特定秘密漏えい事案2件(海自、陸自)の調査結果と処分内容を発表
- 防衛省関連
2024-4-26 13:19
防衛省は令和6(2024)年4月26日、海上自衛隊及び陸上自衛隊で発生した特定秘密漏えい事案について、事案の概要、調査結果、処分内容などを発表した。
先日、海上自衛隊では、護衛艦「いなづま」の当時の艦長が特定秘密の情報を取り扱う資格のない隊員1名を特定秘密取扱職員に指名し、戦闘指揮所(CIC)において特定秘密の情報を取り扱わせていたことが判明。また、陸上自衛隊では、北部方面隊隷下の部隊指揮官が特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員に対し、特定秘密の情報を漏らしたことが判明している。これらを受け防衛省では、当事者及び関係者の懲戒処分を実施するとともに、陸上自衛隊の事案については警務隊に告発状を提出することを発表した。
海上自衛隊の現職の幹部自衛官が特定秘密等の情報を漏えいした事案が発生して以降、防衛省では再発防止措置を講じてきたが、そのなかで新たな事案が発生したことについては「誠に遺憾」とした。この事態を防衛省・自衛隊として深刻に受け止め、4月26日以降、副大臣を長とする再発防止検討委員会において情報保全体制の見直しに係る検討を行っていくとしている。
以下が今回発表された各事案の概要や懲戒処分の内容となっている。
海上自衛隊の護衛艦「いなづま」における特定秘密漏えい事案について
1 事案の概要
  令和6年2月に海上自衛隊の護衛艦「いなづま」から同艦に所属する隊員1名の特定秘密の適性評価の実施状況について海上幕僚監部に照会があったことを契機として、当該隊員は適性評価を経ていないにもかかわらず特定秘密の情報を取り扱わせていたことについて認知するに至った。 
  海上幕僚監部は、当該事案を受け、同月27日に防衛大臣に報告するとともに、翌28日に海上幕僚監部監察官を長とする事故調査の組織を設置し、調査を開始した。また、同日、海上自衛隊警務隊に対し、本事案を通報した。 
  この調査の結果、令和4年6月に海上自衛隊の護衛艦「いなづま」の当時の艦長が特定秘密を取り扱う資格のない当該隊員を特定秘密取扱職員に指名し、特定秘密の情報を取り扱わせていたことが判明した。 
2 調査結果
  令和4年6月20日、海上自衛隊の護衛艦「いなづま」の当時の艦長が、人事異動により同艦に配属された当該隊員を特定秘密の適性評価を経ていないにもかかわらず特定秘密取扱職員に指名し、同艦が令和5年1月10日に山口県周防大島沖で事故を起こすまでの間に行われた約2か月の任務行動の際、戦闘指揮所(CIC)において特定秘密の情報を取り扱わせ、特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)及び特定秘密の保護に関する訓令(平成26年防衛省訓令第64号)に違反したことが判明した。 
  また、同艦の艦長等が定期検査に際して所要の確認を行わず、同訓令に違反したこと等により、当該事案の認知が遅れたことが判明した。 
 (1)漏えいした情報 
  船舶の航跡情報 
  なお、当該隊員から第三者への更なる漏えいは確認されなかった。 
 (2)本事案の要因 
 ア 事案発生の要因 
 ・護衛艦「いなづま」の当時の艦長は、人事異動の際に特定秘密を取り扱わせるべき隊員の適性評価の実施の有無を確認し、未実施の場合は直ちに適性評価を実施させるべきところ、当該隊員についてこれを怠った。 
 ・同艦において当時特定秘密関係職員指名簿を管理していた担当者が、指名簿に当該隊員の氏名を新たに記載するに当たり、当該隊員の適性評価の実施の有無について確認を怠った。 
 ・艦長が当該隊員の適性評価の実施の有無について確認することなく当該指名簿の決裁を行った。これらはいずれも特定秘密の保護に関する訓令に違反している。 
 イ 事案認知が遅れた要因 
 ・護衛艦「いなづま」の艦長及び同艦において特定秘密の保護に従事する者が、年に2回の秘密事項定期検査の実施時等に際して適性評価の実施状況の確認を行うべきところ、これを怠った。これは特定秘密の保護に関する訓令に違反している。 
・同艦において特定秘密の保護に従事する担当者が、令和4年8月及び令和5年5月に当該隊員は適性評価を未実施であるにもかかわらず特定秘密を取り扱っていることを把握するも、当該事実の重要性について理解が及ばず、必要な措置を講じなかった。これは、特定秘密の保護に関する訓令に定める職責を果たしていないほか、秘密保全に関する規範意識が著しく欠如している。
3 再発防止策
適性評価実施済みの隊員を一括管理し、適性評価の手続未実施の隊員を特定秘密取扱職員に指名できないシステムを構築するとともに、当面の間は、特定秘密取扱職員の指名に当たって適性評価の有無の確認を徹底する。また、特定秘密管理者補補職前の保全教育を実施するほか、知識確認試験の実施を検討する。更に、部隊の定期検査が適切に実施されているかについて、海上幕僚監部が適切に確認することとする。
陸上自衛隊北部方面隊隷下の部隊における特定秘密漏えい事案について
1 事案の概要
  令和5年7月21日、北部方面隊隷下の部隊指揮官が、同月に上富良野演習場で行われた訓練において指示・伝達を行う際に、特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員もいる前で、特定秘密の情報を伝達した旨の情報提供が防衛省にあった。 
  陸上幕僚監部は、当該情報提供を受け、情報の内容につき所要の確認を行い、同年12月27日に防衛大臣に報告するとともに、北部方面総監部幕僚副長を長とする事故調査の組織を設置し、調査を開始した。また、同日、北部方面警務隊に対し、本事案を通報した。 
  この調査の結果、当該部隊指揮官が、少なくとも重大な過失により、特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員15名に特定秘密の情報を漏えいしたことが判明した。 
2 調査結果
  令和5年7月16日、北部方面隊隷下の部隊指揮官が上富良野演習場で行われた訓練において指示・伝達を行う際に、特定秘密の情報を知るべき立場にない隊員15名に対して特定秘密の情報を漏らし、特定秘密の保護に関する法律(平成25年法律第108号)及び特定秘密の保護に関する訓令(平成26年防衛省訓令第64号)に違反したことが判明した。 
  また、当該部隊指揮官は、指示・伝達の後、自らの発言が特定秘密に該当する可能性があることを認識したものの、部下隊員から二次漏えいの防止のための措置を実施した旨の報告を受けたことをもって上級部隊への報告を要しないと誤って判断し、これを怠っていたことを確認した。 
 (1)漏えいした情報 
  有事における自衛隊の活動に関する情報 
  なお、漏えい先の隊員から第三者への更なる漏えいは確認されなかった。 
 (2)本事案の要因 
  当該指揮官が、訓練に参加する隊員の意識を高揚させようと思うあまり、深く思慮せず、少なくとも重大な過失により、知るべき立場にない隊員もいる中で特定秘密の内容を発言したものであり、秘密保全に関する規範意識が著しく欠如している。 
3 再発防止策
特定秘密の情報の伝達に当たって特定秘密取扱者名簿により特定秘密取扱職員であることの確認等を徹底するとともに、部隊指揮官等に対する保全教育及び知識確認試験を実施する。
海上自衛隊及び陸上自衛隊における特定秘密漏えい事案の懲戒処分について
海上自衛隊及び陸上自衛隊における特定秘密漏えい事案について、令和6年4月26日付で懲戒処分を実施した。
海上自衛隊
 ・海上幕僚監部 
 1等海佐 40歳代 「停職6日」 
 (情報保全に関する違反/情報管理者等義務違反) 
 処分理由:艦長として、適性評価の実施の有無を確認することなく、適性評価未実施の隊員を特定秘密取扱職員に指名し、また、定期検査においても適性評価の実施状況の確認を怠った。 
 ・海上自衛隊幹部学校 
 2等海佐 40歳代 「減給2月1/6」 
 (情報保全に関する違反/情報管理者等義務違反) 
 処分理由:艦長として、適性評価の実施の有無の確認を怠った。 
 ・海上自衛隊幹部学校 
 3等海佐 30歳代 「停職6日」 
 (情報保全に関する違反/情報管理者等義務違反) 
 処分理由:特定秘密の保護に従事する担当者として、適性評価未実施の隊員の特定秘密取扱職員の指名に際し、適性評価の実施の有無の確認を怠り、また、定期検査においても適性評価の実施状況の確認を怠った。 
 ・第1輸送隊 
 2等海尉 30歳代 「停職6日」 
 (情報保全に関する違反/情報管理者等義務違反) 
 処分理由:特定秘密の保護に従事する担当者として、適性評価未実施の隊員の特定秘密取扱職員の指名に際し、適性評価の実施の有無の確認を怠り、また、定期検査においても適性評価の実施状況の確認を怠った。 
陸上自衛隊
 ・第2師団司令部 
 2等陸佐 50歳代 「停職6日」 
 (情報保全に関する違反/秘密漏えい等) 
 処分理由:部隊指揮官として、過失により知るべき立場にない隊員に対し特定秘密を漏えいした。 
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