海上幕僚長が記者会見 太平洋の防衛態勢、「きょうのかいばくちょう」など(1月20日)
- 日本の防衛
2026-1-23 15:00
防衛省 海上幕僚監部は令和8(2026)年1月20日(火)、同日13時30分~13時50分に防衛省A棟10階会見室において行われた齋藤 聡(さいとう・あきら)海上幕僚長の記者会見の要旨を以下のように発表した。
海幕長 定例記者会見 要旨
冒頭発言
海上幕僚長 :
今回が今年の最初の会見となります。本年もよろしくお願いします。
私から1件、機雷戦訓練・掃海特別訓練について発表します。来月2月1日から10日までの間、伊勢湾周辺海域において、機雷戦能力の向上及び米海軍との相互運用性の向上を目的として、機雷戦訓練及び掃海特別訓練を実施します。参加部隊は、お手元の配布資料のとおりです。今回の訓練では、機雷敷設、機雷掃海、機雷掃討及び水中処分の訓練を行います。なお、伊勢湾での機雷戦訓練は、平成22年度から続いており、今回で15回目です。都合がつけば、私自身も視察に行きたいと考えております。私の方からは以上です。
令和8年の抱負 防衛力強化と部隊改編の年
記者 :
今回、今年最初の会見になりますが、今年の抱負などありましたらお願いします。
海上幕僚長 :
我が国周辺の安全保障環境というのは、みなさんご承知のとおり、一層厳しさ、複雑さを増していると認識しております。その中で、私ども海上自衛隊は、隙のない警戒監視を24時間態勢でしっかりと行っております。また、今やどの国も一国のみでは自国の安全を守ることはできません。同盟国や同志国との協力・連携を深めていくことが不可欠であります。このような認識の下、インド太平洋方面派遣を通じて、それらの国々の海軍等との連携の強化、相互理解の深化を図っていきたいと思っております。また本年は、海上自衛隊として、重要な節目となる年です。年度末に、情報作戦集団、水上艦隊の新編を始めとした部隊改編が行われます。また、防衛力整備の4年目にあたり、これまで取り組んできた防衛力の抜本的強化が具体的な形となって現れてきます。特にスタンド・オフ防衛能力の整備はその1つであり、護衛艦「ちょうかい」は、トマホーク発射機能の付加に向けて引き続き、米国において改修、乗員訓練を実施しています。最後に、高市総理から指示がありました、3文書の改定等についてですけども、これに向けて省内で様々な議論が進められております。私どもとしても、しっかりと省全体の検討に関与していきたいと思っております。以上です。
太平洋における防衛態勢 硫黄島と南鳥島
記者 :
幹事社質問の関連で1点お尋ねします。中国の空母ですが、太平洋での活動が非常に活発化しております。活発化する中で、日本の南にあります硫黄島あるいは南鳥島の戦略的な重要性が大きく増してきているのではないかと考えております。ただ、硫黄島には、例えば大型船が寄港できるような設備が現在ございません。また、非常に火山活動が活発な場所でもあります。こうした戦略的な重要性、立地を活かしてですね、先ほど海幕長がおっしゃられた隙のない警戒監視を実施していくためには、施設整備を含めてどのような方策が島しょ部において必要だとお考えでしょうか。
海上幕僚長 :
記者さんが言われたとおり中国の空母2隻が太平洋に展開していることが確認されております。その他の艦艇等も含めて、非常に活動が活発化しております。海域も広がってきております。中国海軍の意図を分析すると、遠方海域での作戦能力の強化を企図しているようにも見受けられます。そういったことを踏まえると、今言われた太平洋における防衛態勢の強化というのは喫緊の課題と認識しております。太平洋において必要な行動、活動を我々がしっかりできるように能力を整備していくことが重要であるというふうに思います。硫黄島につきましては、今言われましたとおり、火山活動が非常に活発化しており、滑走路を使用する際もですね、米軍のFCLPがある際にも米軍の関係者が事前にチェックして、その前の段階で、我々防衛省としてもしっかりと確認しているような状況です。そういった活動のことを考えると、大型の港湾施設を建設するということは極めて難しいと思っております。ただ、それ以外の能力等を活用しての活動を重点的に考えていくということになっております。一方で南鳥島についても、非常に重要な場所に位置しておりますけど、島自体はそんなに大きくないということで、いずれにしてもですね、今あるその二つの島がどういった防衛力整備として使えるのか、どういったことに適しているのか、そういったことをしっかりと分析して、その状況に合った防衛力を整備していくことになると思っております。空幕長の会見の際にも、滑走路の整備とか、警戒管制レーダーのことに付言されたと思いますけども、そういったことに空幕と一緒になって取り組んでいく必要があると思っております。
記者 :
関連でお尋ねします。まさに先だってうちの新聞の方でもですね、戦後に米軍が桟橋を作るために埋めた艦船が火山活動で隆起したり、あるいはなくなったりという状況を報道させていただいたんですけれども、やはり大型の港湾を作るのはかなり難しいのと思うのですが、そうしますと例えば桟橋のようなものですとか、どのようなものだと現状、可能だとお考えですか。
海上幕僚長 :
様々なことを検討しておりますし、固定式の桟橋じゃなければもしかしたらできるのかもしれませんし、それは将来の技術的な動向も踏まえて検討しなければならないと思います。ただ、今の状況では隆起が非常に多いので、そういった中で固定物を作るというのは難しいと思います。一方で南鳥島は、私もこの前海幕長になって初めて視察させていただいたんですけども、あそこには固定の岸壁を出していますので、活用していくのではないかと思います。硫黄島では岸壁はできなくても、それ以外の能力の向上というのは図れると思いますし、今持っているLCACでは、物資等の輸送はしっかりとやられていますので、そういった能力を活用するということも一つの手段ではないかと思っております。
防衛大学校など複数校に合格した方々との対話
記者 :
自衛隊、各幕にて色々と部内の生活環境の改善を進めておられて、艦でも通信環境の改善といった取り組みが行われていると思います。募集採用活動、また中途で辞める方などもいて非常に厳しい中ですが、これから海自として生活環境改善をどのような考え方の下でやっていかれるのかお聞かせください。
海上幕僚長 :
おっしゃったとおり、人的な状況というのは非常に厳しく、募集については普段から努力しなければならない状況だと思っております。また処遇改善については、政府を挙げて検討して頂いていることに感謝しております。今後も人的基盤の強化、あるいは処遇改善について検討が進められると思いますので、そういったものについては、部隊の実情を踏まえて、しっかりと議論に参画していきたいと思っております。こういった人的基盤の強化の制度の面については、省を中心として議論が行われますので、先ほど申したとおり、我々制服組もしっかりと議論に参加したいと思います。
大きく考えると、制度の面以外にも我々は色々とできることがあると思います。それは私自身取り組んでいるのですが、一人一人が募集のための広報官であるという認識を持って、募集に当たっていきたいと思っております。先般、長崎でFFMの命名進水式が12月22日に行われました。その前日に長崎入りしましたので、長崎地本長に「私が募集の面で何かできることはないか」と質問したところ、「せっかく来られるなら募集対象者に対しお話しして欲しい」と、長崎出身でありますので、地元出身者が話すとインパクトがあるんじゃないかと考えて私も喜んで参加させて頂きました。すると、防衛大学校等に合格している方が10人ほど集まりました。彼らは防衛大学校以外にも合格しているわけですから、選択するわけですね。そういった人たちに対し、直接私どもが働きかけることによって入隊につながるのではないか、と期待を込めてお話ししたところです。約1時間お話しし、彼らも積極的に質問してくれたので、彼らも入隊するきっかけをつかんでくれたのではないかと思っています。その際に興味深かったのは、40分くらいブリーフィングして最後に質問を受けたのですが、ブリーフィングの中に給与の面を示しました。「防衛大学校ならこれくらいもらえますよ。幹部候補生ならこれくらい。遠洋航海に行ったらこれくらい。」と、募集対象者10名以外にもそのご両親も来られていたので、給与面を示した際に父兄の方が写真を撮っていらっしゃったので、そういった面でもいい発信ができたのではないかと思っております。こういったことを私自身もやりますし、それ以外の隊員も一人一人が広報官の気持ちで募集の担当者としての認識をもって取り組んでいきたいと思います。
記者 :
関連して、どういう話を若い方にされたのかと、やりとりの中でまだ改善の余地があると感じられたところがあれば教えてください。
海上幕僚長 :
お話しした内容は、「海上防衛力は大事である」ということ、「自衛隊って特別な世界だと思われていますけど、みんな変わりません」ということ、「上下関係が厳しいというイメージがありますけれども、当然組織ですから厳しい面もありますけれども、すごく思いやりがある先輩がいたりするし、素晴らしい後輩がいるし、とてもやりがいがある世界ですよ」という、外の世界の人からはなかなか見えにくいところを私の言葉を使ってお伝えしたところでございます。「処遇改善についてはどんどん進んでおりますので、しっかりと対応していきますので来てください」というメッセージを伝えたところ、響いたのではないかと思っております。
記者 :
若い方とのやり取りの中で、こういった所を改善していかなければいけないと思われたところがありましたら、お願いします。
海上幕僚長 :
やりとりの中では特に(改善の必要性について)感じませんでした。今やっていることが響いていると感じました。
SNS発信と広報戦略 「きょうのかいばくちょう」など
記者 :
海幕の情報発信についてお聞かせください。SNS発信がですね、Xも含めてですけれども、硬派なもののみならず、「きょうのかいばくちょう」などを始め、緩いものも増えている印象ですけれども、こういった情報発信の狙いについてお聞かせください。
海上幕僚長 :
先ほどの質問に対しての回答の中でも、若い人たちがどうしても海上自衛隊、防衛省自衛隊というのは堅いイメージがあるということなので、そういうものだけではなく、当然組織ですから、そして、いざというときには国を守るために戦う組織ですから、堅い部分もありますけど、それ以外のところもありますよというのを、この機会がある度に発信しようとしております。
こういう表現をすると私のイニシアチブで、先ほど言われた緩い広報とか、ここにもあります「カイジョウジエイ鯛くん」とかですね、私のイニシアチブでやれると捉えられがちですけども、全く違ってですね、この「カイジョウジエイ鯛くん」も、ほとんど後戻りができない状態でしか私には報告が上がってきません。最初に聞いたときに、私もびっくりして「本当にやるの」ということを言ったんですけども、もう後戻りはできない状況でした。
そしてもう一つ今言われた「きょうのかいばくちょう」のSNSもペーパーを持ってきたときには、こういった企画をしますというペーパーですから、広報室長のところに担当は報告して、広報室長の上司である総務課長、総務部副部長、総務部長、海幕副長、対外的な発信にも繋がりますから、防衛部長にも相談したと思います。その後に私のとこに来たんです。したがって、私が全く手を入れる余地はなかった状態で、こうしますからと来たので、両方とも若い担当者が考えた内容であります。
こういった情報発信が若い隊員、若い人たちに響く内容というのはですね、やっぱり我々年配の人間が考えるよりも、若い人がしっかりと考えてくれた方がより響く内容になると思っております。特に「カイジョウジエイ鯛くん」のときにTBSさんから質問を受けたときに、私「尖った広報が必要だと思っております。」というふうに答えまして、そのように報道もしていただいたんですけど、そういった尖った広報も含めてですね、若い人のアイデアが非常に必要だと思っております。非常に皆さんの受けがいい反面、厳しい先輩方からはですね、厳しい言葉をいただいているんですけども、多くの方々が好意的に受け止めていただいておりますので、こういった、今言われた緩い広報っていうのはですね、引き続き続けていきたいと思っております。
記者 :
その中でですね、「S2」※の発信がちょっと少ないようにも見えたんですけれども、人手不足の中とかですね、精強である、度重なる不祥事を乗り越えるという意味でも誠実であるというのは重要だと考えるんですけれども、なぜそれほど「S2」の発信っていうのをされないんでしょうか。
※「より精強・誠実」の略
海上幕僚長 :
私の認識では「S2」の発信をやってるかと思ってます。隊員との懇談の場を出したりとかですね、やってると思いますけども、今ご指摘いただきましたので、しかも(記者の)パソコンに「S2」のシールを貼っていただいておりますので、その期待に応えるようにですね、我々もしっかりと発信したいと思っております。
危険への覚悟と人材確保のバランス
記者 :
今の質問にちょっと関連してお尋ねさせていただきたいと思ったんですけれども、人的施策について処遇改善の面や、親しみやすさの発信などを含めて伝えられているということですが、一方で自衛隊は服務の宣誓、危険を顧みずというところもあるように、例えば任務の際には危険なところにも対峙する職業かと思います。そういった自衛隊員として必要な覚悟と人的確保の割合というものに対しては海幕長としてはどんなふうに考えていらっしゃいますでしょうか。
海上幕僚長 :
まずは親しみやすさを感じていただいて、その組織に入っていただくということが必要だと思います。当然入っていただくときには、先ほど言われた宣誓をやりますので危険を顧みず、その内容の意味するところもしっかりと教えた上で教育に入っていくものと思いますけども、順番的にはまずは親しみやすさで入っていただく。入る際には、しっかりと危険を顧みずということについても意志を伝えるということでバランスも取れてくると思っております。こういった活動については引き続きやっていきたいと思っております。
(以上)
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