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中谷防衛大臣が北海道の部隊視察に伴う臨時会見 ロシアへの警戒や処遇改善に言及(6月26日)

  • 日本の防衛

2025-6-30 10:57

 令和7年6月26日(木)13時19分~13時36分、中谷 元(なかたに・げん)防衛大臣は陸上自衛隊別海駐屯地 本部庁舎2階会議室において、北海道東部の部隊視察に伴う臨時会見を行った。

 大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。

大臣からの発表事項

北の守りの最前線としての道東地域の重要性

大臣
 昨日から道東地域の自衛隊の視察、取材いただきましてありがとうございました。
 本日にかけまして、陸上自衛隊美幌駐屯地、標津分屯地、別海駐屯地、航空自衛隊網走分屯基地、そして根室分屯基地を視察をいたしました。この後、陸上自衛隊釧路駐屯地も視察する予定であります。
 近年の我が国の安全保障環境というと、どうしても南西地域に目が行きがちでありますが、今回視察をした道東地域を含む北海道近傍においても、ロシアによる活発な軍事活動が継続をしており、昨年9月には領空侵犯事案も発生をしております。
 今回の視察におきましては、正に我が国の北の守りの最前線ともいえる各部隊の状況を、この目で確認をすることができました。先ほど、訓練展示なども視察をいたしましたけれども、それぞれの訓練先におきまして、一人一人の隊員が、高い緊張感と崇高な使命感の下に、過酷な任務に精励をする姿を間近に見ることができまして、大変心強く感じました。また、北海道の良好な訓練環境の中で精強性の維持・向上に努めるとともに、地域社会の理解・支援を得て活動しているということも確認をいたしました。

隊員の処遇・生活環境の改善に向けて

大臣
 そして何より、今回の視察におきましては、前線で任務に励む隊員たちの処遇・生活環境の現状、そして課題、これを確認することも意図しておったわけでございます。隊員たちは日夜任務に精励に励んでおりまして、こうした過酷な任務は、心身ともに大きな負担がかかるものであると。しかし大切なことは、隊員が憂いなく任務に集中するための環境整備、これを進めることでありまして、今般、その整備に向けまして、直接意見を聴き、そして現場の声を聴くことができました。
 今回の視察の成果も踏まえまして、令和8年度概算要求に向けて、道東エリアを含め、地方で勤務する現場の隊員一人一人まで、処遇改善や生活環境改善、これの効果が一層実感できるよう、必要な検討を加速をしてまいりたいと考えております。また、若年定年退職する自衛官の生涯設計確立のために、若年定年退職者給付金の引き上げについて検討を加速する、この2点を各関係部局に指示をいたしました。
 目まぐるしく変化をする任務に対しまして、一人一人が誇りと名誉をもって、心安らかに働く環境を創る。この最重要の課題に対して、防衛大臣として先頭に立って、全力で取り組んでいく覚悟をもちまして、今回の視察を通じて、このことを強く感じた次第でございます。

記者との質疑応答

隊舎改修や手当見直しに関する対応

記者
 中谷大臣は視察の中で、隊舎も見て回られていました。処遇改善は政権の重要課題でもありますが、隊舎の改修の優先や手当の見直しなど、地方で勤務する隊員への処遇改善は、自衛官確保の観点からも避けられないと思いますが、今後の対応強化の方針はありますでしょうか。

大臣
 今回の視察のおきましては、昨年末に、石破総理を議長といたします関係閣僚会議によって、取りまとめられました基本方針、これに基づいて各種施策を実施してきたところでありますが、今回の視察において、こうした取組が現場にしっかり届いているのか、そして隊員の皆さんが何を求めているのか、隊員の生活環境、そして勤務環境の現状についても確認をするとともに、率直な御意見を伺うことができました。
 特に、隊舎や庁舎といった施設については、隊員の生活・勤務環境の基礎ともなるものでありまして、今般の視察では、Wi-Fiの整備、そして居室のプライバシーの強化など、改善が進んでいる状況を見まして、隊員からも評価をするという声を聴けましたが、しかし施設の中には、戦前に整備されたものが残されております。
 非常に老朽化をしたものが多くありまして、北海道においても夏の暑さが厳しくなっていますが、冷房が整っていない部屋も数多くありました。設備や、また環境改善の面で整備が行き届いていないところがありましたが、これは急ぎまして優先的に老朽施設の更新、設備の整備の対策を講じていく必要があると改めて感じました。冷房につきましては、部隊の方で既に機械の方は準備できているということでありますが、工事の都合でですね、多少時間が掛かっているということでした。
 また、給与や手当などの面でも、特に若い隊員の中で改善が進み喜ぶ声が聴こえる一方で、若年退職金の充実の要望などの声も聴けました。
 今回の視察の成果も踏まえまして、道東エリアを含めて地方で勤務する隊員一人一人まで、処遇改善、また生活環境の改善の効果が一層実感できるように、令和8年度概算要求に向けて、必要な検討などを加速するように指示したところであります。
 これにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、私のリーダーシップの下でですね、特殊な業務や厳しい環境、そして勤務状況の中で業務に従事している隊員の処遇改善、生活・勤務環境の改善に引き続きスピード感をもって取り組んでまいりたいと考えております。

北海道の自衛隊の役割と期待

記者
 政府は自衛隊の南西シフトを進めていますが、ウクライナ侵略があった中、ロシアと対峙する最前線の北海道の部隊の在り方や勢力の維持について大臣はどのように考えていますか。また、国内初の地対艦ミサイルの実射訓練が行われるなど、道内で実施される訓練内容は大幅に拡充されていますが、今後、北海道の自衛隊に期待する役割があれば教えてください。

大臣
 ロシアは、北方領土を含む極東地域においても活発な軍事活動を継続をしており、近年は最新の装備が極東方面にも配備をされる傾向にあります。北海道に配置される自衛隊の部隊というのは、北の守りにおいて重要な役割を果たしております。
 また、北海道は極めて良好な訓練環境、これを備えておりまして、最近も、一昨日の6月24日、静内対空射撃場において国内初となります88式地対艦ミサイルの実射訓練を実施したほか、昨年10月下旬も、矢臼別演習場で、日米共同訓練「キーン・ソード25」の一環として共同実弾射撃訓練を行ったところでございます。
 今回視察をいたしました美幌駐屯地においても、訓練場が駐屯地に隣接をしており、非常に訓練環境に恵まれているとの説明もありました。したがいまして、道東地区を始め北海道の恵まれた訓練環境というのは、地元の部隊のみならず、全国の自衛隊の練度や精強性の維持・向上に非常に重要な役割を果たしているということを再確認をさせていただきました。
 さらに、各部隊はそれぞれの地元において地域社会と良好な関係を構築しておりまして、災害等が発生をした際には、いち早く救援に駆け付ける態勢、これを維持されていることなど、地域社会においても重要な役割を果たしているということも確認をさせていただきました。
 こういった点を踏まえつつ、北海道においては、引き続き、高い練度を維持をした1個師団、2個旅団、1個機甲師団を保持をする、そして我が国に飛来する弾道ミサイルに加えて、極超音速滑空兵器(HGV)等の新たな経空脅威、これを探知・追尾し得る固定式警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊の保持、そして弾道ミサイル攻撃への対応も含め、多様化・複雑化をする経空脅威に対し得る高射部隊の保持、そして各種無人機の導入並びに活用による情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング(ISRT)、これの能力の強化、そして90式戦車の10式戦車への換装推進、置き換えるということですね、そして火薬庫等の整備などの取組を進めてまいる考えであります。

ロシアの脅威認識と今後の対応

記者
 先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、去年ロシアがですね、領空侵犯があったということで、ロシアとの外交もままならない中で、今ロシアの脅威というのは、どのように捉えていらっしゃって、またどのような対応をしていくおつもりでしょうか。

大臣
 ロシアは、我が国周辺で活発な活動をいたしております。昨年9月には、北海道礼文島沖上空でロシア軍が1日のうちに3度にわたって我が国領空侵犯をしたほか、最近では、太平洋艦隊による軍事演習の実施ということを公表しております。
 また、中国との軍事連携の頻度が増加をしており、2019年以降、中露は爆撃機による我が国周辺での長距離にわたる共同飛行を毎年実施をしています。艦艇にわたっても、2021年以降、中露の共同演習に連接する形で中露海軍が艦艇の共同航行を毎年実施をしております。
 こうしたロシアの軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携とあいまって防衛上の強い懸念となっております。防衛省としましては、ロシアの軍事動向について、引き続き、強い関心をもって注視をするとともに、情報収集・警戒監視、これに万全を期してまいたいと考えております。

中東情勢と自衛隊の前進待機について

記者
 イスラエルとイランの停戦合意をめぐる問題についてなんですが、自衛隊の前進待機の状況について伺いたいと思います。大臣は自衛隊に対し、アフリカのジブチにある拠点に輸送機を派遣し、待機するよう命じています。これについて現時点の活動状況と、今後の活動の見通しをお伺いいたします。また、イスラエルとイランの情勢で、今後どのような状況になれば待機命令を解除するのでしょうか、あわせてお伺いいたします。

大臣
 中東情勢につきましては、24日、米国によるイスラエルとイランとの間の停戦合意が発表されたことを歓迎をしており、これがイスラエルとイラン双方において、着実に実施に移されていくことを強く期待をいたします。
 また、我が国としても今後の推移については、重大な関心、これをもって注視をしてまいります。現在、C-2輸送機2機が、邦人等の輸送が必要となった場合に迅速に対応できるように、ジブチで待機をさせておりますが、これも引き続きですね、対応し得るようにですね、待機を継続をさせていきます。防衛省・自衛隊としては、この高い緊張感をもって、関係省庁等と緊密に連携をしまして、在外邦人等の安全確保を始めとした今後の対応について、情勢の推移を見極めながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

防衛費のGDP比5%への見解

記者
 米国防省は、日本の防衛費はGDP費で5%への引き上げが必要との見解を示しております。NATOの加盟国も5%への引き上げを新たな目標に据えました。日本政府は3文書改定の際に、NATOの基準を参考にした経緯がありますが、NATOの5%引き上げへの見解と、日本政府が改めて参考にすべきかどうか、考えを伺いたいと思います。

大臣
 御指摘のとおり、6月25日(水)、オランダ・ハーグで開催されましたNATO首脳会議において、NATO加盟国は、国防支出及び国防関連支出の合計を対GDP比5%とする目標に合意をしたと承知をいたしております。
 NATO加盟国ではない我が国としましては、第三国の合意についてコメントをするということは適切ではありませんが、その上で申し上げれば、欧州・大西洋とインド太平洋、これの安全保障はますます不可分となっている中で、我が国としては、こうした欧州の安全保障・防衛体制の強化を重要な動きとして注視をしております。
 NATOを含む欧州の同志国との安全保障上の協力、これを一層強化をしていく考えであります。そして、我が国としましては、従来から述べておりますが、大切なのは金額ありきではなくて、防衛力の中身であると考えていることには変わりはありません。
 まずは国家安全保障戦略等に基づいて、防衛力の抜本的強化を着実に進めてまいる考えであります。今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、我が国として主体的に、抑止力・対処力を強化をするための取組を不断に検討しまして、今後とも進めてまいりたいと考えております。

(以上)

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