第3回日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)小泉防衛大臣の基調講演を公表(2月23日)
- 日本の防衛
2026-2-27 09:30
防衛省は令和8(2026)年2月23日(月祝)、第3回日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)小泉防衛大臣基調講演について以下のように公表した。
また、基調講演の中で大臣から提案された「次世代リーダーシップ安全保障プログラム」の概要についても以下に転載する。
第3回日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)小泉防衛大臣基調講演
太平洋を、強靭な連結の中心へ
令和8年2月23日
冒頭
太平洋島嶼国のリーダーの皆さま。本日オブザーバーとして参加頂いている東南アジアの友人の皆さま。そして、パートナーの皆さま。日本国防衛大臣の小泉進次郎です。皆さまを日本にお迎えできることを心から光栄に思います。
私たちの間には広大な太平洋があります。もちろん、この太平洋は私たちを隔てる壁ではありません。私たちにとって、太平洋は、これまでずっと、共に抱き、そして私たちを結びつける青い道(blue corridor)であり続けてきました。私は、皆さまが掲げる「ブルー・パシフィック大陸」という言葉にも、深く共鳴しています。確かに、この地域は、もはや島々の集まりではありません。今や、世界で最もダイナミックな、海の上に広がる、一つの大陸となっています。
私は、日本と太平洋島嶼国をつなぐ玄関、横須賀で生まれ育ちました。その私が今日、皆さまにお伝えしたいメッセージはシンプルです。太平洋を「平和の海」として守り抜く。そのために、「ブルー・パシフィック大陸の守護者」である皆さまを中核に、この会場にいる皆さまの結びつきを強化し、自律的で強靭な地域を共に築き上げていこう、ということです。
今日は、私から三点お話します。第一に、私たちが直面する三つの課題、第二に、どのようにこの課題を乗り越えていくか、第三に、そのための三つの取り組みの柱、この三点です。
1.どのような課題に直面しているか
まず一点目の、私たちが直面する三つの課題です。皆様、今、この美しい「ブルー・パシフィック大陸」には、三つの荒波が押し寄せています。
第一に、「沈みゆく土地」という現実です。海面上昇や気候変動により激しくなるサイクロン、洪水、干ばつ。これらは単なる環境問題ではありません。故郷を奪い、暮らしを揺さぶり、国家の存続までも脅かす、まさに皆さまが繰り返し世界に訴えてこられたとおり、「安全保障上の最大の脅威」です。
第二に、「海洋の秩序」への挑戦です。違法・無報告・無規制(IUU)漁業、密航・密輸、薬物や武器の越境犯罪。これらは、海の資源を奪い、各国の主権を侵食しているだけではありません。私たちの社会と経済を着実に蝕み、法の支配を根本から揺るがしています。皆さま、法の支配なき海に、平和も、繁栄もありません。
第三に、「あらゆるものの武器化」です。経済、技術、資源、情報、サイバー空間。これらを悪用した政治的威圧や偽情報の氾濫。これらは既に、我々の社会と経済の脆弱性を突く、現実の脅威となっています。有事と平時、軍事と非軍事、真実とフェイクの境界線は、もはや明確ではありません。
そして、この三つの荒波は、互いに連鎖し、増幅し合っています。また、もはや一国だけでは抗うことはできないものです。だからこそ、私たちの備えも、単発の取組では足りないのです。相互に連結されなければなりません。
2.どのように乗り越えていくか
二点目に、どのようにこの課題を乗り越えていくか、です。私たちが守るべきものは、ただ一つです。それは、法の支配に基づく、自由で開かれた「平和の海」です。これをどう守っていくか。これが今日、私からお話したい二点目です。
私の提案は、明確です。それは、誰かが一つの巨大な枠組みを作り、皆さまをその中に押し込めることではありません。「ブルー・パシフィック大陸の守護者」である皆さま自身の、「自国と地域の未来は自分たちで選び取る」という崇高な決意、この決意を、我々自身の努力で、点から線に繋ぎ、線から網に編み上げ、幾重にも重ねていく、ということです。
そして、そのような網を地域内、さらには地域の外にも広げ、一部の国が危機に瀕しても、災害に見舞われても、地域全体で跳ね返す。そのような強靭性を生み出していく、ということなのです。
私は、この考え方を、「多層的な相互連結性の網」と呼んできました。皆さま、これは机上の空論ではありません。
例えば、これまで11年続けられてきているクリスマス・ドロップ作戦。今年も、日本、米国、カナダ、韓国の各空軍と、ミクロネシア、パラオの各当局が連携し、数多くの支援物資を届けました。
例えば、4年前のトンガの大規模火山噴火。トンガに緊急援助物資を届ける日本の輸送艦に燃料補給をしてくれたのは、オーストラリアの補給艦でした。輸送機が給油を受けたのもオーストラリアです。地域の危機に対して、志を同じくする国々がそれぞれの取組を連結させ、シナジーを生み出し、地域全体の力としていく。これが、相互連結性の力です。
皆さまが掲げる「ブルー・パシフィック大陸のための2050年戦略」には、連携のとれた対応を通じて課題に効果的に対処する、という考え方が明確に示されています。私たちの理想とアプローチは、深く響き合っています。
3.具体的に何に取り組んでいくか
さて、本日お話したい三点目です。地域全体で「相互連結性」を強化するための3つの柱、すなわち、「人と人の連結」、「危機対応の連結」、「強靭性の連結」です。
まず、「人と人との連結」です。信頼の出発点は、顔の見える関係です。皆様、このJPIDDも、そのための重要な場です。今、日本の防衛大学校では、フィジーとトンガから来た四名の若き留学生が、日本の学生とともに学び、汗を流しています。今日もここに来てくれています。彼らに大きな拍手をお願いいたします。
さらに、日本は今年、新たに「次世代リーダーシップ安全保障プログラム」を始動させます。実務者同士が、顔の見える信頼関係を築く、新たな取組です。彼らは、将来、日本と皆さまの地域を繋ぐリーダーとなっていくはずです。
次に、「危機対応の連結」です。気候や災害、感染症、IUU漁業、越境犯罪。これらはすべて国境を軽々と飛び越えます。だからこそ、私たちの対処も国境を越えて連結されなければなりません。日本は、地域全体の海洋状況把握と、海上法執行能力の向上を、強力に支援しています。昨年、海上自衛隊は12の島嶼国を訪れ、11ヵ国との間で立入検査などの共同訓練を行いました。今後も、皆さまと共に危機と災害に強い地域を作っていきます。
第三に、「強靭性の連結」です。サイバー攻撃、AIの悪用、偽情報。目に見えない新たな脅威です。この脅威は、既に、我々の経済を脅かし、社会を分断する現実の脅威となっています。サイバーセキュリティの強化、AIの健全な活用、偽情報への対処。こうした課題にも皆さまとともに取り組んでいきます。民主主義と情報空間を一緒に守り抜くのです。
今回、JPIDDは歴史的な一歩を踏み出しました。皆さま、この会場を見渡してみてください。大洋州島嶼国のリーダーに加え、初めて、東南アジアの友人たちも参加してくれています。
これは、我々JPIDDが進むべき、今後の新しい方向性を、明確に示すものです。日本と日米同盟や同志国、太平洋島嶼国、そして東南アジア。それぞれの自由な選択の上に、相互連結性を高めていく。
そして、我々全体で、平和と繁栄を脅かす、いかなる危機や危険に対しても立っていられるように、強靭性と自律性を高めていく。
皆さまとともに、そのような未来に向かって、さらに力強く、具体的に、スピーディーに取り組んでいきたい。それが私の最後のメッセージです。
結び
今、「連結性の網」は、さらに広がっています。
2007年、安倍総理はインドの地で「二つの海の交わり」というスピーチを行いました。太平洋とインド洋が、自由と繁栄の海として一つに結ばれていく、というビジョンです。
先月、私はホノルルで、また先々週、ミュンヘンで「インド太平洋と欧州大西洋の安全保障は一体不可分である」と申し上げました。かつての「二つの海」は、今や、太平洋、インド洋、大西洋という「三つの海」に広がっています。そして、その中心にある一つの海、それが私たちの太平洋です。
太平洋の海は、これからも荒れることがあるでしょう。しかし、もし私たちが、地域を超えて、強固で多層的な「網」を作り上げることができれば、どんな荒波が起こっても、太平洋は「平和の海」であり続けることができます。
海洋は「自由で開かれた」ものでなければなりません。私たちは、共通の志に支えられています。皆さま、はるか昔、交易によって「二つの海の交わり」をもたらしたのは太平洋の先人たちでした。「三つの海」の時代の主人公も、我々です。そのためのJPIDDです。率直に語り合い、共に行動していきましょう。
明日でロシアによるウクライナ侵略が始まってから4年になります。今回のJPIDDが、「力による現状変更は許されてはならない」という平和に対する意思を共有する場になれば幸いです。
ありがとうございました。
次世代リーダーシップ安全保障プログラム
太平洋島嶼国の国防省(軍未保有国においてはそれに準ずる組織)等において、将来、安全保障・防衛政策の中核を担うことになる若手・中堅の人材を日本に招へいし、相互理解の促進や人的ネットワークの構築を企図するもの。
2026年度より開始し、初年度は軍保有国(フィジー、PNG、トンガ)3か国から各1名を、約1週間招へいし、防衛政策に関するブリーフィング・意見交換、部隊視察の実施等を検討。次年度以降は、軍未保有国に拡大して招へい予定。
(以上)
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