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JA2024速報──ジェネラル アトミクス(GA-ASI)[W4-021]

  • その他

2024-10-18 08:32

2024年10月16日から19日まで開催されている「2024国際航空宇宙展」(JA2024)。出展者のひとつ米国のジェネラル アトミクス社は、海上保安庁におけるシーガーディアン無人機の運用が順調だ。では、今回の展示のポイントはどこにあるのかというと……井上孝司 INOUE Koji

ジェネラル アトミクスのブース。商談室の壁には、短距離離着陸(STOL)用の主翼と尾翼に換装した、MQ-9B STOL艦上無人機が描かれている 写真:編集部

航空機部門と電磁波部門がいずれも出展

 ジェネラル アトミクスは、RQ-1/MQ-1プレデターやMQ-9リーパーなどの無人機において高い実績があるメーカー。日本では、海洋監視無人機MQ-9Bシーガーディアンが海上保安庁で運用されている。

 今回は航空部門のエアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)だけでなく、エレクトロマグネティック・システムズ(GA-EMS)も加わり、「ジェネラル アトミクス」としての出展である。

 そのため、GA-EMSが手掛けている電磁レールガンが描かれたパネルがあったり、電磁カタパルトEMALS(Electromagnetic Aircraft Launch System)を搭載するフォード級空母の模型が置かれていたり、といった具合。これらは過去の国際航空宇宙展でも見られたものだが、日本でEMALSを搭載した空母を建造する日が来るのだろうか…

こちらはフォード級空母の模型。こうして外観だけ見ると従来の空母と似ているが、カタパルト(航空機射出装置)の中身は大きく変わっている 写真:井上孝司
海自護衛艦にカタパルトを装備して無人機を発艦させる想像図。こちらも商談室の壁に描かれている 写真:井上孝司
GA-EMSは電磁レールガンも手掛けている。ただしJA2024での展示は、ブースの壁に描かれた絵だけのようだ 写真:井上孝司

無人機が運ぶ「空飛ぶケータイ基地局ポッド」

 さて、日本でジェネラル アトミクスというと「無人機」のイメージが強い。実際、同社のMQ-9Bシーガーディアンについては海上保安庁が導入しており、海自は同機での試験を終えて必要な情報を取り終えたところ。採用機種の選定はこれから始まる。ところが今回は、そのシーガーディアンを前面に押し出していたかというと、そうでもない。

 代わりに目立つ場所に置かれていたのが、無人機の翼下に搭載する「移動体通信の基地局ポッド」。ソフトバンクと組んで進めている案件で、ポッドの中央部に電子機器一式、ポッドの前後にアンテナを収めている。これを搭載した無人機を飛ばせば、「空飛ぶ基地局」ができる。

 最近、遠隔地、あるいは災害に見舞われた被災地に通信手段を持ち込むときに、スペースX社のスターリンクが注目されることが多い。ただ、スターリンクの機材一式を持ち込むのも、それはそれで負担になる話であるらしい。

 そこで、「空飛ぶ基地局」を飛ばせば、空を飛ぶから道路事情などの影響を受けない。地上の道路が寸断されていても、空からなら容易に現場にアクセスできる。これが滞空していれば、カバーエリア内では第五世帯移動体通信網(いわゆる5G)による通信を確保できる。

公の場では初公開らしい、ソフトバンクの「空飛ぶ基地局」ポッド。中央が電子機器のスペースで、その前後にアンテナが収まっている。これをガーディアン無人機の翼の下に搭載して飛ばす 写真:井上孝司

日本でのポッド運用には電波法のクリアが必須

 ソフトバンクが関わっている同種案件で、太陽電池駆動の無人機を使用する、いわゆるHAPS(High Altitude Pseudo-Satellite、高々度・疑似人工衛星)の話もある。こちらはエアロヴァイロンメント社の「サングライダー」という機体を使っているが、簡単に実用化できる状況でもない。

 その点、MQ-9Bスカイガーディアン/シーガーディアンはすでに実績がある機体だから、後は通信中継ペイロードさえ実現すれば済む。……といいたいところだが、電波法の制約がある。

 つまり、アメリカで使えた通信機器が日本では使えない、あるいはその逆、ということが起こり得るのだ。実際、第四世代の移動体通信網・LTE(Long Term Evolution)では、日本とアメリカで電波の周波数帯が違っている。実用化には、これをクリアしなければならない。

井上孝司INOUE Koji

1966年7月生まれ、静岡県出身。1999年にマイクロソフト株式会社(当時)を退社してフリーライターに。現在は航空・鉄道・軍事関連の執筆を手掛けるが、当初はIT系の著述を行っていた関係でメカ・システム関連に強い。『戦うコンピュータ(V)3』『現代ミリタリーのゲームチェンジャー』(潮書房光人新社)、『F-35とステルス』『作戦指揮とAI』『軍用レーダー』(イカロス出版、わかりやすい防衛テクノロジー・シリーズ)など、著書・共著多数。『Jウイング』『新幹線エクスプローラ』『軍事研究』など定期誌や「マイナビニュース」「トラベルウォッチ」などのWEBメディアにも寄稿多数。

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