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《特集》ジェット戦闘機の「世代」とは? ──ステルス機は第5世代、今後現れる第6世代

  • 特集

2026-1-8 18:05

日本も導入したF-35などのステルス戦闘機は「第5世代戦闘機」と呼ばれます。これを基準に、F-15やF-2など非ステルスの戦闘機は「第4世代」とされ、日英伊が共同開発する次期戦闘機GCAPや米国のF-47には「次世代=第6世代」の能力が求められています。この「戦闘機の世代」ってなんなのか? 井上孝司が解説します。井上孝司 INOUE Koji

なにがジェット戦闘機の『世代』を分けるのか

 戦闘機の世代を語るとき、その世代分けの方法に絶対の基準はない。しかし開発の背景や明らかな性能・装備の差から、便宜上区分することはできる。ジェット化を果たした大戦後の「第1世代」から、まだ見ぬ「第6世代」まで、とくに機体性能面での進化に主眼を置いて考えてみた。(文:井上孝司)

数字で世代分けすることのわかりやすさ

 戦闘機製造を手掛けるメーカーや、それらを運用する各国の軍はこぞって「うちの戦闘機は第○世代機だ」と誇っている。その発端は、ロッキードマーティンと米国海空軍が、F-22ラプターやF-35ライトニングⅡを指して「第5世代戦闘機」と呼び、この言葉を広く喧伝したことにある。しかも、“5th Generation Fighter”という言葉を商標登録までしており、もはや全世界がロッキードマーティンと米軍のマーケティングに乗せられてしまったと言えなくもない。

最初に「第5世代戦闘機」を標榜した、ロッキードマーティンF-22ラプター 写真:US Air Force

 とはいえ、一般のファンにとっては数ある戦闘機を世代別に数字で区切って整理することに、分かりやすさがあるのは事実である。では、その「世代」の差とは一体何なのだろうか。

 戦闘機とは、敵国の航空機をはじめとする各種の脅威を排除して、武力紛争を勝利に導くための装備である。当然、脅威を排除するために様々な能力が求められるし、その能力は仮想敵国の脅威を上回るものでありたい。より具体的にいうなら、①「飛行性能」、②「探知性能」、③「各種武器の性能」、④「自衛性能」の組み合わせである。これらの性能が、どの方向にどういうレベルで進化し、どの分野を重視しながらバランスを取っているか。その違いが、戦闘機の世代を分ける鍵となる。

 実戦においては、単なる性能の優劣だけでなく、その性能をどのように活かして勝利につなげるかという運用構想も負けず劣らず重要なのだが、紙幅の制限もあるため、今回は性能面の話に専念することにする。

世代を隔てる基準になった 4つの要素の性能進化

 ジェット戦闘機が登場したきっかけは、レシプロ戦闘機よりも速い機体を実現しようとして、新たな動力源としてジェット・エンジンが注目されたことだ。一旦、どこかの国がジェット戦闘機を実戦化すれば、他国はそれに打ち勝とうとして、より優れた飛行性能を持つジェット戦闘機を開発しようとする。つまり、はじまりは①「飛行性能」の改良にあった。そうした開発競争の結果として、最高速度は音速を突破した(第1世代〜第2世代)。

 次に、②「探知性能」の改良である。第二次世界大戦中から、レーダーを備えた「夜間戦闘機」はあったが、ジェット戦闘機でも同様に、レーダーと空対空ミサイルを組み合わせた「全天候戦闘機」が生み出された。これにより、24時間フルタイムで、天候に関係なく交戦する土台ができた。ただし当時の未熟な電子技術では、高い信頼性と性能を備えるには至らず、さらに操作も難しいものだった。

ジェット戦闘機 第1世代の代表、ノースアメリカンF-86 写真:US Air Force
日本が採用した第2世代戦闘機、ロッキードF-104スターファイター 写真:航空自衛隊

 その次に、③「各種武器の性能」に関連して搭載武器の改良と多様化だ。空対空だけでなく、空対地・空対艦といった多様な任務に対応できる武器が開発されたが、それらを任務に応じて積み分けることで、戦闘機はマルチロール(多任務)化していった。重い兵装を多数搭載して飛ぼうとすれば機体は大型化するが、その一方で飛行性能は妥協できない。そのため、機体の設計技術とエンジン性能の改良が求められた(第3世代)。

 このような流れに、1960年からはじまったベトナム戦争の戦訓を受けた「格闘戦重視」、「最高速度よりも加速力」の視点が加わり、飛行性能を高める上での方向性が変化した。単なる最高速度の追求よりも、優れた機動性が求められるようになったからだ。そして、機体が大きな運動エネルギーを持つことは、すなわち発射する兵装も大きな運動エネルギーを持つことを意味する。それは特に空対空戦闘においてミサイルが高い運動能力を持ち、敵機の回避行動を困難にする結果につながっていった。

 そこに電子技術の進歩が重なり、レーダーやミサイルの信頼性が大きく向上した。しかも、パイロット1名で操作できるところまで自動化が進むと、ジェット戦闘機はひとつの完成形に至る(第4世代)。

ベトナム戦争の頃に登場した第3世代戦闘機、マクドネルF-4ファントムII 写真:鈴崎利治
飛行性能を極めた第4世代戦闘機の代表、マクドネル・ダグラスF-15イーグル 写真:US Air Force

 一方で、戦闘機の飛行性能は頭打ちに達することになった。機体のみならずパイロットの身体も、激しい機動の際にかかる負担に耐えきれなくなってきたからだ。 しかし、レーダーをはじめとするセンサー機器の能力は、電子技術の進歩によって改良が続いている。そこから得た情報を処理するコンピュータの能力も、ミサイルの誘導制御機構も同様だ。そして情報通信技術の進化により、個々の戦闘機が自前のセンサーと武器を使って単独で交戦するだけでなく、複数の戦闘機がネットワークを組んで情報を共有しながら交戦できるようになった。情報通信技術の進歩が戦闘機の戦い方も変えている(第5世代)。

 さらに、④自衛能力の面では、対空ミサイルのような脅威をかわすための妨害能力を備えるようになったほか、敵による探知を困難にするための技術も考案された。その典型が、対レーダー・ステルスである。

 このような流れの結果として、機体の飛行性能よりもむしろ、搭載するセンサーやコンピュータや搭載兵装が、戦闘機の能力を左右するようになった。これを筆者は「ドンガラ(機体)よりアンコ(中身)」と表現しており、その申し子が、第4世代機に第5世代機の機能を取り込んだ、第4.5世代機だといえよう。

ステルス性と高度な情報通信能力を持つ、ロッキード マーティンF-35AライトニングII 写真:US Air Force
第4世代の機体に最先端のアビオニクスを搭載した第4.5世代戦闘機、F/A-18Fスーパーホーネット 写真:US Navy

 一方で世代の進化にあわせて機体、エンジン、そして電子機器の技術が進化したことにより、ひとつの機体で制空任務も、防空任務も、対地・対艦攻撃任務もこなせるようなっていったことは付け加えておきたい。いわゆるマルチロール化だ。結果として、軍用機における用途別の分類は希薄になっていった。 そんな中でも、従来の戦闘機とは一線を画しているのが、第5世代戦闘機の一群である。

敵に覚らせず、先に見つけて、先に叩く 第5世代機の圧倒的優位性

 なぜ「第5世代」という言葉が殊更に喧伝されるのか。それは「状況認識」に関する考え方が圧倒的に変わったからだろう。第5世代機の代表的な進化であるステルス技術により、敵からのレーダーや赤外線センサーによる探知は妨げられ、自軍機の存在すら正確には悟らせないことが可能になった。

 第4世代機は、被探知性の低減には力を入れていなかったから、敵が一旦レーダーを作動させれば、高い確率で見つかってしまう。それを避けるために夜間低空侵入戦術が編み出されたし、それを支援する手段を充実させた、F-15Eストライクイーグルのような機体も現れた。

 しかし、機体そのものが探知される可能性が低くなれば、ニンジャのように隠密裏に忍び寄り、相手が気付かないうちに交戦して戦いの主導権を握ることができる。時代劇では最初から互いに相手が見えている状態で斬りかかるが、実際の戦場では避けたい下策。我が身の安全を考えれば、見つからずに敵に切りかかる方が望ましいに決まっているのだ。

 さらにはセンサーの能力向上、ネットワーク化を通じて、自機のレーダーを作動させなくても、他の自軍機から探知情報を受け取れるようになっている。多様な情報源から得たデータを整理・融合して、一枚の“画”にまとめるセンサー融合・データ融合機能が、状況認識能力を高めているのだ。

 武器の強い・弱いは相対的な問題だ。敵の状況認識能力を妨げる手段と、自機の状況認識能力を高める手段を併せ持つことで、敵に先んじて、出し抜ける可能性が高くなる。

 それを如実に示しているのが、ロッキードマーティンが第5世代戦闘機の特徴としてアピールする、“First look, First kill”(先に見つけて、先に叩く)なのだろう。

世代別に見る、ジェット戦闘機ギャラリー

 ここからは、各世代に分類されたジェット戦闘機がどんな特徴を持っているのか、代表的な機種の写真とともに紹介していこう。(文:Jウイング編集部)
※機種の前のメーカー名は、開発者を記しています。

第1世代の戦闘機──最初期のジェットエンジン・ファイター

 「ジェット・エンジンを動力源とする戦闘機を実現する」ことが最大の課題になった世代。P-80、F-86、MiG-15といったあたりが有名どころ。主翼に後退角がついていても、飛行速度は亜音速。胴体は比較的ズングリしており、そこに複数の機関砲やロケットを搭載して主兵装とする。まだジェット・エンジンを動かすための知見が乏しかったこともあり、機首に空気取入口を設けている例が多い。

[アメリカ]ノースアメリカン F-86 セイバー 写真:US Air Force
[アメリカ]ロッキード P-80 シューティングスター 写真:Lockheed
[ソ連]ミコヤン・グレビッチ MiG-15 写真:US Air Force

第2世代の戦闘機──超音速飛行が可能になった

 再燃焼装置(アフターバーナー)付きジェット・エンジンの実用化で超音速飛行が可能になった。超音速飛行を実現するため、鋭い後退角をつけた主翼と、細身な胴体にはエリアルールを適用した。レーダー誘導の空対空ミサイルを備える「全天候迎撃戦闘機」は得てして大柄で、レーダー・アンテナを収容するために太い機首を備えることが多い。

[アメリカ]ロッキード F-104 スターファイター 写真:航空自衛隊
[ソ連]ミコヤン・グレビッチ MiG-21 写真:US Air Force
[フランス]ダッソー ミラージュⅢ 写真:US Air Force
[スウェーデン]サーブ35 ドラケン 写真:SAAB

第3世代の戦闘機──ミサイル搭載・夜間戦闘能力を進化させたマルチロール機

 第3世代戦闘機の代表格といえば、F-4ファントムⅡ。初期の超音速機である第2世代戦闘機と比べると主翼の後退角は控えめになり、ややズングリした外見を持つ機体が増えた。兵装搭載量が増えれば、そのための場所も必要になるため、兵装ステーションが増え、自衛用の電子戦機器やセンサー機器の充実により、各部に突出する装備も特徴だ。

[アメリカ]マクドネル F-4 ファントムⅡ 写真:鈴崎利治
[ソ連]ミコヤン・グレビッチ MiG-23 フロッガー 写真:US DoD
[フランス]ダッソー ミラージュF1 写真:US Air Force
[スウェーデン]サーブ 37 ビゲン 写真:SAAB

第4世代の戦闘機──加速性・機動性を追求したひとつの完成形

 F-15、F-16、F/A-18、MiG-29、Su-27など、ジェット戦闘機におけるひとつの完成形。単に最高速度を求めるのではなく、加速性能と機動性を重視するとともに視界の良さにも配慮。信頼性の高い大推力エンジンを搭載し、控えめな後退角を持つ大面積の主翼、上方に突出して広い全周視界を確保したキャノピーなどの特徴がある。自動化が進んだために単座機が多いが、任務を分担するため複座とした機体(F-15EやSu-30など)も。第5世代のアビオニクスを採り入れた、いわゆる「第4.5世代」も登場した。

[アメリカ]マクドネル・ダグラス F-15 イーグル 写真:US Air Force
[アメリカ]グラマン F-14 トムキャット 写真:US Navy
[アメリカ]ジェネラル・ダイナミクス F-16 ファイティングファルコン 写真:US Air Force
[アメリカ]マクドネル・ダグラス F/A-18 ホーネット 写真:US Air Force
[アメリカ]マクドネル・ダグラス F/A-18E/F スーパーホーネット(4.5世代) 写真:US Navy
[ソ連]スホーイ Su-27 フランカー 写真:柿谷哲也
[ソ連]ミコヤン・グレビッチ MiG-29 フルクラム 写真:US Air Force
[フランス]ダッソー ミラージュ2000 写真:柿谷哲也
[フランス]ダッソー ラファール(4.5世代) 写真:US Navy
[スウェーデン]サーブ JAS39 グリペン 写真:US Air Force

第5世代の戦闘機──ステルス性やネットワーク作戦能力で前世代を圧倒

 第4世代戦闘機が備える特徴は維持しつつ、対レーダー・ステルスなどの被探知性低減技術を加えた第5世代の代表格はF-35。レーダー・電子戦システム・コンピュータなどを一体化した統合アビオニクスを有するのが特徴で、各種センサーから入ってくる情報を整理融合するのは機体の仕事となった。パイロットたちは情報に基づく作戦の組み立てと交戦に専念できる。

[アメリカ]ロッキードマーティン F-35 ライトニングⅡ 写真:US Air Force
[アメリカ]ロッキードマーティン F-22 ラプター 写真:US Air Force
[ソ連]スホーイ Su-57 フェロン 写真:鈴崎利治
[中国]成都飛機工業 殲撃20型 威龍(J-20) 写真:鈴崎利治

第6世代の戦闘機──あらゆる戦闘空間を一元的にカバーする次世代コンセプト

 まだ確立した定義はないが、あえて言うなら第5世代のネットワークが、基本的には戦闘機とその周辺が対象だったのに対し、第6世代機はさらに広い戦闘空間からの情報を戦闘に反映できる。自らもネットワークの一部として「センサー」(探知役)、そして「シューター」(交戦役)としても機能できる機体になるのではないか。

[英伊日]BAEシステムズ/レオナルド/三菱 GCAP(グローバル戦闘機航空プログラム) 画像:防衛省
[アメリカ]ボーイング F-47 画像:US Air Force

◎記事の出典:月刊『Jウイング』2023年3月号 特集「戦闘機の世代図鑑」

(以上)

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井上孝司INOUE Koji

1966年7月生まれ、静岡県出身。1999年にマイクロソフト株式会社(当時)を退社してフリーライターに。現在は航空・鉄道・軍事関連の執筆を手掛けるが、当初はIT系の著述を行っていた関係でメカ・システム関連に強い。『戦うコンピュータ(V)3』『現代ミリタリーのゲームチェンジャー』(潮書房光人新社)、『F-35とステルス』『作戦指揮とAI』『軍用レーダー』(イカロス出版、わかりやすい防衛テクノロジー・シリーズ)など、著書・共著多数。『Jウイング』『新幹線エクスプローラ』『軍事研究』など定期誌や「マイナビニュース」「トラベルウォッチ」などのWEBメディアにも寄稿多数。

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