IHI、地球観測衛星コンステレーションの構築で英国SSTL社と協力(9月8日)
- 日本の防衛
2025-9-10 13:30
重工業を主体とする日本の製造会社IHIは令和7(2025)年9月8日(月)、地球観測衛星コンステレーションの構築に関して英国SSTL社と協力することについて以下のように公表した。
地球観測衛星コンステレーションの構築で英国SSTL社と協力 ~小型衛星で世界をリードする英国企業との連携により日本の安全保障に貢献~
IHIは、地球観測衛星をはじめとする小型衛星製造で世界をリードする英国のSurrey Satellite Technology Limited (本社:英国、CEO:Martin Sweeting、以下「SSTL」)と、日本の情報収集・監視・偵察(ISR)能力の強化を目的とした地球観測衛星コンステレーションの構築に関して協力することで合意しました。
IHIとSSTLは、2社間の覚書(Teaming Agreement)を締結する署名式を、英国ロンドンで開催される防衛イベント「DSEI UK」(※1)において2025年9月10日(水)に行います。
日本と英国の2国間では、2023年の「広島アコード(※2)」で示されたように、宇宙および防衛分野で両国の関係が強化されています。さらに、2025年8月に東京で開催された日英防衛相会談において、両国政府が衛星を活用した地球観測や宇宙領域把握といった新興技術を含む協力の拡大に合意したことで、日英間の関係は一層強化されています。
SSTLは、1985年に英国サリー大学で設立され、小型衛星製造の分野で先駆的な役割を果たしてきました。2009年にはエアバス・ディフェンス・アンド・スペース社(Airbus Defence and Space Ltd、以下「エアバス」)の子会社となり、これまでに、SSTLは英国および世界各国の政府機関や軍向けに70基以上の小型・中型衛星を開発、製造、運用してきました。2024年8月には、英国国防省初の主権能力を有する小型衛星「TYCHE」(写真1)を設計・製造し、成功裏に打ち上げました。さらに、より高性能な衛星「JUNO」の契約も英国国防省と取り交わしています。
IHIとSSTLは、軌道上での運用において確かな実績を持つSSTLの衛星および衛星バス(※3)を活用し、日本のISR能力強化に資するコンステレーションの構築に向けて協力することで合意しました。
この合意には、SSTLが英国で構築しているコンステレーションと、IHIが日本で開発するコンステレーションの衛星データや撮像キャパシティの相互共有に関する協力も含まれています。この取り組みは、日本の国家安全保障とレジリエンスを強化するだけでなく、日本の宇宙産業の発展を活性化し促進するとともに、地球観測およびISR能力の分野における日本と英国の連携を深化させることを目的としています。
また、昨今、地政学的な不安定性が高まる中、すでに顕在化している、または新たに発生し得る課題に対応するため、日本政府は安全保障能力強化への投資を進めています。
IHIは、「技術をもって社会の発展に貢献する」という経営理念のもと、ものづくり技術を中核とするエンジニアリング力をもって、小型衛星コンステレーションの整備を主導していくことを目的に、2025年5月にSAR衛星で世界をリードするフィンランドのICEYE Oyと協業で締結しました。この連携において、安全保障、公共および商業利用を目的とする地球観測衛星データを提供するため、最大24基のSAR衛星のコンステレーションの整備に向けての取り組みを開始しました。
最終的にこのコンステレーションは、光学センサ、合成開口レーダー(SAR) 、VHFデータ交換システム(VDES、次世代AIS(自動船舶識別システム))、電波収集(RF)、赤外線(IR)、およびハイパースペクトル(高い波長分解能)を含む複数種類の衛星で構成される構想で、陸上や海上での作戦活動に必要な目標検出および追跡能力を提供することを目指しています。
IHIは、この取り組みが英国を始めとする同盟国・同志国との協力と連携を深化する上でも重要な役割を果たすことを目指しています。
【覚書(Teaming Agreement)締結に関する両社コメント】
IHI 取締役常務執行役員 航空・宇宙・防衛事業領域長 佐藤篤
今日の世界はますます不安定化しています。日本の国家安全保障戦略は、国家の戦略的利益を共有する同盟国や同志国との協力と連携への道を拓いています。IHIは、2020年に日本の防衛省が開始した「グローバル・コンバット・エア・プログラム(GCAP)」にエンジン開発を担う産業パートナーとして参加し、英国の産業界と緊密に協力しています。今回のSSTLとの協力体制の構築は、今後の日本の国家安全保障において重要となる宇宙分野における次世代の主権性の確保を実現するための第一歩となります。
SSTL CEO Martin Sweeting 氏
宇宙は近年、国家安全保障にとって極めて重要な存在となりつつあり、多くの国が情報・監視・偵察(ISR)の要件を支援するために衛星を配備するようになっています。衛星は、地球規模の到達性、プライバシー、優先度を提供できるためです。SSTLはこの分野で認められた先駆者であり、リーダーでもあります。同社は宇宙機の設計と製造を行うだけでなく、それらの衛星から安定した信頼性の高いサービスを提供してきた実績があります。英国政府によると、英国国防省(UK MOD)と日本防衛省(Japan MOD)は、防衛と安全保障協力に焦点を当てた深く連携しつつある戦略的パートナーシップを築いており、両国はヨーロッパとアジアの間で最も親密な安全保障パートナーとなっています。このチーミングアグリーメントを通じて、英国と日本の産業能力および強みを活用することで、IHIとSSTLは、複雑な宇宙ミッションと運用サービスを通じて、日英間の安全保障協力により効果的に対応することが可能となります。
【SSTLについて】
SSTLは、Airbus Defence and Space Ltd(「Airbus」)の完全子会社であり、幅広い宇宙分野の能力、地球観測画像および地球観測関連サービスを提供しています。SSTLは、地球観測および情報収集・監視・偵察(ISR)衛星を専門とし、衛星運用に必要な宇宙および地上インフラの製造・展開を行っています。また、商業および政府のエンドユーザーを支援するため、衛星運用、包括的なトレーニング、ライセンス生産を含むサービスも提供しています。
※1:DSEI UK(https://www.dsei.co.uk/)
英国ロンドンで開催される最大規模の防衛‧セキュリティ総合展示会。 2025年9月9日から12日にエクセル展覧会センター (Excel London)で開催される。
※2:広島アコード
2023年5月18日、G7広島サミットに先立ち、日本とイギリスの間で発表された包括的なパートナーシップ強化に関する合意であり、両国間の協力をさらに深化させ、特に安全保障、経済、技術、エネルギー、気候変動などの分野での連携を強化することを目的としている。
※3:衛星バス
通信、電源、姿勢制御など衛星の基本機能を担う共通プラットフォーム部分を指し、ミッション機器(観測装置など)を搭載するための基盤となる部分。
(以上)
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