海上幕僚長が記者会見 インド太平洋海軍大学セミナー実施を発表、原潜や情報作戦集団にも言及(1月27日)
- 日本の防衛
2026-1-30 11:15
防衛省 海上幕僚監部は令和8(2026)年1月27日(火)、同日13時30分~13時52分に防衛省A棟10階会見室において行われた齋藤 聡(さいとう・あきら)海上幕僚長の記者会見の要旨を以下のように発表した。
海幕長 定例記者会見 要旨
海上幕僚長 :
本日、私から1件、海軍大学セミナーについて発表します。
来週2月2日から6日までの間、海上自衛隊の防衛交流の一環として、第29回インド太平洋海軍大学セミナーを実施します。本セミナーは、各国海軍からの参加者が各セッションや、研修等の交流を通じて相互理解を促進し、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与することを目的としております。
海軍大学セミナーへの参加を表明している23か国から、海軍大学の教官や研究者等が参加し、「若手士官へのリーダーシップ教育」、「無人機の活用」、「HA/DRにおける海軍の役割や多国間の協働」等の各議題についてセッションを行うほか、防衛省等の部隊研修、都内の文化研修が予定されています。
そのほか、細部は配布した資料のとおりですが、2月2日に実施される開会式及び市ヶ谷地区の研修は、報道公開を予定しております。私の方からは以上です。
インド太平洋海軍大学セミナーの意義とこれまでの成果
記者 :
冒頭でありましたインド太平洋海軍大学セミナーの実施について、今年で29回目ということですが、これまで継続されてきた成果等、また今回の開催の意義についてご説明お願いいたします。
海上幕僚長 :
インド太平洋海軍大学セミナーは、1998年から海上自衛隊幹部学校が毎年開催する国際セミナーです。本セミナーの参加者は、先ほど申しましたとおり、各国海軍大学の教官、研究者のほか、海軍本部・部隊等の指揮官、幕僚等の要職を務める大佐級の軍人です。
昨年10月には、大尉から少佐を対象としたWPNS STEP西太平洋海軍シンポジウム、次世代海軍士官短期交流プログラムを、昨年6月には、少尉から中尉を対象としたシップライダープログラムをそれぞれ実施しました。初級幹部から高級幹部までの階層において各国海軍軍人と交流することによって、相互理解の増進及び信頼関係の構築に寄与していると考えております。
また、シップライダープログラムやSTEPの参加者が、後々、本セミナーに参加したという実績もあると聞いております。海上自衛隊が主体となって多国間の人的交流の機会を作為し、信頼関係を増進していくことは、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与するものであり、大変意義のある取組であると認識しています。以上です。
中国の海洋進出を踏まえた太平洋側防衛体制の考え方
記者 :
太平洋側の防衛体制の強化について伺います。去年の6月に中国空母の「遼寧」が初めて第2列島線の東側に行くことが確認されたりして、中国の海洋進出が非常に進んできてますが、そうした中で、海自さんとしてはどのように太平洋側の防衛体制の強化を取り組むのか、まず教えてください。
海上幕僚長 :
今おっしゃったとおり、中国海軍の空母が太平洋に展開していることが確認されたり、他のビークルについても活動が活発化、海域の広がりや練度の向上を踏まえれば、中国軍が空母の運用能力や、遠方の海域における作戦遂行能力の向上を企図しているものとみられます。
同じような質問を先週も受けましたので、同じように回答させていただいたところであります。このような現状を踏まえれば、引き続き、隙のない警戒監視体制を堅持するために、太平洋において、警戒監視、情報収集に必要な能力を整備していく必要があると考えております。
原子力潜水艦の能力と将来検討における位置づけ
記者 :
能力強化の一環として、おそらく今年の夏までにまとまる3文書の中で、原子力潜水艦のお話が出てくる可能性があると思うんですが、もちろん海幕長が原潜の導入についてここで言えないのはわかっているので、あともう一つ、原潜では人手不足とか金の問題とかもあって海幕長が答えられないことはわかっているのですが、純粋に海上自衛隊のスペシャリストとして、通常潜水艦じゃなくて原潜を持つことによって、遠洋展開能力も増して、長期間長距離潜航できるようになるとか、やっぱり中国軍と対峙したときに、これまでの通常潜水艦と違って、原潜を持つことで中国の海軍の動きを追尾・追跡、警戒監視する能力が高まるというふうに、有用性は防衛力を純粋に見てあるというふうにお考えですか。
海上幕僚長 :
今言われたとおり、原子力潜水艦の能力というのは非常に高いものがあって、長く潜り続けているとかスピードが速いとか、戦術的な格段の能力向上が見込まれます。大臣も言われておりますとおり、次世代の潜水艦については幅広いオプションがある中でしっかりと検討していくということでしたので、我々は水上ビークルを持っている、潜水艦も含めたビークルを持っている専門家として、その議論に積極的に関与できるように、あらゆるケースを考えながらその議論に臨んでいきたいと思っております。
中国の島嶼拠点整備と日本の戦史との関係認識
記者 :
あとですね、中国政府が戦時中の日本と同じように、島しょ国、島しょ部にいろいろ滑走路を造ったりとか、拠点を置いているっていうのを学んでいて、南シナ海における西太平洋ですね、例えばサモアとかですね、ミクロネシアとかいろんなところに今、中国がお金を出して拠点作りをしていて、それが日本の旧海軍を真似てやってるっていうようなことが言われてまして、アメリカの議会報告書、シンクタンクの報告書で。なぜかというと、アメリカが本土から来るのを、拠点があれば遮れるっていうことがあって、海幕長は、そうした中国の動向は日本の歴史を学んでいるっていう感じはしますか。
海上幕僚長 :
中国のことですので、どう考えてるかということは、細部はなかなか測りきれないところがありますけども、戦略的に考えてそしてそれをどう行動に移すか、そしてどうやっていくかということは、それぞれの海軍もしっかりと考えているし、中国海軍についても今記者さんが言われるような傾向があるとするのであれば、考えてるのかなというように、今のお話を聞いて思いました。
記者 :
逆に、海自さんとしてそれをまた全部わかった上で対処してほしいなと思いまして。
海上幕僚長 :
わかりました。いろいろなケース等もありますし、省内での今後の防衛力整備についても様々な観点から検討しておりますので、そういった中で積極的に議論に参画したいと思っております。
海上自衛隊員の投票権確保と海外派遣部隊での対応
記者 :
本日、衆院選が公示されました。戦後最短の期間の選挙戦となります。自衛隊では、海外に展開している部隊に投票箱を届けるなど、投票する権利を確保する取り組みが行われていると聞いています。海洋にいることが多い海上自衛隊員が投票しやすくするためにしている工夫、あるいは海自ならではの投票する上での大変さがあれば教えてください。
海上幕僚長 :
私たち自衛官は、自衛官になる際に「政治的な活動に関与せず」ということを謳っております。唯一我々が政治にタッチできるところというのは、この投票だと思っておりますので、昔からしっかりと投票できるように私自身も指導されてきました。そして、機会があるたびに投票に行くように指導しているところであります。
そういった中で今回、海外に展開している部隊については、非常に短期間での選挙の準備もあって厳しい状況とも聞いていますが、そういった中でも各隊員が投票できるように、今の細部がどのようになっているかは、現在のところ認識しておりませんが、通常こういった選挙がある場合においては、選挙管理事務所から投票用紙をもらって、そして担当の者が飛行機に乗って部隊が展開しているところに行って、例えばジブチに行って展開している航空部隊とか艦艇の部隊に渡して、そこで投票を行わせて、それを回収してまた飛行機で帰ってきて、選挙管理事務所に届けるというオペレーションを行っております。
今回も海賊対処部隊での活動をしている航空部隊、艦艇部隊、あるいは南極観測船「しらせ」、TLAMの試験等でサンディエゴに行っている「ちょうかい」などがそれに該当すると思っておりますので、しっかりと投票できるように準備をしていきたいと思っております。
一方で、「しらせ」につきましては、FAXで投票ができる仕組みがあると聞いております。遠洋漁業に従事している漁船や「しらせ」については、FAX投票できると聞いております。一方で、海上自衛隊のビークル(艦艇)については(FAX投票が)できないと聞いておりますので、先ほど言ったような使送が必要になってくると思います。しっかりと投票できるように準備したいと思います。
情報作戦集団新編の狙いと情報戦対応能力の強化
記者 :
本年度に予定されている組織改編の関連でお尋ねします。情報作戦集団、前回の会見でも新たに作る組織としてご紹介いただいたのですが、これはいわゆる認知領域を含む情報戦への対応を強化していくというのが大きなねらいだと聞いております。事柄の性質上、機微な情報を扱うこともあるのでなかなか具体的な回答は難しいのかもしれませんが、その上で海上自衛隊において、今の体制で情報戦への対応にどのような課題があって、今回、このタイミングでの部隊改編を進めることになったのか、ご説明できる部分があればお願いしたいのですが。
海上幕僚長 :
今回、情報戦の基幹部隊の新編を行います。その理由について3つ挙げたいと思います。そういったものを踏まえて、認知領域への対応を含む能力を強化していきたいと考えております。
まず1つは体制についてです。これまで艦隊情報群、海洋業務対潜支援群及びシステム通信隊群、これらの部隊が情報に関連する任務をそれぞれ遂行しておりますが、指揮系統を一本化し、一貫性をもって継続的かつ効果的に遂行できる体制にすることが求められております。そのために情報作戦集団を新編するというのが、体制の側面についての理由です。
2つ目は情報の把握についてです。現代の戦闘においては陸海空の従来領域に加え、サイバー、宇宙、電磁波、認知領域の情報を横断的に把握する必要がありますが、情報の収集、処理及び配布を行う部隊が、取り扱う情報毎に部隊が分かれ、部隊の指揮系統が異なるため、情報の領域横断的な組み合わせ、任務遂行に必要な情報として分析評価し、各部隊に配布する体制をとることが求められています。
したがって、作戦面では領域横断と言っていたのですが、情報の分野では領域横断ができていなかったので、そういったものをしっかりとやるためにやるというのが2つ目の理由です。
3つ目は、我々の部隊以外との関連の部隊との連携についての観点からです。米海軍や情報本部などの情報関連部隊、機関と同等の階級を持つ指揮官が自衛艦隊司令官となっておりますので、海上自衛隊においては情報に関する任務を遂行する専門の部隊の長が、関連部隊との直接のカウンターパートとなっておらず、情報について対等な立場で連携する必要があると考えております。
これらの課題を解決し、しっかりと情報戦に対応するために今回情報作戦集団を新編するというものです。
記者 :
この新しくできる情報作戦集団というのは、今まで既存の部隊に散らばっていた方々を当然ながら集めることになるかと思うんですが、さらに情報戦の重要性を考えますと、人数的にも増強するような形にされるのでしょうか。なかなか海自の人繰りが厳しい中で、難しいのかなと思ったりするのですが、その辺りいかがでしょうか。
海上幕僚長 :
言われたとおり、様々なところに所属している部隊を、先ほど申しましたとおり一本化して、一貫性をもって組織を再編して作り直すというのが今回の大きな改編ですけども、人数自体はですね、大きくは変わらないと認識しております。
したがって、そういった改変を行うことによって、効率的に作業ができるようなことを工夫したいと思っております。一方で言われてるとおり、新たな領域等のことを考えると、人がたくさんいる方が適当だと思っておりますので、そこをどうやるかっていうのは今後しっかりと検討していきたいと思っております。
海軍大学セミナーの今回の特徴と無人機活用構想
記者 :
質問2点ございまして、1点目は先ほどお話にありました第29回インド太平洋海軍大学セミナーの話なんですけれども、今回第29回目ということで長くこのセミナーを開催されてきたと思うんですけれども、今回の特徴、いわゆる今まで前年までやってきたものと比較したときに、どのような特徴が今回のセミナーに関してあるのかというのが1点目。
2点目なんですけれども、このセミナーの議題にもありますとおり、無人機の活用というのが海軍の将来の海上戦力の重要な課題になると思うんですけれども、例えば今の3文書の中で海上自衛隊にもその無人機、無人アセットを専属に扱う部隊の創設という話が盛り込まれてると思うんですけれども、現時点で海上自衛隊の中での無人アセットの活用について組織の新編や、あるいは今考えているその導入するべきアセットの課題だとか、あと運用構想の部分の話をですね、今「SHIELD」構想とかそういう新しい構想がいろいろ出てますけれども、そういったものとあわせて今どのように海上自衛隊の中の、今言えない部分というのは大きいと思うんですけれども、ご検討されているのかということについてお話を伺えればと思います。
海上幕僚長 :
まず、最初の海軍大学セミナーについて、今回の特徴的なものとしましては、従来から参加してもらった中国については、今回も招待したが参加しないという状況になっております。理由については、明らかにはなっておりません。
ロシアについては、ウクライナ侵略を受け、それ以降招待しておりませんので、今回も招待しておりません。
議題については先ほど言った三つですけども、より各国の代表者が議論に参加しやすいように捻出した議題であります。従来から、各国の士官が参加しやすいような内容を工夫して選んでおりますので、すいません、今回これが特別新しいというものではありませんけども、皆さんが参加しやすい内容にしております。
幹部学校長から報告を受けておりますが、担当の方から確認してまた細部は伝えますが、一部のセッションでは、同時通訳機を用いて議論を活発化するために、どうしても英語に自信がない人も中にはいるために、何かそういったきらいがあったんですけども、そういったことをなくすために、同時通訳、これだけ発達している状況になっておりますので、一部のセッションでは同時通訳で、より議論が深まるように活発になるような工夫をしていると聞いております。
全てにその同時通訳を入れたいんですけど、予算の関係上、一部のセッションだけと聞いております。細部については、広報室の方から説明させます。
そして無人機の二つ目の質問であります。無人機の活用ですけども、おっしゃったとおり、多くのことは今検討中ですので、この場でお話することはなかなか難しいものがありますけども、省全体として考えている「SHIELD」、その中で海上自衛隊が受け持つべきところ、受け持った方が適当なところ、そういったものをしっかりとその省全体として議論して取り組んでいるところであります。
この程度の回答でご了解いただければと思います。
i 砕氷艦「しらせ」に訂正
ii TLAM:Tomahawk Land Attack Missiles
iii 会見での海幕長発言があったとおり、スマートフォンのアプリを利用したAI翻訳サービスを一部のセッションに導入する旨記者に対して説明
(以上)
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