DSEI Japan 2025 井上孝司の「気になる海外サプライヤー」
- 日本の防衛
2025-5-23 11:55
本日5月23日はDSEI Japan 2025の最終日。井上孝司氏から独断と偏見による「海外サプライヤーリスト」が提示された。来場されなかった方にとっても、海外防衛企業チェックの視野を広げる一助になるならば幸いだ。
DSEIに限らず、航空宇宙・防衛分野の展示会では、装甲戦闘車両・艦艇・航空機・誘導弾などといった「大物の正面装備」を手掛ける大手メーカーの出展ばかりが注目されやすい傾向がある。しかし、そうした正面装備の背後には、数多のサプライヤーがいて、そうしたメーカーもまた、展示会に出展している。
そこでDSEIが終わってしまう前に、「こんな海外企業も出展していて、主にこんな製品を手掛けている」という話を、筆者の思いつくままに書いてみたい。欧米に偏っているきらいもあるだろうが、航空宇宙・防衛産業の裾野の広さを知る一助になるかもしれない。
井上孝司 編 気になる海外サプライヤーリスト
アンシス(ANSYS)【H8-342】
モデリングやシミュレーションといった分野のソリューションを手掛けている会社。つまり、現実をいちいち試作して動かしてみる代わりに、コンピュータ上でシミュレートすることで試行錯誤のプロセスを迅速化するなど、いわゆるデジタル・エンジニアリングの土台を支えている。今ではモノだけでなく、モノを動かして何が起きるか、といった状況もモデリングできる。
ELTグループ(ELT Group)【H7-210】
電子戦分野などの防衛電子機器、サイバー防衛、インフラ防護といった分野に関わる製品を手掛けている、イタリアのメーカー。
ヘンゾルト(Hensoldt AG)【H7-243】
ドイツのメーカーで、もともとエアバスの防衛電子機器部門・カシディアンにルーツがある。エアバスが事業体制を見直した時にドイツ政府が一部を出資する形で独立・発足した。主として艦艇や航空機で使用するレーダーや電子戦などの電子機器、光学センサー機器などを手掛けている。
JFD(JFD Ltd.)【H7-441】
潜水を初めとする海中オペレーションを事業領域とする、イギリスの企業。その一環として手掛けている、潜水艦救難システムが知られている。また、潜水員が使用するコンパスや時計、潜水具などといった機材も、当然ながら手掛けている。
クラケン・ロボティクス(Kraken Robotics)【H8-305】
カナダのメーカーで、水中戦の分野に重点を置いているようだ。ロボティクスという社名の通り、無人ヴィークル製品を手掛けているだけでなく、KATFISHのようなソナー製品、遠隔操作式機雷処分具RMDS(Remote Minehunting and Disposal System)といった製品も手掛けている。
L3ハリス・テクノロジーズ(L3Harris Technologies Inc.)【H8-401】
通信機器メーカーのハリス(Harris)が同業のITT社を合併、そのハリスと、防衛関連コングロマリット(複合企業体)のL3コミュニケーションズ(L3 Communications)が合併して発足したのが、L3ハリス・テクノロジーズ。こうした経緯から、陸海空・宇宙・サイバーと多様な場面を事業対象としており、製品ラインナップは多岐にわたる。システム・インテグレーターとしても実績がある。最近、エアロジェット・ロケットダインを傘下に収めてロケット・モーターにも進出した。
レオナルドDRS(Leonardo DRS Inc.)【H8-310】
アメリカの会社で、もともとDRSテクノロジーズという社名だった。それが伊レオナルドの傘下に入り、現社名となった。レーダー、電子戦システム、電子光学センサーなどの製品を多くラインナップしている。指揮統制システムや射撃指揮システム、意外なところでは架橋機材JAB(Joint Assault Bridge)も手掛けている。
ムーグ(Moog Inc.)【H8-220】
航空機用のアクチュエータ製品、つまり動翼を動かすためのメカで有名な会社。関連するところで、ロケットの推力変更機構も手掛けている。アクチュエータの関連領域として、振動制御装置や旋回砲搭、レーダー用アンテナの支持・旋回機構に関わるところも手掛けている。
ピアソン・エンジニアリング(Pearson Engineering)【H7-435】
イギリスの会社で、戦車の前面に取り付けるマインプラウや地雷処分用ローラー、工兵車両用のドーザー・ブレード、架橋機材など、土木分野に関わる製品を手掛けている。
キネティック・ターゲット・システムズ(QinetiQ Target Systems)【H6-304】
もともとは、イギリスのメギット(Meggitt)傘下にあった標的機部門。それが、キネティックの傘下に入って現社名となった。バンシーなどの無人標的機を手掛けている。ちなみにキネティックとは、英国防省の研究開発部門DERA(Defence Evaluation and Research Agency)を民営化して発足した会社だ。日本でいえば、技術研究本部が民間企業になってしまったようなものである。
レンク(RENK GmbH)【H7-238】
ドイツのメーカーで、各種車両や艦艇で使用する変速機・減速ギアボックスといった製品を手掛けている。
ローデ・シュワルツ(Rohde & Schwarz)【H7-224】
ドイツのメーカーで、計測機器や通信機器で知られている。また、放送関連の機材、サイバー・セキュリティといった分野の製品も手掛けている。
スミスズ・ディテクション(Smiths Detection)【H7-358】
化学兵器の検知装置や気象観測装置など、「センシング」に関わる製品をいろいろ手掛けている。身近なところでは、空港や国境検問所などに設置するX線検査装置や金属探知機などの機材も手掛けている。
スパキャット・アジア・パシフィック(Supacat Asia Pacific)【H8-130】
スパキャット(Supacat)はイギリスの軍用車輌メーカーで、たとえば英陸軍向けの6×6装輪装甲車・ジャッカルや、軍用トラックなどの製品をラインナップしている。
システマティック(Systematic A/S)【H7-356】
デンマークのソフトウェア・メーカーで、指揮管制システム「Sitaware」を開発、欧米で多数の受注実績を得ている。前線部隊、上級部隊の指揮所、海洋監視などといった場面ごとに、それぞれ適した製品をラインナップしている。
テレダインFLIR(Teledyne FLIR)【H8-306】
元の社名はフリアーシステムズ(FLIR Systems)。その名の通りに画像赤外線センサーを主力製品とするメーカーで、テレダインの傘下に入って現社名となった。超小型の偵察用無人ヘリコプター「ブラックホーネット」も同社の製品。
民生用のサーモグラフィも手掛けており、たとえば新幹線の車内清掃・整備に際して座面の濡れがないかどうか調べる場面で活躍している。
Ranking読まれている記事
- 24時間
- 1週間
- 1ヶ月
- DSEI Japan 2025 速報──ロッキード マーティン【H8-200】
- 「DSEI Japan 2025」が千葉県の幕張メッセで開催(5月21〜23日)
- DSEI Japan 2025が5月21日から過去最大規模で開催へ——日本企業は170社が参加
- DSEI Japan 2025 速報──東京計器【H6-333】
- DSEI Japan 2025 速報──BAEシステムズ【H7-300】