《レポート》シンガポール・エアショー 2026 ── 防衛装備庁ブースで日本企業がアピール
- 特集
2026-2-10 17:17
2026年2月上旬、シンガポールのチャンギ・エキシビションセンターで「シンガポール・エアショー 2026」が開催されました。防衛装備庁とともに出展した日本企業の展示を、竹内修がお伝えします。
世界有数のトレードショー「シンガポール・エアショー」
2026年2月3日(火)から8日(日)までの6日間、シンガポールのチャンギ・エキシビションセンターで「シンガポール・エアショー 2026」が開催された。
シンガポール・エアショーは、おそらくアジアで随一、世界でも有数のトレードショーと言っても差し支えないだろう。大手メーカーだけでなく、スタートアップ企業や研究機関による展示も充実していることから、東南アジア諸国はもちろんのこと、日本や中国などの東アジアや世界各地からも多数の人々が訪れる。主催者発表によると、今回、トレードデーである最初の4日間だけで65,000人の来場を記録した。
シンガポール・エアショーでは、デモフライトも行われる。そのためにシンガポール政府が、チャンギ飛行場の過密な発着スケジュールを縫って空域を開放する。今回も地元シンガポール空軍のアクロバットチームのほか、人民解放軍空軍(中国空軍)のアクロバットチーム「八一飛行表演隊」のJ-10Cや、オーストラリア空軍のF-35A、マレーシア空軍のSu-30MKMなどがデモフライトを披露した。


シンガポールでは、1981年から2006年まで、「アジアン・エアロスペース」という航空ショーが開催されていた。屋外で実機を展示し、屋内で航空・防衛製品とサービスを展示する、現在のシンガポール・エアショーのスタイルは、この時代に確立されたものだ。当時の主催者であるリード・エキシビションと、シンガポール最大の重工業メーカーであるSTエンジニアリングの対立などの理由から、アジアン・エアロスペースは2006年をもって終了したが、2008年からは、シンガポール民間航空庁(CAAS)と防衛科学技術庁(DSTA)の協賛を得て、アジア最大級のエキシビションセンターの一つであるチャンギ・エキシビションセンターを会場に、名称を改めた「シンガポール・エアショー」が隔年開催されており、今回のシンガポール・エアショーは通算10回目の開催となった。
日本の防衛装備庁は 14社を引き連れてブース出展
防衛装備品の海外移転を可能とする「防衛装備移転三原則」が2014年に制定されて以降、日本は、インドネシアのジャカルタで開催される「INDO Defence」やベトナムのハノイで開催される「Vietnam Defence Expo」など、東南アジア諸国のトレードショーへ積極的な出展を行ってきた。出展の際は、防衛装備庁がブースを確保し、希望する企業の製品やサービスを展示するという形を採っている。
現状の防衛装備移転三原則では、原則として「救難」「輸送」「警戒」「監視」「掃海」の5項目に該当する防衛装備品のみ、海外への輸出や供与が認められている。2月8日に行われた衆議院議員選挙で与党が大勝したことから、おそらく今年の春にも殺傷能力を持つ防衛装備品の輸出も解禁されるものと思われるが、今回のシンガポール・エアショーの防衛装備庁のブースでは、5項目に該当する製品やサービスと、防衛用途にも民生用途にも使用できる、いわゆる「デュアルユース」の製品やサービスを提供できる企業、14社の展示が行われた。

注目を集めたAirKamuy(エアカムイ)の「段ボール無人機」
筆者の見た限りにおいて、外国からの来場者が最も多く訪れていたのが、UAS(無人航空機システム)メーカーの株式会社AirKamuy(エアカムイ)だ。

同社が出展したUAS「Air Kamuy150」は、機体構造に段ボールを使用している。段ボールは金属やFRP(強化プラスチック)などの素材に比べれば製造や輸送にかかるコストが安く、エアカムイの担当者によれば、価格は30万円程度だという。
同担当者は「AirKamuy150」の用途として、洋上監視や災害時の貨物輸送などを挙げていたが、段ボールは金属などに比べてレーダーに探知されにくいという副次的メリットもあることから、防衛省が令和8年度予算案に取得費を計上している陸上自衛隊の「小型攻撃用UAVⅠ型」いわゆる自爆突入型UASとしても活用できるのではないかと筆者は思った。
近年、防衛省・自衛隊は、基地や駐屯地に接近するUASへの対策を進めている。段ボールUASは、接近対策に不可欠な訓練用としても活用できそうだ。
陸上自衛隊はスキャンイーグルなど各種UASを運用しているが、訓練中の事故による破損が発生した場合、誰が責任を取るのだという問題が発生することから、責任を問われるのを恐れてUASの運用に委縮してしまい、その結果運用スキルが向上しないという話を筆者は耳にしている。もちろん安価なUASであれば粗雑に扱って良いというものではないが、AirKamuy150のようなUASであれば、現在陸上自衛隊が抱えている問題を解決する一助となると筆者は思うし、日本に比べれば国防に投じられる経費に余裕の無いアジア諸国からの来場者の大きな注目を集めるのもうなずける。
垂直離着陸無人機を3日に1機生産できる インダストリーネットワーク
エアカムイの生産能力については質問しそびれてしまったのだが、X翼型固定翼垂直離着陸UASを出展したインダストリーネットワーク株式会社によれば、同社の展示したUASは、現状でも3日に1機の生産が可能だという。ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア、ウクライナ双方でUASが多用されているが、双方ともUASの損耗率は高く、短い時間でいかに多数のUASを前線に供給できるかが戦局を左右する要素の一つとなっている。
インダストリーネットワークが出展した固定翼垂直離着陸UASは市場に数多く存在しており、それ自体に大きな競争力があると考えるのは難しいが、高い生産能力を市場における競争力としようとする同社の姿勢には感心させられた。

熱・電磁波シールドで装備品を隠す ミツフジの素繊維材
防衛装備庁ブースで最も筆者の目を引いたのが、ミツフジ株式会社の展示だ。
もがみ型護衛艦やF-35の模型と共に「ぐるぐる巻きにされた繊維のような物体」が並んだ同社の展示を最初に目にした時、恥ずかしながら筆者は「?」と思ってしまったのだが、担当者から話を聞いて合点がいった。ぐるぐる巻きにされた繊維のような物体は、熱と電磁波を遮断するシールド材で、艦船や航空機、車両などに張り付けることで、対熱・対電磁波ステルス性能を高めることができる。もがみ型護衛艦の模型の周辺には、ピラミッド状の物体の模型が置かれていた。これはシールド材を固めたもので、艦船の周囲に複数配置することで、艦船の発する熱や電磁波を遮断して、ステルス性能をさらに高める効果を持つという。

まだ防衛省や海外の軍隊などからの受注は得ていないようだが、日本が得意とする素材技術を活かしたこのような製品は、日本の防衛に寄与するだけでなく、国際的な市場競争力もあるのではないかと感じた。
(以上)
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