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[国会答弁]在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問答弁

  • 防衛省関連

2024-6-4 17:17

 防衛省報道室は令和6(2024)年6月4日8時47分、第213回国会における閣議資料のうち、「在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問に対する答弁書」を報道に公開した。その質問主意書と答弁書を以下に転載する。

質問主意書

令和6年5月24日提出
質問第101号

在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問主意書
提出者 屋良朝博

在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問主意書

 在日米軍基地から排出されたポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)に汚染された電子工作物等(以下「PCB含有機器」という。)は、いわゆる汚染者負担原則に基づく当事者である在日米軍に代わって防衛省が処理している。これについて、2024年5月13日の決算行政監視委員会第2分科会において、木原防衛大臣は、米軍自らがPCB廃棄物(「PCB含有機器」を含む。以下同じ。)を処理するとの方針を転換した理由について「我が国の国内でPCBの処理体制が構築される、そういったいわば状況の変化が生じた」と答弁した。また、環境省の国定大臣政務官は、「米軍から防衛省に、これは、PCB廃棄物そのものではなく、建物等として引き渡され、防衛省が工事を行うことによってPCB廃棄物が結果として発生したものというふうに考えているところでございまして、これに照らせば、PCB廃棄物の譲渡あるいは譲受けには該当しないというふうに考えている」と説明し、建物ごと引き受けたため、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「PCB特措法」という。)に規定されるPCB廃棄物の譲り渡し、譲り受けに該当しないと答弁した。
 ついては、以下のとおり質問する。

1 上記の木原防衛大臣の答弁「我が国の国内でPCBの処理体制が構築される、そういったいわば状況の変化が生じた」について

1の1 「状況の変化が生じた」と判断した時期及びその根拠を示されたい。

1の2 木原防衛大臣は「米国防省は、2002年に、在日米軍の施設・区域にある全てのPCB廃棄物については米国に搬出して処理、廃棄する方針を決定した」と答弁しており、2002年12月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)会合共同発表において、「双方は、在日米軍に関連したPCB問題の解決へ向けた進展を歓迎し、合同委員会において環境分野での建設的な協力を継続することの重要性を強調した」として、その方針は日米両政府において確認されている。その後、いわゆる汚染者負担原則に基づく当事者である在日米軍に代わって防衛省が処理することについて、日米間の合意はあったのか。ある場合は、合意した時期、合意した機関及び合意した内容を明らかにされたい。

2 在日米軍基地に存在するPCB廃棄物の処理について

2の1 PCB廃棄物の目録の有無、現有総量について、政府として把握しているところを明らかにされたい。

2の2 中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)は来年度中に作業を終了する予定であり、環境省はPCB廃棄物処理基本計画に在日米軍が排出するPCB廃棄物は含まれないとしている。今後、どのように処理するのか政府の方針を明らかにされたい。

3 処理費用の日本側負担について

3の1 現在、政府はPCB廃棄物の処理経費負担の根拠について日米地位協定第24条2を適用しているが、当初、2002年に米軍が全てのPCB廃棄物を処理、廃棄する方針を示していた時点での費用負担については日米地位協定のどの条項に基づく措置としていたのか明らかにされたい。

3の2 1の適用条文について、米側負担から日本側負担に変更した際の合意議事録及び合意文書の有無を明らかにされたい。存在する場合は、合意の時期及び合意議事録、合意文書の内容を示されたい。

3の3 費用負担者の変更を国会に諮ることなく決定した理由を明らかにされたい。

4 上記の国定環境大臣政務官の答弁中「米軍から防衛省に引き渡された建物」(以下「建物」という。)から出てきたPCB含有機器について

4の1 PCB含有機器に関し、①機器の種類、②数量、③日時、④施設名、⑤各々の機器は電路に接続されていたかどうかについて、それぞれ明らかにされたい。

4の2 建物ごと引き受けたため、PCB特措法第17条で規定されるPCB廃棄物の譲り渡し、譲り受けの禁止に当たらないとする根拠を説明されたい。

4の3 建物で見つかったPCB含有機器が電路に接続されていたかどうかが不明、あるいは明らかにできない場合、PCB特措法に照らして適切な処理であったのかどうかをどのように説明するのか、法的根拠を含めて政府の見解を示されたい。

4-4 建物を引き取る際に在日米軍、防衛省ともPCB廃棄物の有無を確認しなかった理由を示されたい。また、PCB廃棄物の有無を確認しなかったことは手続上の瑕疵に当たるのではないか、政府の見解を示されたい。

4-5 防衛省が処理した在日米軍のPCB廃棄物は、平成14年時点で在日米軍が保管していると明らかにし、独自に処理するとの方針を決定していた3118トンに含まれるのか明らかにされたい。

 右質問する。

答弁書

衆議院議員屋良朝博君提出 在日米軍基地から排出されたPCB含有機器の処理に関する質問に対する答弁書

1の1について

 御指摘の木原防衛大臣の答弁は、平成16年12月、旧日本環境安全事業株式会社(現中間貯蔵・環境安全事業株式会社)においてポリ塩化ビフェニルの処理が始まったこと等を踏まえたものである。

1の2について

 御指摘の「2002年12月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)会合共同発表において…その方針は日米両政府において確認されている」及び「いわゆる汚染者負担原則に基づく当事者である在日米軍に代わって防衛省が処理する」の意味するところが必ずしも明らかではないが、在日米軍から施設及び区域が返還された場合の原状回復措置に要した費用については、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定(昭和35年条約第7号。以下「日米地位協定」という。)第4条1の規定に基づき、提供施設整備及び米軍再編に要した費用については、日米間の協議の結果日米地位協定第24条2の規定に基づき、それぞれ日本政府が負担してきたところである。いずれにせよ、米国政府との具体的な協議の詳細については、これを公にすると同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から答弁を差し控えたい。

2について

 お尋ねの「PCB廃棄物の目録の有無、現有総量」については、日本政府として現時点において把握していない。また、米国との間で、日米地位協定第25条1の規定に基づき設置された合同委員会等様々な場で、外務省、環境省、防衛省等関係省庁で連携しつつ、環境対策が実効的なものとなるよう取り組んでいるところ、お尋ねの「政府の方針」は、こうした米国政府との具体的な協議の内容に係るものであり、これを公にすると同国政府との信頼関係が損なわれるおそれがあること等から、答弁を差し控えたい。

3の1について

 御指摘の「米軍が全てのPCB廃棄物を処理、廃棄する方針」は米国政府がその責任において決定したものであり、日米地位協定に基づく対応とは認識していない。

3の2及び3について

 御指摘の「米側負担から日本側負担に変更した」、「費用負担者の変更」及び「国会に諮る」の意味するところが必ずしも明らかではないが、1の2についてで述べたとおり、在日米軍から施設及び区域が返還された場合の原状回復措置に要した費用については、日米地位協定第4条1の規定に基づき、提供施設整備及び米軍再編に要した費用については、日米間の協議の結果日米地位協定第24条2の規定に基づき、それぞれ日本政府が負担してきたところであり、これらについては、国会の審議を受け議決を経た予算の範囲内において実施してきたところである。

4の1について

 お尋ねについては、網羅的に調査していないため、お答えすることは困難であるが、防衛省が把握している限りにおいて、返還地を含む在日米軍施設及び区域の名称並びに平成15年度から令和5年度までに処理した、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「特別措置法」という。)第2条第1項に規定するポリ塩化ビフェニル廃棄物(以下「PCB廃棄物」という。)の種類及び総量についてお示しすると、次のとおりである。
 返還地を含む在日米軍施設及び区域の名称3沢飛行場、横田飛行場、旧府中通信施設、旧深谷通信所、根岸住宅地区、旧上瀬谷通信施設、富士営舎地区、岩国飛行場、佐世保海軍施設、旧知覧通信所、キャンプ・シュワブ、旧恩納通信所、トリイ通信施設、旧嘉手納飛行場、嘉手納飛行場、旧キャンプ桑江、旧キャンプ瑞慶覧、キャンプ瑞慶覧、普天間飛行場、旧牧港補給地区及び牧港補給地区
 種類 変圧器、安定器、コンデンサー等
 総量 約482トン

4の2について

 PCB廃棄物とは、特別措置法第2条第1項において、ポリ塩化ビフェニル原液、ポリ塩化ビフェニルを含む油又はポリ塩化ビフェニルが塗布され、染み込み、付着し、若しくは封入された物が廃棄物(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃掃法」という。)第2条第1項に規定する廃棄物をいう。)になったものとされており、廃掃法第2条第1項において、廃棄物とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であるとされていることから、御指摘の「建物」はPCB廃棄物に該当しないものと認識しており、御指摘の「建物ごと引き受けた」ことは、特別措置法第17条で禁止されているPCB廃棄物の譲渡し及び譲受けには当たらない。

4の3について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、4の2についてでお答えしたとおり、御指摘の「建物」はPCB廃棄物に該当しないものと認識していることから、御指摘の「PCB含有機器が電路に接続されていたかどうか」にかかわらず、「建物ごと引き受けた」ことは、特別措置法第17条で禁止されているPCB廃棄物の譲渡し及び譲受けには当たらず、不適切な対応であるとは認識していない。

4の4について

 御指摘の「手続上の瑕疵」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、特別措置法第17条においては、建物の引渡しに際し、御指摘の「PCB廃棄物の有無を確認」することとはされていないことから、在日米軍及び防衛省の間においてPCB廃棄物の有無を確認しなかったことは、特別措置法の規定に違反するとは考えていない。

4の5について

 御指摘の「平成14年時点で在日米軍が保管していると明らかにし、独自に処理するとの方針を決定していた3118トン」については、日本政府として、その詳細を承知しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。

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