《ニュース解説》陸自初の攻撃型ドローン「小型攻撃用UAVⅠ型」とはどんな装備なのか?
- ニュース解説
2026-5-27 12:05
今年5月、陸上自衛隊が導入する「小型攻撃用UAVⅠ型」の機種選定結果が明らかにされました。公表イメージから推定される機種と、今後の陸自に必要とされる調達制度の転換について、元陸上自衛官の影本賢治が解説します。
機種名のない選定発表──公表イメージから推定される機種「ドローン40」
令和8(2026)年5月12日、防衛省は「新たな重要装備品等の選定結果について」という2枚からなる文書を発表し、陸上自衛隊が導入する「小型攻撃用UAVⅠ型」の機種選定結果を公表しました。
今回の公表で明らかにされた情報は、当該装備品の機能・用途の概要と「イメージ」と付記された写真のみです。機種名は明示されておらず、ライフサイクルコストについては引き続き精査を行っていくとされています。

しかし、この「イメージ」写真の形状から、オーストラリアのディフェンド・テックス社製「ドローン40」が選定された可能性が高いと見られます。
多彩なモジュールを取り付け可能な、射出型のクアッドコプター
ドローン40の最大の特徴は、変形にあります。携行時は円筒形をしており、40mmグレネードランチャーでそのまま射出できます。射出後、スプリング式のローターが展開して、自律飛行できるクアッドコプターへと変身します。

戦術的な多用途性も際立っています。モジュール交換式のペイロードベイを採用しており、ISR(情報・警戒・監視)用カメラ、EFP(自己鍛造弾頭)、発煙・閃光弾、レーザー目標指示器、電子戦(EW)モジュールなどを任務に応じて換装できます。ISR任務では機体を回収・再利用することも可能です。
さらに、複数機を同時に目標へ着弾させるスウォーム(群)攻撃機能(MRSI:Multiple Rounds Simultaneous Impact)を実装しています。待機中の複数機が指令ひとつで同時に目標へ突入するこの手法は、敵の戦車が搭載するアクティブ防護システム(APS)や対空機関砲の処理能力を意図的に飽和させ、標的を確実に撃破することを可能にします。
また、固定翼型には不可能な「パーチ・アンド・ステア(止まって監視する)」戦術も特筆に値します。目標地域の建造物屋上や樹冠に密かに着陸し、モーターを停止させた状態でカメラやセンサーのみを稼働させ、長時間にわたる待ち伏せ監視が可能です。市街地戦や島嶼部の複雑な地形においては極めて有効な戦術を実現します。
提案要求から装備化まで「遅くとも3年」というスピード案件
令和元(2019)年8月、「新たな重要装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化の措置について」(通達)が制定されました。同通達は、取得実績のない新規装備品を導入する際に、運用構想や要求性能の妥当性、費用対効果、ライフサイクルコスト(LCC)の算出を義務付けており、今回の選定結果の公表もその一環として行われたものでした。
令和5(2023)年4月28日、防衛省は「小型攻撃用UAVⅠ型 情報・提案要求書」を公示し、本格的な検討を開始しました。
運用構想として、地上を移動する目標に対して探知・識別から引き続く迅速かつ正確な攻撃を可能とし、人的損耗を局限し、対処の実効性を向上させることを想定していました。また、初期型装備品の運用実証を令和6(2024)年4月末、納入を令和9(2027)年2月末としていました。
令和5(2023)年7月18日には、「攻撃に用いる飛翔タイプの小型無人プラットフォーム等に関する情報・提案要求書」を公示し、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型の3つの型を対象とした募集に拡大しました。このRFIでは、Ⅰ型の初期型装備品の装備化時期を「遅くとも令和8年度(2026年度)」すなわち今年度としていました。
表:陸上自衛隊の小型攻撃用UAV Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ型
| 区分 | 規模 | 目標・任務 | 装備化の時期 | 機種 |
|---|---|---|---|---|
| 小型攻撃用UAV Ⅰ型 | 前線の隊員が携行 | 敵歩兵、車両等 | 令和8(2026)年まで | ドローン40(推定) |
| 小型攻撃用UAV Ⅱ型 | 隊員が携行 | 舟艇や軽装甲車両等 | 令和7(2025)年まで | (未定) |
| 小型攻撃用UAV Ⅲ型 | 車両で運搬 | より遠方の舟艇や軽装甲車両等 | 令和8(2026)年まで | (未定) |
※出典は防衛省公表資料「攻撃に用いる飛翔タイプの小型無人プラットフォーム等に関する情報・提案要求書 」
令和5(2023)年以降、複数機種を対象に運用実証(OT)を実施し、システムの実現性・有用性・費用対効果を検証しました。その結果、Ⅰ型としてドローン40(推定)が選定されることとなりました。
2〜3年という小型攻撃用UAVⅠ型の導入スケジュールは、従来の防衛装備品と比較して大幅に短縮されており、この装備品の緊急性に対する防衛省の強い意識がうかがえます。
表:Ⅰ型の候補であったと考えられる4機種
| 機種 | ドローン40 | スイッチブレード300 | ポイント・ブランク | ロテム・エル |
|---|---|---|---|---|
| 原産国 | オーストラリア | 米国 | イスラエル | イスラエル |
| 重量 | 300〜400g | 2.5〜3.6kg | 6.8kg | 6.5kg |
| 滞空時間 | 30〜60分 | 10〜20分 | 約18分 | 30〜45分 |
| 航続距離 | 最大35km | 10〜30km | 最大10km | 最大10km |
| 発射方式 | 40mmグレネードランチャー / 手投げ | チューブランチャー | 手投げ | 垂直離着陸 |
| ペイロード | モジュール交換式 (多用途) | 組み込み型 | 組み込み型 (最大2kg) | 手榴弾×2 (計約1.2kg) |
| 回収・再利用 | ISRモード時可 | 不可 | 可 | 可 |
| スウォーム攻撃 | 対応(MRSI ※1) | 対応(MPL ※2) | 限定的 | 限定的 |
※出典はネット情報。 ※1 MRSI:Multiple Rounds Simultaneous Impact(複数弾同時着弾) ※2 MPL:Multi-Pack Launcher(マルチパック・ランチャー)
米軍が進める小型ドローン調達の制度転換
米軍では小型ドローンの調達制度そのものを根本から見直す動きが加速しています。
小型ドローンは「消耗品」と再定義
2025年7月、ヘグセス米国防長官(現在は戦争長官)は政策覚書「米軍のドローン支配力の解放(Unleashing U.S. Military Drone Dominance)」を発出しました。最大の転換点は、グループ1(重量20ポンド以下)およびグループ2(重量21〜55ポンド)の小型ドローンを「消耗品(Consumables)」として再定義した点にあります。
ヘグセス長官は「これらは高性能な航空機というよりも弾薬に近い。安価で迅速に交換可能であり、消耗品として分類されるべきだ」とし、グループ1・2のドローンを手榴弾や銃弾と同等の扱いで補給する体制へと移行させました。末端への調達・運用権限の委譲も行われました。
表:米国戦争省におけるUASのグループ区分
| グループ | 最大離陸重量 | 通常運用高度 |
|---|---|---|
| グループ 1 | 20ポンド以下 | 1,200フィート未満(対地) |
| グループ 2 | 21〜55ポンド | 3,500フィート未満(対地) |
| グループ 3 | 1,320ポンド未満 | 18,000フィート未満(海抜) |
| グループ 4 | 1,320ポンド以上 | 18,000フィート未満(海抜) |
| グループ 5 | 1,320ポンド以上 | 18,000フィート以上(海抜) |
※出典:米統合参謀本部教範 JP 3-30
この「消耗品化」を具体的な装備調達に落とし込んだ代表例が「LASSO(Low Altitude Stalking and Strike Ordnance)」計画です。歩兵旅団戦闘団に対して、砲兵や航空支援に依存しない部隊固有の精密打撃能力を付与することを目的としており、機体は「発射システムと弾頭が一体となった完全弾薬(AUR:All-Up Round)」として調達されます。複数のシステムが並行して採用されており、特定ベンダーへの依存を避けて継続的な競争環境を維持する方針が明確にされています。
迅速な調達のためマーケットプレイスを創設
令和8(2026)年3月には、米陸軍がアマゾン・ウェブ・サービシズ(AWS)と協力して「UAS(無人航空機システム)マーケットプレイス」を開設しました。これは陸軍部隊がドローン・システムを直接調達するための専用プラットフォームです。
一方、国防兵站局(DLA)は政府機関向け汎用電子商取引システム「フェッドモール」内に「ドローン・コリドー・マーケットプレイス」を構築し、ドローン部品・消耗品・メンテナンスサービスなどの調達に対応しています。これら2つのマーケットプレイスにより、戦術的な即時調達と供給チェーン管理の両面から、前線部隊がドローンを必要なときに迅速かつ継続的に調達できる環境が整備されました。
「消耗品としての大量供給」と「カタログによる即時調達」を支える体制を構築するには、背後に巨大な国内製造基盤が不可欠です。この防衛産業基盤を急速に錬成することを目的として、戦争省は10億ドル規模の「ドローン支配プログラム(Drone Dominance Program:DDP)」を始動させました。
DDPでは令和8(2026)年2月から25のベンダーが競争に参加することになり、2027年までに20万機以上、プログラム全体で約34万機のドローン取得を目標としています。
「大量運用・消耗」してこそ真価を発揮する──小型攻撃用UAV
今回の選定発表で防衛省は「装備品等の選定に係る手続の明確化・透明化のため、取得実績のない新たな重要装備品等を選定した際は、選定結果を公表する」と述べています。しかし、米軍は別のことを重視しているように思えます。
米軍が重視しているのは、手続きの明確化・透明化よりも簡易化・迅速化です。グループ1・2ドローンの消耗品指定、マーケットプレイスによるカタログ発注──これらはいずれも、ドローンを「重要装備品」として厳密なプロセスで選定する発想とは対極にあります。
小型攻撃用UAVは「大量運用・消耗」が前提の装備です。現時点において公表はされていませんが、陸上自衛隊においても消耗品として取り扱うことが必須になると考えられます。
加えて、ドローンを遅滞なく導入するためには、マーケットプレイス的な発想を取り入れることも検討が必要です。運用実証で問題なしと判断された機種の中から複数を認定し、どれを調達するかは部隊の判断に委ねる──そうした柔軟性のある調達を行わなければ、技術の進化に追いついてゆけないでしょう。
今回のⅠ型選定は、陸上自衛隊が小型攻撃用UAVを初めて取得するという意味で画期的な一歩です。しかしその能力を真に発揮させられるかどうかは、今後の調達や補給管理制度をどう設計するかにかかっているのではないでしょうか。

(以上)
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