小泉防衛大臣が臨時記者会見 水陸機動団の役割と防衛産業強化に言及(12月21日)
- 日本の防衛
2025-12-24 11:52
令和7年12月21日(日)16時12分~16時23分、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は、陸上自衛隊相浦駐屯地本部隊舎前において臨時会見を行った。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は下記の通り。
大臣からの発表事項
本日、陸上自衛隊相浦駐屯地を視察いたしました。ここ相浦駐屯地に所在する水陸機動団は、我が国の島嶼防衛作戦を実施する上で要の部隊であり、唯一無二の精鋭部隊であります。
また、今年7月開設された佐賀駐屯地に配備されているV-22オスプレイと一体的な運用体制を構築することで、南西地域を含む島嶼防衛能力が一層強化されます。本日は実際に水陸両用車AAV7に乗り、私自身、その機動性と防護性の高さを実感するとともに、水中での緊急脱出訓練、ヘリボーン訓練を視察し、隊員一人一人の国を守るという共通の使命の下、高い練度と島嶼防衛のプロフェッショナルとして緊張感をもって任務に精励する姿を確認でき、大変頼もしく感じました。
そして、こうした隊員を支えてくださっているのが、御家族と協力団体の皆様です。協力団体の皆様に対しては、防衛大臣として、日頃からの御支援に心からの感謝をお伝えし、率直な意見交換を行うことができました。御家族の皆様とは、この後、一緒に写真を撮るなど、お時間をいただいておりますので、御家族には、皆様が安心して生活し、隊員の帰りを安心して待てる環境作りに全力で取り組んでいくことを、私からお伝えしたいと思います。
明日は、三菱重工業長崎造船所において、最新鋭の「もがみ」型護衛艦の12番艦の命名式・進水式に出席し、あわせて工場を視察する予定です。
「もがみ」型護衛艦は、オーストラリアへの移転手続きを進めている護衛艦のベースとなるものであり、先日は、オーストラリアのマールズ副首相兼国防大臣にも見学いただきました。今回、命名・進水する12番艦は、平成30年度に建造を開始した1番艦から続く連続建造の集大成となる最終艦であります。
四方を海に囲まれ、重要なシーレーンを抱える我が国において、海上防衛力の維持・強化は不可欠であり、優れた艦船を製造・維持整備する拠点となる造船所は、その中核を構成するものです。明日は、我が国防衛を支える造船所の高い建造能力をこの目で直接確認し、建造工程や技術について理解を深めてまいります。
引き続き、南西地域の防衛体制の強化及び防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けて、直面する課題に、防衛省一丸となって取り組んでまいります。
記者との質疑応答
防衛費増額を受けた国内防衛産業の現状と今後の政府方針
記者 :
私から2問、1問ずつ順番に質問させていただきます。まず1問目、今あった冒頭発言と少し重複するところもあるんですけれど、明日「もがみ」型の12番艦の進水式に出席されて、長崎造船所を視察されるということですが、今、国内の防衛産業は防衛費の増額を受けて活況になっていると思います。今後も防衛費の更なる増額が見込まれる中で、国内の防衛産業の現状や今後の展望に対する大臣の所感と、今後造船業を含めた防衛産業に対して、政府としてどのように向き合っていくお考えなのかを聞かせください。
大臣 :
まず現状というお尋ねもありましたので、そこから申し上げたいと思います。
一般に、企業にとっての防衛事業は、高度な要求性能や保全措置への対応に多大な経営資源の投入を必要とする一方で、民生事業と比べると、必ずしも高い利益を見込めないことから、その魅力が低下して、近年、防衛事業の縮小や撤退が相次いでいたと認識をしています。また、新型コロナウイルスやロシアによるウクライナ侵略などによって、防衛産業のサプライチェーンにもリスクがあることが顕在化しました。
このような問題意識の下、令和5年以降、国家安全保障戦略等で防衛生産・技術基盤が「いわば防衛力そのもの」と位置付けられたことを踏まえ、防衛省として、企業の適正な利益の確保や防衛生産基盤強化法に基づく取組を推進し、これらの基盤の維持・強化を進めてきました。
現在、防衛予算の増加やこのような取組を背景に、防衛事業の魅力が一定程度回復し、設備・人員への投資も進みつつあると認識しています。
他方で、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じる中で、ロシアによるウクライナ侵略の教訓も踏まえながら、更に力強く持続可能な防衛産業を構築することが重要であると考えています。
造船業を含む産業界や関係省庁としっかりと連携して、強靱なサプライチェーンや柔軟な生産体制の構築、そして民生先端技術の取り込みの促進、こういった継戦能力の強化等に資する施策をしっかりと進めていきたいと思います。
前畑弾薬庫の移設・返還合意に対する受け止めと今後の進捗
記者 :
2点目なのですけれども、日米両政府が14年前に返還に合意したものの進展がなかった佐世保市のアメリカ軍施設の前畑弾薬庫をめぐって、市内の針尾島への移設計画の詳細について、今年の8月に日米両政府が合意したことに対する受け止めや進捗状況、それに今後の意気込みなどについて教えてください。
大臣 :
長崎県の佐世保地区は、極めて狭隘な場所にアメリカ軍・自衛隊、そして民間施設が混在している状況にあって、地元の佐世保市にとって、施設のすみ分けが課題となっていると承知をしています。
地元の佐世保市にとって、前畑弾薬庫の返還は最重要課題であると承知をしており、昭和46年(1971年)以降御要望をいただき、平成23年(2011年)1月、前畑弾薬庫の針尾島弾薬集積所への移設と返還について日米間で合意し、本年8月には、日米間で移設先における具体的な施設配置案について合意したところです。
今般の合意は、前畑弾薬庫の移設と返還に向けて具体的な進捗を示すものであり、これは、佐世保地区における各種施設のすみ分けという地元佐世保市の御期待に応えるといった面で、非常に大きな意義があるものと考えています。
現在、移設先の施設の整備に必要な浚渫範囲の検討等を行っており、今後、できる限り早期に移設と返還が実現するよう、引き続き取組を精力的に進めていきたいと思います。
南西諸島防衛の強化と水陸機動団への期待
記者 :
先ほど大臣から御紹介があったとおり、大臣が本日視察した水陸機動団は自衛隊の離島奪還能力向上に向けて発足し、南西諸島防衛の要として期待されています。現在、防衛省では戦略三文書改定に向けた検討が進められていますが、南西諸島防衛力強化の意義と、今後の強化に向けた所感とともに、改定する戦略三文書にどのように盛り込んでいくお考えか伺います。あわせて、中国の最近の動向を含めた厳しい安全保障環境を踏まえ、水陸機動団に期待するところを教えてください。
大臣 :
一層厳しさを増す安全保障環境を踏まえれば、南西地域の防衛体制の強化は、我が国の防衛にとって喫緊の課題であって、三文書の改定に向けた検討においても、引き続き重要であるということは間違いありません。
現時点で、新たな三文書の方向性を具体的に申し上げる段階にはありませんが、南西地域の防衛体制の強化によって、抑止力・対処力の一層の強化を図り、南西地域を含め、国民の皆様の命と平和な暮らしを守り抜いてまいります。
その中で、水陸機動団には、日々の訓練を通じて練度を向上させ、島嶼防衛作戦を実施する上での「要」としての役割を果たしていくことを期待をしていますし、今日、この目で直接訓練の様子を拝見をして、また隊員の皆さんとも直接言葉を交わして、様々な思いを伺う中で、改めて、私としては水陸機動団の一人一人の隊員について、心から誇りに思い、そしてまた、その皆さんが日々あらゆる事態に備えるために、厳しい訓練を重ねていることも、1人でも多くの方に、国民の皆さんに知っていただきたいと、そんな思いで今日の視察も含めて発信をしっかり強化したいというふうに思いました。
そしてまた、御家族の皆さんも、今日、待っていますけれども、隊員のみならず、一人一人の御家族の皆さんも、この厳しい任務に安心していただけるような、そういった処遇や、また家族の方も含めた生活環境の改善、全力で強化していきたいと思います。
「もがみ」型護衛艦能力向上型の装備移転と今後の課題
記者 :
明日の視察に関連してお尋ねします。「もがみ」型護衛艦の能力向上型をめぐっては、オーストラリアが次期汎用フリゲート艦として選定されたほか、ニュージーランドも関心を示しており、さらにインドネシアも関心があるという一部報道がありました。国内の製造能力には限界があると思いますが、「もがみ」型護衛艦の能力向上型の輸出をはじめ、装備移転に向けた課題と、今後どのように各国と協議を進めていくお考えか聞かせてください。
大臣 :
今、相手国との関係がありますので、詳細については控えますが、私も各国と様々、コミュニケーション重ねる中で、日本の装備品の高い技術力に対する世界からの期待があるということは間違いないと受け止めています。
その上で、オーストラリア以外の国に対する護衛艦の移転について決まったことはありませんが、いずれにせよ、「もがみ」型護衛艦の能力向上型を含め、海上自衛隊の艦艇については、防衛力整備計画に沿って整備を進めているところであり、我が国の防衛に穴を開けることがないように取り組んでいくことは当然のことであります。
「もがみ」型護衛艦の能力向上型の移転については、まずは、オーストラリアの納入期限に間に合うように、今年度中に契約を結ぶための調整を進めていくとともに、我が国の装備品に関心のある国々に対しては、必要な情報提供を行いつつ、例えば、実際の装備品を見てもらうなど、個々の関心に沿った対応を、私自身も積極的に取っていきたいというふうに思います。
また、お尋ねの装備移転に向けた課題については、相手国が求める取得・運用経費や取得時期等を考慮した上で、関係省庁、そして関係企業としっかり連携をして、これまで以上に官民一体となって装備移転に取り組むこと。そして「防衛装備移転三原則の運用指針」の見直しを含む、防衛装備移転の更なる推進のための制度面の施策にも、今、与党の間で様々議論がされていますが、スピード感をもって取り組むこと。これが重要であって、私自身もしっかりと各国に対するトップセールスを強化していきたいと思います。
(以上)
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