齋藤海幕長が定例会見 実機雷処分訓練、「おおすみ」ハラスメント事案、日韓SAREX再開などに言及(6月9日)
- 日本の防衛
2026-6-12 09:01
令和8(2026)年6月9日(火)13時30分~13時56分、齋藤聡(さいとう・あきら)海上幕僚長は、防衛省A棟10階会見室において、定例記者会見を行った。
海幕長からの発表事項として令和8年度実機雷処分訓練及び掃海特別訓練が発表された後、記者との質疑応答が行われた。
海幕長定例記者会見
令和8年度実機雷処分訓練及び掃海特別訓練の実施
幕僚長 :
本日私から1件、発表します。令和8年度実機雷処分訓練及び掃海特別訓練について
6月15日から6月27日の間、硫黄島周辺で令和8年度実機雷処分訓練及び掃海特別訓練を実施します。本訓練には、海上自衛隊から第2機雷戦隊の掃海母艦、掃海艇等7隻及び護衛艦1隻、人員約700名が、米海軍から、水中処分隊員約10名が参加予定です。
なお、実機雷処分訓練は、昭和47年から実施しており、今回で53回目となります。
以上です。
実機雷処分訓練の意義と今回の特徴
記者 :
実機雷処分訓練を継続して実施する意義及び今回の訓練の特徴や昨年の訓練との違いについてお聞かせください。
幕僚長 :
実機雷処分訓練は、海上自衛隊の対機雷戦能力の向上及び実任務に即応可能な隊員の育成を目的として実施するものです。任務遂行能力の維持・向上を図る上で必要な訓練と認識しています。我が国は四面を海に囲まれ、資源や食料の多くを海上交通に依存していることから、海上交通の安全確保は我が国の生存と繁栄を支える基盤です。このため、機雷の脅威に適切に対処する能力を維持・向上することは重要です。硫黄島での実機雷処分訓練は、年に1回を基準に継続的に行っており、周辺海底の状況が訓練に適していることに加え、一般船舶や漁船等の安全な航行を確保する必要性等から、硫黄島で実施しているものであります。今次訓練も、例年実施している訓練との大きな違いはありません。
輸送艦「おおすみ」ハラスメント事案と停職処分への受け止め
記者 :
2023年12月輸送艦「おおすみ」において、上司2名による「何もできていないのに給料がもらえていいな。」という発言が要因となって、隊員の方が自殺された事案について伺います。5日に上司2名がそれぞれ停職の懲戒処分となりましたが、海幕長の事案に対する受け止めをお願いします。
幕僚長 :
隊員の尊い命を奪うような事案を生起させたことは、極めて遺憾であり、決してあってはならないことだと思います。自ら命を絶つことになった隊員のご冥福を心からお祈りします。また、ご遺族に対しましても、心からお詫びを申し上げます。
ハラスメント再発防止策と人員確保への影響
記者 :
今回の事案を踏まえてどのような再発防止策が必要だとお考えかという点と、人員の確保や充足率の改善が課題という中で、今回の事案が海上自衛隊に対する信頼ですとか、人員の確保に与える影響について、どのようにお考えでしょうか。
幕僚長 :
ハラスメントは、人の組織である海上自衛隊において、隊員相互の信頼関係を失墜させ、組織の根幹を揺るがす決してあってはならないものと認識しております。
先ほど申しましたとおり、隊員の尊い命が失われたことは、隊員、ご遺族にとりましても大変痛ましいことであり、組織にとっても多大な損失であると認識しております。
こうした認識のもと、防衛省のハラスメント防止の取り組みを受け、弁護士等の部外有識者による講演会、ロールプレイ形式による集合教育、あるいはLINE等を活用した相談窓口の拡充、周知等を行っております。隊員の自殺防止の取り組みとして、カウンセリング態勢の充実・強化、メンタルヘルスに関する啓発教育の徹底など、継続的に実施していきます。
また、海自独自の取り組みとして、部隊相談員というものを設けております。部隊相談員を各部隊に配置して、悩みを相談しやすい態勢を整備しております。そして、今回のような事案を起こさないためには、ハラスメントを一切許容しないという環境、雰囲気をしっかりと構築することが必要です。隊員の心のケアに努めるとともに、そういった環境を整備することが私の仕事だと思っており、しっかりと整備していきたいと思っています。
日韓捜索・救難共同訓練(SAREX)の意義と成果
記者 :
7日に行われた海上自衛隊と韓国海軍による五島列島西方海域での捜索・救難共同訓練についてですが、これについてもヤフーやディプロマットに書かせていただいたんですけれども、日本語のヤフーとかのコメント欄を見るとほとんど否定的なものばかりで、例の2018年の韓国海軍によるレーダー照射問題を踏まえて、まだ韓国に対するネガティブな見方を持つ人が多いように見られるんですけども、そんな中、海自さんが韓国海軍とこういう共同訓練をやる意義とか必要性について、防衛当局と一部の世論の方の乖離がすごい大きいように見えるので、少しわかりやすくその必要性や意義について説明していただけないでしょうか。
幕僚長 :
今回も日韓捜索・救難共同訓練の目的としては、海上自衛隊の捜索・救難等に関する技量の向上及び韓国海軍との連携の強化を図ることが目的であります。小泉大臣のXを確認しますと、1月に実施された小泉大臣とアン韓国国防部長官の合意の一つとして、このSAREXについて挙げられましたけど、これが無事に実現したことを嬉しく思いますと述べられておりまして、さらに両国の防衛交流・協力の新たな章の始まりですというふうに掲げられております。このように評価していただいてとても我々としてもうれしく思っております。今回の成果ですけども先ほどの目的としました技量の向上ということについては間違いなく向上できたと思いますし、韓国海軍との連携も強化することができたと思っております。
地域の安全保障環境を考えれば、日韓の連携がますます重要であることは変わりありませんので、今後とも、日韓の防衛協力をしっかりと積み重ねていきたいと思っております。
また、今回の捜索・救難訓練は2国間でやったのは久々でありますけども、日米韓3カ国での枠組みでの訓練、この中にはハイエンドの訓練も含んでおりますけども、これについてはずっと前から継続して実施しております。したがって、戦術技量の向上というのは、日韓ともに、アメリカも含めてですね、継続的に図られてきたと思っております。今回久々に日韓で、捜索・救難をやったということですけども、それについての成果は先ほど述べたとおりです。今後も様々な機会を通じて日韓、あるいは日米韓での訓練に臨んでいきたいなと思っております。
インドネシアへの「あさぎり」型護衛艦移転協議
記者 :
インドネシアとの防衛交流の件について伺いたいんですけれども、5月の中旬にインドネシア海軍のモハメド・アリ参謀長が、日本が「もがみ」型護衛艦と潜水艦をインドネシアに提案しているという記事がインドネシアの防衛専門メディアで報じられて、その後、今日に至って今「あさぎり」型が日本とインドネシアで輸出の協議が行われているということで、これまでインドネシアの海軍のトップとか国防大臣が横須賀に行って、「たいげい」型とか「もがみ」型とかいろいろ視察してきたんですけど、いろいろあった複数の選択肢の中で今、「あさぎり」型中心に移転協議が収斂してきているという考えでよろしいでしょうか。
幕僚長 :
アリ参謀長が、その時点で発言されたものについては私もその細部は見ておりませんし、先方の発言ですので、それに対しての発言は控えたいと思います。その上で、5月に小泉大臣がインドネシアを訪問されて、シャフリ大臣と懇談されて、様々な議論がなされました。その中では防衛装備や技術協力についても、ワーキンググループを設置して、スピード感を持って議論していきましょうということがなされました。私もその席に同席させていただきました。また、6月5日にシャフリ大臣が来られた際に、小泉防衛大臣との会談において、「あさぎり」型護衛艦の移転を含む防衛装備、技術協力を具体化したいという発言があったと承知しております。したがいまして、今は「あさぎり」型護衛艦等の移転についての議論に移行したものと認識しておりますが、それ以外の細部については私も承知しておりませんので言及は控えたいと思います。いずれにしても海上自衛隊として力添えできるところについてはしっかりとやっていきたいと思っております。
インドネシアとの防衛協力推進の意義
記者 :
先ほどの韓国との防衛協力の件とちょっと似たとこもあるんですけども、インドネシアかつて、これ軍隊の話とかじゃないんですが、日本の新幹線の受注を蹴って、中国の高速鉄道を受注したという件もあって、ちょっとインドネシアに対して不信感を抱いてるような方もいるようなんですね。そんな中、インドネシアと日本が、この防衛協力なり移転協議なり進めていくこの重要性というか意義というのはどんなところにあるんでしょうか。例えばインドネシアにはマラッカ海峡とかがあって、日本のシーレーンの重要な部分を担っている国でもあるからやっぱり戦略的連携が必要なのであるとか、いろいろあると思うんですけど、可能な限りで教えてください。
幕僚長 :
過去の経緯とか、中国の装備を購入した等については、他国が考えて実施したものですからそれに対する直接な言及は控えたいと思っておりますが、我々としては防衛省の大きな方針のもと、地域の安定に資する各種協力にしっかりと協力していくということを今後とも取り組んでいきたいなと思っております。
日韓SAREX訓練の内容詳細
記者 :
日韓共同訓練の件で重ねてお伺いします。捜索救難訓練は全ての訓練の基礎となると伺っているが、今回のどのような訓練をしたのか改めて教えていただきたいと思います。
幕僚長 :
おっしゃるとおり、様々な訓練のベースとなる訓練と言っても差し支えない。
今回の訓練につきましては、救助要請をする船から火災が発生したことを想定しております。救助の要請があり、そのポジションに日韓の船が向かって、それを救助したという流れになっております。
今回は韓国艦艇と海上自衛隊の「こんごう」が参加しましたが、火災の発生を想定した船は参加しておりません。従って、ポジションを設け、そこに救助を要請している船舶がいるという想定で行いました。
通常、両艦艇が接近して救助することになりますが、大きな船同士が近づくとそれ自体が危険になりますので、通常はそこに辿り着くまでに、お互いにコミュニケーションをとってエリア分けを行います。飛行機を持っているならば先に投入し、その状況を確認させ、その状況を各艦艇に情報共有します。
このように、エリア分けや役割分担を行って救助を実施します。今回は火災ですので、ホースから水等で消火する作業に移行することになりますが、風向き等によって火の消し方も違い、また洋上であるため潮流の関係もあります。そういったことも踏まえ、様々なエリア分担と調整を経て、実施の段階に移ると考えております。
今申し上げたようなことを実施するということは、様々な作戦・戦術のベースになっていると考えております。
約9年ぶりのSAREX再開と今後の日韓防衛協力
記者 :
今、最後におっしゃられたことと少し重複するかもしれないが、日本と韓国の間で、いわば基礎的な訓練が再開できたことの受け止めといいますか、今後の日本と韓国の間での訓練にどのような影響を持っているものと考えているか。
幕僚長 :
先ほど申しましたとおり、日韓SAREXにつきましては、約9年ぶりに再開できたということであり、大臣が先方の大臣とお約束されたことを実現できたことについてとても嬉しく思っております。
一方で、先ほど記者からのご質問にもございましたが、ハイエンドな訓練については日米韓で継続して実施しております。今後につきましては、こうしたベーシックな訓練とハイエンドな訓練を織り交ぜながら、引き続き防衛協力や交流等を図っていきたいと考えております。
ホルムズ海峡情勢と実機雷処分訓練の実情
記者 :
冒頭にご発言いただいた機雷処分の関係について、今年はイラン情勢を巡ったホルムズ海峡での機雷掃海派遣の可能性が挙げられている中での実施だと思うが、こうした状況での訓練を実施することの受け止め、また、このエリアに関して機雷処分技術をどう貢献できるか。
幕僚長 :
まず、ホルムズ海峡を巡る情勢については、政府として重大な関心を持って情報収集が行われているものと認識しており、現時点では、我々の派遣等について何ら決定されたものはないと承知しております。
私どもとしても、この中東に係る情報収集をしっかりと実施し、省の方針の下、国際社会と緊密に連携しつつ、国内法等の範囲内で適切に対応していくことが求められるものと認識しており、日々情報収集を行っているところであります。
機雷掃海訓練の実情ですが、実際に機雷を処分する訓練は、年に1回、硫黄島近辺の訓練のみであります。したがって、隊員は相当な緊張感をもって訓練に臨んでおります。
また、アメリカ海軍からも今回約10名が参加しております。私自身も以前、実機雷訓練を視察した経験がありますが、当時、米軍関係者から、このような良好な環境で訓練を実施できるエリアは他にないため、非常に貴重な機会であるとの発言があったことを記憶しております。
常に良い環境の中で、訓練に集中して実施できているものと考えております。さらに、実際の爆破処分にまで移行することから、緊張感を伴う訓練ではありますが、非常に有意義なものであると認識しております。
間違いなく、海上自衛隊の機雷掃海に従事する隊員にとって、技能を磨く良い機会であると考えております。引き続き、このような訓練を着実に実施し、必要な時に対応できる体制を構築していきたいと考えております。
今回の訓練における無人機活用の有無
記者 :
先ほどの実機雷処分訓練に関連して伺います。昨年6月の海幕長会見で硫黄島周辺の海域で、水上無人機による機雷処分の実証実験に成功したと発表があったかと思います。今回の訓練では、無人機による処分は行われるのでしょうか。
幕僚長 :
昨年とは違う無人機かもしれませんけど、通常、掃海艇が持っている無人機で機雷を処分するときには実際、掃海艇のソーナーで確認して、そして無人機で実際に確認して、処分用の無人機がありますので、それが突っ込んで、爆発することによって機雷を処分するという形を取りますので、そういった意味では、水上無人機っていうのは従来から使われております。今回「もがみ」型が1隻参加しておりますので、「もがみ」型については無人機を使った作業になってくると思います。それが昨年とどう違うかというのは、資料を持ち合わせておりませんので、後ほど担当の方から細部説明させます※。
機雷処分における無人機活用の意義と今後
記者 :
関連して機雷処分における無人機の活用の意義、例えば導入の進捗状況などおわかりの部分があれば教えてください。
幕僚長 :
我が国の掃海部隊もそうですけども、無人機等による処分を行っております。諸外国を見ましても、無人機を使用するところが多くあると思います。ただ、最終的に人間を投入して、処分しなければならない状況もあると思いますので、我々としては無人機に重きを置きつつも、引き続き処分員による処分の練度というのは、維持向上させておくべきだと思っておりますので、こういった硫黄島での訓練の機会を捉えて、しっかりとその能力は維持向上させていきたいと思っております。
日韓防衛協力の脅威認識の相違と共同訓練の意義
記者 :
日韓の防衛協力についてお伺いします。海幕長先ほどハイエンドな訓練を日米韓で実施しているとおっしゃいましたけれども、韓国は朝鮮半島有事で、日米は主に台湾有事を想定していて、想定する脅威とか有事などに相違があると思います。そういったある意味でズレがある中でですね、日韓で防衛協力を推進していく意義っていうのはどうお考えになられていますでしょうか。
幕僚長 :
それぞれの国が抱えている事情がありますし、それぞれの国が想定している脅威というものがありますので、そこは立ち入れない範囲だと思っております。その上で、純粋に、軍事的な観点から、こういった脅威があるから、こういった対処をしなければいけない、ミサイルが飛んでくるからそれに対応する、あるいはミサイルが飛んでいる脅威下でさらに潜水艦がいれば、対空脅威がある中で、対潜水艦戦をいかに実施するかということは、純粋に戦術技量の向上というところでは、日韓共通のもの、あるいは日韓ともに向上させたい分野だと思いますので、引き続きそういった機会を捉えて鍛え上げていきたいと思っております。
日韓ACSAの締結と現場への影響
記者 :
日韓について引き続き伺いたいのですが、今、日本と韓国の間にACSA(物品役務相互提供協定)について日本側が提案してて、韓国側が慎重姿勢を崩さないと報道されているところなんですけども、私、防衛省の方、取材してるところACSAは実務的なもので、ちょっと日韓の政治問題化してるところがあるけど、実際はちょっと語弊があるかもしれないですけど、「大したものじゃなく、実務的に乗り越えるもの」というようなことをおっしゃる方がいて、海自の現場サイドから見て、この日韓の交流が今後深まっていくと見込める中で、このACSAっていうのは、やっぱり現場としては早くこの締結してもらって、やった方が今後共同訓練とか広がりそうな中で、資するものと考えているのか、それとも今のままでも、韓国側が姿勢崩さないままでもやっていけるものなのか、その辺りちょっとわからないので、教えていただきたいと思います。
幕僚長 :
記者さん言われましたとおり、私も報道でしか承知しておりませんけども、ACSAについては韓国側が慎重姿勢を崩さず、様々な要因に起因する問題として残っていると。なかなか前に進めない慎重に姿勢を崩してないということについては、私も報道で承知しております。一方で、現場の感覚からすると、これについては、物品や役務の相互提供協定ですので、あった方がよりスムーズな協力ができるものと認識しております。
※ 昨年度は実機雷処分訓練の海域において「もがみ」が運用試験の一環で無人機による実機雷処分を実施。今年度は同様の器材を使用して訓練として実施する旨説明
(以上)
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