[国会答弁]南西諸島に配置された陸自部隊と米海兵隊新部隊に関する質問と答弁(第216回国会)
- 日本の防衛
2024-12-31 12:55
防衛省は令和6(2024)年12月27日(金)、衆議院議員 屋良朝博(やら・ともひろ)氏が第216回国会に提出した質問「南西諸島に配備された陸上自衛隊の部隊と米海兵隊新部隊に関する質問主意書」とそれに対する答弁書を、閣議資料として報道に公開した。
内容はこちらの通り。
南西諸島に配備された陸上自衛隊の部隊と米海兵隊新部隊に関する質問主意書
令和6年12月17日提出 質問第87号
提出者 屋良朝博
南西諸島には陸上自衛隊(以下、「陸自」という。)の新たな駐屯地が開設され、新部隊が次々に配備されている。一方、2023年、沖縄県に駐留する米海兵隊の連隊のひとつが改編され、新部隊になった。これら部隊の機能、及び有事での共同作戦に関し、以下の事項について質問する。
一 2019年3月、鹿児島県奄美市及び瀬戸内町並びに沖縄県宮古島市に、2023年3月に沖縄県石垣市にそれぞれ陸自駐屯地が開設され、陸自のミサイル部隊が配備された。2024年3月には同県うるま市の勝連分屯地にも同様の部隊が配備された。それらの部隊は移動式の地対艦、もしくは地対空ミサイルを保有し、移動しながら敵艦、敵機に対応すると考えられるが、政府において配備の事実を明らかにされたい。
二 有事の際、陸自ミサイル部隊が駐屯地(分屯地)の外においてミサイルを発射した場合、発射地点が相手側からの攻撃目標になり、周辺の住民に被害が及ぶおそれはないのか、政府の見解を示されたい。
三 2024年7月から8月にかけて、陸自西部方面総監部と米第3海兵機動展開部隊司令部による実動訓練「レゾリュート・ドラゴン24」が行われ、ミサイル部隊が置かれた陸自石垣駐屯地も使用された。有事において離島に配備された陸自部隊が米海兵隊とどのように連携し、いかなる活動を実施するのか、政府の見解を示されたい。
四 石垣駐屯地等で実施された「レゾリュート・ドラゴン24」において想定された陸自の「領域横断作戦」(CDO)及び米海兵隊の「機動展開前進基地作戦」(EABO)とは、どのようなものであるか、政府の見解を示されたい。
五 2023年11月15日、沖縄県に駐留する米第3海兵師団の隷下に「第12海兵沿岸連隊」(MLR)が発足した。2020年に発表された米海兵隊の新たな戦力構想「フォース・デザイン2030」に基づき、EABOを担うために従来の海兵連隊を改編したものであるとされる。政府は、MLRの沖縄への配備について、2021年4月23日衆議院外務委員会において、米国政府より打診を受けた事実はないと答弁しているが、その後、同国政府より打診、もしくは通知、説明を受けたことはないか、詳細を示されたい。
六 EABO及びその作戦を担うとされるMLRの活動について、政府は、米国政府よりどのような説明を受けているか、詳細を示されたい。
七 政府は2023年11月14日の参議院外交防衛委員会において、離島部へのミサイル部隊配備について「全体として国家としての抑止力を強化し、そもそも攻撃自体を抑止していく」と答弁している。また、「抑止力」の定義について、政府答弁書(2020年10月2日の内閣参質202第24号)において、「侵略を行えば耐え難い損害を被ることを明白に認識させることにより、侵略を思いとどまらせるという機能を果たすものであると解してきている。」としている。万一の有事の際には南西諸島に配備したミサイル部隊によって相手側に「耐え難い損害」を与える事を想定しているのか、政府の見解を示されたい。
八 危機的事態に備えるための離島における「国民保護計画」の作成及び実施は、基本的に地元自治体に委ねられているが、具体的な方策は進展していないのが現状であると言わざるを得ない。政府はどのような対策で臨む方針であるか、見解を示されたい。
右質問する。
衆議院議員屋良朝博君提出南西諸島に配備された陸上自衛隊の部隊と米海兵隊新部隊に関する質問に対する答弁書
一について
自衛隊においては、南西地域における防衛体制の強化のため、地対空誘導弾部隊を、平成31年3月に奄美駐屯地に、令和2年3月に宮古島駐屯地に、令和5年3月に石垣駐屯地に、それぞれ配置した。また、地対艦誘導弾部隊を、平成31年3月に奄美駐屯地瀬戸内分屯地に、令和2年3月に宮古島駐屯地に、令和5年3月に石垣駐屯地に、令和6年3月に那覇駐屯地勝連分屯地に、それぞれ配置した。
二について
お尋ねについては、仮定の質問であり、お答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、政府としては、南西地域への部隊の配置は、我が国への攻撃を抑止する効果を高めるものであると考えており、国民の生命・財産と領土・領海・領空を確実に守り抜くため、国民の保護のための措置の実施を含め、万全を期してまいりたい。
三について
お尋ねの「有事」の具体的な状況が必ずしも明らかではないが、各種事態における自衛隊と米軍の具体的な連携は、個々の状況に応じて決定されるため、一概にお答えすることは困難である。その上で、日米間では、平時から緊急事態までのいかなる状況においても、我が国の平和及び安全を確保するための措置を採ることとし、自衛隊と米軍の間でも緊密に連携し、万全の対応を取ってきており、例えば、陸上自衛隊と米海兵隊との間では、それぞれの指揮系統に従い、共同作戦の実施の際の要領を踏まえた演練を行い、日米の連携強化及び共同対処能力の向上を図ってきたところである。
四について
一般論としては、御指摘の「領域横断作戦」については、「国家安全保障戦略」(令和4年12月16日閣議決定)において、「宇宙・サイバー・電磁波の領域及び陸・海・空の領域における能力を有機的に融合し、その相乗効果により自衛隊の全体の能力を増幅させる」としており、また、御指摘の「米海兵隊の「機動展開前進基地作戦」」については、令和3年5月12日の衆議院外務委員会において、中山防衛副大臣(当時)が「海軍の海洋アセットに加えまして、海兵隊が陸上ベースの選択肢を提供することにより、決定的な攻撃力を更に分散することを追求するための取組」と答弁しているとおりであるところ、お尋ねの「「レゾリュート・ドラゴン24」において想定された陸自の「領域横断作戦」(CDO)及び米海兵隊の「機動展開前進基地作戦」(EABO)」については、これらを前提に、令和6年6月21日に陸上幕僚監部が公表した「令和6年度米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン24)の概要について」において「陸自の領域横断作戦(CDO)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえ」実施するものとしているところである。
五について
令和5年1月11日付けの日米安全保障協議委員会共同発表において、「第12海兵連隊は2025年までに第12海兵沿岸連隊に改編される」(仮訳)ことを確認しているところである。
六について
御指摘の「EABO」については、四についてで述べたとおりであり、また、御指摘の「MLR」については、五についてで述べたとおりであるが、米側との個別のやり取りを含めたこれ以上の詳細については、相手国との関係もあり、お答えすることは差し控えたい。
七について
御指摘の「万一の有事」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、政府としては、「国家防衛戦略」(令和4年12月16日閣議決定)において、「万が一、抑止が破れ、我が国への侵攻が生起した場合には、その態様に応じてシームレスに即応し、我が国が主たる責任をもって対処し、同盟国等の支援を受けつつ、これを阻止・排除する」こととしている。
八について
御指摘の「危機的事態」の意味するところが必ずしも明らかではないが、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)第34条第1項及び第35条第1項の規定により、都道府県知事及び市町村長は、国民の保護に関する計画を作成しなければならないこととされているところ、例えば、沖縄県及び沖縄県内の全ての市町村においては、同計画を作成済みであり、同計画で定めるところにより、平素から国民の保護のための措置を実施するための訓練等を行っていると承知している。
政府としては、引き続き、国民の保護のための措置を実施するための訓練への協力や地方公共団体の職員を対象とした研修会の開催等を通じて、国民保護態勢の整備を推進していく考えである。
(以上)
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