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自衛官の処遇・勤務環境の改善などについての関係閣僚会議、第1回を開催(10月25日)

  • 日本の防衛

2024-10-29 15:17

 令和6(2024)年10月25日(金)8時40分〜8時55分、官邸において「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」が開催された。

 この会議は、自衛官の処遇改善や勤務環境の改善、生涯設計の確立などについて、その方策を取りまとめるため、今年10月9日に内閣総理大臣の決済によって設置されたもの。内閣総理大臣を議長、内閣官房長官と防衛大臣を副議長とし、構成員には国家公務員制度担当大臣など9名の閣僚らが名を連ねる。
 第1回会議の議事は「自衛官の処遇改善等の取組状況について」であった。

 配布された資料が公開されており、その内容はこちらの通り。

第1回 自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議

問題認識と主な検討項目①

 自衛官は、身をもって我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つという職務の性質とあらゆる事態に常時対応する責務を有することから、特別職の国家公務員として、一般職の国家公務員とは異なる人事管理制度及び給与制度を設けている。

一般職(29.5万人):国家公務員法及び国家公務員給与法
自衛官(24.7万人):自衛隊法及び衛省職員給与法

 特に、自衛隊の精強性を保つため、若年定年制(56歳が大宗)と任期制(退職が20代から30代半ば)という制度を採用している点が一般職公務員と異なる。

 自衛官が誇りを持ち、安心して職務に従事できるよう、自衛官の職務の特殊性を考慮した俸給と諸手当を設け、不断にその改善を実施してきた。

問題認識と主な検討項目②

 他方、冷戦終結後、自衛隊の任務・役割は多様化、拡大する中、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対応した防衛力の抜本的強化のためには、 その担い手である自衛官の確保が至上命題。

 しかしながら、少子高齢化の大きな流れの中、現下の人手不足は自衛隊にも深刻な影響を及ぼしている。5年度は2万人募集のところ1万人しか採用できず、24.7万人の定員中2万人の欠員が更に4,000人増加した。令和6年度予算の年間充足率は約92%としているが、このまま抜本的な策を講じなければ、こうした状況はさらに悪化することが見込まれる。

 また、若年定年制で多くの自衛官が56歳で退職する中、退職後の再就職・収入に不安を感じさせないようにすることが、自衛官の確保にとっても重要な課題。一般に、自衛官の若年定年退職後の収入は現役時代に比べて低いが、自衛官としての知識・技能・経験を活かした職種への円滑な再就職による、安んじて生活できる収入の確保などを通じ、自衛官の将来不安の払しょくに取り組む必要。

問題認識と主な検討項自衛目官③

 防衛力の抜本的強化を真に実現するためには、自衛官の志願者を増やし、士気を維持・向上させ、優れた自衛官を安定的に確保し続ける必要がある。このためには、これからの防衛力の担い手となる世代が、安心して厳しい任務に従事でき、自衛官という職業を選択したこと、現役時代は自衛官であること、退職後は自衛官であったことの誇りと名誉を得ることができるような、令和の時代にふさわしい処遇を確立する必要がある。

 主な検討項目は次のとおり。

1.処遇の改善
- 任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与面の処遇の在り方
- 自衛隊員として長年にわたり任務に精励した功績に相応しい叙勲等の在り方

2.生活勤務環境の改善
- 若い世代のライフスタイルに見合った生活勤務環境の構築

3.新たな生涯設計の確立
- 若年定年制における将来不安の払拭の観点から、自衛官としての知識・技能・経験を活かした再就職先の拡充等

4.その他

各府省庁にご協力を依頼している事柄

警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省
 自衛隊における知識・技能・経験を活かした、各種業界における退職自衛官・予備自衛官の活用の推進

総務省
 募集に関する地方自治体との連携
 地方公務員である予備自衛官の処遇改善

財務省
 自衛官の処遇改善、勤務環境の改善に係る措置

文部科学省
 教育機関との連携

国土交通省
 国家資格・民間資格を取得するための手続きの簡素化等

国家公務員制度担当大臣部局
 国家公務員である予備自衛官の処遇改善

内閣府
 功績に相応しい叙勲の受章

※上記以外の事項についても、今後の議論の進捗に応じて、ご協力をお願いすることを考えています。

(以上、資料)

 配布された参考資料の内容は、以下の通り。

参考資料

(以上、参考資料)

 議事の要旨も公開されており、内容は次の通り。

自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議(第1回) 議事要旨

日時:
 令和6年10月25日(金)08:40~08:55

会場:
 官邸4階大会議室

出席者:
 石破内閣総理大臣、林内閣官房長官、中谷防衛大臣、平国家公務員制度担当大臣、坂井国家公安委員会委員長、村上総務大臣、あべ文部科学大臣、福岡厚生労働大臣、武藤経済産業大臣、斉藤国土交通大臣、進藤財務大臣政務官、舞立農林水産大臣政務官、橘内閣官房副長官、青木内閣官房副長官、佐藤内閣官房副長官、阪田内閣官房副長官補、鈴木内閣官房国家安全保障局次長、小林内閣広報官、大和防衛省防衛政策局長、青木防衛省人事教育局長

中谷防衛大臣から、配布資料を用いて以下の説明があった。

・ 自衛官は、特別職の国家公務員として、一般職の国家公務員とは異なる制度を設けています。
・ 特に、若年定年制と任期制という独自の制度を採用しています。
・ 自衛官が誇りを持ち、安心して職務に従事できるよう、自衛官の職務の特殊性を考慮した俸給と諸手当を設け、不断に改善を実施してまいりました。
・ 今、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境にある中、防衛力の抜本的強化のためには、自衛官の確保が至上命題です。
・ しかしながら、少子高齢化の中、抜本的な策を講じなければ、募集状況はさらに悪化することが見込まれます。
・ また、退職後の不安を感じさせないようにすることも重要な課題です。
・ 一般に、退職後の収入は現役時代に比べて低く、再就職などを通じ、将来不安の払しょくに取り組む必要があります。
・ 防衛力の抜本的強化実現のため、志願者を増やし、士気を維持・向上させ、優れた自衛官を安定的に確保し続けるためには、これからの防衛力の担い手となる世代が、安心して厳しい任務に従事でき、誇りと名誉を得ることができるような、令和の時代にふさわしい処遇を確立する必要があります。
・ 各閣僚におかれましては、検討へのご協力を何卒お願いします。

村上総務大臣から、以下の発言があった。

・ 総務省としては、自衛官の募集に関する事務の一部を担う地方自治体との連携を強化する観点から、引き続き、防衛省と連携して取り組んでまいります。
・ このほか、自衛官の処遇・勤務環境の改善や新たな生涯設計の確立に向け、総務省としても、防衛省における検討に協力してまいります。

斉藤国土交通大臣から、以下の発言があった。

・ 国土交通省も、へき地にある事務所への転勤や、TEC-FORCEなど災害時の危険な業務が多く、処遇・勤務環境の改善などにおける自衛隊の状況について大いに共感するところです。
・ 防衛省から協力要請のあった、航空整備士など退職後の国家資格取得に係る手続きの簡素化などについて、引き続き、防衛省とよく相談してまいります。
・ また、退職自衛官の再就職先として想定される自動車、航空、海運、建設業などの各分野は、人手不足が特に顕著となっており、退職自衛官に即戦力として活躍してほしいとの強いニーズがあります。退職自衛官の活用推進についても、防衛省とよく相談して、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

あべ文部科学大臣から、以下の発言があった。

・ 全ての人々の活躍を支援し、社会全体の活力を生み出す観点から、自衛官が退職後も社会で存分に活躍できる生涯設計を描けるようにすることは重要と考えています。
・ このため、文部科学省としては、若年定年後の退職自衛官の方々や現役自衛官の方々の再就職活動にも資するよう、在職中から大学等への入学準備ができる環境整備の方策や、大学等におけるリカレント教育プログラムを積極的に活用していただける方策について、防衛省をはじめ関係省庁や大学等と連携しながら、しっかり検討を進めてまいります。

平国家公務員制度担当大臣から、以下の発言があった。

・ 予備自衛官は、いざというときに急速に集めることができる予備の防衛力として、警備、後方支援など様々な場面で活躍されていると伺っております。
・ 国家公務員制度担当大臣としても、国家公務員である予備自衛官の処遇改善に関して、防衛大臣を中心になされる検討について、協力してまいります。

福岡厚生労働大臣から、以下の発言があった。

・ 厚生労働省では、防衛省地方協力本部と連携したハローワークでの説明会の開催や、自衛官の再就職に向けた職業紹介等に取り組んでいます。防衛省をはじめ関係省庁と連携し、所管業界における自衛官の活用を推進してまいります。

武藤経済産業大臣から、以下の発言があった。

・ 退役自衛官・予備自衛官の活用推進や、革新的技術の活用を通じた現役自衛隊員の働き方改善等は、防衛産業基盤の維持・強化に資するものであり、経済産業省としてもしっかりと取り組んでいきます。
・ 具体的には、人材不足が課題となっている業界への橋渡しのサポートや、現在、経済産業省が進めている防衛省・自衛隊でのスタートアップ技術の活用促進を通じた現場の自衛官の勤務環境の改善等につなげてまいります。

坂井国家公安委員会委員長から、以下の発言があった。

・ 警備業界における退職自衛官の活用については、大変意義あることと認識しており、今後も、防衛省とよく相談しながら進めてまいります。

進藤財務大臣政務官から、以下の発言があった。

・ 安全保障環境が厳しさを増す中、日本を守る自衛官という職業がより魅力的なものとなるように取り組んでいくことは重要な課題と認識しています。
・ 戦略3文書の中でも「人的基盤の強化」が掲げられており、これまでも、自衛官の業務等の特殊性を勘案した手当の拡充や、生活勤務環境の改善につながるような施設整備等を行ってきました。
・ 財務省としても毎年度の予算編成等を通じて、防衛省と連携しながら、人的基盤強化の取組に引き続き積極的に協力してまいります。

舞立農林水産大臣政務官から、以下の発言があった。

・ 我が国の農林水産業をめぐっては、人口減少が進む中で、人材の確保が大きな課題となっています。
・ こうした中で、自衛隊において様々な技能や経験を培われてきた退職自衛官や予備自衛官の方々に農林水産業でご活躍いただくことは、大変意義のあることと認識しております。
・ 農林水産省といたしましても、自衛隊出身の方々の就農環境づくりなど、取組を進めてまいりたいと考えております。

最後に、石破内閣総理大臣から以下の発言があった。

・ 我が国は戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。このような中、防衛力の最大の基盤である自衛官については、定員割れが続いており、処遇改善、勤務環境の改善のほか、若くして定年退職を迎える自衛官が現役時代の知見や技能をいかしつつ、退職後も社会で存分に活躍できる生涯設計を描けるようにすることが喫緊の課題となっています。
・ このため、今般、私自身が議長となり、列席の皆様を構成員として、本日「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」を開催いたしました。
・ 今後、副議長たる防衛大臣を中心に、関係省庁が連携して取り組むべき方策の方向性と、令和7年度予算に計上すべき項目を年内に取りまとめていただきます。
・ 自衛官諸君が、安んじて国防という国家にとって極めて枢要な任務に、誇りと名誉をもって専念できるよう、この会議における議論を踏まえ、万全の体制を構築してまいります。

(以上)

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