エアバスD&SのショホローンCEO 今後の日本戦略を語る
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2025-5-20 18:09
2025年5月9日(金)、来日したエアバス・ディフェンス・アンド・スペースのマイケル・ショホローン最高経営責任者(CEO)が、日本のメディアと意見交換会を行いました。ショホローンCEOが語った日本戦略を、軍事ライターの竹内 修がまとめました。
欧州の防衛・宇宙を担うエアバスD&S その事業と日本との接点
エアバス・ディフェンス・アンド・スペース(以下、エアバスD&S)は、戦術輸送機A400Mの開発と製造を行うために設立されたエアバス・ミリタリー・カンパニーを前身とする企業だが、現在の同社はA400Mだけでなく、A330MRTT空中給油・輸送機や各種UAS(無人航空機システム)、人工衛星システムなどを幅広い事業を手がける、防衛航空宇宙企業である。
日本との関わりや日本における認知度も高まりつつある。例えば、携帯通信大手のNTTドコモは、エアバスD&Sの高高度長時間滞空型UAS「ゼファー」の携帯基地局としての早期商用化を目指して、資本提携を行っている。また、日本がオブザーバーとして参画する、フランス、ドイツ、イタリア、スペインの4か国による共同開発UAS「MALE RPAS」(愛称:ユーロドローン)の開発を主導するのはエアバスD&Sである。
防衛装備品は米国優位だが「同志国として日本の安全保障に貢献できる」
ただ、日米同盟を安全保障の根幹とする日本においては、アメリカ製の防衛装備品のシェアが圧倒的に高い。エアバス製のA320、A350旅客機やエアバス・ヘリコプターズのH135などがよく売れているのに比べると、エアバスD&Sの製品やサービスが日本で成功をおさめているとは言い難い。この点についてはショホローンCEOも、ヨーロッパや東南アジア、中東などでは大きなシェアを獲得しているが、日本ではニッチ市場(狭い市場領域)にしか食い込めていなかったと認めている。
その上でなお、ショホローンCEOは、同志国企業であるエアバスD&Sの製品やサービスは、日本の安全保障能力のさらなる強化に貢献できると述べる。その背景には、ロシアのウクライナ侵攻やインドとパキスタンの対立、南シナ海における緊張の高まり、サイバー空間における攻防など、全世界的な安全保障環境の悪化がある。さらにアメリカ政府の掲げる大規模な関税の課税が、安全保障の分野にも影響を及ぼす可能性もある。この事態に対処するため、同盟国、同志国はより緊密な防衛協力を行っていく必要があるという。
宇宙安全保障における日欧パートナーシップの展望
エアバスD&Sは、人工衛星システムなどの宇宙分野も手がけている。これまで安全保障分野での活用を含めた宇宙開発は、日本とアメリカ、ヨーロッパ諸国が密接に連携して行われてきた。しかしアメリカのトランプ政権はNASA(アメリカ航空宇宙局)の予算を削減する方針を示している。
ここでショホローンCEOは、日本とEU(ヨーロッパ連合)が2024年11月に、安全保障・防衛パートナーシップを締結したことに言及する。このパートナーシップには宇宙分野の協力強化も含まれている。日本とEUは、これまで以上に宇宙分野でも協力を強化していく必要があり、例えば同社の衛星コンステレーション「プレアデス・ネオ」などが活用できるのではないかとの認識を示した。
通信、空輸、空中給油… 日本企業との協力関係の強化へ
またショホローンCEOは、アメリカ企業のスターリンクが同社の衛星通信システムのウクライナでの使用禁止を標榜して同国の防衛を困難にしかけた事態を受けて、エアバスD&Sを含めたヨーロッパ企業が通信能力の強靭性を高めるための取り組みを始めていることに言及し、この分野でも日本との協力関係を強化していきたいとの意欲を示した。
さらにショホローンCEOは、ヨーロッパ諸国では空輸能力と空中給油能力が重視されていることに触れ、A400Mなどの空中給油・輸送能力を強化できる同社の製品が、日本の安全保障能力を強化する上で有効なのではないかとの認識を示した。
ショホローンCEOは、エアバス・グループが軍民を問わず、ブラックボックス化された製品を販売しないことを強調し、購入してくれた国の企業と共に発展していく「パートナーシップ・アプローチ」に則って、日本との協力関係もさらに強化していきたいとの考えを示した。
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