[国会答弁]中国軍による領空侵犯に関する質問に対する答弁書を公表
- 日本の防衛
2024-11-26 10:01
令和6(2024)年11月22日(金)、衆議院議員松原仁(まつばら・じん)氏が第215回国会に提出した質問「中国軍による領空侵犯に関する質問主意書」とそれに対する答弁書が公表された。
衆議院議員松原仁君提出中国軍による領空侵犯に関する質問に対する答弁書について
中国軍による領空侵犯に関する質問主意書
令和6年11月11日提出 質問第14号
提出者 松原仁
中国軍の情報収集機が、本年8月26日、長崎県男女諸島沖の我が国領空を侵犯した。多くの専門家が指摘しているように、侵犯の態様から、意図的であったことは間違いない。中国軍による領空侵犯は初めてであり、極めて重大な事態である。
しかるに政府は、外務大臣が駐日中国大使を召致して断固抗議すべきところ、外務事務次官が抗議するにとどめた。不十分な対応は、誤ったメッセージとして伝わり、更なる暴挙を誘発して、武力衝突の可能性を高めるものである。実際に、わずか5日後の同月31日、中国海軍の測量艦が、鹿児島県口永良部島南西の我が国領海に侵入した。政府に、猛省を促したい。
対領空侵犯措置についてお尋ねする。
一 領空侵犯のおそれのある航空機を発見したときに行われる、航空自衛隊の航空機による緊急発進の回数は、中国機について令和5年度は何回であったか。また、令和5年度の緊急発進全体のなかで、中国機が原因の割合は、どの程度であったか。
二 自衛隊法(昭和29年法律第165号)第84条の規定に基づく領空侵犯に対する措置として、正当防衛又は緊急避難の要件に該当する場合に、武器を使用することはできるか。また、もし武器を使用することができるとするなら、必要やむを得ざる場合は、撃墜も排除されないか。政府の見解を明らかにされたい。
三 石井外務省国際法局長(当時)は、平成25年11月1日に開かれた衆議院国家安全保障に関する特別委員会において、国際法に関して、「一般論として申し上げますと、領空侵犯機に対しては、領空外への誘導を行ったり退去を命じたりすることができ、侵犯機が指示に応ぜず、なお領空の侵犯を継続するときには、発砲の警告、威嚇射撃をもって命令を強制することもできるというふうに考えられております。さらに、もちろん、必要やむを得ざる場合、特別な場合だと思いますが、例えば侵犯機が実力で抵抗するような場合においては、撃墜をも含む緊急実力手段に訴えることもできる、そういうふうに考えられております。」と答弁したが、この政府見解に変更はあるか。
四 航空自衛隊の戦闘機が、昭和62年12月9日、領空侵犯した旧ソ連の軍用機に対して、2度にわたって警告射撃を実施したのは、いかなる理由からか。警告射撃を実施しなかった本年8月26日の中国軍による領空侵犯事案と、いかなる点で異なるか、具体的に説明されたい。
五 本年8月26日に、領空侵犯を行った中国軍の情報収集機は、いかなる目的のためにいかなる情報を収集しようとしていたか、政府による分析結果を明らかにされたい。
右質問する。
衆議院議員松原仁君提出中国軍による領空侵犯に関する質問に対する答弁書
一について
お尋ねの「中国機」についての「航空自衛隊の航空機による緊急発進の回数」は、令和5年度において479回である。また、同年度の緊急発進の回数のうち、「中国機」に対するものの割合は約72%である。
二について
自衛隊法(昭和29年法律第165号)第84条に基づく領空侵犯に対する措置は、国際法上認められる範囲内で行われるものであり、有人かつ軍用の航空機に対する武器の使用は、同条に規定する「必要な措置」として、正当防衛又は緊急避難の要件に該当する場合に許される。また、このような「必要な措置」の範囲内で行われる限り、撃墜することも許されると考えている。
三について
平成25年11月1日の衆議院国家安全保障に関する特別委員会における石井正文外務省国際法局長(当時)の「基本的な考え方といたしましては、国際法上、国家は領空について完全かつ排他的な主権を有しておりまして、無人機を含めまして、他国の航空機は、領域国の許可を得ないでその領空を飛行することは認められていないということがまず基本でございます。その上で、何ができるかということでございますが、それは、領空侵犯の状況、領空侵犯機の対応ぶりなどの具体的な事情によりまして異なるものでございます。国際法上も、具体的なものが確立しているということはございません。ただ、その上で、一般論として申し上げますと、領空侵犯機に対しては、領空外への誘導を行ったり退去を命じたりすることができ、侵犯機が指示に応ぜず、なお領空の侵犯を継続するときには、発砲の警告、威嚇射撃をもって命令を強制することもできるというふうに考えられております。さらに、もちろん、必要やむを得ざる場合、特別な場合だと思いますが、例えば侵犯機が実力で抵抗するような場合においては、撃墜をも含む緊急実力手段に訴えることもできる、そういうふうに考えられております。」との答弁において示された考え方に変更はない。
四について
領空侵犯が発生した際の我が国の対応については、具体的な状況に照らして判断することとなるが、お尋ねの昭和62年12月9日の旧ソヴィエト社会主義共和国連邦軍機による領空侵犯については、当該機が、自衛隊の無線等による警告にもかかわらず、領空侵犯を継続したことを踏まえ、曳光弾(えいこうだん)を用いた射撃による警告を実施したものである。また、お尋ねの令和6年8月26日の中国軍機による領空侵犯については、当該機が、自衛隊の無線による警告の後、我が国領空から退去したことを踏まえ、曳光弾を用いた射撃による警告は実施しなかったものである。
五について
政府としては、御指摘の中国軍機による領空侵犯も含め、我が国周辺における軍事動向について必要な情報収集等を行ってきているが、お尋ねについて具体的にお答えすることは、今後の情報収集等に支障を来すおそれがあることから、差し控えたい。
(以上)
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