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《レポート》ノースロップ・グラマン技術協力説明会(2026年4月22日、東京)

  • 特集

2026-4-26 20:55

米国の大手防衛企業ノースロップ・グラマンは2026年4月22日、日本の防衛関係者に向けて「テクノロジー・コーポレーション・ショーケース」(技術協力説明会の意)と題するイベントを開催し、日本の多層的防衛戦略の強化に資する装備品を紹介しました。井上孝司がお届けします。井上孝司 INOUE Koji

 ノースロップ・グラマンは2026年4月22日(水)に都内某所で、「Northrop Grumman Technology Cooperation Showcase」と題するイベントを実施した。

C-UASシステム「AiON」を紹介するノースロップ・グラマン社アジア太平洋地域担当ディレクターのショーン・マクレイ氏。彼のほか8名の担当者が日本での防衛シナリオを想定して同社の製品群を紹介した 写真:編集部

 そこではさまざまな同社製品に関する展示や説明が行われたが、筆者の見立てでは、今回のイベントにはふたつの柱がある。ひとつは「既存のものも含めて、さまざまな装備を組み合わせて連携させることで、新たな脅威に対抗する」。もうひとつは、「それを実現する場面で、日米の防衛産業界が協力し合うことの重要性」。イベントのタイトルに “Cooperation” (協力)の語が含まれている点が、そのことを物語る。

太平洋という新たな脅威軸

 最初に取り上げられたのは、E-2Dアドバンスト・ホークアイ。もちろん、E-2Cと比べるとレーダーの性能が上がっているが、それだけでなく指揮管制の能力も向上している。そして強調されたのは「太平洋方面での脅威対応」。南西諸島にばかり気をとられていると、小笠原諸島など、太平洋方面での課題がお留守になりかねない。

航空自衛隊が早期警戒機として導入を進めているE-2Dアドバンスト・ホークアイAEW&C(空中早期警戒及び指揮機) 写真:Northrop Grumman

 太平洋方面は南西諸島と比べると陸地が少ないから、地上のインフラに頼るのは難しい。しかし、単独で優れたレーダー能力と指揮管制能力を持つE-2Dがあれば、太平洋上での航空戦や防空戦を有利に進められる、という話になる。

 また、陸上に配備するレーダーとして、AN/TPS-80 G/ATOR(Ground/Air Task Oriented Radar、発音は「げいたー」)が紹介された。

 米海兵隊が導入を進めている新型レーダーで、1台で対空捜索レーダー、航空管制レーダー、対砲兵レーダー(砲撃を受けたときに弾道を追尾して、敵砲兵の位置を突き止める)、防空戦闘における目標捕捉、といった機能を提供する。

当日の投影資料(以下同じ)。米海兵隊が導入を進めている多機能な新型レーダーG/ATOR 写真:編集部

 しかも移動式。重量4,200kgと軽量だから空輸も可能で、しかも10分間で設営や撤収ができる。機敏に移動できるので、敵に捕捉されて破壊されるリスクが減る。南西諸島だけでなく小笠原諸島みたいなところでも、こうしたレーダーは有用といえる。そもそも「島嶼を渡り歩きながら作戦する」構想を掲げる米海兵隊の新装備なのだから。

統合化のための相互接続とゲートウェイ

 防空任務では航空機だけでなく、弾道ミサイルや巡航ミサイルの脅威もある。多様な脅威に一元的に対処するには、さまざまなセンサーやエフェクター(武器のこと)をひとつのシステムの下に統合する、IBCS(Integrated Battle Command System)がキー・コンポーネントになる。

陸・海・空・宇宙からの情報を統合し、ひとつひとつの脅威を評価して、状況を俯瞰した一元的な作戦指揮を実現するIBCS 写真:編集部

 すでにアメリカやポーランドで導入が進んでいるパトリオット地対空ミサイル・システムとの組み合わせだけでなく、さまざまな製品をIBCSの下に統合すれば、全体状況を俯瞰して最善の脅威評価や武器割当を実現できる可能性につながる。また、単体で運用していては実現できない、抗堪性の高さや高精度のセンサー情報といった利点もある。

 防空以外の分野でも、それぞれ異なる通信手段を使用している既存の装備体系同士を、どうやって接続するかという課題がある。そこでノースロップ・グラマンは米空軍向けに、ゲートウェイ機能を開発した。これは異なる装備やネットワークの間に入って「通訳」を務めるシステムで、BACN(Battlefield Airborne Communications Node)という。

各種装備品間の通訳を担うゲートウェイ。画像の下段中央はBACNを搭載したE-11A、その右はRQ-4に搭載するBACNポッド 写真:編集部

 この機材を専用の航空機に載せたのがE-11Aで、もう20年ぐらい使われている。必要な機材をパレットに載せて輸送機に搭載すればゲートウェイ機に変身させられるし、ポッド化して無人機に載せれば長時間滞空が可能になる。BACNはRQ-4グローバルホークに載せた実績もある。

安い無人機に安価な対抗手段

 IBCSは統合防空・ミサイル防衛、つまりハイエンドの脅威に対処する際の中核。それに対して、ウクライナや中東で実際に起きているような、安価な自爆無人機が大量に飛来する脅威も存在する。そこでは、適切な脅威評価と意思決定を行う手段、そして惜しみなく使用できる迎撃手段が鍵を握る。

 前者には、意思決定支援システム「AiON」(AI on Demand、あいおん)。AIの支援によって迅速な状況把握と意思決定を行うだけでなく、ひとりのオペレーターが同時に複数の拠点を扱える、リモート・アクセス機能がある。そこにセンサーやエフェクターを接続して、地上配備の短距離防空システムを構築する。

無人機群への対応にAIを活用するAION戦術システム。最大で4つのAIONを1人のオペレータが管理できるという 写真:編集部

 そのエフェクターとして紹介されたのが新型の50mm対空砲。
 ノースロップ・グラマンは7.62mmから50mmの各種機関砲をラインナップしているが、最上位の50mm×228弾を使用するXM913チェーンガンは、長射程と大威力を実現する。しかも1発5,000ドルだから、数十万ドルもする対空ミサイルよりずっと安い。これに射撃管制レーダーと弾倉を組み合わせて旋回砲塔に載せたものを配備して、AiONの管制下に置けば効率的な無人機対処につながる。例として挙げられた石垣島では、50mm砲が8システムあれば全体をカバーできるとした。

車載可能な50ミリ機関砲はAiONと連携して迎撃を担う 写真:編集部
石垣島に50mm機関砲システムを8基配置し、全島をカバーした図。GBADはGround Based Air Defenseの略 写真:編集部

日米の産業協力と迅速開発とシミュレーション

 イベントで取り上げた製品の多くで、日本企業との協力が謳われた。

 たとえば、極超音速滑空弾の迎撃に使用する新型ミサイル・GPI(Glide Phase Interceptor)では、日米のワークシェア配分を50:50にすることが明らかにされた。また、IBCSに陸上自衛隊の地対空ミサイルを接続できるとの説明もあった。その他の製品の話も含めて、単にアメリカ製の製品を売り込もうとしているわけではない、との姿勢の現れといえる。

50:50でワークシェアする、極超音速迎撃弾GPIの日米共同開発 写真:編集部

 もうひとつ、昨今の情勢において無視できない話として、「機敏さ」がある。次々に新手の脅威が出現するだけでなく、そこから新たな対抗手段を開発してぶつけ合うループが起きている。すると、決まり切った「勝利の公式」を突き詰めるのではなく、新しい対抗手段を迅速に開発・配備・活用していかなければならない。

 そこでノースロップ・グラマン(に限らず米国の軍とメーカー全般)は、モデリングとシミュレーションを活用している。いちいちモノを造って試すよりも早く、さまざまな選択肢を俎上に載せて試行錯誤を図り、新たな対抗手段の実現につなげるためだ。※ここでいうモデリングとはコンピュータ・モデリング、すなわちさまざまな物事をコンピュータで模擬するための計算式の形に落とし込む作業を意味する。コンピュータ・シミュレーションには不可欠な作業である。

 シミュレーションといっても、作戦行動のシミュレートだけではない。脅威環境をシミュレートして研究開発・試験・評価に供する使い方もある。ノースロップ・グラマンでは、さまざまな電磁波環境をコンピュータ上でシミュレートする、CEESIM(Combat Electromagnetic Environment Simulator、しーしむ)を手掛けている。電磁スペクトラム戦では不可欠の機能だ。

コンピュータ・モデリングで電磁波環境をシミュレートするCEESIM 写真:編集部

 また、航空戦の演習でリアルな脅威を用意するため、防空システムみたいな脅威が発するレーダー電波などをシミュレートする、JTE(Joint Threat Emitter)もある。仮想敵国が持つ本物の防空システムをかっぱらってこなくても、それと同じ脅威環境を用意して、実任務と同じ訓練をできる。「訓練された通りに戦う」のが軍人だから、その訓練をどこまで実任務に近付けられるかが問題。それを解決するひとつの手段である。

仮想敵国が持つ防空システムの電波環境を訓練で再現するJTE 写真:編集部

おわりに

 個々の装備品の機能や能力が気になるのは当然のことだが、そこにばかり気をとられていると全体像を見落とす危険がある。武力紛争に勝つための「システム」をどう構築するか、その過程で日米両国がどう力を合わせるか、という視点も重要だ。

 私見だが、大所高所から見てビジョンやアーキテクチャを考え出すのは、アメリカ側が得意とするところである。対して日本側は、要素技術や物作りを突き詰めるところで強みを発揮しやすいのではないか。両国の強みを持ち寄り、上手く “いいとこ取り” をできると理想的なのだが。

※2026年5月21日発売の月刊『Jウイング』2026年7月号で、より詳細なレポートをお届けする予定です。

(以上)

井上孝司INOUE Koji

1966年7月生まれ、静岡県出身。1999年にマイクロソフト株式会社(当時)を退社してフリーライターに。現在は航空・鉄道・軍事関連の執筆を手掛けるが、当初はIT系の著述を行っていた関係でメカ・システム関連に強い。『戦うコンピュータ(V)3』『現代ミリタリーのゲームチェンジャー』(潮書房光人新社)、『F-35とステルス』『作戦指揮とAI』『軍用レーダー』(イカロス出版、わかりやすい防衛テクノロジー・シリーズ)など、著書・共著多数。『Jウイング』『新幹線エクスプローラ』『軍事研究』など定期誌や「マイナビニュース」「トラベルウォッチ」などのWEBメディアにも寄稿多数。

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