《特集》洋上防空の絶対解──E-2D アドバンスト・ホークアイ後編
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2026-2-20 00:00
広大な太平洋で起こり得る、万が一の有事に日本はどう備えるのか。米国の防衛大手ノースロップ・グラマン社は、護衛艦、F-35B戦闘機、島々に展開するアセットを有機的に機能させる鍵として、早期警戒機E-2Dの存在を挙げる。
◎本記事は月刊『Jウイング』との連動企画です。◎この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。内容に関する責任はイカロス出版株式会社に帰属します。






解説:E-2Dと秘めたる指揮管制能力
漫画では、E-2D の管制官がF-35B とペトリオット部隊を指揮管制し、島に襲いかかる戦闘機を見事、追い払ってみせた。しかし、日本の航空自衛隊では、「AEW&C」(空中警戒管制機)であるE-2Dの「AEW」(空中警戒)の能力しか使用していない。「C」(管制)はこのまま使わないのだろうか? ──井上孝司 INOUE Koji

洋上に指揮管制能力を“出張” させることの意味
我が国ではながらく、「力の空白をつくらない」という考え方の下で防衛力整備を行っていた。こちらから外征することは考えていないから、空の上では対領空侵犯措置を主眼に置くこととなった。
日本の本土とその周辺で対領空侵犯措置を行うのであれば、地上に設置したレーダー網と、方面ごとに設置されている防空指令所の兵器管制官からの指示によって任務を遂行できることが多い。E-2のような早期警戒機は、レーダーを空中に設置することで陸上レーダーの「穴」をカバーする存在と位置付けられる。
ところが昨今の情勢の変化により、実戦でいかにして日本の空を守り抜くかを、改めて真剣に考えなければならなくなった。しかもその対象は日本列島や南西諸島の上空だけでなく、太平洋の上空にも広がっている。すると、航空戦における指揮管制能力が問題になる。なぜか。
太平洋上は、地上のレーダー網だけではカバーできないエリアだ。そこまで対象を広げることになると、どうなるか。理屈の上では、「太平洋上に早期警戒機を飛ばして、探知情報をデータリンクで自動警戒管制システム(JADGE、Japan Aerospace Defense Ground Environment)システムに送り、本土の防空指令所にいる兵器管制官がそれを見る」形も考えられるが、常にデータリンクの存在をあてにできるだろうか。また、兵器管制官から見ると太平洋上を飛んでいる戦闘機は見通し線圏外にいるから、普段の管制交信で使用するUHF無線機では通信ができない。
すると、地上から全体像を見て要撃管制するだけでなく、局地的な管制能力も求められるのではないか。

状況認識能力の向上でパイロットの負担は増すばかり
近年の戦闘機はデータリンクの装備と機上コンピュータの能力向上により、状況認識能力を大きく向上させている。ところがその結果として、戦闘機パイロットのところに流れ込んでくる情報の量が増えた。それを見ながら作戦を組み立てて… と口でいうだけなら簡単だが、その負担は無視できないものになっているという。
将来は、レーダーが捕捉したターゲットの中から脅威度が高いものを人工知能(AI)が自動的に拾い出して、警告を発するような仕掛けも実現できるかも知れない。しかし現在は、話はそこまで進んでいない。
しかも、本番になれば彼我の機体の数が訓練のときより増えるだろうから、そうなると作戦の組み立てや目標の割り当てが大問題になる。それを戦闘機パイロットに丸投げするのではなく、後方にいて全体状況を見ている管制員がアシストする必要がある。

潜在能力を最大限に引き出す、E-2Cの進化形としてのE-2D
E-2Dはもともと、AEW&C(Airborne Early Warning and Control)、つまり早期警戒(AEW)だけでなく管制(&C)の能力も備えている。つまり、機上からでも、防空指令所にいる兵器管制官と同様の仕事ができる。JADGEが防空指令所のスクリーンに出すのと同レベルの画を機上で見られる。
アメリカ海軍のE-2Dの乗員は従来モデルと同様に5 名で、正副操縦士に加えて、後方には3名のCIC(Combat Information Center、戦闘指揮所)士官が陣取る。管制業務に携わるのは後方の3名で、E-2Dからはいざというときに副操縦士も管制業務に加勢できるようになった。
レーダーの分解能はE-2Cと比べて向上しているし、クラッターや妨害への耐性を高めている。そして、同時に管制できる機体の数はE-2Cよりも多いとされる。そのE-2Dを、単なる「高所に配置したレーダー」としてだけ使うのは能力の無駄遣いである。
我が国では、新しい装備品の導入が「老朽化したものを、より高性能の新型で置き換え」という目で見られる傾向がある。すると、モノが新しくなっても使い方は従前と変わらない。作戦環境や「勝利の公式」に変化がなければ、それでも良い。しかし、安全保障情勢や作戦環境が変わり、従来の「勝利の公式」が通用するかどうか怪しくなったときに、それでよいのか。
E-2Dが備える優れた指揮管制能力を最大限に活用するには、兵器管制官を追加で育成し、機上に配置する必要がある。これは運用効率とチームワークを高めるための貴重な機会でもある。この課題に前向きに取り組むことで、任務遂行の成功につながるだろう。

管制能力の分散化と「空中指揮所」
近年の新たな潮流として「分散化」がある。高価で高性能の高価値資産を少数用意する形では、それが見つかってやられてしまうと大打撃。そうではなく、手勢を小グループに分散させるとともに、機敏に移動させることで、捕捉されにくくする。同時に、それらをネットワークで結び、物理的に分散していながらも、運用面では集中の妙を発揮させる。そういう方向性である。分散・移動だけなら第二次世界大戦の頃から先例があるが、そこにネットワーク化と強力な指揮管制能力を持ち込むところが違う。
そういう観点からすると、地上に固定設置しているレーダーや指揮所、管制システムといったものは脆弱性が高い上に、妨害や破壊もされやすい。それなら、レーダーと管制機能をエアボーンできて、しかも比較的小さな飛行場からでも運用できるE-2Dの価値をフルに発揮させてみてはどうか、という考え方も出てこよう。
そこまで考えを推し進めてこそ、「F-35Bを海上自衛隊のヘリコプター護衛艦に搭載して洋上からでも運用できるようにする」「そこに陸上から飛び立つE-2Dを組み合わせる」という話にも意味が出てくるのではないか。
さらに、E-2DとF-35Bだけでなく、地上の高射部隊、あるいは洋上の防空艦とも情報を共有できれば、防御の層が厚くなる。イージス艦はLink 16データリンクを備えているし、パトリオット地対空ミサイルもLink 16による情報共有が可能だ。すると、陸・海・空にまたがった状況認識と作戦指揮を行うシステム、そして体制作りが求められることになる。
そこで洋上の航空戦に際して、防御戦闘の戦術を統合・調整する全体状況を見て必要な指示を飛ばす「空中指揮所」がE-2Dというわけだ。

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