航空自衛隊、新田原基地所属T-4練習機の墜落事故調査結果を公表(7月31日)
- 日本の防衛
2026-8-3 19:00
航空幕僚監部は令和8(2026)年7月31日(金)15時05分、新田原基地所属T-4練習機の墜落に係る事故調査結果について以下のように発表した。
新田原基地所属T-4練習機の墜落に係る事故調査結果について
1 事故の概要
(1)日時:令和7年5月14日(水)15時8分頃
(2)場所:愛知県犬山市池野入鹿池(名古屋飛行場北東約6nm(約11km))
(3)機種:T-4練習機
(4)概要:新田原基地(第5航空団)所属T-4練習機が要務飛行のため名古屋飛行場を離陸後に入鹿池に墜落
(5)被害:搭乗員2名死亡、T-4練習機1機の破壊
2 事故の経過
(1)事故機は、機体定期修理のため三菱重工業小牧南工場へ搬入したF-15戦闘機の操縦者(事故機後席操縦者)を帰隊させるため、事故機前席操縦者の単独飛行により、5月14日(水)9時29分に新田原飛行場を離陸し、10時24分に名古屋飛行場に着陸した。
(2)14時30分頃、事故機前席操縦者及び事故機後席操縦者は、新田原基地に帰隊するため、事故機に搭乗を開始した。その際、事故機後席操縦者は、機体定期修理に搬入したF-15戦闘機のS-KIT(射出座席に収納するサバイバル・キット)を自隊に持ち帰るため、操縦席内に持ち込んだ。
(3)15時6分、事故機は新田原飛行場に向け名古屋飛行場を離陸した。
(4)15時7分40秒、事故機前席操縦者は中部ターミナル管制所の高度通報の要求に対し、「今、高度4,000ft(約1,220m)に到達した」と送信した。
(5)15時7分43秒、中部ターミナル管制所からの管制指示に対する事故機からの応答はなかった。
(6)15時7分44秒、航空自衛隊小牧基地の空港監視レーダーでは、事故機は高度約4,200ft(約1,280m)まで上昇していた。
(7)15時7分48秒、航空自衛隊小牧基地の空港監視レーダーでは、事故機は高度約3,800ft(約1,160m)まで降下していた。
(8)15時7分52秒、事故機が高度約2,600ft(約800m)まで降下したのを最後に、事故機の航跡はレーダーから消失した。
(9)16時38分、捜索救助活動を行っていた救難救助機が、名古屋飛行場北東約6nm(約11km)の入鹿池の水面に、事故機の機体の一部を発見した。
(10)5月16日、事故機前席操縦者及び事故機後席操縦者が水中で発見された。
(11)5月22日、事故機前席操縦者及び事故機後席操縦者の死亡が確認された。
3 事故の原因
本事故は、事故機が名古屋飛行場を離陸後、事故機操縦者が脱出することなく入鹿池に墜落したものである。
事故調査においては、航空交通管制、航空警戒管制、気象、操縦、指揮管理、整備及び器材、医学、心理の各側面から多角的な検討を実施した。加えて、事故機にFDR(飛行記録装置)が搭載されていなかったこと、並びに回収品の損傷等により客観的裏付けとなる情報が不足していたため、空港監視レーダーの航跡データに基づく飛行諸元の推算及び飛行状態の解析、並びに後席に持ち込まれたS-KITの影響に係る検証等を含め、総合分析を行った。
以上の検討及び分析を実施したものの、墜落に至る直接的な原因は特定できなかった。
本事故に至る過程において影響した可能性が考えられる要因について、以下のとおり整理した。
(1)事故機前席操縦者の不適切な操作
ア 事故機前席操縦者は、離陸前にトランスポンダーの設定を失念し、上昇中に設定する際に姿勢指示器及び速度計の確認が疎かになり、操縦指令で規定された速度を超過した可能性が考えられる。
イ 事故機前席操縦者は、トランスポンダーの設定及び指定された方位へのロールアウトに意識が集中したため、高度計の確認が疎かになり、指定された高度へのレベルオフを失念した可能性が考えられる。
ウ 事故機前席操縦者は、指定された高度からの逸脱を局限するため、速度を超過したままレベルオフ又は降下の操作を行い、+1G未満の状態が生起した可能性が考えられる。
(2)事故機後席操縦者が操縦席に持ち込んだS-KITの操縦桿への干渉
事故機前席操縦者の不適切な操作で+1G未満の状態が生起したことにより、事故機後席操縦者のS-KITの保持が失われ、S-KITが操縦桿に干渉した可能性が考えられる。
(3)S-KITの操縦桿への干渉による意図しない降下姿勢と回復操作の阻害
S-KITが操縦桿に干渉したことにより、意図しない降下姿勢になるとともに、操縦者の回復操作を阻害した可能性が考えられる。
(4)事故機操縦者による脱出操作について
事故機操縦者は墜落直前に脱出操作を行ったものの間に合わなかったか、又は墜落までに脱出操作を行わなかったかのいずれかが認められ、その要因は、脱出を決心する時間的余裕がなかった、回復操作を優先した、及びS-KITにより脱出操作が阻害されていた等の可能性が考えられる。
(5)事故機後席操縦者がS-KITを操縦席に持ち込んだ背景
機体定期修理に伴うS-KITの輸送手段の選定基準が部隊において明確に整理・統一されておらず、輸送手段の選定に係る判断にばらつきが生じていたことから、機体定期修理に伴うS-KITの輸送手段の管理が十分でなかったことが認められる。
4 再発防止策
(1)操縦系統に干渉する可能性を有し航空機の安全な運航を阻害する要因となる物品の操縦席への持込みの禁止
(2)機体定期修理等に伴うS-KIT等の輸送手段の選定に係る判断基準の明確化及び周知徹底
(3)基本手順及び基本動作の厳守
(4)ノンテクニカル・スキル(NTS)を活用した相互補完
(5)低高度、高速域における飛行特性の把握
(6)機を失しない脱出の決心
※補足
・トランスポンダー
地上のレーダーや他の航空機からの質問電波を受信し、自機の識別番号や高度などの運航情報を自動的に返信する搭載機器のこと。
・ロールアウト
旋回を終了し所望の方位に機首を向けること。
・レベルオフ
上昇又は降下から所望の高度で水平飛行になること。
・ノンテクニカル・スキル(NTS)
Non-Technical Skills、操縦技量や整備技術などの専門技能(Technical Skills)ではなく、安全かつ効果的に任務を遂行するための認知能力やコミュニケーション能力等のスキルのこと。

(以上)
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