日本の防衛と安全保障の今を伝える
[Jディフェンスニュース]

site search

menu

Jディフェンスニュース

レーダー照射事案から6年半、日韓による再発防止策(6月1日)

  • 防衛省関連

2024-6-3 08:29

海上自衛隊と韓国海軍が平時に遭遇した際の安全確保に、ようやくルールが設けられた 写真:防衛省

 防衛省は令和6(2024)年6月1日19時20分、シンガポールにおける日韓防衛相会談で合意に至った、海上自衛隊と韓国海軍の艦艇及び航空機の円滑かつ安全な運用のための意図表明文書の概要を公表した。
 これは2018年12月20日に発生した韓国海軍駆逐艦「クワンゲトデワン」による海上自衛隊P-1哨戒機への火器管制レーダーの照射について、同様の事案が起こらぬようにした再発防止策。事件以来、海上自衛隊と韓国海軍が作成してきたもの。ちなみに文中において、2018年の事案には触れられていない。
 意図表明文書の内容はこちらの通り。

海上自衛隊と韓国海軍の艦艇及び航空機の円滑かつ安全な運用のための意図表明文書の概要

目的

 本意図表明文書は、海上自衛隊と韓国海軍の間の海上における艦艇及び航空機の円滑かつ安全な運用を保障することを目的として作成されたもの。

主な内容

(1)西太平洋海軍シンポジウム(Western Pacific Naval Symposium)において採択された「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(Code for Unplanned Encounters at Sea、以下「CUES」(キューズ)という)」が遵守されるよう相互に協力

(2)部隊の安全を確保するため、特に、艦艇・航空機間の水平距離及び高度が含まれる「安全な距離」の項目及び慎重な指揮官が一般的に回避する動作を既定した「海軍艦艇が確実に実施すべき処置」の項目を念頭に置き、CUESを遵守(細部は別添参照)

(3)適切な通信と調整のため、CUESの「無線通信計画」に規定された周波数を基本としつつ、日韓間で定めた優先順位に従って呼びかけ及び応答

(4)相手方の行為が、自身の安全にリスクをもたらすと判断した場合の呼びかけに対し、積極的に呼応・尊重など円滑な意思疎通で相互の安全を確保

(5)海上自衛隊と韓国海軍の間の既存の通話チャンネルを活用し、平素から意思疎通を強化し、信頼を醸成

(6)海上自衛隊と韓国海軍の間の定例協議体を通じ、本意図表明文書の実施状況を必要に応じて確認し、改善策及びその他の事項について協議

(7)本意図表明文書の内容が効果的に実施されるよう、相互に教育訓練に努め、共同訓練の際に通信訓練を積極的に実施

(以上)

【参考】CUESの関連規定

2.6 安全な距離

2.6.1 CUESで用いる距離の単位はノーティカルマイル、高度の単位はフィートまたはメートルである。

2.6.2 艦長、航空機機長及び船長(これに準ずる者)は、自国と他国の海軍艦船と海軍航空機(1.3の定義による)との間に常に安全な間隔を保つものとする。また、自国と他国の艦船と海軍空機との安全距離を決定するに当たっては、次の要素を考慮に入れる。
A)視界の状態
B)漁船群を含む交通のふくそう
C)双方の海軍艦船又は海軍航空機の運動のしやすさ
D)風、海面、潮流の状態及び航海上の危険物の近接
E)推進力の信頼性
F)乗組員の練度
G)他の海軍艦船又は海軍航空機の運動意図の把握

【※参考1.3定義(関連部分抜粋)】

1.3.3 CUESの目的に鑑み、「海軍艦船」は、軍艦、海軍補助船舶、潜水艦が含まれることを想定した表現である。

1.3.5 CUESの目的に鑑み、「海軍航空機」には、ヘリコプター、固定翼航空機、無人航空システムまたは無人航空機が含まれる。

2.8 海軍艦艇が確実に実施すべき処置

2.8.1 艦長又は船長(これに準ずる者)は、誤解されるおそれのある動作をとる前に、起こり得る結果を考慮する必要がある。なお、慎重な指揮官が一般的に回避する動作は次を含む。
A)遭遇した船舶または航空機の方向に砲、ミサイル、射撃管制レーダー、魚雷発射管また はその他の武器を向けることによる攻撃の模擬
B)遭難の場合を除く、遭遇した船舶または航空機の方向に向けた信号ロケット、武器、その他の物体の発射
C)艦橋又は航空機の操縦席への照射
D)遭遇した船舶又は航空機に搭乗している人員に害を引き起こすような方法若しくは搭載機器に損害を引き起こすような方法でのレーザーの使用
E)遭遇した艦船近傍での曲技飛行及び模擬攻擊

(以上)

bnrname
bnrname

pagetop