小泉防衛大臣が記者会見 日豪防衛相会談、中国軍の動向、防衛費増額の財源、安保三文書改定など(12月5日)
- 日本の防衛
2025-12-9 10:45
令和7(2025)年12月5日(金)09時31分~09時46分、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛大臣は、防衛省A棟10階会見室において閣議後会見を行った。
大臣からの発表事項と記者との質疑応答は以下のとおり。
大臣からの発表事項
7日(日)実施予定の日豪防衛相会談について
私は、12月7日、日曜日に防衛省におきまして、オーストラリアのマールズ副首相兼国防大臣との間で、日豪防衛相会談を実施いたします。対面での日豪防衛相会談は、先月2日にマレーシアで実施して以来、2度目となります。我が国とオーストラリアの防衛協力は、あらゆる分野に拡大しています。さらに、本年8月に「もがみ」型護衛艦の能力向上型がオーストラリアの次期汎用フリゲートに選定されたことは、日豪の防衛協力を更なる高みに引き上げるものであります。今回の会談では、地域情勢について、両国の認識を共有するとともに、日豪防衛協力の更なる進展に向けて、具体的な議論を行う予定であります。なお、会談に先立ちまして、12月6日、土曜日、マールズ副首相は、三菱重工長崎造船所を視察をする予定であります。同造船所は「もがみ」型護衛艦を製造しており、その建造工程や技術について、マールズ副首相の理解を深めていただくことが目的であります。この視察には、若林防衛大臣政務官が随行する予定であります。その上で、マールズ副首相との間で、両国の防衛協力の深化について活発な議論を行うことを楽しみにしております。
記者との質疑応答
日豪防衛相会談での中国に関する議論への期待、「もがみ」型護衛艦の移転について
記者 :
冒頭にもありました、日豪防衛相会談につきましてお尋ねいたします。改めてですね、期待する成果と日中関係の悪化がみられる中、中国に関して、日豪間でどのような議論を期待したいか教えてください。また、「もがみ」型護衛艦の移転について、最新の進捗状況を教えてください。
大臣 :
価値観と戦略目標を完全に共有するオーストラリアとの防衛協力は、同志国連携の中核であり、戦略連携、共同訓練・運用協力、装備・技術協力など、あらゆる分野に拡大している協力を一層強化していく必要があります。こうした中で、先月、マレーシアで実施した日豪防衛相会談において、日豪のあらゆる分野での防衛協力を拡大し、日豪の共同の抑止力を高めるべく、マールズ副首相兼国防大臣とともに、リーダーシップを発揮していくことで一致をしたところです。防衛相会談の具体的な議論の内容につきましては、予断をもってお答えすることは差し控えますが、地域情勢に関する認識の更なる共有や、日豪防衛協力の一層の深化に向け、具体的な議論を行いたいと考えております。また、オーストラリアの次期汎用フリゲートにつきましては、年度内の契約締結に向けまして、引き続き、関係省庁及び関係企業としっかり連携し、官民一体となって取り組んでいきたいと思います。
小泉防衛大臣訪米の調整状況、ヘグセス米国防長官の機密情報漏洩問題について
記者 :
一部報道でですね、大臣が1月中にもですね、アメリカを訪問する予定で調整中というふうに報道が出ていますが、現在の調整状況を伺います。また、今、アメリカのヘグセス国防長官についてですね、民間の通信アプリを使ってですね、機密情報を外部に漏洩したのではないかとの問題が指摘されています。ヘグセス氏をめぐる、こうした一連の問題が、日米同盟にどのような影響を与えるとお考えか、大臣のお考えを伺います。
大臣 :
報道で、私の訪米の可能性ということも報道はあることは現時点で承知はしていますけれども、現時点で具体的に決まっているものはございません。その上で述べれば、10月の日米防衛相会談の際、へグセス長官には日本に来ていただき、東京でお会いしたので、然るべき時期に、今度は、私がアメリカを訪問して、へグセス長官との間で日米同盟の抑止力・対処力の一層の強化に向けた議論を深めたいと。そういったことは考えていますし、そういったやり取りもしたのは事実であります。また、後段のお尋ねにつきましては、報道については承知していますが、逐一コメントすることは差し控えます。いずれにしましても、防衛省としては、私とへグセス長官との間をはじめ、アメリカ戦争省のあらゆるレベルと緊密に連携し、日米同盟を更なる高みに引き上げつつ、日米同盟の抑止力・対処力を強化するための取組を進めていく考えに変わりはありませんし、へグセス長官との個人的な信頼関係においても何ら影響はありません。
東アジア海域での中国軍の動向について
記者 :
中国軍の動向についてお聞きします。中国海軍と海警局の多数の艦艇が、高市総理の存立危機事態に関する国会答弁以降に、東アジアの海域に多数展開しているとの報道があります。このことに関して、防衛省として把握していることを教えてください。
大臣 :
報道については承知をしています。中国は、我が国周辺での軍事活動を拡大、活発化させており、中国の軍事動向については、平素から重大な関心をもって情報収集・分析に努めていますが、その一つ一つについてお答えすることは差し控えます。いずれにせよ、政府としては、我が国周辺の軍事動向について、引き続き、重大な関心をもって注視するとともに、情報収集、警戒監視に万全を期してまいります。
防衛費増額の財源について
記者 :
防衛費についてお伺いしたいと思います。一部の報道でですね、政府・与党が防衛費増額の財源として所得増税を2027年の1月から始める検討に入ったと、そういう報道があります。まだ、これ、自民党のですね、税調プロセスの最中だと思うんですけれども、現時点で、政府主語で書かれている報道もありますが、政府としての検討状況や把握している情報について教えてください。またですね、開始時期について、仮に、まだ具体的なことが決まっていない場合ですね、与党とか、政府の方で、いつまでに決定すべきだというふうにお考えでしょうか。
大臣 :
防衛力の強化に係る財源確保のための税制措置につきましては、これまでの与党税制改正大綱等の趣旨も踏まえて、年末の税制改正プロセスにおいて議論されるものだと承知をしています。その上で、防衛省としては、防衛力整備の効率化・合理化、これを徹底するとともに、予算の効果的・効率的な執行に努めておりまして、防衛力強化の必要性について、国民の皆様に御理解が得られるように、引き続き、丁寧な説明に努めてまいりたいと思います。
閣僚の資産公開について
記者 :
閣僚の資産公開について伺います。近く、閣僚の資産が公開される予定となっています。大臣として、資産の公開制度に関して意義や必要性をどのようにお考えか、お聞かせください。
大臣 :
閣僚の資産公開は、大臣等規範に基づくものであります。大臣等規範におきましては、大臣は、国民全体の奉仕者として公共の利益のためにその職務を行い、公私混淆を断ち、職務に関して廉潔性を保持することとされています。この規範に定められた理念を踏まえれば、閣僚が資産を公開することは大変重要であり、また必要なものと考えています。私自身も規範に則り、適切に対応する考えであります。
陸自 佐賀駐屯地のオスプレイによる夜間訓練について
記者 :
陸上自衛隊佐賀駐屯地のオスプレイの九州での夜間訓練についてお伺いします。訓練範囲を佐賀から拡大し、鹿屋航空基地など、九州各地の施設を新たに使用するとの報道がありますが、事実関係と安全性の確保策を教えてください。
大臣 :
報道は承知をしておりますが、佐賀駐屯地周辺以外における陸上自衛隊オスプレイの夜間飛行訓練の実施につきましては、現在検討中であり、決定したものはありません。なお、訓練の実施に当たりましては、防衛省から関係自治体等へ適切に情報提供するとともに、安全面に十分配慮して、住民の皆様への影響が最小限に留まるように努めて訓練を実施してまいります。
安保三文書改定について
記者 :
安保三文書改定についてお伺いします。中谷前防衛大臣は、今年5月の参議院決算委員会で、現行の防衛力整備計画の規模が妥当かどうかを問われて、「防衛力の内容は、現在でも引き続き妥当」と答弁をされています。そうしますと、防衛省としては、この答弁の時点では、防衛力整備計画を含めた安保三文書の内容は妥当と判断をしていたのかどうか、まず教えてください。
大臣 :
政府として、現行の三文書に基づく防衛力の抜本的強化に向けた取組の進捗とあわせて、我が国周辺の安全保障環境について、不断に情報収集・分析を行い、評価を行っております。そして、御指摘のありました中谷防衛大臣の答弁は、周辺国等が軍事力を増強しつつ、軍事活動を活発化させていることや、我が国が、戦後最も複雑な安全保障環境に直面していることといった、現行の三文書における安全保障環境に対する認識の基本的な部分は、現在においても妥当とするものであり、現行の三文書に基づく防衛力の抜本的強化に、引き続き、取り組む必要性があることを述べたものであります。その一方で、中谷防衛大臣自身も、安全保障環境が2022年当時よりも厳しさを増していることを認識の上で、累次の機会において、「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対峙する中で、我が国の抑止力、対処力を強化するための取組を不断に検討し、進めていくことも当然」と述べているところです。その上で、直近の周辺国等の動向を含め、前政権も含めて政府において積み重ねてきた分析や検討も踏まえ、安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じているという認識の下、こうした変化に適切に対応するために、三文書の改定に向けた検討を開始することとしたものであります。
記者 :
関連しまして、今年の5月以降、三文書改定が必要になるような安全保障上の事象があったのかどうか、教えてください。
大臣 :
今年の5月以降の動向ということで、まず申し上げますと、5月には、中国海警船から発艦したヘリコプターによる尖閣諸島周辺での領空侵犯が発生し、6月には、中国空母の硫黄島より東側の海域での活動や、空母2隻の太平洋側での活動を初めて確認、そして、公表いたしました。また先月、11月には、3隻目の中国空母「福建」が就役し、中国は、遠方の海空域における作戦遂行能力を着実に向上させています。このほか、中露の共同演習や共同航行、北朝鮮の度重なる弾道ミサイル発射や、ロシア軍の我が国周辺における活動なども継続しており、これらも安全保障環境の変化が様々な分野で加速度的に生じていることを示すものであります。なお、今申し上げたのは5月以降ということでお尋ねがありましたのでお答えさせていただきましたが、昨日も同じような趣旨で、参議院の外交防衛委員会で、この3年間、2022年から何を加速度的な変化と捉えているかと、こういったお尋ねがあったところであります。そこで申し上げたことは、まず第一に、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦が勢いを増していること。特に、ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。ロシアは、ウクライナ侵略を3年以上継続しており、核兵器による威嚇とも取れる言動まで繰り返しております。そして第二に、インド太平洋では、中国、北朝鮮の更なる軍事力の増強や、中露や露朝の連携強化などが見られます。中国は、国防費を継続的に高い水準で増加させ、十分な透明性を欠いたまま、軍事力を広範かつ急速に増強させています。中国の国防費の伸びは2022年以降で見ても、我が国の防衛費の伸びをはるかに上回っております。また、中国は、尖閣諸島周辺における領海侵入を含め、東シナ海、南シナ海で一方的な現状変更の試みを継続しています。さらに、本年の6月など、先ほど申し上げたとおりでありますし、中露の連携においては、現行三文書の策定前にも見られましたが、その後、3年を経て、両国の戦略連携は着実に深まっています。また、露朝軍事協力の進展は、現行三文書の策定後に格段の進化を見せました。そして第三に、各国は、ロシアによるウクライナ侵略を教訓に、無人機の大量運用を含む新しい戦い方や、長期戦への備えを急いでおります。新しい戦い方に関して、ロシアによるウクライナ侵略で見られている事象を申し上げれば、多様かつ安価な無人装備の大量投入や、これに伝統的な砲弾やミサイルを組み合わせた大規模な複合攻撃が展開されているほか、双方が電子戦、AI、宇宙、サイバー、情報戦といった要素を駆使した戦いとなっており、AIの戦場における役割の拡大は目覚ましいものが見られます。さらに、こうした要素を組み合わせたハイブリッド戦は、より巧妙なものになっています。加えて戦場では、従来と比べ、極めて短いサイクルで装備品や戦術が更新され、迅速かつ柔軟な技術革新が重要になっています。さらに、ウクライナ侵略が3年以上にわたって続いていることからも明らかなとおり、長期戦への備え、すなわち、十分な継戦能力の確保が、ますます重要となっていますので、ちょっと長くなりましたが、このような安全保障環境の変化が5月以降に限らず、様々な分野で加速度的に生じている中で、現行の国家安保戦略に定める対GDP比2%水準の前倒しや、三文書の来年中の改定に向けた検討を開始することになったことについて、御理解を得られるように今後も丁寧に説明を続けていきたいと思います。
(以上)
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