[国会答弁]自衛隊ホームページ上の「辞世の句」「善戦敢闘」記載に関する質問答弁
- 防衛省関連
2024-6-27 13:13
防衛省報道室は令和6(2024)年6月25日(火)10時43分、第213回国会における閣議資料のうち、「衆議院議員 屋良朝博君提出 陸上自衛隊第十五旅団公式ホームページの「辞世の句」及び陸上自衛隊幹部候補生学校教育要領の「善戦敢闘」の記述に関する質問主意書」を報道に公開した。その質問主意書と答弁書を以下に転載する。
質問主意書
令和6年6月14日提出
質問第155号
陸上自衛隊第15旅団公式ホームページの「辞世の句」及び陸上自衛隊幹部候補生学校教育要領の「善戦敢闘」の記述に関する質問主意書
提出者 屋良朝博
沖縄県に駐留する陸上自衛隊第15旅団が公開するホームページ上に、先の大戦末期の沖縄戦で旧陸軍第32軍の牛島満司令官が遺した「辞世の句」が掲載されている。今月、そのことが報道されたことにより、国会質疑でも取り上げられた。ついては、自衛隊と旧日本軍との関連性等について、以下質問する。
1 「辞世の句」が掲載されているのは、陸上自衛隊第15旅団公式ホームページの「第15旅団沿革」と題するページであるが、同旅団の前身に当たる「臨時第1混成群」の初代群長である故・桑江良逢1等陸佐(当時)による1972年当時の訓示が掲載されており、その中で引用されている。この訓示(辞世の句も含め)はいつからホームページ上に掲載されているのか、答えられたい。
2 木原稔防衛大臣は、2024年6月4日の参議院外交防衛委員会で、「沖縄県出身の初代群長が部隊発足の際に、沖縄県の発展や沖縄県民の平和な明るい生活、福祉の向上に寄与したいとの決意を示した訓示とともに、本人が強い思いを持って、御指摘の辞世の句を合わせて寄稿をしていました」とした上で、沖縄の本土復帰直後の歴史的事実を示す資料として掲載することが部隊の意図であったとの報告を受けている旨述べたが、そもそも本土復帰後の沖縄で初めて自衛隊の部隊が発足するに当たり、沖縄戦時の司令官の句を桑江群長が引用したこと自体、旧日本軍と自衛隊の連続性を強く示すものであり、その訓示をあえて今日掲載することは、自衛隊が旧日本軍を後継する組織であることを内外に強調するものであると考えられるが、政府の見解を問う。
3 牛島司令官は、沖縄戦終盤、敗戦が決する戦況にあってなお降伏を許さず、「県民の4人に1人」と言われる大きな犠牲を出すに至った。悲痛な記憶を抱く沖縄県民にとって、その最高責任者の句を現代の自衛隊が公式ホームページに掲載することは容易に理解しがたい。政府は、掲載の意図について、歴史的事実を示すためとしているが、このような句の掲載自体が多くの沖縄県民の心に苦痛を与えるものであると
の認識はあるか、伺いたい。
4 木原防衛大臣は、2024年6月7日の記者会見で、「情報発信に当たっては、その趣旨が正しく伝わるように努める必要がある」、「自衛隊の活動には、地元の理解を得ることも不可欠であり、このような観点から、吟味した上で情報発信をしていく必要がある」旨述べている。一方で、「部隊の情報発信の在り方については、基地・駐屯地の地元の方々と一番身近に接し地域の実情を把握している各部隊において、しかるべく判断、対応していくもの」という趣旨の発言をし、現場に対応を委ねている。
しかし、その地元を最もよく知る部隊が、地元住民の悲痛な記憶を呼び覚ます不適切な情報を発信したことにより、大きな反発を招いている。このように、大臣が各部隊に求めている適切な情報発信が行われていないにもかかわらず、それに対する監督責任を放置するかのような大臣の発言は、到底看過できるものではない。
この際、基地・駐屯地周辺の住民の信頼を回復するため、沖縄のみならず全国の部隊に対し、適切な情報発信の在り方を検討し、不適切な事案があれば改善に取り組むよう、大臣自らが指示を発するべきであると考えるが、政府の見解を伺いたい。
5 陸上自衛隊幹部候補生学校が、沖縄戦について、「日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得た」との表現を教育要領に記載していたことが市民団体の調査で明らかになったが、いつごろからそのような表現がなされているのか、明らかにされたい。
6 「善戦」の意味は「力を尽くして良く戦い抜くこと」(小学館「デジタル大辞泉」より)であり、「敢闘」は「勇敢に戦うこと」(同)である。一般住民にあれほどの膨大な犠牲を強い、沖縄全土に甚大な被害の爪痕を残すに至った沖縄戦での旧陸軍32軍の戦い方を賛美するかのように、沖縄戦が肯定的な言葉を用いて表現されている。このことについて、 木原防衛大臣は、2024年6月7日の記者会見で、「善戦敢闘という言葉は、沖縄戦の1つの要素として、戦術の態様を表現したものであり、これだけをもって沖縄戦を評価しているわけではない」旨述べている。
それでは、沖縄戦について政府は、開戦の必要性、旧日本軍の戦術の妥当性、当該戦術により招いた結果とその責任の重大性について、それぞれどのように評価し、また、これらを踏まえてこの戦争をどのように総括しているのか、明確に示されたい。
7 同記者会見において同大臣は、その言葉を教育に用いていることについて、「沖縄戦史についての教育によって当時の凄惨な戦いの実態を深刻に認識させるために、善戦敢闘の文言を引用して教育要領に書き込んだ。これも沖縄戦の1つの要素であり、幹部候補生には全てを教育する必要がある」、「一般的に、戦史を引用する場合には、様々な角度から評論家や歴史家が表現した言葉の全てを教育要領に取り入れるべきであるが、それら全てを教育することは難しいため、ある程度選抜する必要はある。どのような文章を用いていくかは、個別の教育課程の内容にもより、それは適切に判断していく」旨述べている。
それでは、自衛隊の教育において、沖縄戦における旧日本軍の戦い方を否定的にとらえる用語や解説として、どのようなものを用いているのか、例示されたい。また、それにより教育を受けた幹部候補生が、沖縄戦での戦い方が決して賛美されるべきものではないことを理解していると防衛省は考えているか、見解を伺いたい。
8 陸上自衛隊第15旅団公式ホームページの「辞世の句」、及び陸上自衛隊幹部候補生学校教育要領の「善戦敢闘」の記述について、削除もしくは修正する考えはないか、明らかにされたい。
右質問する。
答弁書
衆議院議員屋良朝博君提出陸上自衛隊第15旅団公式ホームページの「辞世の句」及び陸上自衛隊幹部候補生学校教育要領の「善戦敢闘」の記述に関する質問に対する答弁書
1について
お尋ねについては、平成30年から陸上自衛隊第15旅団ホームページに掲載されている。
2について
お尋ねについては、令和6年6月11日の参議院外交防衛委員会において、木原防衛大臣が、「当該ホームページの記載につきましては、15旅団の前身部隊である臨時第1混成群の部隊史を基に、沖縄の本土復帰直後の歴史的事実を示す資料として、ホームページ内の部隊の沿革を紹介するページに掲載されているということでございます。」と答弁しているとおりであり、御指摘のように「自衛隊が旧日本軍を後継する組織であることを内外に強調するもの」とは考えていない。
3について
お尋ねについては、令和6年6月11日の参議院外交防衛委員会において、木原防衛大臣が、「御指摘の記載に関しましては、様々な御意見があるということを承知しております。当該ホームページの記載につきましては、15旅団の前身部隊である臨時第1混成群の部隊史を基に、沖縄の本土復帰直後の歴史的事実を示す資料として、ホームページ内の部隊の沿革を紹介するページに掲載されているということでございます。」と答弁しているとおりである。
4について
お尋ねについては、令和6年6月13日の衆議院安全保障委員会において、木原防衛大臣が、「部隊の情報発信の在り方につきましては、日頃からやはり地元の方々と身近に接し、そして地域の実情に通じている各部隊においてしかるべき判断、対応をすべきもの」と答弁しているとおりである。
5について
御指摘の「「日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得た」との表現」は、防衛省において確認したところでは、陸上自衛隊幹部候補生学校の学校長が発する一般幹部候補生課程の陸上自衛隊幹部候補生学校一般命令(以下「一般命令」という。)における、「校内待機及び現地教育中止時の教育要領(基準)」において、平成28年度から令和2年度までの間に使用していた。
6について
お尋ねのいわゆる「沖縄戦」については、一般に、先の大戦において沖縄本島及びその周辺で行われた戦闘行為のことを指し、それについて様々な意見があると承知しているが、政府として定義して用いている用語ではなく、お尋ねの点について政府として統一した見解は有しておらず、5で御指摘の「「日本軍が長期にわたり善戦敢闘し得た」との表現」は、あくまで旧日本軍の一部の戦術の態様を表現したものである。
その上で、先の大戦において、沖縄は国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くし難い苦難を経験されたと承知している。このような悲惨な経験を風化させることなく、次の世代に継承することが重要であると認識している。
7について
前段のお尋ねについては、御指摘の「沖縄戦における旧日本軍の戦い方を否定的にとらえる用語や解説」の意味するところが必ずしも明らかではないが、陸上自衛隊幹部候補生学校の一般幹部候補生課程において、一般命令に基づき、例えば、第98期一般幹部候補生I課程(前段)沖縄戦史現地教育実施計画の「沖縄戦史を現地において教育し追体験させることにより、戦場、特に国土戦の実態を深刻に認識させる」との目的の下、沖縄県平和祈念資料館やひめゆりの塔等の研修により、先の大戦において、沖縄は国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲となり、筆舌に尽くし難い苦難を経験されたことを教育している。
また、後段のお尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「沖縄戦での戦い方が決して賛美されるべきものではないこと」については、6についてでお答えしたとおりであり、当該研修により、同計画の目的である「沖縄戦史を現地において教育し追体験させることにより、戦場、特に国土戦の実態を深刻に認識させる」こと及び「使命感、責任感等を涵養し幹部自衛官としての資質を向上させる」ことにつながっているものと考える。
8について
御指摘の「辞世の句」については、4についてでお答えしたとおりである。また、御指摘の「「善戦敢闘」の記述」については、5についてでお答えしたとおり、既に使用していない。
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