣が第1回核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT: Fissile Material Cut Off Treaty、 カットオフ条約)フレンズ外相会合を開催したことを発表した。
なお、FMCTフレンズの参加国は日本のほか、米国、英国、フランス、イタリア、オランダ、カナダ、豪州、ドイツ、ナイジェリア、フィリピン、ブラジルの12か国からなる。
外相会合の概要とFMCTフレンズ国間で採択された共同声明は以下のとおり。
第1回FMCTフレンズ外相会合
現地時間9月24日午後4時45分(日本時間同日午前5時45分)から約45分間、国連総会に出席するため米国・ニューヨークを訪問中の岩屋毅外務大臣は、第1回核兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)フレンズ外相会合を開催したところ、概要は以下のとおりです。
なお、我が国は、「核兵器のない世界」の実現に向けた現実的・実践的な取組の一つとしてFMCTを重視しています。2023年G7広島サミットにおいて発出した「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」において、FMCTへの政治的関心を再び集めることを全ての国に強く要請し、そのための取組の一環として、昨年、関係国と共に、「FMCTフレンズ」を立ち上げました。本会合は、「FMCTフレンズ」立ち上げ後の最初の外相会合となります。
1 岩屋外務大臣は、冒頭挨拶において、北朝鮮による核・ミサイル開発の一層の進展や一部の国による不透明で急速な核戦力の増強が続いていることを含め、現下の厳しく複雑な安全保障環境に言及しつつ、核兵器用核分裂性物質の生産禁止を通じて核兵器に量的制限をかけるFMCTの意義を訴えました。そして、国際的な核軍縮・不拡散体制への信頼を堅持し、対話と協調を通じて、政治的意志を同条約の即時交渉開始に結実させることを呼びかけました。
2 続いて、ペニー・ウォン豪外相、マリア・テレサ・ラザロ比外相、モハメド・アブバカル・ナイジェリア国防大臣、クリス・エルモア英国連担当大臣等、参加国代表(注)による発言が行われました。その後、中満泉国連事務次長兼軍縮担当上級代表が国連代表として挨拶を行いました。会合では、FMCTフレンズ国間で、共同声明が採択されました。
(注)米国はオブザーバーとして参加。
○ 関連リンク
▶石破総理大臣及び岩屋外務大臣の米国訪問(第80回国連総会等出席)
(以上)
(参考1)岩屋外務大臣の冒頭挨拶(和文)
第1回FMCTフレンズ外相会合
岩屋外務大臣冒頭挨拶
2025年9月24日
フレンズ各国の皆様、
FMCTフレンズ第1回外相会合にお集まりいただき、ありがとうございます。
現在、国際社会の分断と対立は深まり、我々は厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。また、多国間主義に基づく国際協調の枠組みへの信頼も揺らいでいます。
軍縮機関における議論が停滞する中、北朝鮮による核・ミサイル開発が一層進み、一部の国による不透明で急速な核戦力の増強が続いています。
我々が目指すFMCTは、核分裂性物質の生産禁止により核兵器に量的制限をかける枠組みとなるものです。 このアイデアは、1953年に当時のアイゼンハワー米大統領が国連で行った「平和のための原子力」演説に遡ります。冷戦期に東西間で何度か交渉開始が提案されたものの、実行に移されることはありませんでした。
90年代には、国連総会でFMCT決議が採択され、議論が活発化しました。しかし、御承知のとおり、 今日まで30年の間、実現には至っておりません。
本年は、人類初の核実験、そして広島・長崎への原爆投下から80年となります。外務大臣に就任して以来、私は、ノーベル平和賞を受賞された日本被団協を含む多くの被爆者の方々から、核軍縮を切望する声をお聞きしてきました。
被爆者の方々は、今日まで決して諦めることなく、核兵器のない世界への願いを繋いでこられました。 我々政治指導者が諦めてしまえば、国際的な核軍縮・不拡散体制への信頼は失われ、厳しい地政学的環境の中で軍拡競争に火が付きかねない危険な状況に直面してしまいます。 我々には、世界各国で平和を希求する多くの人々に対する責任があるのです。
そうした思いから、私は去る5月、NPT運用検討会議の準備委員会に出席し、「対話と協調の精神」に基づいた合意形成の努力を呼びかけました。
「今日世界が遭遇している不安と緊張の性質がいかなるものであろうとも、また、その原因がいかなるものであろうとも、国際連合の力によって平和的に処理し得ない問題はあり得ないと信じます。人類の生活が原子力時代にまで発達した現代において、自ら(みずから)破滅の道を辿ることの許されざることは、多言を要しないところであります。」
これは、私の地元、大分の先達である重光葵外務大臣が、1956年に国連総会で行った演説の一説です。
この国連本部は核軍縮・不拡散に向けた政治的意志で満ちています。今求められていることは、対話と協調を通じて、こうした意志をFMCTの即時交渉開始に結実させることです。
アイゼンハワー大統領の演説以来の冷戦期における模索を第1章、そして冷戦後、90年代の国連FMCT決議からの30年を第2章とするならば、FMCTフレンズは、ポスト冷戦期が終焉したとも言われる現在の局面にあって、新たな章を開く試みです。
我が国は、本日、ここにお集まりいただいているFMCTフレンズの皆様と協力しながら、即時交渉開始に向け着実に前に歩んでいく決意です。 この難局において、我々の先達たちの思いを受け継ぎ、新たな章を共に記していけることを楽しみにしています。
御清聴ありがとうございました。
(了)
(以上)
(参考2)共同声明(和文仮訳)
FMCTフレンズ共同閣僚声明
1. 我々FMCTフレンズは、核兵器その他の核爆発装置に用いられる核分裂性物質の生産を禁止する、無差別的、多国間、かつ実効的に検証可能な条約へのコミットメントを新たにするため、ここに集まった。
2. 広島及び長崎への原子爆弾投下から80年という節目を厳かに迎え、我々は「核兵器のない世界」という共通の目標に向けた揺るぎないコミットメントを再確認するとともに、かかる条約が核軍縮及び不拡散に向けた体系的かつ漸進的な努力への重要かつ実践的な貢献となることを強調する。
3. 我々は、かかる条約に対する政治的関心を維持・強化し、国際社会による支持を拡大することの重要性を強調する。この点に関し、我々は、意見交換や、一般への啓発、これまで蓄積された専門的知見や過去の取組を維持・共有することを通じて、パートナー国や関係国を関与していくことに全面的にコミットしている。
4. 我々は、共通の目標のために協働する用意があり、全ての国連加盟国に対し、核兵器その他の核爆発装置に用いられる核分裂性物質の生産を禁止する条約に関する交渉の促進を、優先事項として建設的かつ革新的な貢献を行うよう呼びかける。
5. 我々は、軍縮会議(CD)に対し、いかなる前提条件もなしに、CD/1299 及びそこに含まれるマンデートに基づき、直ちに交渉を開始するよう強く求める。我々は、その点について提起されてきた諸問題に留意し、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)ハイレベル専門家準備グループ及び政府専門家会合(GGE)の報告書を想起し、条約に関する意見の相違は交渉を通じて取り組み、解決されるべきであることを強調する。
6. 我々は、かかる条約を推進させるための実質的な提案及び、核兵器その他の核爆発装置に用いられる核分裂性物質の生産に関する自発的なモラトリアム、核分裂性物質生産施設の解体又は平和的利用への転換、民生用プルトニウム在庫の報告といったこれまでに取られてきた行動と努力を歓迎し、この観点から、我々は、まだそうした措置を執っていない関係国に対し、このような具体的な行動及び努力を行うよう呼びかける。
(了)
(以上)
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