《ニュース解説》陸自が導入を検討する「火力誘導用UAV(仮称)」とは?
- ニュース解説
2025-1-25 22:20
陸上自衛隊は昨年6月、「火力誘導用UAV(仮称)に関する情報・提案要求書」という文書を出して、新たなUAVについての情報提供を求めた。この「火力誘導用UAV」とは何なのか、元陸上自衛官の影本賢治氏が解説します。
陸上自衛隊は令和6(2024)年6月に「火力誘導用UAV(仮称)に関する情報・提案要求書」を公示しました。その目的は、将来的に導入を検討する可能性のある火力誘導用のUAV(無人航空機)について、その分野に実績や知見を有する企業などからの情報や提案を広く募集することにあります。

情報・提案書の募集は9月30日まで行われました。検討の後、火力誘導用UAVが有用と認められた場合は、2027年6月末までに参考品を取得し、2030年3月末までに装備品の納入を開始したいとしています。
搭載カメラで攻撃目標を指示するUAV
火力誘導用UAVとは、搭載されたEO/IR(電子光学/赤外線)カメラで攻撃目標を探知・識別し、レーザー目標指示装置でLJDAM(エルジェイダム、レーザー誘導爆弾の一種)などの火力を精密に誘導するためのUAVです。
「EO/IRカメラ」は、電子光学センサーと赤外線センサーの双方で構成されるカメラで、昼間だけでなく夜間でもあらゆる目標を捕捉できます。
LJDAMは、航空自衛隊のF-2戦闘機で使用できる精密誘導爆弾のひとつです。INS(慣性誘導システム)やGPS(衛星測位システム)だけではなく、レーザー・ビームでも誘導できるのが特徴です。レーザーを目標に照射すれば、その反射波に向かって落下するので、戦車などの移動目標を直撃することも可能です。
これまでの陸自UAVは偵察用が多かった
現在、陸上自衛隊が装備している小型UAVには、様々なものがあります。偵察用の日立製作所のUAV(近距離用)「JUXS-S1」、インシツ社のUAV(中域用)「スキャンイーグル」、エリヨン社のUAV(狭域用)「スカイレンジャー」のほか、令和8(2026)年には「小型攻撃用 UAV」が導入されると報じられています。さらに、令和11(2029)年までに「輸送用UAV(小型)」の導入準備を完了することも検討されています。
火力誘導用UAVがこれらのUAVと異なるのは、搭載カメラによるISR(情報収集・監視・偵察)能力だけではなく、LJDAMを誘導するためのレーザー目標指示能力を有していることです。そのLJDAMは、小型攻撃用UAVが搭載する弾頭やミサイルなどよりもはるかに大きな破壊力を有しています。
レーザー目標指示能力の必要性
レーザー目標指示装置は、今から約10年前の平成26(2014)年に陸上自衛隊の水陸機動団などに装備されることが報じられ、平成28(2016)年には富士総合火力演習にも登場していました。
ただし、UAVが格段の進歩を遂げる中、隊員自身が目標にレーザーを照射するのではなく、UAVを使うことでより遠方の目標を撃破できるようにしようと考えるのは、ごく自然のなりゆきでしょう。ネット上を検索すると、海外にはレーザー目標指示装置を搭載したUAVがいくつも存在しており、すでにウクライナ戦争でも使われているという情報があります。
火力誘導用UAVへの期待
航空機として先進的であること
今回の情報・提案要求書で示されている機体に関する要求性能の概要は次のとおりです。
● 航続距離:約10km以上
● 航続時間:努めて長時間
● 機体重量:隊員個人により運搬可能
アメリカ陸軍は小型UAVを次のように分類して導入を進めており、火力誘導用UAVの要求性能は、この分類の中の「中距離偵察型」に当てはまります。

※UAS:Unmanned Aircraft Systemの略で、UAVは機体そのもの、UASは機体を含めた装置全体を指す。
アメリカ陸軍では小型UAVの垂直離着陸機化が進められており、中距離偵察型の予想図にはティルトローター方式らしき機体が描かれています。ティルトローター方式であれば、ヘリコプター(マルチコプター)のように垂直に離着陸できますし、固定翼機のように長距離を高速で飛行することもできます。
今回の情報・提案要求書によれば、火力誘導用UAVを導入する場合の時期は、今から5年以上先の令和12(2030)年です。その時に時代遅れにならないようにするためには、既存の機体を利用するのではなく、より先進的な機体を新たに開発することが必要でしょう。
国産機であること
令和4(2022)年に発表された「国家防衛戦略」では、UAVについて、おおむね10年後までに「我が国の地理的特性等を踏まえた機種の開発・導入を加速」するとしており、国産化の必要性が示されていました。今回の情報・提案要求書では、国産であることが条件にはなっていませんが、装備品の他国への依存度を小さくし、継戦能力を確保するためには、国産のUAVを採用することが望ましいのは言うまでもありません。
配備先は水陸機動連隊か
今回の情報・提案要求書では、火力誘導用UAVの配備先は明らかにされていません。ただし、南西地域における防衛体制の強化が重視される中、まずは、その最前線を担う水陸機動団の水陸機動連隊(長崎県・相浦駐屯地)に配備されると考えて良いでしょう。
その後は、全国の普通科連隊にも装備されるかも知れません。将来的には、レーザー目標指示装置以外のペイロードを搭載し、普通科連隊だけではなく、さまざまな部隊において幅広く使われることも期待できそうです。

(以上)
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