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《レポート》日米防衛産業のマッチングイベント「第4回インダストリーデー」(9月24日、25日)

  • 特集

2025-10-3 19:55

日本の防衛産業とアメリカ軍・米関連企業のマッチングイベント「第4回インダストリーデー」が、東京・渋谷で開催されました。無人装備の展示が目立った日本企業と、新たなサプライチェーン構築を目指す米国。イベントの模様を、稲葉義泰がレポートします。稲葉義泰 INABA Yoshihiro

 2025年9月24日(水)と25日(木)の2日間、東京都渋谷区にあるベルサール渋谷ファーストの地下1階会場で、防衛装備庁が主催する「第4回インダストリーデー」が開催された。

第4回 インダストリーデー 会場風景 写真:編集部

 このイベントは、日本の防衛産業とアメリカの軍および防衛関連企業との間のマッチングの機会を提供することを目的とする展示会で、現在、自衛隊でも運用されているアメリカ製装備品の製造サプライチェーンや、インド太平洋地域に展開しているアメリカ軍が運用する各種装備品や施設などの維持整備事業に関して、日本の防衛関連企業の参画を図ろうという試みだ。

 日本からは、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)や川崎重工といった大手企業に加え、これまで自衛隊を支えてきた中小企業から、新たに防衛産業への参入を目指すスタートアップ企業まで、合計27社が出展。半数以上が初出展である。一方、アメリカからはノースロップ・グラマンやロッキード・マーチン、RTX(旧レイセオン・テクノロジーズ)など防衛関連企業5社と、アメリカ海軍修理廠(SRF)やアメリカ国防契約管理局(DCMA)など6組織が出展した。

 会場には講演用のエリアも設けられており、航空機の維持整備からサプライチェーンの維持、日本におけるビジネス展開や今後の展望に至るまで、幅広い内容の講演が行われた。

来賓として挨拶した、経済産業省 製造産業局長の伊吹英明氏 写真:編集部

日本企業の展示で目立ったのは無人装備

 出展企業の大半は日本企業だが、やはりというべきか小型無人機をはじめとする各種無人装備の展示が目立った。愛知県に拠点を置く Prodrone(プロドローン)社は、ヘリコプタータイプの「Prodrone GT-M」に加え、フロートを装備した離着水可能なマルチコプタータイプの無人機を展示。また、同じく愛知県の AirKamuy(エアカムイ)社は、価格面で量産性に優れ、かつ輸送にかかるコストを低減可能な段ボール製無人機を展示していた。

プロドローンが展示した2タイプの無人航空機 写真:稲葉義泰

 さらに、カーツ株式会社はアメリカの航空部品メーカーであるスウィフト・エンジニアリング社と共同開発した機体を展示していた。これは、スウィフト・エンジニアリング製の機体にカーツ製のエンジンを搭載したもので、固定翼とマルチコプターの「良いとこ取り」ともいえるデザインを実現していた。

 カーツ株式会社はもともと芝刈り機用のエンジンを製造していたが、市場の将来性に限界を感じたという。そこで目を付けたのが小型無人機のエンジン製造で、今後、エンジン搭載無人機の需要が高まることを見据えてこの業界に参入したそうだ。

日本のカーツ株式会社と米国スウィフト・エンジニアリング社で共同開発した無人航空機 写真:編集部

 たしかに、今回出展した企業の無人機には、バッテリーではなくエンジンを搭載した機体が多く見られた。各社への取材によると、バッテリー駆動では技術革新でも起こらなければ飛行時間は30分が限界だという。今後の需要を考えて、エンジンを搭載して航続距離や機体搭載量を確保することが重要だと判断したとのこと。

 また、海上自衛隊向けのソノブイをはじめとする水中センサーの開発・製造で知られる沖電気工業は、可搬ボート型マルチビーム測深機「Carphin V」を展示していた。これは、重量25kg、全長1.6mとコンパクトな水上無人機(USV)の底部に分解能1cmを誇るソーナーを装備したもので、最大で水深80m程度の海底地形を走査することが出来るという。

沖電気工業の可搬ボート型マルチビーム測深機「Carphin V」 写真:稲葉義泰

米海兵隊も日本企業に熱い視線? 防衛産業マッチングの実際

 今回のイベントのメインテーマは、「日米の防衛産業間のマッチング」である。アメリカ側と日本側で、どのような形での連携が模索されているのかも気になるところだ。筆者が会場内でいろいろ話を聞いて回った限りでは、いわば双方向の連携が進められていることが実感できた。

会場内を視察する、小林一大防衛大臣政務官(右)とアーロン・D・スナイプ米国大使館首席公使(中央) 写真:編集部

 まず、日本企業にとっては、アメリカ企業との連携により日本以外の市場、特にアメリカにおける市場開拓を図れるというメリットがある。何社かの日本企業で話を聞いてみると、アメリカ国内やアメリカと関係の深い国々への進出の足掛かりとして、連携を前向きに模索しているという声が多かった。また、アメリカ政府の複雑な調達契約について、それをスムーズに進めるための支援を受けられるというのも大きなメリットだとか。

 一方で、アメリカ企業にとっても日本企業との連携は、日本市場へのさらなる参入にとって重要だという。たとえば、何らかの装備品を製造する際のサプライチェーンに日本企業を組み込むことで、自衛隊を含めた官公庁への自社製品アピールの際に「日本に製造拠点の一部がある」というアピールをすることもできるし、日本からの要望に対して迅速に対応することもできる。最近では、単に装備品を外国企業から購入するというだけでは、自国産業にとってメリットがないという意見も耳にすることが多い。そういった批判への一つの対応策として、日本企業との連携強化は重要なビジネス戦略の一つと言える。

 そして、筆者が立ち寄ったアメリカ海兵隊のブースでは、日本における調達担当者がビジネストークに勤しんでいた。話を聞いてみると、日本国内での貨物輸送や施設修理、破損した滑走路を補修するための資機材購入などについて、日本企業との連携強化を模索しているという。

アメリカ海兵隊 太平洋基地群 地域契約事務所(Marine Corps IPAC)のブース 写真:編集部

 海兵隊をはじめとした軍事組織における高い自己完結性はよく知られているが、それでも日本企業から資機材やサービスの購入を模索しているというのは、現在の日本が置かれている厳しい安全保障環境を物語っているのかもしれない。

(参考)令和7年度インダストリーデーの出展企業等一覧

1 日本企業

※は初出展企業
アイロボティックス
HATO
前田道路
東京計器
沖電気工業
TANIDA
AquaFusion
ミュートロン
スカイリンクテクノロジーズ
カーツ
古河電気工業
十川ゴム
中国塗料
3D printing Corporation
ジャパンマリンユナイテッド & JMUディフェンスシステムズ
大熊ダイヤモンドデバイス
Prodrone
AirKamuy
井上電気
三菱重工業
横河計測
島津製作所
大村製作所
IHI
川崎重工業&日本飛行機
スギノマシン
メトロウェザー

2 米国政府・軍機関

SRF(米海軍艦船修理廠)
FLC(米海軍艦隊補給センター)
MSC(米海軍軍事海上輸送司令部)
374CONS (第374契約中隊/米第5空軍)
DCMA(米国防契約管理局)
Marine Corps IPAC (米海兵隊 太平洋基地群 地域契約事務所)

3 米国企業

RTX
Blue Aerospace, a HEICO Company
Northrop Grumman
Anduril Industries
Lockheed Martin

稲葉義泰INABA Yoshihiro

軍事ライターとして自衛隊をはじめとする各国軍や防衛産業に携わる国内外企業を取材する傍ら、大学院において国際法を中心に防衛法制を研究。著者に『「戦争」は許されるのか 国際法で読み解く武力行使のルール』『“戦える”自衛隊へ 安全保障関連三文書で変化する自衛隊』(イカロス出版)などがある。

https://x.com/japanesepatrio6

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