中谷防衛大臣、G7国防相会合後の臨時記者会見(10月19日)
- 日本の防衛
2024-10-24 09:45
令和6(2024)年10月19日(土)19時39分~20時00分(現地時間)、中谷元(なかたに・げん)防衛大臣は、イタリア・ナポリのグランドホテル・ベスビオで臨時会見を行った。この臨時会見は、G7国防相会合セッション、日米、日独、日英伊防衛相会合の後に行ったもの。
内容は、以下のとおり。
発表事項
G7国防相会合の5つのセッションについて
大臣 :まず、私の方から発表させていただきます。今回が初開催となりましたG7国防相会合におきましては、5つのセッションがありまして、第1に中東、第2にアフリカ、第3にインド太平洋、第4にウクライナ、第5に防衛準備態勢、この5つのセッションを通じまして、各地域や国防当局を取り巻く重要な課題について、G7のメンバー、そしてNATO間で有意義な議論を行いました。
まず中東に関するセッションにつきましては、ガザ情勢、そしてレバノン情勢も含めて幅広く意見交換を行いました。そして、まず第1に、これ以上の民間人の犠牲、また事態の更なるエスカレーション、これを回避するために即時停戦、そして全ての当事者による緊張緩和のための建設的な関与、これを求めるということで一致をいたしました。第2に、民間船舶に対するホーシ派の攻撃を非難をし、そして航行の自由の重要性を再確認をいたしました。
次に、アフリカに関するセッションにつきましては、アフリカの抱える安全保障上の課題、そしてアフリカ諸国との連携強化の重要性について認識を共有をしつつ、偽情報など、アフリカに不安定をもたらす戦略の複数の国家・非国家主体、これが追求していることへの懸念、これを表明いたしました。
第3に、インド太平洋地域に関するセッションでは、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントを確認をいたしました。そして、東シナ海、南シナ海の状況に深刻な懸念を表明をし、そして力又は威圧による一方的な現状変更の試みに対して強く反対をし、そしてロシアによるウクライナ侵略に関して中露、中国とロシア、これの軍事連携に強い懸念を表明をいたしました。また、北朝鮮による核・ミサイル計画の継続的な進展を非難をし、増大するロシアと北朝鮮の間の軍事協力にも懸念を表明をいたしました。
次に、ウクライナに関するセッションにおきましては、ロシアによる侵略という国際秩序の根幹を揺るがす暴挙に対しては、国際社会が一致して、毅然と対抗していく必要があるということを私から発言をし、ウクライナに対する揺るぎない支持で一致をいたしました。
そして、第5の防衛準備態勢に関するセッションでは、強靱なサプライチェーンを確保しつつ、防衛生産・技術基盤の維持・強化に対応していくコミットメントを表明をいたしたほか、人的基盤確保のためのベストプラクティスをG7メンバー及びNATO間で共有する重要性について一致をいたしました。
各国との防衛相会談について
大臣 :また、G7国防相会合の機会を捉えて、日米防衛相会談をはじめとする各国との防衛相会談を実施をいたしました。
まず、日米の防衛相会談では、第1に反撃能力の効果的な運用、第2に指揮・統制枠組の向上、第3に南西における日米の共同プレゼンスの拡大、そして第4に防衛産業協力といった取組を進めて、日米同盟の抑止力・対処力、これを一層強化をしていくということで一致をいたしました。
また、日伊・日独で防衛相会談を行いました。これは、防衛協力・交流について意見交換を行うとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する上で、緊密に連携をしていくということを確認をいたしました。
そして、日伊防衛相会談におきましては、日伊物品役務相互提供協定(ACSA)、これが先日実質合意に至ったことも歓迎をいたしました。この協定は、燃料の提供など物品の相互の提供を行うという協定でございます。
我が国としましては、今後もG7メンバーをはじめとする同盟国・同志国との連携を強化をいたしまして、インド太平洋地域を含む国際社会全体の平和と安定、繁栄のために全力で取り組んでいく所存でございます。
日英伊の防衛相会合について
大臣 :続きまして、日英伊の防衛相会合の実施につきまして発表いたします。本日午後、ヒーリー英国の国防大臣とクロセットイタリア国防大臣と日英伊防衛相会合を実施をいたしました。非常に前向きな雰囲気の中で、大変有意義な議論ができました。
まず、本日の会合においては、GCAP、これを管理していく国際機関であるGIGO、このカウンターパートとして、合弁企業、いわゆるジョイント・ベンチャーの設立に向けて、議論が大きく進展をしたということを確認をいたしました。これによりまして、GCAPの推進の両軸となる、そして両輪となるGIGOとジョイント・ベンチャーの始動に道筋がついたことから、次は、来年中に両者の間で最初の統合契約、これを締結すべく、作業を加速するというところで一致をしたところでございます。
なお、ジョイント・ベンチャーの我が国の構成企業は、日本航空機産業振興株式会社、通称JAIECです。JAIECは、一般社団法人日本航空宇宙工業会、通称SJACと三菱重工業株式会社の共同出資による企業でございますが、SJACが有する国内外のサプライチェーンをはじめとする航空機産業に関する知見と、そして三菱重工が有する航空機開発の知見を集約をして、オールジャパンの体制の下でGCAPに取り組んでいくということが期待をされるわけでございます。
また、GIGOについては、日英伊防衛大臣間で、その準備状況について確認をしまして、改めて年内の設立に向けて、更に作業を加速をしていくということで一致をいたしました。そこで、日本が派遣をすることで決定していたGIGOの初代首席行政官については、私から派遣準備を進めている旨を説明をいたしました。私としては、防衛審議官を務めるなど国際経験を豊富に有する岡真臣氏に、初代トップとして日英伊の混合チームを率いて頂く考えでございます。
今後、イギリス、イタリアと最終調整していくことで一致しました。我が国の安全保障に不可欠であり、また、日英及び日伊の防衛協力の中核をなすGCAPについては、私のリーダーシップの下、イギリスとイタリアと大臣レベルも含めしっかり連携し、完成に向けて邁進していく考えでございます。
質疑応答
中東情勢について
記者 :中東情勢をめぐっては、イスラエルがイランによるミサイル攻撃への対抗措置を採るとしていますが、この点に関して今日の会合で自制を求める意見というのは出ましたでしょうか。
大臣 :G7の国防相会合におきましては、ガザ地区、そしてレバノンを含む中東地域の情勢に関して、これ以上の民間人の犠牲者、また事態の更なるエスカレーション、これを回避するために、即時停戦、そして全ての関係者が最大限の自制を働かせることの重要性等について議論をいたしました。その上で、会合後に私を含むG7の国防大臣等の連名により発出された共同宣言においては、攻撃や報復の連鎖は中東地域においては制御不能なエスカレーションを助長し得るということ、そしてすべての当事者による建設的な緊張緩和の取組、また国際人道法を含む国際法に従った行動が重要であるということ、などについて述べているところでございます。
グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)政府間機関の設立について
記者 :GIGOを年内に設立すると合意をされていますが、設立日について何か決定した事項はありましたでしょうか。
大臣 :本日の日英伊防衛相会合におきましては、GCAP政府間機関であるGIGO、これの年内設立に向けて、調整を加速をさせるという方向で一致をいたしました。また、会合では、私から、日本が派遣することで決定をいたしました、GIGOの初代首席行政官については派遣準備を進めている旨説明をし、そして私としましては、防衛審議官を務め、そして国際経験を豊富に有しておられます岡真臣さん、この方にGIGOの初代首席行政官としての日英伊のチームを率いていただきたいというふうに考えておりまして、今後、イギリスとイタリアと最終調整の上、決定をされる予定であります。
また、GCAPの行く末を左右するGIGOの初代首席行政官を日本から選出するという責任には、私自身、身が引き締まる思いでありますが、過去の経歴や資質等を総合的に勘案をいたしまして、この岡さんは、イギリスやイタリアの期待を裏切ることのないベストな人材を選出したと思っております。防衛省といたしましては、引き続き、イギリス、イタリアと緊密に連携をしながら、次期戦闘機の共同開発を着実に推進してまいりたいと考えています。
記者 :1点確認させてください。3者の会議の中で、トップ人事に岡さんを充てたいという意向を実際に伝えられたということでよろしいでしょうか。
大臣 :それにつきましては、日本が派遣をするということで、実際に岡さんの名前を挙げましてですね、このGIGOの初代首席行政官としての日英伊チームを率いていただきたいということを明示をいたしました。
アメリカ、ドイツ、イタリアとの二国間会談について
記者 :大臣がおっしゃった、アメリカとドイツとイタリアのそれぞれのバイ会談についてお伺いいたします。アメリカとの会談の中では、自衛隊と米軍の指揮・統制の見直しについて、どのような議論があったのか中身を教えていただけますでしょうか。また、ドイツとイタリアはアメリカと地位協定を結んでおりますけれども、地位協定の改定ですとか、アジア版NATOですとか、そういった話が出たかどうかを教えてください。
大臣 :日米防衛相会談ではですね、オースティン長官と非常に時間をかけてですね、幅広く議論を行いまして、まず反撃能力の効果的な運用、そして、指揮・統制枠組の向上、そして南西における日米の共同プレゼンス、これの拡大、そして防衛産業協力といった取組を進めてですね、日米同盟の抑止力・対処力、これを一層強化をしていくというような話をしまして、意見が一致をしたということでございます。
記者 :地位協定の改定の話ですとか、アジア版NATOについて言及というのはありましたでしょうか。
大臣 :特に地位協定につきましては、個別に話はありませんでした。それからアジア版NATOの方も話題に上りませんでした。
大臣 :先ほど、岡さんの名前を出したと言いましたけど、岡さんの名前は出しておりませんで、今日の会合におきましては、日本が派遣をすることで決定をした、GIGOの初代首席行政官については、私から、派遣準備を進めている旨を説明をしですね、私としては、防衛審議官を務めるなど国際経験を豊富に有する岡真臣氏に、GIGOの初代首席行政官としての日英伊のチームを率いていただきたいということを考えております。
NATO国防相会合も含めた一連の訪問の成果について
記者 :今回のですね、NATOを含めて一連の訪問の成果をどういうふうにとらえていらっしゃるのか、また、今回のG7ではですね、NATOでもそうでしたけれども、欧州のアジア太平洋地域への関与を引き付けるという狙いもあったと思うのですが、それをどうやって具体化していくのか、さらに、一連の訪問の成果を今後の日本の安全保障政策の策定において、どういうふうに活かそうとお考えなのか教えてください。
大臣 :今回のG7におきましては、初めての試みでありましたけれども、国防相会合がありまして、NATOからの参加も得てですね、実施をされたということでございます。会合におきましては、インド太平洋地域をテーマとしたセッションが設けられ、同地域を含む国際社会全体の平和・安定・繁栄に全力で取り組んでいくとのメッセージを、国際社会に向けてしっかりと発信することができたと考えます。これは非常に大きな成果であったと考えております。防衛省といたしましては、この成果を踏まえて、今後ともG7として、地域や国際社会の安全保障上の課題解決に向けた取組に、防衛当局間を含めて、引き続き結束してですね、取り組んでいくことが重要であると考えております。
そして、今回の会合を通じまして、G7メンバーとの間で、我が国周辺を含むインド太平洋地域の安全保障に関する共通の認識をより一層高めることができたと考えております。こうした成果を活かして、一層厳しさを増す安全保障環境の中で、引き続き、同盟国・同志国間のネットワークを有機的・重層的に構築するとともに、それを拡大をしまして、抑止力を強化する取組を進めていきたいと考えております。
したがいまして、今日の会合では、G7の国防大臣から、それぞれのセクションについてですね、意見を発表した際にですね、そのお考えを聞くことができて、非常に理解が進みましたし、また、今後の協議などのですね、キーポイントになるようなことも認識を深めたということでございます。
米国との二国間会談で地位協定について言及がなかった理由
記者 :先ほど、今回の日米のバイ会談で、地位協定について言及はなかったとおっしゃったわけですけれども、総裁選中に石破首相は改定のお考えを示されていたわけですけれども、今回言及しなかったその理由についてお尋ねできますでしょうか。
大臣 :本当に議論することがたくさんありまして、非常に重要な問題からですね、話し合いをしました。そういう中で、地位協定については触れることはなかったということでございますが、これ以上のやりとりにつきましては、相手国との関係もありますので、詳細につきましてはですね、お答えできないということを御理解いただきたいと思います。
(以上)
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