内倉統幕長が定例会見 88式実弾射撃など「バリカタン26」の成果とSHIELD構想(5月15日)
- 日本の防衛
2026-5-20 12:00
令和8(2026)年5月15日(金)14時00分~14時14分、内倉浩昭(うちくら・ひろあき)統合幕僚長は防衛省A棟10階会見室で定例会見を行った。
統合幕僚長からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
1. 発表事項
本日は、私から、米比主催多国間共同訓練「バリカタン26」の成果についてお知らせいたします。
自衛隊は、4月20日から5月8日までの間、米比主催多国間共同訓練「バリカタン26」に参加いたしました。本訓練では、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力の維持・向上を図るとともに、力又は威圧による一方的な現状変更を許容しない安全保障環境の創出に寄与するため、米比をはじめとする参加各国との連携強化を図りました。今後とも、自衛隊は、同盟国・同志国との連携を強化し、自由で開かれたインド太平洋の実現に寄与してまいります。
2. 質疑応答
「バリカタン26」訓練の成果と課題
記者 :
「バリカタン26」の訓練について、統幕長も視察されていますが、今回自衛隊は初めての訓練の参加で、実弾射撃など、実動的な訓練も多くあったとお聞きしました。こうした訓練の中で、成果などあれば教えて下さい。また、その中で感じた課題もあればその点もお願いします。
幕僚長 :
前半の成果については4点ほど申し述べたいと思います。
1点目は、自衛隊の領域横断作戦に係る統合運用能力について、実動訓練を通じてその実効性を確認するとともに、一層の向上を図ることができた点です。具体的には、例えば水陸両用作戦において、水陸両用戦機雷戦群と水陸機動団が緊密に連携し、海上から陸上に至る一連の作戦行動を実施しました。これにより、統合運用能力を着実に強化することができました。
2点目は、本訓練への参加を通じて、力又は威圧による一方的な現状変更の試みを許容しないという我が国及び関係国の意思と能力を示すことにより、地域の平和と安定、そして「自由で開かれたインド太平洋」の実現に寄与することができたと考えています。
3点目は、フィリピンとの関係です。日比円滑化協定(RAA)を適用し、フィリピン領域内において行う統合訓練としては初めてとなる装備品を使用した実動訓練を実施できたことです。これは、政策・運用の双方において重要な前進であり、両国の防衛協力の深化を示す象徴的かつ意義深い取組であったと認識しております。
4点目は、日・米・比をはじめとする参加各国との連携の強化及び相互理解の促進を図ることができた点です。とりわけ、小泉防衛大臣及びフィリピンのテオドロ国防大臣による視察の下、88式地対艦誘導弾の実弾射撃を実施したことは、隊員の士気が高揚するとともに、本訓練の意義が明確となり、同盟国・同志国との更なる連携強化につながったものと考えています。
更に、参加部隊による活発な相互交流が行われたほか、私自身も現地に赴き、現地部隊の幕僚から成果報告を受けたほか、閉会式への参加及び各国参謀総長等との意見交換を通じて信頼関係を一層深めることができました。
課題につきましては、領域横断作戦をはじめとする統合運用はゴールがありませんので、一層、日米間そして日・米・比、更には他の参加国・同志国との連携を深めてまいりたいと思います。一つ一つ丁寧に課題を抽出し、これを一つ一つクリアしてまいりたいと考えております。
無人アセットのSHIELD構想と有人・無人機の連携
記者 :
無人アセットのSHIELD構想についてお伺いします。防衛省が出しているイメージ図だと、無人機のみの運用というものが描かれていますが、実際の運用では、有人機と無人機を組み合わせる必要があると思います。統幕長として、こうした有人機と無人機を組み合わせた新しい戦い方について、何かグランド・デザインのようなもののお考えがありましたらお願いします。
幕僚長 :
いわゆるSHIELD構想についてですが、無人機のみで完結するものではなく、有人アセット等と無人アセットを適切に組み合わせた戦い方が前提となります。ロシアによるウクライナ侵略では、無人機の大量運用や、これに既存の弾道巡航ミサイルを組み合わせた大規模な複合攻撃が展開されるといった、新しい戦い方が出現しており、戦闘様相が大きく変化していることは、統幕長としても強い問題認識を持って受け止めております。
このような中で検討している新しい戦い方とは、有人アセットが有する判断力や指揮統制能力等を、無人アセットの持つ持続性、即応性、量的優位性などと組み合わせ、統合運用の下で全体として抑止力、対処力を最大化していくものと認識しております。平素からの警戒監視や対領空侵犯措置等への対応、さらには事態対処が生起した場合の各段階ごとに、有人、無人それぞれの特性を踏まえた役割分担を行い、陸・海・空に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった領域も含めた領域横断作戦として機能させていくことが重要であると考えております。いずれにしましても、検討の詳細や部隊の運用につきましては、これから詰めていくところであります。
SHIELD構想についてグランド・デザインというお尋ねがありましたので、少し補足いたします。SHIELD構想で挙げております様々な無人アセットにつきましては、水中・水上・空中・地上、全てのドメインにまたがっております。領域横断的な無人アセットを活用しながら、それぞれの領域における既存の有人アセットとの連携、いわゆるチーミングをより高度化し実行化していくことが肝だと思っております。なかなか言うは易く行うは難しではありますが、しっかりと進めてまいりたいと思います。そして、大臣が平素からおっしゃっている、「世界で最も無人アセットを駆使する組織」を目指していきたいというふうに思います。
RAA発効による訓練実施上のメリット
記者 :
「バリカタン26」について伺いたいと思います。先ほど統幕長は、フィリピンはRAAを結んだ国ということを述べられました。RAAを発効したことで、訓練実施に至るまでのメリット、例えば事務負担が軽減されたなど、これまでに比べて利点だと感じられたことがあれば教えてください。
幕僚長 :
2点申し上げます。1点目は、RAAが発効したことによりまして、人道支援・災害救援以外の共同訓練を実施することができるようになりました。このため今回の訓練では、88式地対艦誘導弾等の装備品をフィリピン領域内に持ち込み、より幅広い実動訓練を行うことが可能となっています。
2点目は、お尋ねのありました事務手続です。これは相当程度簡略化されたと認識しております。航空幕僚長時代にも、これを適用した訓練を日豪等と行い、事前準備に係る事務手続がかなり簡略化されたというふうに認識しております。今般も、そのようなことがあったというふうに理解しております。
88式地対艦誘導弾実弾射撃へのフィリピン側の評価
記者 :
88式の実弾射撃についてですが、その実弾射撃について、フィリピン側からどのような評価を得たか教えてください。
幕僚長 :
フィリピン側と申しますと、私のカウンターパートであるブラウナー参謀総長と話をした際の所見でよろしいでしょうか。まず、今回の射撃については、結果としては成功いたしました。そういったことから、RAAが適用された最初の訓練において、この装備品、なかんずく88式地対艦誘導弾を持ち込んで、それを見事に完遂したということについては称賛されたということを紹介したいと思います。
T-4練習機墜落事故から1年の受け止め
記者 :
T-4練習機の墜落事故について伺います。昨日で、愛知県の入鹿池にT-4練習機が墜落して隊員が亡くなった事故から丸1年となりました。当時、統幕長は空幕長として事態に対処されていたと思いますが、改めて1年経ったこと、事故調査の結果がまだ出ていないことも含めて、統幕長の現在の受け止めとご所感をお聞かせください。
幕僚長 :
昨日5月14日で、第5航空団所属のT-4練習機の墜落事故が発生して1年が経過しました。
改めて、第5航空団所属のT-4練習機の事故により、お亡くなりになられた2名の隊員のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、ご家族の皆様に、心よりお悔やみ申し上げます。
引き続き、陸海空を通じて安全管理の強化に全力を挙げつつ任務に邁進してまいります。私自身も昨日の午後、市ヶ谷の慰霊碑に赴き、頭を垂れて、今申し上げたとおり、事故調査が円滑に進むことそして安全管理について、誓いを新たにしてまいりました。
「バリカタン26」に対する中国側の反発への受け止め
記者 :
「バリカタン26」について、私からも1問お伺いさせてください。中国国防部の報道官が、「バリカタン26」に関して、日本とフィリピンが軍事的結託を強化し、地域の緊張を悪化させているなどと反発を表明しています。こうした中国側の反発について、制服組トップとしての受け止めをお願いいたします。
幕僚長 :
お尋ねの件につきましては、今回の訓練については、特定の国や地域を念頭に置いたものではありませんので、ご指摘には当たらないと考えます。いずれにしましても、日・比、日・米・比、日・米・豪・比といった形で、同盟国・同志国との間で、抑止力及び対処力を高めてまいりたいと考えております。
記者 :
関連して、一般論で結構ですが、こういった国際訓練は、一般的に抑止力維持に資するとされる一方で、地域の緊張を高める可能性もあると言われています。そうした抑止力と緊張のバランスについて、統幕長としてはどのようにお考えでしょうか。
幕僚長 :
お尋ねの件でありますが、それは相手にとっての受け止め方と我々の思うところとに差が生じることは、これはいかんともし難いところだと思います。我々ができる最善としましては、今次行いましたとおり、今回の訓練の目的を明確にし、それを公表することによって透明性を高め、確保した上で必要な訓練を行い、我々の目的である我が国周辺、そしてインド太平洋地域における抑止力、対処力を高める、そういったことを実践していく、それに尽きると思います。
(以上)
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