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[国会答弁]辺野古大浦湾の工事に関する質問に対する答弁

  • 防衛省関連

2024-5-10 08:53

 防衛省報道室は令和6(2024)年5月10日、同日の閣議資料を報道に公開した。閣議資料のうち「参議院議員福島みずほ君提出 辺野古大浦湾の工事に関する質問に対する答弁書」の内容をいかに転載する。
 なお、同答弁書は「答弁書」→「質問主意書」の順に記されているが、ここではわかりやすくするため「質問主意書」→「答弁書」の順に掲載する。

質問主意書

質問第一二三号
辺野古大浦湾の工事に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第74条によって提出する。

令和6年4月26日
福島みずほ

参議院議長 尾辻秀久 殿

辺野古大浦湾の工事に関する質問主意書

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、沖縄防衛局は大浦湾側の埋め立て前に、約8万4000群体の小型サンゴ類などを移植してから工事に入る計画を示してきた。しかしながら、防衛省によるシミュレーションの結果から、移植前に埋め立てエリアを囲む護岸工事に先行着手しても、サンゴには影響がないと発表した。
 しかし、防衛省の配布資料によると、工事前に移築するとした大型サンゴの生息場所は護岸工事で汚濁の出る場所から25メートルしか離れていない。さらに、移植対象である脆弱な小型サンゴも近くに生息している。シミュレーションでは汚濁防止枠による汚濁の除去率が考慮されているが、除去率にばらつきが大きいことは国土交通省港湾局の資料(「港湾工事における濁り影響予測の手引き」の策定についてケーススタディ資料―6汚染防止対策の考え方 平成16年10月22日 国土交通省港湾局環境整備計画室作成 https://www.mlit.go.jp/kowan/nigori/pdf/06.PDF)によっても明らかで、事実、辺野古側工事で大量の汚濁が汚濁防止枠の外へ流出していたことも市民の調査によって確認されている(ブログ「チョイさんの沖縄 日記」平成30年5月22日版を参照 https://blog.goo.ne.jp/chuy/e/8ebb835a7acc4ef0dc29ed03965b9d2a)

以上の事実を踏まえて、以下質問する。

1 沖縄防衛局は工事の前に環境保全措置としてサンゴ移植を行うことを平成25年に出した環境保全図書に明記しており、移植を実施しないまま工事に着手している現在の状況は、環境影響評価書に記載する環境保全の適正配慮を求める環境影響評価法第38条に明らかに違反していると考えるが、政府の見解を示されたい。

2 違反している場合、この点についてどのように間違いを正していくのか、その対処方法を示されたい。

3 前記1について、違反していないとする場合、その影響は沖縄県だけにとどまらない。今後、環境破壊を伴う事業において、開発側が工事をスムーズに進めるために、あとから都合の良いシミュレーション結果を付け加えれば、環境保全措置を行わずに済むという「あしき先例」となると考える。この点について、今後同様の環境に多大な影響を及ぼす工事を進める手続きにおいて、正当な環境破壊防止策を講じることができるのか。その方策を明示されたい。

4 海上ヤードは大浦湾側の埋め立て工事と1体と考えるが(「沖縄タイムス」令和5年11月1日記事参照 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1249005)、政府は海上ヤードの造成工事について、沖縄県との事前協議の対象外と説明した (日時:令和6年1月10日、場所:第46回環境監視等委員会が開催された那覇市内のホテル(パシフィックホテル沖縄)、発言者:沖縄防衛局の菅野昌生調達部次長、第46回環境監視等委員会ブリーフィングにおける質疑応答より。これらの発言は沖縄タイムス山城響記者が録音。)。
 なぜ、沖縄県との事前協議の対象外と説明したのか、その理由及び法的根拠を示されたい。

 右質問する。

答弁書

参議院議員福島みずほ君提出 辺野古大浦湾の工事に関する質問に対する答弁書

1及び2について

 普天間飛行場代替施設建設事業の実施に当たり、沖縄防衛局が環境影響評価法(平成9年法律第81号)第21条第2項の規定に基づき作成し、同法第25条第2項の規定に基づき補正した環境影響評価書及び平成25年3月22日付けの公有水面埋立承認願書に添付した公有水面埋立法施行規則(昭和49年運輸省・建設省令第1号)第3条第8号に掲げる環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「平成25年環境保全図書」という。)においては、御指摘の「サンゴ移植」について、「事業実施前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得て、可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築して影響の低減を図り、その後、周囲のサンゴ類も含め生息状況について事後調査を実施します。」と記載しているところ、この内容を明確化するため、令和2年4月21日付けの埋立地用途変更・設計概要変更承認申請書に添付した同号に掲げる環境保全に関し講じる措置を記載した図書(以下「令和2年環境保全図書」という。)においては、「サンゴ類に影響を与える工事を実施する前に、移植・移築作業の手順、移植・移築先の環境条件やサンゴ類の種類による環境適応性、採捕したサンゴ類の仮置き・養生といった具体的方策について、専門家等の指導・助言を得て、可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築して影響の低減を図り、その後、周囲のサンゴ類も含め生息状況について事後調査を実施します。」と記載しているところである。

 このため、沖縄防衛局においては、同事業に係る埋立区域内に生息する移植・移築対象のサンゴ類について、平成25年環境保全図書及び令和2年環境保全図書に基づき、「可能な限り工事施工区域外の同様な環境条件の場所に移植・移築」をするとともに、同事業に係る工事による水の濁り等についてのシミュレーションの結果、当該サンゴ類のうち移植・移築ができていないものの生息環境に影響を与えないことが確認された箇所について、工事に着手してきており、環境の保全についての適正な配慮をして事業を実施してきていることから、「環境影響評価法第38条に明らかに違反している」との御指摘は当たらない。

3について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、環境影響評価法においては、規模が大きく環境影響の程度が著しいものとなるおそれがある事業について、同法第33条から第37条までの規定に基づき、免許等を行う者が、環境保全措置が記載された環境影響評価書に基づき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものかどうかを審査しなければならないものとされ、また、環境の保全についての適正な配慮がなされていないと判断した場合には、当該免許等を拒否する処分を行うことができること等とされている。
 また、事業者は、同法第38条第1項の規定に基づき、環境影響評価書に記載されているところにより、環境の保全についての適正な配慮をして事業を実施するようにしなければならないこととされている。
 したがって、事業者が、環境影響評価書に記載されているところによって事業を実施することなく、「あとから都合の良いシミュレーション結果を付け加えれば、環境保全措置を行わずに済む」との御指摘は当たらない。政府としては、こうした事業について適正な環境配慮が確保されるよう、引き続きこれらの規定を適切に運用していく考えである。
 なお、普天間飛行場代替施設建設事業については、平成25年12月27日付けの公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第42条第1項の規定に基づく沖縄県知事の承認に際し、同法第4条第1項により同項第2号に規定する環境保全につき十分配慮されるものであることが確認されていると承知しており、また、1及び2についてで述べたとおり、沖縄防衛局においては、環境の保全についての適正な配慮をした上で同事業を実施してきていることから、御指摘のように「環境保全措置を行わずに済むという「あしき先例」となる」というものではない。

4について

 御指摘の「沖縄県との事前協議」は、3についてで述べた沖縄県知事の承認に係る承認書の別紙「留意事項」の1に基づく協議を指すものと理解しているが、同協議について、防衛省としては、普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認願書等の「設計の概要」に記載のある護岸等が対象であり、この「設計の概要」に記載のない御指摘の「海上ヤード」は同協議の対象外であると認識しているため、その趣旨を述べたものである。

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