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《ノースロップ・グラまんが》近未来防衛戦闘のリアル──第3回 ドローン迎撃1000機:M-ACEとブッシュマスター

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2025-3-21 12:00

広大な海域に点在する島々を、最新鋭のアセットで護るイカロス防衛隊。第2回でいったんは退いた敵艦隊だったが、夜になって次の一手を繰り出した。ノースロップ・グラマン社の提供でお贈りします。おぐし篤 OGUSHI Atsushi

◎本記事は月刊『Jウイング』との連動企画です。

解説:移動式捕捉・指示エフェクターM-ACE(メイス)とM230ブッシュマスター機関砲

漫画編では、数百機で襲い来る自爆ドローンに対抗する“最も効果的な装備”として登場し、成功裏に迎撃を開始したM-ACE とブッシュマスター機関砲。解説編では、注目すべき特徴を解説しよう。 ──稲葉義泰 INABA Yoshihiro

ドローンの使用は21世紀における戦場の日常

 今や現代戦において、各種無人機の存在は無視することのできない存在となっている。たとえば、前線近くの部隊は「ちょっとこの丘の先を見てみよう」という具合で偵察用の小型無人機を使用したり、あるいは敵の人員や軽車両を攻撃するために自爆ドローンを使用したりする光景は、2022年に始まったウクライナ戦争においてもはや日常的となっている。さらに、そうした手持ち型の無人機のみならず、車両や艦艇などから発射される少し大きめの無人機も、各国で運用されている。
 無人機の特徴はいくつかあるが、一つには人命が危険にさらされないというものがある。有人機であれば、撃墜時に搭乗員の生命に危険が及ぶが、無人機であればその心配がない。だからこそ、危険な地域での偵察や、爆発物を搭載して目標に突っ込む自爆攻撃という運用が可能となる。
 そしてもう一つが、比較的安価であるという点だ。人が乗ることを前提としないため、機体設計や使用する材料などに関してもある程度の妥協が許されるし、機体規模も幅広く設定できる。
 結果として、無人機は有人機と比べて速度や航続距離など性能面では見劣りするものもあるが、一方で価格面や人的リソース尊重の観点からのメリットを踏まえて、各国では無人機を導入・運用する事例が増えてきている。

マルチコプター・ドローンのスウォーム(群れ)。数が多くなればなるほど制御は難しくなるが、技術が追いつけば、100機、1000機の大群も現実になる。写真:US Army

ドローン対策に貴重な戦力が削られる

 そこで問題となるのが、低価格かつ多数の無人機をどのようにして無力化するべきか? ということ。
 これまでのように、有人航空機や巡航ミサイルなどを撃墜するために開発された防空システムを使えば、たしかに無人機を撃ち落とすことはできる。しかし、それではあまりにコストパフォーマンスが悪いし、なによりそこで高性能なミサイルを消費してしまっては、肝心の有人航空機などが攻撃してきた際に「迎撃するための弾がない!」なんてことにもなりかねない。
 そこで、こうした無人機ならではの課題を解決し、その脅威に対処するべく、現在各国で開発および実用化が進められているのがC-UAS(無人航空機対処)である。このC-UASとして、ノースロップ・グラマン社で開発されたのが「M-ACE」(移動式捕捉・指示エフェクター “メイス”)と、これに連接可能な迎撃システムだ。
 C-UASは” Counter-Unmanned Aircraft Systems”、M-ACEは“Mobile, Acquisition, Cueing and Effector System”の略である。

ノースロップ・グラマン社がC-UAS(ドローン対抗手段)の簡便かつ効果的な手段として提案する、M-ACE(左)とM230 ブッシュマスター30mmチェーンガン(右)。MACEの車両1両にブッシュマスター3両のセットでの運用が想定されている。写真:Northrop Grumman

機動展開する多機能センサー「M-ACE」

 M-ACEは、ピックアップトラックの荷台に5mの高さまで伸張できるマスト状のセンサーを搭載したもので、シンプルな構成ゆえに高い機動性と展開能力を有するシステムとなっている。
 それでは、M-ACEを構成する各種センサーについて、それぞれ見ていくことにしよう。
 まず、接近する「物体」を真っ先に探知するのがAESAレーダーだ。このレーダーでは様々なモノを遠距離から探知することが可能で、例えば小型無人機(sUAS)であれば約10km、人間であれば約15km、一般的な航空機であれば約27kmの距離からそれぞれ探知することができる。
 そうして何らかのモノが接近してきたとなれば、続いてそれが何なのかを特定する必要がある。そこで活躍するのが、EO/IRカメラだ。このカメラでは、安定的かつ高精度な映像により目標の詳細な映像データを取得することができるうえに、自動標的判定ソフトウエアによって、sUAS、人間、車両などの多様な対象を高確度で特定することが可能となっている。
 また、レーザー測距装置も組み込まれているため、目標との距離も正確に把握することができる。
 さらに、相手が無人機となれば、操縦者との間で通信を行っているタイプもある。そこで登場するのがRF(無線周波数)センサーだ。これを使えば、その通信電波を傍受することができるし、場合によってはそれに対する妨害も行うことができる。

M-ACEのセンサー部。上の四角い板が360度3次元AESAレーダーで、下にあるのがEO/IRカメラシステム。M-ACEはこのC-UASにおける「キューイング・プラットフォーム」とされ、指示役を担う。写真:Northrop Grumman

ドローン群の対処に有効な機関砲 M230ブッシュマスター

 こうして、M-ACEによって探知された目標を迎撃するのが、C-UASのもう一つの構成要素である迎撃システムだ。ここでは、その一つの例である30mm機関砲についてみていくことにしよう。先述した通り、無人機は比較的安価であるため、迎撃手段としても同じく安価な方法が求められる。加えて、今回のマンガ内で描かれたように、多数の無人機が同時に飛来してくるような場合には、多数の目標に同時かつ効率的に対処することが求められる。そこで注目されているのが機関砲だ。
 機関砲であれば、使用する弾薬はミサイルと比べて圧倒的に安価であり、さらに連続して多数の弾を射撃することができる。また、同じく安価な無人機対処手段として注目されるレーザー兵器と比べても、導入が容易で機動性に富み、さらに天候や大気状況の影響を比較的受けにくいというメリットがある。
 M-ACEと連接する機関砲として、ノースロップ・グラマン社では30ミリ機関砲「M230ブッシュマスター」を採用している。これは、日本を含む各国の軍隊や法執行機関などで多数採用されている信頼性の高い機関砲で、さらに用途に応じて複数種類の弾薬を使い分けることができる。たとえば、敵兵に対して対処する場合には、空中で炸裂して広範囲に破片を飛散させる空中炸裂弾を使用することができる。また、接近する無人機を迎撃するとなれば、近接信管付き炸裂弾によって小さな無人機でも効果的に対処することができる。

M230 ブッシュマスター 30mm チェーンガン。機関砲弾は「空中炸裂弾」「近接信管付き炸裂弾」「誘導弾」が使用可能。写真:Northrop Grumman
ブッシュマスターでの射撃によるマルチコプター・ドローンの撃墜シーン。近接信管付き炸裂弾を使用している。写真:Northrop Grumman

迎撃のオペレーションは1人だけで可能

 つまり、センサー(探知手段)とシューター(迎撃手段)が統合されており、またとくにセンサー部に関してはレーダーやEO/IR、RFなど複数の種類のセンサーが統合されているため、目標を捕捉し、特定することが容易となっている。さらに、こうして得られた目標情報はオペレーターが直感的に把握することができるよう、最適な形に整理された状態で表示される。そのため、目標の捕捉から迎撃に至るまで、わずか一人のオペレーターにより対応することが可能となっている。
 このように、車載式ですばやく展開し、M-ACEにより接近する無人機を探知して、機関砲によりこれを迎撃するのがノースロップ・グラマン社が開発したC-UASである。

装備開発官(陸上装備担当)が研究・開発を進めている「車両搭載型レーザ装置」。電源の小型化が実現すれば、弾数に限りがないレーザーは、有効なドローン対策になりうると期待されている。M-ACEでも将来的には、こういった装備との連携があり得る。写真:鈴崎利治
おぐし篤OGUSHI Atsushi

漫画家・イラストレーター、イカロス出版、宝島社、KKベストセラーズ、東京書籍等でイラスト、書籍デザインに携わる。イカロス出版にて、漫画『実録!TPC73期』『真伝!空自ファントム』『自衛隊感染予防BOOK』『IBCSマンガでわかるネットワーク戦闘』等作品多数。

稲葉義泰INABA Yoshihiro

軍事ライターとして自衛隊をはじめとする各国軍や防衛産業に携わる国内外企業を取材する傍ら、大学院において国際法を中心に防衛法制を研究。著者に『「戦争」は許されるのか 国際法で読み解く武力行使のルール』『“戦える”自衛隊へ 安全保障関連三文書で変化する自衛隊』(イカロス出版)などがある。

https://x.com/japanesepatrio6

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