齋藤海上幕僚長が定例会見 輸送艦「くにさき」のインドネシア派遣や防衛省の概算要求など(9月1日)
- 日本の防衛
2026-9-3 16:00
防衛省 海上幕僚監部は令和8(2026)年9月2日(水)、1日(火)13時32分~13時50分に防衛省A棟10階会見室において行われた齋藤聡(さいとう・あきら)海上幕僚長の記者会見の要旨を以下のように発表した。
海幕長定例記者会見要旨
海幕長 :
本日、私から1件、発表します。
輸送艦「くにさき」のインドネシア派遣についてです。先に防衛省としても発表がありましたとおり、8月30日(日)輸送艦「くにさき」は、陸上自衛隊のCH-47ヘリコプター3機を搭載し、インドネシアにおける国際緊急援助活動のため、呉を出港しました。現地到着後は、陸上自衛隊航空機による消火活動を始め、現場のニーズを踏まえた各種支援活動に従事する予定です。海上自衛隊としては、陸上自衛隊及び関係機関等と緊密に連携しつつ、必要な支援活動に全力で取り組んでまいります。
令和9年度の防衛省の概算要求について
記者 :
令和9年度の防衛省の概算要求が公表されましたが、今回の概算要求について海幕長の受け止めについて教えてください。また、今回の概算要求では、安保関連3文書の改訂が予定されていることから、事項要求が多く、不透明さを指摘する声もあります。このような声に海幕長としてどのように答えるか教えてください。
海幕長 :
今回の概算要求は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、防衛力の一層の強化と変革を進めるために必要な内容が盛り込まれているものと受け止めています。海上自衛隊としても、我が国周辺海空域における警戒監視や抑止・対処能力を一層向上させるため、各種施策を着実に推進していくことが重要であると考えています。
特に、今回の概算要求では、AIや無人アセット、スタンド・オフ防衛能力、統合防空ミサイル防衛能力など、『新しい戦い方』への対応を進めるとともに、事態が長期化した場合にも任務を継続できる持続的な対応能力、防衛生産・技術基盤及び人的基盤の強化が重視されています。こうした取組を通じて有人・無人アセットを効果的に組み合わせた運用の実現や、スタンド・オフ防衛能力の運用基盤の整備、艦艇・航空機等による警戒監視能力の向上などに取り組みたいと考えています。
しかし、いかに優れた装備やシステムであっても、これを適切に運用するのは『人』です。厳しい募集・採用環境が続く中にあっても、自衛官一人ひとりが誇りとやりがいを持って勤務できる環境整備や処遇の改善、人材確保・育成を着実に進め、人的基盤の強化にも引き続き取り組んでいく考えです。
また、事項要求が多いというご指摘についてですが、現在、安保関連3文書改訂に向け、積極的な議論が進められているところであり、この改訂を踏まえた予算とする必要があることから事項要求が多くなっているものと受け止めています。
概算要求に新型FFMの調達隻数が明記されなかったことについて
記者 :
令和9年度の概算要求において、新型FFMの調達隻数が明記されませんでした。これについて、イージスシステム搭載艦の就役や現場の人員確保の兼ね合いから、調達ペースを落とさざるを得なくなったのではないかとの声もあります。また、オーストラリアへのFFMの輸出も踏まえ、今回、調達隻数が示されなかったことについて、海幕長の見解を教えてください。
海幕長 :
FFMは12隻を建造する予定です。(※1)現在8隻が計画中であり、残りの4隻がどうなるかということだと思います。先ほどの幹事社からの質問とおり、現在、3文書に関する議論が行われている状況です。情勢の変化に応じた予算要求を行うことが普通の考え方だと思います。したがって、次に何を要求するのかは3文書改訂の状況を踏まえて、判断して参りたいと考えております。
※1:現行の防衛力整備計画において、護衛艦12隻を建造することとされており、令和8年度までに、もがみ型FFM 2隻、新型FFM 6隻の取得経費が計上されている。
記者 :
現場における人員確保の難しさから、新型FFMの調達ペースを落とさざるを得ないのではないかとの見方は当たらないということでしょうか。
海幕長 :
様々な事項を検討しながら、次の安保関連3文書に示される情勢を踏まえて適切に判断し、その情勢に応じた防衛力整備を行っていかなければならないと考えています。必要であればしっかりと計上し、他の防衛力整備が必要であれば、そちらに重点を置くことになります。全ては次の安全保障関連3文書に基づいて判断するということです。
勤務環境の改善について
記者 :
概算要求に示されている勤務環境の改善について、民間ホテルなどを活用した部外宿泊とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。また、改めて、こうした環境改善に取り組む意義についてお聞かせください。
海幕長 :
概算要求のパンフレットの人的基盤に関する項目のうち、艦艇乗員の生活・勤務環境の改善に該当するものです。艦艇乗員の生活・勤務環境の改善を図るため、全国の民間ホテル等に艦艇乗員を宿泊させるもので、艦艇乗員を対象としています。
艦艇乗員は、多人数が同じ区画で生活する状況にあります。各種訓練や任務を終えて母港に入港した場合、外出することはできますが、食事などを終えた後に戻る場所は艦内であり、艦内で生活します。自費でホテルに宿泊することも可能ですが、相応の費用を自ら負担しなければなりません。
こうした宿泊を国の予算で措置できれば、隊員がしっかりと休養し、次の任務にも取り組むことができるのではないかと考え、今回予算要求をしています。艦艇乗員の休養を促進し、隊員をリフレッシュさせることにより、部隊の能力発揮につながることを期待しています。
MQ-9Bシーガーディアンの取得計画や運用の見通しなどについて
記者 :
令和9年度概算要求に関連して、MQ-9Bシーガーディアンの取得経費として約2,922億円が盛り込まれました。取得計画の概要と、今後の配備及び運用の見通しについてお聞かせください。
海幕長 :
MQ-9Bについては、17機分の機体取得経費として約2,922億円を計上しています。配備については、当初の計画として鹿屋に約10機、その後、八戸に約10機を配備することとしています。現時点では、それぞれ約10機を配備する考えです。
また、運用については、現在、有人機であるP-3CやP-1が我が国周辺海域の警戒監視を担っていますが、無人機で実施できる海域についてはMQ-9Bを活用し、可能な限り隊員の負担軽減に努めていきたいと考えています。
記者 :
概算要求額に加えて事項要求が付されているのは、安保関連3文書の改定後に取得機数が増えることや、輸入時の為替レートの差額などを想定したものなのでしょうか。
海幕長 :
そのように認識しておりますが、その点については、確認した上で、担当から説明させます。(※2)
※2:事項要求については、3文書の検討を踏まえて決定され、現時点で決まったものはない旨について説明済み。
記者 :
その運用に関して、従来の南西方面における警戒監視のみならず、広大な海域を有する太平洋側もカバーすることが、多数のシーガーディアンを取得する狙いの一つなのでしょうか。
海幕長 :
運用する海域を特に限定しているわけではありません。警戒監視任務は、太平洋側を含め、全ての我が国周辺海域を対象としています。ご指摘のとおり、太平洋側は非常に広い海域ですので、MQ-9Bがその一部を担うことになると考えていますが、現時点では特定の海域に限定せず、我が国周辺海域全般での運用を考えています。
トマホーク発射機能付与に係る護衛艦の改修計画について
記者 :
先日、「ちょうかい」が佐世保に帰還しましたが、今後の護衛艦に対するトマホーク発射機能の付与に係る改修計画や、トマホークミサイル自体の配備計画について、現時点で決まっているものがあれば教えてください。
海幕長 :
令和7年度に「きりしま」及び「はぐろ」のトマホーク発射機能付与に係る改修作業を開始しています。また、令和8年度予算では、「みょうこう」及び「あたご」の改修費用を計上しています。
具体的な改修状況について、「きりしま」は、令和8年度末に、トマホーク発射機能を付与するための改修、所要の試験及び訓練が完了し、トマホーク発射能力を獲得する予定です。一方、「あたご」は、令和9年度中にトマホーク発射能力を獲得する予定です。その他の艦艇については、改修工事の時期等により変動するため、現時点では回答できる段階にないことをご理解いただきたいと思います。
「いずも」型護衛艦の改修について
記者 :
「いずも」型護衛艦の改修について伺います。令和9年度概算要求では、30億円に加えて事項要求が盛り込まれています。防衛省の説明では、この30億円を含め、これまでの2隻分の改修費は累計で1,104億円となり、事項要求によっては更に増える可能性があるとのことでした。
当初から、いわゆる軽空母として運用することを想定して建造した場合と、今回のように既存艦を改修して軽空母化する場合では、総費用の面でどの程度の違いがあったのか、この点について検証する必要があると考えますが、海幕長はどのようにお考えでしょうか。
海幕長 :
当初から作り込んだ場合と、途中で改修した場合でどのような違いがあるのかについては、比較検討する価値があると思います。一方、当初に整備した装備をそのまま使用するのか、安全保障環境の変化に応じて改修して使用するのかについて適切に判断することは、また別の問題であると考えています。
私どもとしては、整備したものをそのまま使用するのではなく、更なる改修が必要であると判断した場合には、しっかりと検討した上で、引き続き、必要な改修を行っていきたいと考えています。
輸送艦「くにさき」のインドネシア派遣について
記者 :
輸送艦「くにさき」のインドネシア派遣について伺います。海外での消火活動は初めてであり、空中からの消火活動は主として陸上自衛隊のCH-47が担うものと思います。航空機を輸送した後、現地での消火活動において、海上自衛隊として重視する点や、活動を円滑に進めるために、どのような支援を行うことが考えられるでしょうか。
海幕長 :
現在、先遣隊が現地入りし、現場にどのようなニーズがあるのか情報収集を行っています。その上で、どのような消火活動を行うのかが決定され、それを踏まえて、海上自衛隊としてどのような支援ができるのかを検討することになると考えています。
一般論として、展開する航空機と隊員が、消火活動を行っていない間、日本の艦艇内で休みたい、日本の食事を取りたいという希望があれば、「くにさき」で提供することができます。また、日本の艦艇で入浴したいという隊員がいれば、そのような支援も提供できると考えています。
いずれにしても、現在、現地で調査している内容と、今後どのような運用を行うのかを踏まえた上で決まりますが、海上自衛隊としてできることは様々あると考えています。
(以上)
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