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石破総理大臣、フィンランド共和国大統領との共同記者発表およびワーキング・ディナーを実施(6月11日)

  • 日本の防衛

2025-6-16 09:06

 外務省は令和7(2025)年6月11日(水)、同日に行われた石破茂(いしば・しげる)内閣総理大臣とアレクサンデル・ストゥッブ・フィンランド共和国大統領の共同記者発表およびワーキング・ディナーについて公表した。
 外務省および首相官邸から発表された内容は以下のとおり。

日・フィンランド首脳ワーキング・ディナー

共同記者発表 写真提供:内閣広報室
儀じょう隊による栄誉礼及び儀じょう 写真提供:内閣広報室
共同記者発表 写真提供:内閣広報室

 6月11日、石破茂内閣総理大臣は、訪日中のアレクサンデル・ストゥッブ・フィンランド共和国大統領(H.E. Dr. Alexander Stubb, President of the Republic of Finland)と共同記者発表を行った上で、午後7時50分から約60分間、ワーキング・ディナーを行ったところ、概要は以下のとおりです。なお、この機会に合わせて、「日本国とフィンランド共和国との間の将来における協力強化に関する共同声明」が公表されました。

1 二国間関係

(1)石破総理大臣から、ストゥッブ大統領夫妻が同夫人に所縁のある石川県羽咋市を訪問し、フィンランドの児童文学の絵本を寄贈する等、能登半島地震の被害地域を励ましていただいたことにお礼を伝えました。また、両首脳は、日本とフィンランドは価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、欧州とインド太平洋の安全保障が益々不可分となる中、いずれもロシアの隣国である両国の協力は益々重要になっている点に一致するとともに、シェルターを始めとする防衛装備・技術を含む安全保障分野での協力を拡大していくことで一致しました。

(2)両首脳は、共同声明に基づいて、貿易、経済安保、5G/6Gやスーパーコンピュータ・量子コンピュータ、文化・人的交流等、具体的な協力を進め、両国関係を一層発展させていくことで一致しました。

2 地域情勢

(1)両首脳は、力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであっても認められないことや、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現に向けて、引き続き協力を進めていくという認識を共有しました。また、露朝軍事協力の進展に対する深刻な懸念を共有しました。

(2)両首脳は、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応を始めとする東アジア情勢についても意見交換を行い、緊密に連携していくことで一致しました。

(3)両首脳は、引き続き様々なグローバルな課題について連携して取り組んでいくことで一致しました。

(参考)別添
 日本国とフィンランド共和国との間の将来における協力強化に関する共同声明(和文(PDF)英文(PDF)

(以上)

日本国とフィンランド共和国との間の将来における協力強化に関する共同声明(仮訳)

2025年6月11日、東京

1. 石破茂日本国総理大臣とアレクサンダー・ストゥッブ・フィンランド共和国大統領は、2025年6月11日、ストゥッブ大統領の日本訪問の機会に東京で会談した。

2. 両首脳は、日本とフィンランドは100年以上にわたる長い友好関係と緊密な二国間協力の歴史があり、両国が自由、民主主義、法の支配、人権の尊重及びルールに基づく国際秩序の支持などの価値観を共有していることに留意した。両首脳は、多くの分野で強固な基盤を築き、二国間協力を深化させてきた2016年の戦略的パートナーシップに関する共同声明を想起し、現在の相互の優先事項及び地政学的状況を考慮し、「将来における協力強化に関する共同声明」を発表した。日・EU戦略的パートナーシップ協定は、日本とフィンランドの強固な二国間のパートナーシップにも重要な枠組みを提供するものである。

Ⅰ 外交・安全保障政策

3. 両首脳は、厳しい国際政治・安全保障環境そして欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの現実を認識した。両首脳は、日本がEU、NATO及びOSCEにとって重要なパートナーであることを念頭に、両国外務省間の定期的な政務協議を含む、政治レベル及び高官レベルの外交・安全保障政策対話・協力を継続・強化すること、また、自由で開かれたインド太平洋を含む法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するための協力を更に進めることにコミットする。

4. 両首脳は、国連憲章を含む国際法の深刻な違反であるロシアによるウクライナ侵略を改めて非難した。また、両首脳は、ウクライナの主権と領土一体性に対する揺るぎない支持を改めて表明し、ウクライナ支援における協力を深化させることで一致した。両首脳は、特にロシアの軍事部門及び影の船団を支援する物資及び技術の分野において、制裁に関する専門知識の共有、制裁の実施、制裁回避及び迂回との戦いの重要性に留意した。両首脳は、ウクライナの復興には包括的かつ長期的な国際的支援が必要であると強調した。

5. 両首脳は、ロシアに対する北朝鮮による軍事支援、並びにロシアの戦争及びロシア軍再編の決定的な支援者である中国による武器及び軍民両用部品の提供を非難した。両首脳は、このような第三者に対して行動をとり続けるとの意図を改めて表明した。特に、両首脳は、複数の国連安全保障理事会決議に違反する北朝鮮の弾道ミサイルの北朝鮮による輸出及びロシアによる調達、ロシアによるこれらのミサイル及び弾薬のウクライナに対する使用並びにロシアに派遣された北朝鮮部隊によるウクライナに対する戦闘参加を含む、拡大する北朝鮮とロシアの間の軍事協力について深刻な懸念を表明した。この協力は、インド太平洋及び欧州双方の安全保障に悪影響を及ぼすものである。

6. 両首脳は、東シナ海及び南シナ海情勢への深刻な懸念を表明するとともに、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みにも強く反対した。両首脳は、国連海洋法条約(UNCLOS)に従って、航行及び上空飛行の自由を堅持することの重要性を確認し、全ての海洋権益に関する主張はUNCLOSの関連規定に基づかなければならないと強調した。また、両首脳は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促した。

7. 両首脳は、関連する国連安保理決議に違反する、北朝鮮による核兵器及び弾道ミサイルの継続的な開発を強く非難した。両首脳は、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認し、北朝鮮が、全ての関連する国連安保理決議に従って、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法で、自らの全ての核兵器及び既存の核計画並びにその他のいかなる大量破壊兵器(WMD)及び弾道ミサイル計画も放棄するよう要求した。両首脳は、不法なWMD及び弾道ミサイル計画の資金源となる、暗号資産の窃取を含む北朝鮮の悪意あるサイバー活動を抑止し、これに対処する必要性を強調した。両首脳は、全ての国連加盟国に対し、全ての関連する国連安保理決議を完全に履行するよう強く求めた。両首脳は、北朝鮮に対し、人権を尊重し、拉致問題を即時に解決するよう強く求めた。

8. 両首脳は、核兵器不拡散条約(NPT)及び同条約の相互に強化しあう3つの柱(核軍縮、核不拡散、原子力の平和的利用)に対する揺るぎない支持を再確認した。両首脳は、核軍縮と核兵器不拡散条約(NPT)に関するストックホルム・イニシアティブ等の取組を通じた「核兵器のない世界」への共通のコミットメントを改めて表明した。

9. 両首脳は、日本とフィンランドが、情報及びサイバーセキュリティ、新興破壊技術(EDT)、偽情報の拡散防止を含むハイブリッド脅威への対抗などの分野で引き続き協力していくことで一致した。両首脳は、情報保護の枠組みを構築することの重要性を認識した。

10. 両首脳はまた、サイバーセキュリティにおける二国間協力を強化することで一致し、日本の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)及びフィンランド国立サイバーセキュリティセンターとの間などの対話と協力を歓迎した。

11. 両首脳は、重要インフラの保護を含むデジタル分野における経済、社会及び安全保障上のリスクに対処するため、警戒を強め、同志国間で連携を強化することの重要性を強調した。

12. 両首脳は、重要な海底インフラやその他の重要インフラに対する敵対的で無謀な行為を強く非難した。警戒を強めることの必要性及び志を同じくするパートナーとの海洋安全保障における連携を強化することの必要性を強調し、両首脳は、UNCLOSを含む国際法に従って情報を共有し、可能な対抗措置を特定することにコミットした。

13. 両首脳は、強力な国連を礎とする多国間主義の重要性を強調し、輸出管理、和平調停及び女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダに関連する事項で共同の取組の機会を模索することで一致した。この文脈で、両首脳は、常任理事国及び非常任理事国の議席の拡大を含む、国連安保理の緊急の改革へのコミットメントを新たにした。

Ⅱ 防衛、安全保障、装備協力

14. 両首脳は、二国間防衛対話を更に発展させ、この分野での協力を強化するというコミットメントを確認した。両首脳は、防衛装備・技術分野での協力を更に強化するために、防衛装備品・技術移転協定に関する交渉を加速させることで一致した。

15. 両首脳は、(1)それぞれの防衛省間の防衛政策対話、(2)防衛装備・技術協力に関する共同作業部会を通じた協力、(3)フィンランド国防軍と日本国自衛隊との交流及び(4)ハイブリッド脅威に関する協力を強化することで一致した。

16. 両首脳は、民間人の保護を含むフィンランドの包括的安全保障コンセプトに対する日本における関心の高まりを認識し、この分野での更なる協力を奨励した。

Ⅲ 貿易及び投資

17. 両首脳は、二国間の貿易投資関係の着実な進展を想起し、更なる協力を歓迎した。両首脳は、日EU経済連携協定の潜在力を十分に活用することの重要性を強調した。また、両首脳は、WTOを中核とするルールに基づく多角的貿易体制の維持と強化にコミットし、WTOの全ての機能を改善すべく、WTO改革に協力することで一致した。

18. 両首脳は、二国間関係を促進する上での直行便の重要性を認識した。これらの直行便は、就航以来、貿易及び文化における二国間協力を促進してきた。両首脳は、今後もこの繋がりを継続し、更に発展させていくことを歓迎した。

Ⅳ 経済安全保障、デジタル、科学技術・イノベーション

19. 両首脳は、経済安全保障の重要性を認識し、二国間対話及び協力における新たな重点分野として経済安全保障に関する協力を強化することで一致した。

20. 両首脳は、2023年5月20日のG7広島サミットを念頭に、透明性、多様性、安全性、持続可能性、信頼性が、志を同じくするパートナーと共に強靱で信頼性のあるサプライチェーンを構築・強化するに当たり不可欠な原則であることを認識し、これらの強靱で信頼性のあるサプライチェーンに関する原則に基づき、取組を推進するために協力することで一致した。両首脳はまた、ルールや規範の策定、並びにツールの効果的な活用を通じて、国際的な公平な競争条件を歪める非市場的な政策及び慣行に対処することの重要性を強調した。

21. 両首脳は、サプライチェーンを強靱化及び多様化すべく、重要鉱物の循環性に関するものを含めた安全で持続可能な重要鉱物プロジェクトへの責任ある投資を促進することで一致した。

22. 両首脳は、特にデジタルインフラの分野において、困難な地政学的状況における安全な接続の重要性を強調した。両首脳は、新しい海底ケーブルルートを含む、信頼できる機器ベンダー及び技術サプライヤーとのICT及び通信インフラの構築における協力を強化することの重要性を強調した。

23. 両首脳は、強力な研究・技術・イノベーション環境の基礎として、学問の自由及び高等教育機関の自治を尊重しつつ、重要・新興技術の流出及び悪用を防止すべく、研究セキュリティ及びインテグリティを促進するとともに、これらの技術における研究、開発及びイノベーションに関する協力を強化することで一致した。

24. 両首脳は、1997年に署名された日・フィンランド科学技術協力協定に基づき、グリーントランジション、バイオエコノミー、医療技術、AI等の新興破壊技術、量子、スーパーコンピュータ、Beyond5G/6G開発及び北極研究等の分野での科学技術協力の重要性を強調した。

25. 両首脳は、5G及び Beyond5G/6G等の高度な通信技術が将来のデジタル経済とイノベーションを支える基盤となり、デジタルデバイドを埋める基礎となることに留意した。両首脳は、両国間の5G及び Beyond5G/6Gに関する研究開発協力の拡大を歓迎した。

26. 両首脳は、北極圏の重要性がますます高まっていることを認識し、北極圏の一国であるフィンランドと北極評議会のオブザーバー国である日本との協力強化の可能性を強調した。 両首脳は、特に気候変動に関して、北極圏での進展が世界の他の地域に直接的な影響を与えるとの認識を共有した。両首脳は、課題及び機会に対処するための効果的な多国間協力の価値を強調し、この地域におけるいかなる行動も法の支配に基づくべきであることを確認した。両首脳は、日本初となる砕氷機能を備えた北極域研究船「みらいⅡ」を含めた今後の科学協力に期待を示した。両首脳は、特に北極圏での活動において、多くの貿易機能やその他の役割の実現手段としての宇宙ベースのサービスの重要性を認識し、宇宙科学技術開発における協力を歓迎した。

Ⅴ 持続可能な開発、エネルギー、循環型経済

27. 両首脳は、公正でクリーンな移行を確保し、持続可能な経済成長を促進するために、クリーンエネルギー、エネルギー効率、循環型経済の分野で新たな解決策とイノベーションを推進することで一致した。

28. 両首脳は、仙台防災枠組に沿って国際防災協力を加速させるというコミットメントを再確認した。両首脳は、防災のために、災害への備えのアプローチが果たす重要な役割並びに人、物資及びインフラへの投資の必要性を強調した。

29. 両首脳は、気候変動、生物多様性の損失及び過剰消費は、同じ持続可能性の危機の異なる側面であることを認識した。両首脳は、環境及び循環型経済の分野における日本の環境省とフィンランドの環境省の協力に留意した。

30. 両首脳は、林業、循環型バイオエコノミー及び持続可能な食料システムの分野での更なる協力の可能性に留意し、農林水産省(日本)と農林省(フィンランド)の緊密な協力に留意した。

31. 両首脳は、日本のGX2040ビジョン及びフィンランドのクリーントランスフォーメーション政策に関連して、グリーントランジションの分野での研究・産業協力を強化するための相互の機会を認識し、これらの分野における投資機会の促進と協力を支持した。両首脳は、当局レベル及び産業界レベルの両方における原子力分野での協力を歓迎するとともに、最高水準の安全性、核セキュリティ及び保障措置を尊重しつつ、それぞれの協力を継続していくことを再確認した。

Ⅵ 社会及び人的交流

32. 両首脳は、共通の人口動態上の課題を認識し、高齢者ケア技術やウェアラブルウェルネスソリューションなど、共に解決策を見つけるための協力を奨励した。

33. 両首脳は、相互理解を促進する上での文化協力と人的交流の重要性を強調し、互いの文化及び創造的セクター間の良好な協力を歓迎した。両首脳は、青少年の交流を強化する手段として2023年に発効したワーキング・ホリデー協定に留意した。両首脳は、学生と研究者の交流プログラムの重要性を強調し、学生と研究者の流動性を更に高める可能性を探求する必要性について一致した。

(以上)

ストゥッブ・フィンランド大統領との共同記者発表

【石破総理冒頭発言】
 本日、フィンランドのストゥッブ大統領をお迎えできたことを大変うれしく思っております。
 日本とフィンランドは、価値や原則を共有する戦略的パートナーであります。両国は100年以上の長きにわたり友好関係を維持しています。
 緊密な二国間関係を更なる高みに引き上げるべく、この度、「将来における協力強化に関する共同声明」を策定いたしました。
 本日は、これを基礎として、外交や安全保障、経済、5G、6Gやスーパーコンピュータ・量子コンピュータ、文化・人的交流などの幅広い分野での協力の推進を確認いたします。
 また、欧州とインド太平洋の安全保障がますます不可分となる中、いずれもロシアの隣国である日本とフィンランドの緊密な連携は、かつてなく重要性を増しております。
 陸上自衛隊は次期装輪装甲車として、同国のパトリア社の装輪装甲車AMV(装甲モジュラー車両)を選定しており、本年4月には初号車を日本製鋼所が受領したところであります。
 また、地域情勢についても議論し、力や威圧による一方的な現状変更の試みは世界のどこであっても認められないこと、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現に向けて、引き続き協力を進めていくことを確認したいと思います。核・ミサイル・拉致問題を含む北朝鮮への対応についても議論します。
 明日の大阪・関西万博ナショナルデーには、ストゥッブ大統領が参加されると承知しております。このような機会を通じて、幅広い分野で両国関係がますます強化されることを期待いたしております。
 世界の平和と安定に向け、両国が戦略的パートナーとして共に取り組んでいきたい、このように考えておる次第でございます。
 ありがとうございました。

(以上)

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