齋藤海幕長が臨時会見 掃海艇「うくしま」の事故調査結果を説明(4月24日)
- 日本の防衛
2026-4-30 10:30
令和8(2026)年4月24日(金)15時15分~15時31分、齋藤聡(さいとう・さとし)海上幕僚長は、防衛省A棟10階会見室において、臨時記者会見を行った。
海幕長臨時記者会見要旨
幕僚長 :
掃海艇「うくしま」の火災・沈没事故に関する事故調査結果がまとまりましたので、ご説明させていただきます。調査結果の説明に先立ち、改めて、本事故により殉職された古賀2曹のご冥福を心よりお祈り申し上げます。掃海艇「うくしま」の事故から、約1年半が経過しました。海上自衛隊の貴重な隊員を失ったことに深い悲しみを覚えるとともに、大切な艦艇を失い、国民の皆様にご心配をお掛けしたことについて、大変申し訳なく思っています。
殉職された古賀2曹は、危険を顧みず身を挺して機械室の消火活動に当たりました。そして非常事態において、冷静かつ迅速にとるべき行動を貫いた姿は、まさに船と仲間を守ろうとする強い意志の表れであり、心から敬意を表したいと思います。
それでは事故調査結果の説明に移ります。令和6年11月10日、機雷戦訓練参加のため下関基地を出港し、志布志に向け福岡県宗像市大島沖を航行中であった第43掃海隊所属の掃海艇「うくしま」において火災が発生しました。自艇による消火を行いましたが鎮火に至らず、乗員は「うくしま」から離艦し、翌11日に沈没する事故が生起しました。事故発生当日、海上幕僚監部監察官を委員長とする事故調査委員会を設置し、事故原因の究明と再発防止を目的として調査を進めて参りました。
今回の事故調査の結果、掃海艇「うくしま」の火災・沈没事故は、極めて稀な事象が同時並行的に発生した事故であったとの結論に至りました。まず、火災発生の原因です。火災発生場所である機械室の2号主機の上部に配管された主発電機の「燃料戻り油管」の接合部分から燃料油が漏洩し、下方にある2号主機上部の排気集合管カバーに落下して滞留し、それがカバー内部に侵入、防熱材内部まで浸透して排気管の高温部に触れ発火に至ったものと推定しています。
次に、自艇消火ができず、火災が延焼し沈没に至った原因として3点あります。1点目は、艦内電源を喪失した際の主機等を停止する要領の習熟が不十分であったこと。2点目は、機械室火災時の消火要領が不十分であったこと。3点目は、安全管理及び訓練管理に関して、艇長の指揮監督及び隊司令の指導監督が不十分であったことです。これらの事故原因を踏まえ、再発防止策を「火災の発生防止」、「応急能力の強化」、「応急器材の整備」、「小型艦艇等の対処要領の検討」、「被害拡大を防止するための対策」という5つ観点からとりまとめました。
今回の事故で得られた教訓を決して風化させることなく、再発防止策の徹底を図り、同様の事故を二度と起こさないこと、それこそが殉職された隊員とご遺族の皆様への責務であると考えています。海上自衛隊として、この事故を重く受け止め、安全確保と組織の改善に全力で取り組んで参ります。
記者との質疑応答
「精強・誠実」とかけ離れた不十分な態勢への受け止め
記者 :
今回、稀な事象が多発的に起きたということを承知の上でお聞きします。事故調査報告書には「態勢が不十分であった」という記載が多く驚いたという印象です。このような不十分な態勢は、海幕長が掲げる「より精強・より誠実」な態勢とはかけ離れていると感じますが、これについての受け止めについて教えてください。
幕僚長 :
おっしゃるとおりだと思います。本来やるべき、想定しにくい状況での訓練を怠っていたというのが実際です。おっしゃるとおり、精強・誠実に反するものであるので、今回出した事故調査報告書に基づき、可及的速やかに再発防止に取り組んでいきたいと思います。
人員不足・任務多忙と事故の遠因
記者 :
これは、海自の人員不足や任務に忙殺されて訓練ができないことが事故の遠因とお考えでしょうか。
幕僚長 :
そのことは、(事故の原因に)該当しないと思います。艦艇は定期的に造船所にて修理を行っておりますが、修理後には基礎的訓練から高度な訓練まで行っています。今回も機雷戦訓練に参加する前にはそれらの訓練をやっておりますので、先ほど言われたようなことは該当しません。ただ、そのやるべき訓練の中に電力が全て喪失するという想定の訓練をやっていなかったということです。
電源喪失時の訓練実施状況と掃海艇の特殊事情
記者 :
電源喪失時の訓練をやっていなかったという点について、火災の原因は想定外のことが起き得ると思います。それに対応できなかった要因として、「電源喪失時の習熟不十分」とありますが、海上自衛隊の艦艇の中で、ブラックアウトした中での訓練というのはどの程度行われているのでしょうか。
幕僚長 :
電源が喪失した際の訓練は、必ず実施しています。護衛艦、潜水艦等については電源が喪失した場合でも補用の発電機を装備していますので、若干の時間差はあっても瞬時に起動して電力を供給する態勢にあります。しかしながら、掃海艇は船体上の制約から、非常用発電機は搭載しておらず、発電機は1機のみです。これがダウンすると今回の状況では、艦内でのマイク、電話、照明、消火ポンプの使用できないという状況となりました。今回は極めて稀なケースと記載していますが、電源を喪失したこと、これまで想定していないところから出火したことが同時に発生した極めて稀がケースが重なったものと分析しています。
非常用発電機のない掃海艇と電源喪失訓練の未実施
記者 :
非常用発電機がない掃海艇に関しては、その必要性が高いにもかかわらず、(火災発生時の電源喪失の訓練が)行われていなかったことについて、どのように考えていますでしょうか。
幕僚長 :
おっしゃるとおりです。そこまで想定して訓練を実施すべきだったと思います。今回の事故対策として、早急に電源が落ちた際の対応要領について検討し、訓練をやらせるようにしています。また、電源が落ちた際も、しばらくは艦内マイク等を使って、状況が各部に分かるように、約20分間電力を確保する無停電電源装置を新たに導入することとしています。
組織改善の具体的な取り組み
記者 :
海幕長が最初におっしゃられた組織の改善という点ですけど、具体的にどのような事を考えられているのか改めて教えてください。
幕僚長 :
事故対策、再発防止策を出しておりますので、しっかりと組織として改善していく。そしてそれは、それぞれの船に任せるのではなく、その船の練度を管理する司令部あるいはその部隊を訓練指導する部隊、これらを含めて組織としてしっかりと取組んでいこうという考えです。
事故を防ぎ得た可能性があった点
記者 :
今回の事故は極めて稀な事象が相次いだとか、重なったという風になっています。あまりに仮定の質問ではあるんですが、海幕長として今回のこの調査結果を見て、仮にこの点が防げていれば事故が防げたんじゃないかという点はどちらでしょうか。
幕僚長 :
なかなか記者会見で仮定の質問にはお答えしにくいところはあるんですが、電源が落ちたとしても、エンジンに燃料を供給する弁を止めてたら、それ以上の拡大はなかったのかなと、思っております。ただ、今回の火災が発生して約1分で電源が落ちています。その燃料を送り込む弁を遮断する遠隔装置が艦橋にあり、それも電源が落ちたら使えない状況になります。その場合、現場に行って手動でやることになりますが、それがいち早くできれば、という思いはあります。ただし、なかなか難しかったのかなと思います。
無停電電源装置の配備計画と対象艦艇
記者 :
先ほどおっしゃられた無停電電源装置について、具体的に配備する時期、どういった船に装備するのかについて、現時点で決まっているものがあれば教えてください。
幕僚長 :
無停電電源装置の装備は、「すがしま」型、「ひらしま」型、「えのしま」型、「あわじ」型に装備する予定にしておりまして、令和8年、令和9年度中の修理時期に合わせて実施します。
(以上)
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