《ノースロップ・グラまんが》洋上防空の絶対解──E-2D アドバンスト・ホークアイ前編
- Sponsored
2026-1-20 16:09
貴重な資源をたたえた島々が点在する太平洋で、いま日本は戦略転換を迫られている。護衛艦「いずも」「かが」を改修してSTOVL戦闘機F-35Bを搭載する構想は最初の一手であったが、広い洋上においてそのカバー範囲はわずか。アメリカの防衛大手ノースロップ・グラマン社が解決策を提案する。
◎本記事は月刊『Jウイング』との連動企画です。◎この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。内容に関する責任はイカロス出版株式会社に帰属します。




解説:E-2Dと太平洋の護り
広大な海洋に点在する島々は、ひとつひとつが大きな排他的経済水域を形成し、重要な海洋資源の源となる。その一方で、島の面積が小さいほど防衛は手薄になりやすい。それを克服する鍵となるのが、ノースロップ・グラマンのE-2D なのだ。 ──稲葉義泰 INABA Yoshihiro

日本の最東端まで達した中国海軍の活動範囲
2000年を過ぎた頃から最近まで、日本の防衛力整備の主眼は東シナ海周辺に向けられてきた。尖閣諸島や台湾をめぐって問題を抱える中国の軍事力増強に対応するべく、この海域に海上自衛隊の艦艇を展開させ、宮古島や石垣島など南西諸島地域へ陸上自衛隊の部隊を配置し、那覇では航空自衛隊の飛行隊を増強するなど、各種取組みを進めてきた。しかし近年、中国の脅威はそのさらに東側、太平洋にまで及ぶようになっている。
2025年5月から6月にかけて、中国海軍は空母「遼寧」および「山東」を中核とする艦隊を太平洋に展開し、かつてない規模の実戦訓練を実施した。2隻の空母が同時に太平洋に展開し、発着艦訓練を繰り返したのは、このときが初めてだ。「遼寧」は小笠原諸島からグアム島などを結ぶ「第二列島線」よりも東に位置する南鳥島(日本の最東端)の沖、「山東」はこの第二列島線と、南西諸島から台湾などを結ぶ「第一列島線」とのちょうど中間に位置する沖ノ鳥島(日本の最南端)の沖にそれぞれ展開した。そこから「遼寧」が急速に南西方面へと変針し、両艦隊の距離が縮まっていく形で訓練は進行した。
この第一・第二列島線という概念は、現在中国が進めている海洋戦略「近海防御・遠海防護」と深く関係している。この戦略は、第一列島線内の領域で国家の主権を確保する「近海防御」と、第二列島線以遠での国益を守る「遠海防衛」とを段階的に実現していくものである。端的に言えば、第一列島線を絶対防衛線とし、第二列島線の内側の海域においてアメリカ海軍の空母打撃群などを迎え撃つという構想だ。


太平洋は広大な「防衛の空白地帯」
今後、中国が2隻目の国産空母「福建」を含む空母3隻体制を本格運用に移すことになれば、これまで以上に太平洋方面での空母を中心とした艦隊の活動が活発化することは想像に難くない。そうなれば、日本は平時における太平洋方面への艦艇や航空機の進出および活動に一層目を光らせるだけでなく、有事の際の防空体制強化についても真剣に考える必要が出てくる。
空母を中心とした艦隊が太平洋に展開することになれば、日本有事の際に来援するアメリカ軍の行動が阻害されるだけでなく、東京を含めた日本の太平洋側の都市や自衛隊の基地が、随伴艦などから発射される巡航ミサイルなどの射程内に入ることになるためだ。もはや、太平洋は日本にとって安全な空間ではなくなりつつある。
こうした現状に対して、自衛隊の太平洋における防衛態勢は著しく手薄である。これまで「防衛の空白地帯」といえば南西諸島を指す言葉として定着してきたが、今やそれは太平洋を意味する言葉へと変化したと言って差し支えないだろう。
現在、太平洋上には、航空自衛隊のレーダーサイトが配置されておらず、硫黄島を除けば本格的な滑走路を有する航空基地も存在していない。こうした現状を踏まえ、自衛隊では北大東島に移動式レーダーの整備を進めているほか、先述した空母展開を受けて南鳥島にも同じく移動式レーダーの配備を検討しているとの報道がある。
しかし、こうした地上配備式のレーダーは小さな離島では移動経路や展開地域の制約からどうしても機動性に欠け、有事の際に優先的に撃破されてしまう可能性がある。また、塩害対策を講じる必要があるなど、運用上の手間も多い。そして何より、標高の高い山が存在しない離島ではレーダーの覆域が狭くなってしまうため、広大な太平洋を監視するためにはどうしても能力不足の感が否めない。

離島をベースに洋上を監視できるE-2D
そこで重要になるのが、「空からの監視の目」である早期警戒機・早期警戒管制機の存在だ。必要に応じて太平洋方面に進出することができ、地上設置のレーダーや艦艇のレーダーに比べると、そのレーダー覆域は広大だ。
現在、航空自衛隊では早期警戒管制機としてE-767、早期警戒機としてE-2Cおよびその性能向上型であり後継機のE-2Dをそれぞれ運用している。太平洋方面での活動を考えた場合、E-767は航続距離や進出速度などの観点から有用に見えるが、離着陸に必要な距離などを考えると離島の小さな飛行場などでの運用は難しく、また運用機数も4機と少ないため、これを常時太平洋に張り付かせることは不可能だ。
一方、E-2Dであればこれらの問題はすべて解決することができる。速度こそE-767に劣るものの、元来艦載機であるため離着陸距離は非常に短いので、南鳥島を含め離島に存在する小規模飛行場でも問題なく運用できる。これにより、燃料補給に加え人員の交代を本土まで戻らずに太平洋の離島で実施できるのは、常続的な警戒監視活動を実施するうえで大きなアドバンテージだ。
また、E-2Dが装備するAN/APY-9レーダーは、探知距離が長大であることはもちろん、空中・洋上目標を非常に高精度で探知することができる。つまり、E-2Dは太平洋方面に進出してきた爆撃機、艦艇、そして空母艦載機まで、すべての動向を監視することができるのだ。
さらに、航空自衛隊が運用するE-2Dは、主翼の折り畳み機構を廃止した代わりに翼内燃料タンクを設けた「フル・ウェット・ウィング」仕様であり、航続時間は8時間を誇るという。巡航速度を500km/hとした場合、単純計算するとその航続距離は約4000kmとなり、本土から離島への展開はもちろん、離島を拠点とした活動を実施できるようになればさらに広範囲を長時間にわたり警戒監視することができる。

いずも型のF-35Bと連携し、洋上の作戦はより柔軟に
ところで、自衛隊では現在太平洋方面の防空能力強化の一環として、海上自衛隊のいずも型護衛艦を改装し、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)が可能なステルス戦闘機F-35Bの運用能力を付与する計画を進めている。これにより、平時においては警戒監視および対領空侵犯措置を迅速に実施できる体制を、有事においては各種ミサイルや航空機などに対応する防空戦闘を実施できる体制を、それぞれ構築することができる。
しかし、現在のところ海上自衛隊にも航空自衛隊にも、艦載用の早期警戒機は配備されておらず、これでは太平洋上における航空機の活動を逐一把握することはできない。そこで、離島にE-2Dを配備することの重要性が出てくる。離島を発進したE-2Dであれば、F-35Bなどが対領空侵犯措置を行うために必要な目標情報を提供することができ、有事の際にはデータリンクを活用して戦闘を優位に進めることができる。
また、単に「空飛ぶレーダーサイト」としての運用のみならず、E-2Dの乗員に戦術管制の役割を与えれば、広大な太平洋において、F-35Bがより柔軟に対領空侵犯措置や防空戦闘を実施できるようにもなるだろう。
2025年現在、航空自衛隊は9機のE-2Dを運用しており、旧型のE-2Cを順次置き換えつつ、将来的には18機が配備される予定となっている。ただし、上記のような背景を踏まえれば、今後機数の増勢についても検討する必要があるかもしれない。
Ranking読まれている記事
- 24時間
- 1週間
- 1ヶ月
- 《ノースロップ・グラまんが》洋上防空の絶対解──E-2D アドバンスト・ホークアイ 前編
- レールガンの進捗状況を発表 極超音速兵器の撃墜めざす:防衛装備庁シンポジウム レポート③
- 東富士演習場で1月16日に火災発生 装備品等が焼失し隊員1名が負傷
- 《ニュース解説》自衛隊ヘリの “巨大バケツ” 火災の森に撒く水は1度に数トン
- 2等陸曹の逮捕を発表 性的暴行の疑い(4月10日)
- 自衛官・防衛省職員らの給与アップ改正案を閣議決定、国会に提出(12月8日)
- 高知県室戸岬南方沖の海難事故で海上自衛隊が災害派遣 P-1哨戒機が捜索(1月16日、第1報・週報)
- 人事発令 令和7年8月1日付け、1佐職人事(陸自196名、海自60名、空自62名)
- 人事発令 令和7年8月1日付け、将補人事(陸自36名、海自11名、空自20名)
- 人事発令 令和7年12月16日付け、将補人事(陸自12名、海自13名、空自13名)
- 自衛官・防衛省職員らの給与アップ改正案を閣議決定、国会に提出(12月8日)
- 《ニュース解説》自衛隊ヘリの “巨大バケツ” 火災の森に撒く水は1度に数トン
- 《特集》ジェット戦闘機の「世代」とは? ──ステルス機は第5世代、今後現れる第6世代
- 防衛省職員の給与・手当を改正する政令を公布(12月24日)
- レールガンの進捗状況を発表 極超音速兵器の撃墜めざす:防衛装備庁シンポジウム レポート③
- 人事発令 令和7年8月1日付け、1佐職人事(陸自196名、海自60名、空自62名)
- 人事発令 令和7年12月16日付け、将補人事(陸自12名、海自13名、空自13名)
- 人事発令 令和7年8月1日付け、将補人事(陸自36名、海自11名、空自20名)
- 《特集》5つの艦種で構成される海自の主力艦 基礎から分かる「護衛艦」概論
- 《ノースロップ・グラまんが》洋上防空の絶対解──E-2D アドバンスト・ホークアイ 前編
- 防衛省職員の給与・手当を改正する政令を公布(12月24日)
- 人事発令 令和7年12月21日・22日付け、1佐職人事(海自2名、空自8名)
- 【講演録】ノースロップ・グラマン 池田有紀美さん「安全保障を志す学生の皆さんへ」
- 自衛官・防衛省職員らの給与アップ改正案を閣議決定、国会に提出(12月8日)
- 自衛隊法第65条の11第5項の規定に基づく自衛隊員の再就職状況に関する閣議資料を公開(12月19日)
- 人事発令 令和7年12月19日付け、1佐人事(海自13名、空自5名)
- 《特集》ジェット戦闘機の「世代」とは? ──ステルス機は第5世代、今後現れる第6世代
- 人事発令 12月19日付け、指定職人事(防衛事務官2名)
- 《解説》陸自オスプレイ「可動率40%」の実情を読み解く
- 統合・陸上・海上・航空の4幕長が年頭の挨拶(2026年1月1日)

