中谷防衛大臣が記者会見 日比防衛相会談などついて(2月21日)
- 日本の防衛
2025-2-26 09:11
令和7(2025)年2月21日(金)9時23分~9時40分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は、防衛省A棟11階第1省議室で閣議後会見を行った。
内容は、以下のとおり。
大臣からの発表事項
日比防衛相会談について
大臣 :まず、日比防衛相会談について報告させていただきます。明日2月22日から24日までの間に、フィリピンを訪問し、同国のテオドロ国防大臣との防衛相会談を実施をいたします。フィリピンは、我が国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域であります。また、我が国とは基本的価値を共有をしておりまして、我が国と同じく、米国の同盟国でもあります。こうしたフィリピンとの間で、防衛協力及び交流を強化をするということは、大変重要な意義があると考えております。
今回の会談では、本年1月の日米比首脳テレビ会議、また、私も出席をいたしましたが、昨年11月の日米豪比韓5か国の防衛相会談等も踏まえながら、FOIP「自由で開かれたインド太平洋」、これの実現に向けまして、二国間・多国間の安全保障・防衛協力の一層の強化に向けて、テオドロ大臣との間でしっかりとした議論を行いたいと考えております。
なお、テオドロ大臣との二国間会談におきましては、昨年11月にラオスで行われましたADMMプラスのサイドで実施をして以来2回目となります。私自身、テオドロ大臣とお会いすることを大変楽しみにいたしておりまして、今回の訪問を機に安全保障の大きな意義を有します日本とフィリピンの防衛協力関係を更に発展をさせていきたいと考えております。
ウクライナ負傷兵の防衛医科大学校病院への受け入れ
大臣 :もう1点、報告があります。ウクライナ負傷兵の防衛医科大学校病院への受け入れにつきましてです。ロシアによるウクライナ侵略に対して、我が国としても、平和秩序を守り抜くため、国際社会と結束をしまして、断固たる決意で対応してきているところでありますが、ウクライナに対して、可能な限りの支援を行っているところであります。
その一環として、令和5年6月より、自衛隊中央病院においてウクライナ負傷兵のリハビリ治療を実施をしてきております。これまで8名の負傷兵を受け入れ、6名が既に退院をしております。今般、自衛隊中央病院に加えまして、新たに防衛医科大学校病院においてもウクライナ負傷兵2名を受け入れまして、リハビリ治療を実施することといたしました。受け入れ時期につきましては、3月中に受け入れられるよう準備を進めているところでありまして、防衛省・自衛隊としましても、今後とも国際社会と緊密に連携をしながら、ウクライナを最大限支援をしてまいりたいと考えております。
記者との質疑応答
フィリピンとの連携、装備輸出の協議体の報道について
記者 :先ほど発表のあったですね、フィリピン訪問についてですが、フィリピン近海では中国の挑発的な行動が相次いでおりますけれども、今回の訪問で、先ほど御説明あったところですが、もう少し詳しくですね、どのような分野に重点をおいて連携を深めていきたいのか伺えればと思います。もう一点、また今回、装備輸出で日フィリピンとの間で協議体を立ちあげるとの一部報道もありますけれども、今回こうしたことを確認するのか事実関係もお願いします。
大臣 :南シナ海をめぐる問題につきましては、これは地域の平和と安定に直結をします国際社会の正当な関心事項になってきております。我が国は、同海域における力による一方的な現状変更の試みや緊張、これを高めるいかなる行為にも強く反対をしておりまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守るために、引き続き国際社会と連携をしていく考えであります。こうした中で、フィリピンとの二国間におきましては、人道支援・災害救援、艦船整備に関する能力構築支援、警戒管制レーダーの移転、またRAA、日比円滑化協定の署名など、様々な分野で防衛協力を強化をしてきておりまして、引き続き、これらをはじめとする様々な分野での協力を強化をしていきたいと考えております。
また、昨年は日米豪比韓5か国の防衛相会談を初めて実施をしました。また、今月には我が国として6回目となります海上協同活動(MCA:Maritime Cooperative Activity)、この海上協同活動を日米豪比で実施をしておりまして、フィリピンを含めた地域のパートナーとの間でこうした多国間の協力も、引き続き深化をさせてまいりたいと考えております。今回の訪問におきましては、こうした二国間・多国間の成果を、引き続き前提としまして、深化をしていくということをテオドロ国防大臣としっかり確認をしてまいります。
お尋ねがございました装備移転の協議体に関する事項につきましては、現時点において会談の成果について予断することはいたしませんが、フィリピンとの防衛装備・技術協力、これを推進することは、我が国及び地域の平和と安定の確保において大変重要であります。今般のテオドロ国防大臣との会談におきましても、フィリピンとの防衛装備・技術協力、これを更に進めていくことについて、しっかりと確認をしていきたいと思っております。
「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けたフィリピンの重要性について
記者 :今のですね、フィリピン訪問に関連して伺います。ちょっと重なる部分もあるかと思うんですけれども、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、フィリピンの地政学的、あるいは戦略的な重要性について、お考えをお聞かせください。また、日本はフィリピンに警戒管制レーダーを移転していますが、今後、同国に防衛装備移転などを通じた防衛装備協力をどのように進めていくお考えか教えてください。
大臣 :我が国を取り巻く安全保障環境を考えますとですね、我が国で「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」というビジョンの下で、同盟国・同志国等と連携をし、地域の平和と安定を確保していくということは、我が国の安全保障にとって死活的に重要であるというふうに考えております。
フィリピンは、まず我が国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域に位置をしているということ。第2に、我が国とは基本的価値を共有する我が国の戦略的パートナーであるということ。そして、第3に我が国と同様に米国の同盟国ということで、このため、フィリピンとの間では様々な分野で防衛協力を強化をしていくということには、大きな意義があるものでございます。
フィリピンとの防衛装備・技術協力の進展につきましても、我が国及び地域の平和と安定の確保においても、これは重要なことでありまして、こうした考えの下で、防衛省としましては、これまでに警戒管制レーダー等の防衛装備・技術協力を推進をしてきたところであります。引き続き、両国で連携を強化をすることを今回の会談でテオドロ大臣と確認をしたいと考えております。
ASEAN諸国との関係について
記者 :ASEAN諸国との関係について伺います。中谷大臣は就任後、既にラオスやインドネシアを訪れて、ASEAN各国との防衛相会談を重ねています。装備移転や共同訓練も含め、ASEAN諸国との協力が近年、急速に進展していることについて、中谷大臣の御所感を伺います。あわせて、日本の防衛におけるASEAN諸国の重要性について防衛省の見解を教えてください。
大臣 :まず、日本とASEANにつきましては、法の支配に基づき、平和、安定、繁栄を享受するインド太平洋地域の将来像を共有をしており、「自由で開かれたインド太平洋」を実現する上でですね、ASEAN諸国との協力は極めて重要であると考えております。このため、このビジョンの重要性を共有をし、更にこの実現を図るために、各国との間で、共同訓練・演習、能力構築支援、装備及び技術協力など様々な防衛協力や交流の取組を行ってまいりました。
具体的に申しますと、2016年に日ASEAN防衛相会合において日ASEAN防衛協力の指針、これは、ビエンチャン・ビジョンと言いますけれども、これを提示しまして、2019年にアップデートしましたビエンチャン・ビジョン2.0の下でですね、様々な協力プログラム、これを重ねてまいりました。
そして、一昨年11月の日ASEAN防衛相会合におきましては、ビエンチャン・ビジョン2.0の精神に則りまして、日本がASEANと共有をしているインド太平洋地域の将来像を実現すべく、4つの柱を構築をしました。第1の柱は、日ASEANで力や威圧によるいかなる一方的な現状変更も許容しない安全保障環境の創出。第2は、日ASEAN防衛協力の継続と充実。第3に、日ASEAN防衛関係者の更なる友情と機会の追求。第4に、ASEAN・日本・太平洋島嶼国連携の支持。この4つの柱からなります「防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(ジャスミン)」、これを提示をしておりまして、日ASEANの防衛協力を更なる段階へと進めてきてまいっております。
私も昨年、就任以降ですね、11月でラオスで開催されました拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)に出席をしまして、参加国の防衛大臣等で会談を行ったほか、1月にはインドネシア、これを訪問しまして、防衛相会談を実施をしました。また、今般はフィリピンを訪問しまして、テオドロ大臣と会談をいたします。また、次官級におきましても、今年2月、福岡で開催をされました第14回日ASEAN防衛当局次官級会合が開催されまして、この「ジャスミン」に基づく具体的な取組を振り返り、日ASEANの今後の防衛協力の方向性などについて意見交換を行ったところでございます。
防衛省としましては、「自由で開かれたインド太平洋」の実現のために、今後とも我が国の考え方をしっかりと発信をしていくとともに、法の支配の貫徹、そして海洋安全保障の強化といった分野におきまして、ASEAN諸国と二国間・多国間との防衛協力に積極的にですね、取り組んでまいりたいと考えております。
ノルウェー製のミサイル未納入の問題について
記者 :別件で失礼いたします。2018年度から予算措置されているノルウェー製のミサイルJSMが未納入となっている点についてお尋ねします。未納入の理由と、いつ納入予定なのかお知らせください。また、F-35B戦闘機も最近話題になっていましたが、主要な外国製の装備品の納入遅れが目に余るとの指摘があります。日本の安全保障への影響の有無も含め大臣の所感をお聞かせください。
最後になりますが、安全保障への悪影響がもし、ないといえるとするならば、高額な武器でありまして、そもそも調達の必要性自体に疑問符が付くことにならないでしょうか。必要な装備であるものの、装備の納入遅れによる安保への影響はない、と言えるならば、それはどのように理解したらよろしいでしょうか。
大臣 :我が国を取り巻く安全保障環境は、年々複雑になってきておりまして、特に、北朝鮮のミサイル技術が進展をしております。これに対して、我が国といたしましても、このようなスタンド・オフが可能なような態勢の構築に努めているところでありますけれども、特に、平成30年度(2018年度)に計上しましたF-35向けのスタンド・オフ・ミサイルであるJSMにつきましては、当初、令和3年度(2021年度)に納入をする予定でありましたが、これは新型コロナウィルスの感染症の影響によりまして、納入時期が遅延をいたしております。最終的な納入時期につきましては、現在、製造国のノルウェー政府及び関連企業との調整を行っている段階でありまして、このスタンド・オフ防衛能力の強化を速やかに進められるように取り組んでまいります。
その上で、JSMやF-35B等、各種装備品の納入遅れにつきましては、既存の装備品のやりくり、また、運用の工夫など様々な努力の結果、現時点に、我が国の防衛に影響がないように努力をいたしております。我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中でですね、これらの装備品の納入の遅れが望ましくないということは言うまでもございませんので、防衛省としましては、引き続き、これらの装備品の納入に向けまして、必要な調整を実施していきたいと考えております。
(以上)
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