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《不肖・宮嶋の熊本日記》
第3回 届けられた支援の有効活用

  • 特集

2026-9-19 19:19

熊本地震発災の翌29日、小泉進次郎(こいずみ・しんじろう)防衛相が音頭を取って避難所にはスポットクーラーが運び込まれた。だが、有効活用には欠けたピースがあった。その間に、さまざまな支援が民間から届き始めた。宮嶋茂樹 _Shigeki MIYAJIMA

現地で知った「スポット・クーラー」の功罪

 小泉防衛相の肝いりともいえる、あのスポット・クーラー。避難所の住民には意外な評判が巻き起こっていた。
 そもそも、スポット・クーラーとは聞き慣れんが、その名の通り、広い部屋全体やなしに、ある一定方向だけに冷気を吹き出す。室外機を設置する工事も不要で、移動も楽々と、まあ被災地のためにあるような便利グッズやが、電気が通じ始めたこの避難所でも大活躍が期待された。自衛隊の入浴支援施設の脱衣所などにも設置され、湯上りの被災住民に心地よい涼を提供している。
 しかし実は、電気以外に外へ排熱ダクトを出す環境が必要なのである。ちゃあんと排熱ダクトを屋外に這わせ、機能すればいうことないんやが……。避難所となった宇城(うき)市の小川防災拠点の体育館などで数台設置されたスポット・クーラーは確かに冷気を吹き出し、その前面だけは涼しいわ。しかし背後の排気口からはその反作用として、熱風を吐き出すのである。その熱風が避難所の壁際で休む住民の背中に入り込んできよるのである。
 不便な暮らしを強いられる住民も、善意にはもちろん感謝しており、このスポット・クーラーを直ちに届けてくれた小泉防衛相や自衛隊にも「非常に感謝してありがたい」と前置きしながらも、「冷気と熱風、これじゃあプラスマイナス・ゼロばい」と早々にスイッチを切ってしまったのである。ここでは九州電力の電源車が回した発電機により、始めから設置されていた大型エアコンが稼働していたこともあり、体育館のスポット・クーラーはほとんど稼働していなかった。

発電機を回す九州電力の電源車。この電気で元からあった大型エアコンを稼働させていた 写真:宮嶋茂樹
体育館の隅に置かれたスポット・クーラー。機材はいいのだが、適切な設置には技術者が必要だ 写真:宮嶋茂樹

 しかしや、これやはり、エンジニアがおらんとなあ……。自衛隊が入浴施設なんかに設置したスポット・クーラーは、まず背後にパイプをつないで、天幕屋外に熱風を逃がすよう排熱ダクトを設置して、ビンビンにエアコンが効いていた。もちろん小泉大臣も自衛隊側も排熱ダクトや延長ホースなんかもいっしょに避難所に運びこんどったはずやろうが、空路、陸路といくつもの中継地を通るたびに伝言ゲームみたいに伝えきれんかったのであろう。
 いやいや、被災民の皆さんは「ありがたい、感謝している」とちゃんと前置きされてるんや。ここはエアコン専門エンジニアとまでいかんが、ボランティアの電気配線業者の方も手配できればいうことなかったであろう。まあしかし、これも、日本人が初めて経験する真夏の災害だから、今回判明した問題点である。

かき氷で生き返る 地元全体で「食」支援

 熊本市内の火の君文化センターに第8後方支援連隊補給隊により初めて開設されたのが、自衛隊入浴施設、名付けて「火の国の湯」。脱衣所にはあのスポット・クーラーが備えられ、湯上りにはクーラーボックスでキンキンに冷えたミネラル・ウォーターまで配られた。もちろん無料である。入浴どころか、飲み水にもこと欠いていた住民にとっては、この「火の国の湯」は一時だけとはいえ、何よりのやすらぎとなり、午後6時から10時まで、一日約200人の方々が毎日利用されては皆感嘆の声を上げていた。

熊本市の火の君文化センターに設置された第8後方支援連隊補給隊による「火の国の湯」。風呂上りにはキンキンに冷えたミネラルウォーターもふるまわれた 写真:宮嶋茂樹

 しかし、ここでは給水入浴給食支援はもはや自衛隊だけの専売特許にあらず。近隣自治体やボランティアによる給水スポットや、規模は小さいながら、スーパー銭湯でも使用されている温水循環式の浴槽も備えた野外入浴セットも立ちあがっていた。
 また現地ではパンやパックご飯などが続いていたが、「すき屋」の牛丼やイベント用の屋台の焼きそばなど温食を提供できるキッチン・カーも駆けつけだし、住民からありがたられた。しかし……不肖・宮嶋が最も驚いたのは「かき氷」のキッチン・カーであった。イチゴ、メロン、ミルク、コーラ、ブルーハワイ、ドラキュラ?とさまざまな味の色鮮やかな本格的かき氷が、殺風景なそこかしこの避難所に彩を添えたばかりか、老若男女の住民から「生き返ったあ!」と感嘆の声を上げていた。
 しかし、ここでも無知無能無策の政治家が復興の足を引っ張る。某野党女性政治家が被災地に半日視察と称してやって来て、自衛隊が給食支援してないと因縁をつけていた……。しかしそれは熊本県知事から給水入浴支援などの派遣要請はあったものの、野外炊事車などの派遣要請が来ていなかったからなのだ。

氷川町の氷川中学校では、電気も上下水道も絶たれた避難所でボランティアによる本格的なかき氷がふるまわれた。老若男女問わず「生き返ったあ!」の声が上がった 写真:宮嶋茂樹

不肖・宮嶋の熊本日記

第1回 令和8年熊本地震と10年前の記憶
第2回 速やかに動き始めた自衛隊
第3回 届けられた支援の有効活用

宮嶋茂樹_Shigeki MIYAJIMA

みやじま・しげき 報道カメラマン。1961年、兵庫県明石市生まれ。1984年に日本大学芸術学部写真学科を卒業後、講談社週刊『フライデー』専属カメラマンを経てフリーランスに。国内外の紛争、災害、事件、事故現場を撮影し、各種媒体に作品を発表し続けている。著作・写真集多数。近著に『海上自衛隊創設70周年写真集 GLORIOUS FLEET 日出づる艦隊』、『君たちはこの国をどう守るか』(共著)、『不肖・宮嶋 最後の戦場 ウクライナ戦記』、『忘れられた香港 〜The Forgotten State〜』など。

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