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小泉防衛大臣が記者会見 補正予算案や熊対策について言及(11月28日)

  • 日本の防衛

2025-12-1 10:55

 令和7(2025)年11月28日(金)9時41分~10時00分、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は、防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。

 大臣からの発表事項はなく、以下のとおり記者との質疑応答が行われた。

記者との質疑応答

熊の捕獲支援などに関する秋田県への自衛隊派遣について

記者
 熊の捕獲支援などに関する秋田県への自衛隊派遣について伺います。県との協定に基づく活動期間は今月30日で終わりますが、活動は予定どおり終了しますでしょうか。延長する考えがあれば聞かせてください。

大臣
 防衛省・自衛隊は、秋田県からの要請を受けて、11月5日から熊被害防止のための箱わなの運搬等の活動を行ってまいりました。防衛省・自衛隊の本来任務は国防でありますから、無制限に熊対策を実施することはできないという前提の下で、当初から活動期間を11月末までとしておりました。秋田県ともこのような考え方は共有しており、限られた期間で役割を全うすべく当初から自治体と連携しながら活動を進め、各自治体から示されたニーズにお応えしたことから、漫然と期間を延長することはせず、11月末をもって活動を終了することといたしました。今後は、11月14日に政府としてとりまとめられたパッケージに基づく施策によって熊対策を実施していくこととなります。防衛省・自衛隊としても、自衛隊OB等に対する情報提供などを通じて、狩猟者の確保、こういったことも協力をしていければというふうに思っています。

韓国大使との面会について

記者
 韓国大使との面会について伺います。様々なレベルでの交流の中止などが相次ぐ中ですね、大臣として今日の面会はどのようなものにしたいか伺わせてください。

大臣
 今、地域の安全保障環境が厳しさと複雑さを増す中で、日韓、そして日米韓の連携がますます重要です。防衛省としては、大臣同士をはじめ多様なレベルでの意思疎通や、制度化された安全保障協力の枠組みを通じた協力、そして交流を継続して、日韓・日米韓の連携を維持・強化していきたいと考えています。その上で、本日、私はリ・ヒョク駐日韓国大使による表敬を受ける予定でありますが、地域情勢及び日韓・日米韓防衛協力について忌憚のない意見交換を実施をしたいと考えています。そして、私はアン長官ともお会いをマレーシアでしていますけれども、大使との間でも信頼関係をしっかりと構築をしたいというふうに考えています。

米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について

記者
 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画について伺います。大浦湾側での埋立て用の土砂投入について、改めて今回の作業の意義とともに、どのように地元の理解を得ていくか見解を伺います。

大臣
 普天間飛行場代替施設建設事業につきましては、所要の準備が整い次第、本日にも大浦湾側の埋立区域の一部の埋立てに着手する予定と承知をしています。世界で最も危険と言われる普天間飛行場が、固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。防衛省としては、引き続き、地元の皆様に丁寧な説明を行いながら、辺野古移設に向けた工事を着実に進めて、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現してまいりたいと思います。

2025年度補正予算案について

記者
 話題変わりまして、2025年度の補正予算案についてお伺いしたいと思います。大臣含めですね、高市政権は発足からですね、防衛費について、補正も合わせてGDP比の2%にする、年度内に2%にするという方針を説明されてきました。これまでGDP比というのは、23年度も24年度もですね、当初予算のみで計算してきています。今回、補正も合わせて2%にするというふうに、いわば計算方法を変えていますけれども、そういうふうに方法を変えてまで早期に防衛費を積み増すことの意義について、大臣としての考えを改めてお聞かせください。これが1点目です。もう1点目が、そのGDP比の計算するときの基準ですね。分母になるGDP費については、2022年度の実績見込みの560兆円という数字を防衛省は使ってきています。現行の計画を立てたときの名目の数字として使っていたわけですけれども、経済成長して24年度の名目では600兆円を超える数字が出ています。そうしますと、560兆円の基準で2%とするというのは少し経済の今の実態との乖離というのもあると思われるんですけども、大臣のお考えをお聞かせください。

大臣
 現時点において詳細は集計中ですが、まず申し上げておきたいのは、対GDP比2%水準を措置をするということを目的に、補正予算を合わせて計算する方法に変えたというわけではないということあります。一層急速に厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、現在の国家安全保障戦略等に記載している取組を可能な限り加速をさせることが必要です。このため、今般の補正予算において、今年度中に実施すべき緊要性のある事業を措置することにしました。令和7年度の補正予算案に計上した事業については、これも度々説明をしていますが、例えば空調設備の更新、そして整備、また隊舎・居室の個室化、こういったことの促進など、自衛隊の皆さんの生活環境の改善、そしてまた処遇の改善を含めて人的基盤の強化に係る経費。そして、ドローン対策や災害対策も強化が求められています。これも待ったなしでありますから、ドローン対処機材や災害対策器材の整備などの自衛隊の活動基盤の強化。そして自衛隊の装備品を製造する企業に対して、資金を早期に提供することによる納入の安定化や早期納入の確保などが含まれていて、これらはいずれも、今年度中に実施すべき緊要性のある事業だと考えています。これらが一定の額に達するものと見込まれることから、令和7年度当初予算・補正予算案を合計すると、防衛力整備計画の対象経費と、補完する取組に係る経費の合計額が11兆円程度となり、国家安全保障戦略の策定時、これは令和4年度でありますが、この令和4年度の名目GDPである560兆円を基準とする対GDP比2%水準についても、結果として達成することになるというふうに考えております。また、国家安保戦略に定める対GDP比2%水準は、現行の三文書を策定した令和4年12月当時における、我が国を取り巻く安全保障環境を踏まえて、必要な防衛力の内容を積み上げた上で導き出したものでありますから、経済力との比較に基づいて数字ありきで防衛力整備を行っているというものではありません。こういったことも御理解いただけるように、これから国会でも議論になるかもしれませんし、丁寧な説明を心掛けたいというふうに思います。

宇宙領域の防衛能力強化を目指した宇宙領域防衛指針について

記者
 2026年度の予算概算要求におきまして、陸・海・空自衛隊のうちの航空自衛隊を、仮称ですが、航空宇宙自衛隊へと改編することを盛り込んでいますが、これに絡んでお聞きします。防衛省さんは今年7月に、宇宙領域の防衛能力強化を目指した宇宙領域防衛指針を新たに策定されたと思います。2025年度中に体制を拡充し、宇宙作戦団が編成されるということですが、隊員は約700人とされています。700人が多いか少ないかはミッションによるものと思われ、私には正直分かりませんが、改めてどのようなことを行っていくのか、目的も含めて教えてください。また課題がありましたら、それもあわせてお願いします。

大臣
 まず宇宙空間は、作戦上の指揮統制・情報収集に活用されるだけではなくて、通信・観測・測位等の面で国民生活の基盤そのものであります。宇宙空間の安定的利用が阻害された場合、防衛省・自衛隊の任務遂行に支障が生じるだけではなく、我が国の経済・社会活動が害されるおそれがあります。宇宙空間を監視をして、その安定的利用を確保するため、令和2年度に初めてとなる宇宙領域専門部隊として約20名規模の宇宙作戦隊を新編しました。これは令和2年度であります。そして、その翌年の令和3年度には、これを宇宙作戦群として格上げをした上で、部隊規模を段階的に拡大して、宇宙防衛能力の強化に取り組んでまいりました。そして現在、この宇宙作戦群は約310名の規模になっていて、地上レーダーを用いて宇宙空間を監視するなどの任務を遂行しています。そして令和8年度には、宇宙空間から監視を行うSDA衛星の打ち上げや、宇宙物体の位置を高精度で計測するレーザー測距装置の運用開始が予定をされています。こうした宇宙領域における能力強化に対応するため、令和7年度中には、現在の宇宙作戦群の体制を強化して、約670名規模の宇宙作戦団に格上げをいたします。さらにですね、令和8年度には宇宙作戦団を約880名規模の宇宙作戦集団に格上げをいたします。この部隊規模は、諸外国の宇宙関連部隊とも遜色のないものであります。例えばですね、これはイギリス軍のXによる情報でありますけれども、イギリスの宇宙コマンドは約600名。そしてフランスの宇宙司令部。これは報道情報によれば、約500名だということでありますから、この日本の規模は一つの参考としてはそういった外国の状況も紹介をしておきたいと思います。また、航空自衛隊そのもの、これは今御指摘されたとおり、航空宇宙自衛隊に改編する予定であります。宇宙領域の重要性が益々高まる一方で、他国の衛星を妨害、そして無力化する技術開発が活発化する中で、防衛省・自衛隊は、宇宙空間の安定的利用の確保のための能力を、引き続き強化し、国民の命と平和な暮らしを守るという任務を果たしていく考えであります。なお、私も近々、来週になると思いますが、府中基地に所在をする宇宙作戦群を視察したいと考えています。

補正予算案の経済的な波及効果について

記者
 補正予算案の関連でお伺いします。先だって決まった経済対策の柱の一つに防衛力強化が初めて盛り込まれました。大臣は経済的な波及効果をどのように見込んでいらっしゃいますでしょうか。

大臣
 中身については、先ほど日経さんの質問に対してもお答えをしましたので、繰り返すことはいたしませんが、我が国の防衛産業は裾野の広い産業構造であり、また防衛予算の約8割から9割は国内向けの支出であります。こうしたことから、今般の補正予算を含む防衛支出は、一般的に、中小企業を含む幅広い国内産業や地域経済の活性化にも資するものであると考えています。さらに、先日の高市総理からの答弁でもあったように、自衛官の処遇改善による所得増加に伴って、消費の活性化による需要の拡大も見込まれます。自衛官やその御家族も一人一人国民であり、消費者であります。我が国経済の成長には安定した安全保障環境の存在が不可欠であって、今回の補正予算によってこうした取組を強化することを通じて、我が国経済が成長できる環境を作ることが重要だと考えています。

熊対策の活動実績と大臣の所感について

記者
 熊の関連で質問いたします。約1か月間の活動に対しては、地元の自治体や住民からも感謝の声が上がっているところかと思います。活動実績とそれに対する大臣の所感を教えてください。また、今回の活動で見えた課題等あれば教えてください。

大臣
 防衛省・自衛隊としては、昨日までに秋田県内の11の市町村において、延べ815人の隊員によって、箱わなの運搬を137件、駆除後のクマの運搬を9件、駆除後のクマの埋設のための掘削を1件、そしてドローン等による情報収集を行ったというふうに承知をしています。これらの活動は、地元自治体や猟友会の皆様と連携をしながら進めてまいりました。各自治体から示されたニーズにお応えできたというふうに考えています。自衛隊のこうした活動に対しては、今触れていただいたように秋田県の御地元からは感謝の声が上がっていて、また秋田県の知事からも記者会見において、また他の首長さんも含めてですね、自衛隊が来てくれたことで住民に安心感が提供されたといった思いを述べていただいたというふうに承知しています。また、今回の活動に当たっては、自治体と緊密に連携するとともに、地元の猟友会の皆さんから助言を受けながら隊員の安全確保に万全を期すなど、十分な準備の下活動に臨んだことで、特段の課題が生じることもなく、無事に活動を終了できる見込みであります。このように自衛隊の活動が滞りなく実施できたことは、地元自治体や猟友会の皆様が、部隊と緊密に連携していただいたお陰だと考えています。また、県からの要請を受けて速やかに活動を開始し、その後も士気高く任務を遂行した隊員には、防衛大臣として敬意を表したいと思います。今後は、11月14日に政府としてまとめたパッケージに基づく施策によって、熊対策を実施していくことになると考えております。防衛省・自衛隊としては、自衛隊OB等に対する情報提供を通じて、狩猟者の確保の観点から協力をしてまいります。秋田県の皆さんには、大変お世話になりまして、そしてまた温かい言葉を隊員にもかけていただきましたことを大臣としても御礼申し上げます。ありがとうございました。

熊対策の他自治体への派遣の検討について

記者
 熊対策の関連でお伺いします。大臣、先ほどから政府のパッケージ、今後対応していくとおっしゃられました。秋田県での対応は終了になりますが、他の自治体では、まだ被害が相次いでいる自治体もあります。現時点で、他の自治体からの要請があったりですね、派遣を検討しているということ、何かあったりしますでしょうか。教えてください。

大臣
 現時点では、更なる自衛隊の派遣ということを考えているわけではありません。やはり、自衛隊の本来任務、これは国防でありますから、そのための訓練などの練度、そういったものが下がるということは避けなければならない安全保障環境だと思っています。そういった中で、昨日は全国の隊友会の理事長も含めてOB団体ともお会いをさせていただきましたが、今、私も部隊挨拶の際に、自衛隊の協力関係団体の方との面会をさせていただく機会が多くあります。そういったときも通じてですね、今後OBの皆さんで、こういった狩猟免許の取得ですとか、こういった広報、周知、そういったことは自衛隊としてやっていければというふうに思っています。

自衛隊OBへの働きかけについて

記者
 熊対策の関係で補足してお尋ねいたします。大臣、先ほどから自衛隊OBへの情報提供をこれから進めていくとおっしゃられていらっしゃいますが、御存知のように自衛隊の退職者、年齢層が20代から60代まで非常に幅が広く、抱えている事情もそれぞれ異なる、体力も異なると思いますが、どのような働きかけがですね、効果的になるとお考えでしょうか。また、このハンターのですね、例えば、今手当のもっと充実した方が良いのではないかというふうな声も聞かれますけれども、そういったことも含めてですね、後押しになるための具体的な支援策についてはどのように検討されていかれるお考えでしょうか。教えてください。

大臣
 正に、今御質問いただいたことは政府全体として、パッケージの中で、それぞれの省庁が、司司で実行策を講じていく段階だというふうに思います。我々、防衛省・自衛隊としては、やはりOBの皆さんをしっかりと情報が届くように、我々としては後押しの協力をさせていただくということだと思います。やはりその思いはですね、最近ですと、例えば、大分での大規模な火災。こういったことでも、消火活動なども派遣要請が出ていますからしています。そして一方でですね、私もこの前、先島諸島に行ったように、24時間365日、安全保障環境が極めて厳しい中で、本来任務である国防の任務を遂行している。そういった自衛隊員のことを考えれば、やはり国防という任務にいかに専念できるか。こういった環境整備をしなければならないというふうに思っていますので、今回の様々な熊ですとか、他の災害対応なども通じてですね、自衛隊の活動の本来任務は国防であるんだということも、あわせて国民の皆さんにも御理解をいただけるような発信も必要だろうというふうにも考えていますし、そもそもですね、これは最近のネット番組とかでも、度々申し上げていることですけれども、自衛隊、そもそも採用に大変苦労していますので、活動を、これから国防という任務に専念できる。そして国民の命と平和な暮らしを、また領土・領海・領空を守り抜ける。それだけの、やはり人的基盤の強化、採用も含めてですね、これをやっていかなきゃいけないっていうのが、やはりものすごく大きな課題なのではないでしょうか。ですから、そういった面も、正に広報、発信、採用に対する取組。しっかりと強化をしていきたいと思います。

(以上)

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